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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第24話
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(いや、分かってたらもうちょっと言い方考えるだろ)
相手の神経を逆撫でしかねない言い方をわざわざ選んでいるとは思わないが、今回は相手が良かっただけだと言わざるを得ない。
悠栖は二人の今後のために認識を改めることを勧めようと思った。
だが、悠栖が口を開く前に唯哉が悠栖の認識を改めさせる言葉を発した。
「そんな『納得できない』って顔するなよ。英彰はちゃんと『相手を見て言葉を選んでるから大丈夫』って意味だよ。……だよな? 英彰」
「当たり前だろうが。唯哉にしかこんなこと言わねぇーよ」
「本当に?」
「本当に」
「英彰の言葉を証明するわけじゃないけど、悠栖は言われたことないだろ?」
疑いの眼差しを向けると二人は苦笑いを浮かべて信じろと言ってくる。
確かに唯哉が言ったように自分に対して英彰が辛辣な言葉を投げてくることは記憶を辿る限り一度も無かった。
先程唯哉に向けられたような煽るような物言いもされたことは無かった。
(本当、みたいだけど……)
二人の言っていることが真実だということは分かった。
でも、真実だと分かったからこそ、釈然としない事もあるわけで……。
「悠栖? どうかしたのか?」
「唯哉は一々俺の前に立つなっ! ……で、お前はなんでそんな拗ねた顔してるんだ?」
顔を覗き込んでくる唯哉と、そんな唯哉の首根っこをひっつかんで悠栖から引き離す英彰。
二人の様子に今までどうして気付かなかったのだろうと悠栖は眉を下げて唇を尖らせた。それはまさに『拗ね顔』そのものだ。
「……チカとヒデって、すっげぇ仲良いよな」
「は?」
「! あ、いや、今の無しっ! 今の、無し!!」
面白くないと思っていた言葉がぽろっと口から出てしまった。
今日は無駄に神経をすり減らしていたから、気の緩みが酷いようだ。
悠栖は慌てて言葉を撤回するも目を見開いている二人には撤回の言葉は聞こえてないだろう。
除け者にされていると感じたことは無いし、実際にされていないと分かっている。
でも、今確かに二人の距離感と自分と二人の距離感が違うと知って、淋しいと感じてしまった。
しかし、感じたからと言ってそれを伝える気などさらさらなかったのに、どうして口に出してしまったのか。
悠栖は自分の馬鹿さ加減が心底嫌になる。
「えっと……悠栖、何を誤解してるか知らないけど―――」
「俺と唯哉はただの腐れ縁。それ以上でもそれ以下でもねぇーよ」
自分が『淋しさ』を感じた事を唯哉は察したのだろう。
物凄く気遣われている雰囲気が伝わってきて居た堪れない。
だがそんな唯哉の言葉を遮る英彰は、「お前と唯哉が一緒なわけないだろうが」なんて言い放った。
声の大きさとトーン、それに表情と纏う空気。
それら全てが英彰の不機嫌を物語っている。
馬鹿な発言に呆れられたと感じた悠栖は小さな声で「悪かった」と謝った。女々しいこと言ってごめん。と。
すると英彰は露骨なまでに大きなため息を吐いて見せた。
「ひ、ヒデ……?」
「……なんでもねぇーよ。ちょっと疲れただけだ」
何か言いたそうな顔はしているものの、英彰は言葉を噤む。
ドッと疲れたと言った英彰は踵を返し、帰路に戻る。
その背中は疲労困憊だと物語っているようだった。
(やらかした……)
朝から感じていた嫌な予感はこれのことだったのか。
悠栖は平穏で終えるはずだった一日を台無しにした自分に腹が立った。
立ち尽くす悠栖。
唯哉は俯いたままの悠栖の頭に手を乗せると、「帰ろう」と促してきた。
「ごめんな。俺が変な態度だったせいで悠栖に嫌な思いさせたな」
「! チカは何もわるくねぇーって。俺が女々しい事言ったのは、俺のせい」
それまでのやり取りがどんなものであっても、言葉を発したのは自分。
それを周りのせいにするわけにはいかないというものだ。
