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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第4話
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「本当に?」
「おう! 本当に!」
「そっか。ならよかった。授業終わっても部活に行かないし、調子悪いのかなって心配しちゃった」
授業が終われば部活動の時間。早く大好きなサッカーをしたいといつもなら一目散に教室を出て行くところだ。
しかし自分は今日何故かスタートダッシュをかけなかった。
正直思い返して自分でもらしくないと思ったところだ。
それを心優しい親友が心配しないわけはない。『物憂げな表情でボンヤリしていたから』なんて言われたら、心配かけてごめんと謝ってしまうというものだ。
「ううん。僕こそ勘違いしちゃってごめんね? 高校生になったのにそそっかしすぎるよね」
子どもっぽくて恥ずかしいな。なんて照れるところも可愛い親友。
悠栖はできることならこのままでいて欲しいと願ってしまう。
(いや、『このまま』はいくらなんでも無理だよな。……でもまぁ、マモだし『真っ白』なままではいてくれるか? 後ろにいるド級の『女王様』達に全く影響されてねぇーし)
ついついチラッと後ろに目を向けてしまった悠栖。
すると先程よりもずっと綺麗な笑顔で自分に笑いかける『女王様』こと藤原慶史と目が合った。
その瞬間、頭に過ったのは蛇に睨まれた蛙の図。
悠栖が言いたいことは何か、まぁ分かるだろう。
「葵。葵はそそっかしいんじゃなくて、友達想いなだけだよ。『部活大好きサッカー馬鹿』が授業が終わっても呆けてたら誰だって心配するしね」
「なぁ慶史。わざわざ突っ込みたくないけど、一応突っ込んどくな? 俺の心配してくれたのはマモだけだよな?」
「ひどーい! 俺だって悠栖の心配してるのに!」
威圧感しか感じない物言い。本気で『女王様』が似合い過ぎで怖いぐらいだ。
それでも負けじと言い返せば、白々しい声が上がる。疑われるなんて心外! なんて、わざとらしすぎて空笑いが出てしまう。
悠栖は脱力とばかりにがっくりと肩を落とし、「心配ドーモ」と心の籠っていない言葉を返す。
今のやり取りでドッと疲れたと思いながらも帰り支度を始める悠栖。
すると、静観していた朋喜が「何か言いたいことあるんでしょ?」と声を掛けてきた。
「え?」
「『今日のサッカーの再放送こと朋喜に言うの忘れてた! ヤベー、絶対嫌味言われちまう』ってところかな?」
「! え!? 俺、声に出てた!?」
恐らく悠栖の真似なのだろう。
大袈裟な身振り手振りで悠栖の頭の中を見透かす朋喜は、驚きすぎて慌て始める悠栖に「声には出てないよ」と肩を竦ませて見せた。
しかし、声に出ていないならどうして自分の脳内が朋喜に筒抜けなのだろうか?
悠栖は『声に出てない』という言葉が嘘ではないかと疑いの眼差しを向ける。
すると朋喜から返ってくるのは「悠栖って本当、馬鹿だよね」という満面の笑み。
「何年の付き合いだと思ってるの? 悠栖の考えてる事なんて顔を見なくたってお見通しだよ?」
「マジで!?」
「うわぁ。馬鹿過ぎる反応だ」
物心つくかつかないかの頃から一緒にいて、寮ではずっと同室。嫌でも分かるようになるというものか?
