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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第35話
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「あの話、かなりのスピードで広まってるみたいでさ……」
「お、おう……」
「久遠先輩が姫神を探して走り回ってたんだよ」
「! え……? 久遠先輩が……?」
学園で一、二を争う有名人である悠真は那鳥の部活の先輩だ。
何事にも冷静さを失わずスマートに事を運ぶことでも有名な先輩が走り回っていたとはどういうことなのか?
いや、おそらく話の流れ的に那鳥の『過去』を耳にし、心配しての行動だろうが、ただの後輩に対しての態度ではないと思われる。
那鳥の様子からただの部活の先輩・後輩というわけじゃなさそうだと思ってはいたが、これはもしかすると本当にもしかするかもしれない。
「じゃあ、姫神は先輩と……?」
「そういうことだな。……先輩の前で大泣きして取り乱してる姫神の背中しか俺は見てないけど、でも、姫神が先輩を信頼してるってことはよくわかった……」
泣いている姿を誰かに見られるなんてプライドの高い那鳥には堪えられない事だろう。
それなのに悠真の前で大泣きしたという那鳥。
悠栖は葵の言葉を思い出し、その心に刻まれた傷の深さを垣間見た。
言葉を失う悠栖に、唯哉は続けた。那鳥の心だけでなくプライドを守るために悠真は那鳥を抱き上げ、そのまま二人でこの部室棟に消えていった。と。
「チカ、……大丈夫、か……?」
「ん。大丈夫だ。……ただ―――、いや、なんでもない」
悲し気な声で『平気だ』と言う唯哉。
悠栖は自分の短慮さ嫌になる。『大丈夫か?』と聞かれたら、相手はたとえ大丈夫じゃなくとも『大丈夫』と応えるしかない。
中には『大丈夫じゃない』と訴えることができる者もいるだろうが、唯哉がそんな風に訴えることができない性格だということはちゃんと分かっていたはずなのに。
唯哉に強がりを言わせた。嘘をつかせた。きっと本当は苦しくて辛くて堪らないはずなのに……。
「嘘、吐くなよっ、……『大丈夫』なわけ、ねぇーだろうがっ……」
「悠栖?」
「お前っ――、お前、姫神のこと、好きなんだろっ? 授業サボって追いかけるぐらい、あいつが大事なんだろっ!?」
それなのに、支えてやることはおろか、慰めることすらできなかった。
ただ目の前で他の誰かに頼って涙する『大事な人』の背中を見ることしかできなかった。
唯哉の絶望を正確に知る術はないが、それでも、この絶望がどれほどのものか、悠栖にだって想像することはできる。
感情を露わにする悠栖。
唯哉は少し驚いた顔をするもすぐに力なく笑った。そうだな……。と。
「大切だと想ってるよ……」
「なら―――」
「でも俺の存在は、姫神からしたら迷惑でしかないだろ?」
傷ついた那鳥を支えたかったし、慰めたかった。
でも、自分は一度那鳥に振られている。
気持ちに応えることはできないと言われている。
それなのにまだ傍にいることを許されているのは、他でもなく自分が悠栖の親友だから。
それ以上の理由は存在しない。
唯哉が告げる『真実』。
悠栖が覚えたのは、自分に対する怒り。
そして、那鳥に対する苛立ちだった。
「お、おう……」
「久遠先輩が姫神を探して走り回ってたんだよ」
「! え……? 久遠先輩が……?」
学園で一、二を争う有名人である悠真は那鳥の部活の先輩だ。
何事にも冷静さを失わずスマートに事を運ぶことでも有名な先輩が走り回っていたとはどういうことなのか?
いや、おそらく話の流れ的に那鳥の『過去』を耳にし、心配しての行動だろうが、ただの後輩に対しての態度ではないと思われる。
那鳥の様子からただの部活の先輩・後輩というわけじゃなさそうだと思ってはいたが、これはもしかすると本当にもしかするかもしれない。
「じゃあ、姫神は先輩と……?」
「そういうことだな。……先輩の前で大泣きして取り乱してる姫神の背中しか俺は見てないけど、でも、姫神が先輩を信頼してるってことはよくわかった……」
泣いている姿を誰かに見られるなんてプライドの高い那鳥には堪えられない事だろう。
それなのに悠真の前で大泣きしたという那鳥。
悠栖は葵の言葉を思い出し、その心に刻まれた傷の深さを垣間見た。
言葉を失う悠栖に、唯哉は続けた。那鳥の心だけでなくプライドを守るために悠真は那鳥を抱き上げ、そのまま二人でこの部室棟に消えていった。と。
「チカ、……大丈夫、か……?」
「ん。大丈夫だ。……ただ―――、いや、なんでもない」
悲し気な声で『平気だ』と言う唯哉。
悠栖は自分の短慮さ嫌になる。『大丈夫か?』と聞かれたら、相手はたとえ大丈夫じゃなくとも『大丈夫』と応えるしかない。
中には『大丈夫じゃない』と訴えることができる者もいるだろうが、唯哉がそんな風に訴えることができない性格だということはちゃんと分かっていたはずなのに。
唯哉に強がりを言わせた。嘘をつかせた。きっと本当は苦しくて辛くて堪らないはずなのに……。
「嘘、吐くなよっ、……『大丈夫』なわけ、ねぇーだろうがっ……」
「悠栖?」
「お前っ――、お前、姫神のこと、好きなんだろっ? 授業サボって追いかけるぐらい、あいつが大事なんだろっ!?」
それなのに、支えてやることはおろか、慰めることすらできなかった。
ただ目の前で他の誰かに頼って涙する『大事な人』の背中を見ることしかできなかった。
唯哉の絶望を正確に知る術はないが、それでも、この絶望がどれほどのものか、悠栖にだって想像することはできる。
感情を露わにする悠栖。
唯哉は少し驚いた顔をするもすぐに力なく笑った。そうだな……。と。
「大切だと想ってるよ……」
「なら―――」
「でも俺の存在は、姫神からしたら迷惑でしかないだろ?」
傷ついた那鳥を支えたかったし、慰めたかった。
でも、自分は一度那鳥に振られている。
気持ちに応えることはできないと言われている。
それなのにまだ傍にいることを許されているのは、他でもなく自分が悠栖の親友だから。
それ以上の理由は存在しない。
唯哉が告げる『真実』。
悠栖が覚えたのは、自分に対する怒り。
そして、那鳥に対する苛立ちだった。
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