むしろ自分こそ気を病ませてごめん。
そう悠栖は力なく笑った。
唯哉はそんな悠栖に破顔し、その潔さを称える。お前は本当、カッコいいな。と。
相手の神経を逆撫でしかねない言い方をわざわざ選んでいるとは思わないが、今回は相手が良かっただけだと言わざるを得ない。
悠栖は二人の今後のために認識を改めることを勧めようと思った。
だが、悠栖が口を開く前に唯哉が悠栖の認識を改めさせる言葉を発した。
「そんな『納得できない』って顔するなよ。英彰はちゃんと『相手を見て言葉を選んでるから大丈夫』って意味だよ。……だよな? 英彰」
「当たり前だろうが。唯哉にしかこんなこと言わねぇーよ」
「本当に?」
「本当に」
「英彰の言葉を証明するわけじゃないけど、悠栖は言われたことないだろ?」
疑いの眼差しを向けると二人は苦笑いを浮かべて信じろと言ってくる。
確かに唯哉が言ったように自分に対して英彰が辛辣な言葉を投げてくることは記憶を辿る限り一度も無かった。
先程唯哉に向けられたような煽るような物言いもされたことは無かった。
(本当、みたいだけど……)
二人の言っていることが真実だということは分かった。
でも、真実だと分かったからこそ、釈然としない事もあるわけで……。
「悠栖? どうかしたのか?」
「唯哉は一々俺の前に立つなっ! ……で、お前はなんでそんな拗ねた顔してるんだ?」
顔を覗き込んでくる唯哉と、そんな唯哉の首根っこをひっつかんで悠栖から引き離す英彰。
二人の様子に今までどうして気付かなかったのだろうと悠栖は眉を下げて唇を尖らせた。それはまさに『拗ね顔』そのものだ。
「……チカとヒデって、すっげぇ仲良いよな」
「は?」
「! あ、いや、今の無しっ! 今の、無し!!」
面白くないと思っていた言葉がぽろっと口から出てしまった。
今日は無駄に神経をすり減らしていたから、気の緩みが酷いようだ。
悠栖は慌てて言葉を撤回するも目を見開いている二人には撤回の言葉は聞こえてないだろう。
除け者にされていると感じたことは無いし、実際にされていないと分かっている。
でも、今確かに二人の距離感と自分と二人の距離感が違うと知って、淋しいと感じてしまった。
しかし、感じたからと言ってそれを伝える気などさらさらなかったのに、どうして口に出してしまったのか。
悠栖は自分の馬鹿さ加減が心底嫌になる。
「えっと……悠栖、何を誤解してるか知らないけど―――」
「俺と唯哉はただの腐れ縁。それ以上でもそれ以下でもねぇーよ」
自分が『淋しさ』を感じた事を唯哉は察したのだろう。
物凄く気遣われている雰囲気が伝わってきて居た堪れない。
だがそんな唯哉の言葉を遮る英彰は、「お前と唯哉が一緒なわけないだろうが」なんて言い放った。
声の大きさとトーン、それに表情と纏う空気。
それら全てが英彰の不機嫌を物語っている。
馬鹿な発言に呆れられたと感じた悠栖は小さな声で「悪かった」と謝った。女々しいこと言ってごめん。と。
すると英彰は露骨なまでに大きなため息を吐いて見せた。
「ひ、ヒデ……?」
「……なんでもねぇーよ。ちょっと疲れただけだ」
何か言いたそうな顔はしているものの、英彰は言葉を噤む。
ドッと疲れたと言った英彰は踵を返し、帰路に戻る。
その背中は疲労困憊だと物語っているようだった。
(やらかした……)
朝から感じていた嫌な予感はこれのことだったのか。
悠栖は平穏で終えるはずだった一日を台無しにした自分に腹が立った。
立ち尽くす悠栖。
唯哉は俯いたままの悠栖の頭に手を乗せると、「帰ろう」と促してきた。
「ごめんな。俺が変な態度だったせいで悠栖に嫌な思いさせたな」
「! チカは何もわるくねぇーって。俺が女々しい事言ったのは、俺のせい」
それまでのやり取りがどんなものであっても、言葉を発したのは自分。
それを周りのせいにするわけにはいかないというものだ。
むしろ自分こそ気を病ませてごめん。
そう悠栖は力なく笑った。
唯哉はそんな悠栖に破顔し、その潔さを称える。お前は本当、カッコいいな。と。
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