だがしかし、朋喜は悠栖の考えが手に取るように分かるらしいが、悠栖は朋喜の考えがいまいち分からない。
いや、ある程度なら分かるが、深いところは全く見えなくて理解しようにもできないのだ。
だから、今みたいに何も言われていない状態でピタリと考えを当てるなんてこと、悠栖にはできない。
自分には到底できない芸当だと驚いたのだが、茶々を入れてくる慶史の小馬鹿にしたような態度にムッとしてしまう。
きっと自分はあからさまに機嫌を損ねたと言う顔をしていたのだろう。『女王様』的な慶史の態度を葵がその名を呼んで窘めていた。
「おう! 本当に!」
「そっか。ならよかった。授業終わっても部活に行かないし、調子悪いのかなって心配しちゃった」
授業が終われば部活動の時間。早く大好きなサッカーをしたいといつもなら一目散に教室を出て行くところだ。
しかし自分は今日何故かスタートダッシュをかけなかった。
正直思い返して自分でもらしくないと思ったところだ。
それを心優しい親友が心配しないわけはない。『物憂げな表情でボンヤリしていたから』なんて言われたら、心配かけてごめんと謝ってしまうというものだ。
「ううん。僕こそ勘違いしちゃってごめんね? 高校生になったのにそそっかしすぎるよね」
子どもっぽくて恥ずかしいな。なんて照れるところも可愛い親友。
悠栖はできることならこのままでいて欲しいと願ってしまう。
(いや、『このまま』はいくらなんでも無理だよな。……でもまぁ、マモだし『真っ白』なままではいてくれるか? 後ろにいるド級の『女王様』達に全く影響されてねぇーし)
ついついチラッと後ろに目を向けてしまった悠栖。
すると先程よりもずっと綺麗な笑顔で自分に笑いかける『女王様』こと藤原慶史と目が合った。
その瞬間、頭に過ったのは蛇に睨まれた蛙の図。
悠栖が言いたいことは何か、まぁ分かるだろう。
「葵。葵はそそっかしいんじゃなくて、友達想いなだけだよ。『部活大好きサッカー馬鹿』が授業が終わっても呆けてたら誰だって心配するしね」
「なぁ慶史。わざわざ突っ込みたくないけど、一応突っ込んどくな? 俺の心配してくれたのはマモだけだよな?」
「ひどーい! 俺だって悠栖の心配してるのに!」
威圧感しか感じない物言い。本気で『女王様』が似合い過ぎで怖いぐらいだ。
それでも負けじと言い返せば、白々しい声が上がる。疑われるなんて心外! なんて、わざとらしすぎて空笑いが出てしまう。
悠栖は脱力とばかりにがっくりと肩を落とし、「心配ドーモ」と心の籠っていない言葉を返す。
今のやり取りでドッと疲れたと思いながらも帰り支度を始める悠栖。
すると、静観していた朋喜が「何か言いたいことあるんでしょ?」と声を掛けてきた。
「え?」
「『今日のサッカーの再放送こと朋喜に言うの忘れてた! ヤベー、絶対嫌味言われちまう』ってところかな?」
「! え!? 俺、声に出てた!?」
恐らく悠栖の真似なのだろう。
大袈裟な身振り手振りで悠栖の頭の中を見透かす朋喜は、驚きすぎて慌て始める悠栖に「声には出てないよ」と肩を竦ませて見せた。
しかし、声に出ていないならどうして自分の脳内が朋喜に筒抜けなのだろうか?
悠栖は『声に出てない』という言葉が嘘ではないかと疑いの眼差しを向ける。
すると朋喜から返ってくるのは「悠栖って本当、馬鹿だよね」という満面の笑み。
「何年の付き合いだと思ってるの? 悠栖の考えてる事なんて顔を見なくたってお見通しだよ?」
「マジで!?」
「うわぁ。馬鹿過ぎる反応だ」
物心つくかつかないかの頃から一緒にいて、寮ではずっと同室。嫌でも分かるようになるというものか?
だがしかし、朋喜は悠栖の考えが手に取るように分かるらしいが、悠栖は朋喜の考えがいまいち分からない。
いや、ある程度なら分かるが、深いところは全く見えなくて理解しようにもできないのだ。
だから、今みたいに何も言われていない状態でピタリと考えを当てるなんてこと、悠栖にはできない。
自分には到底できない芸当だと驚いたのだが、茶々を入れてくる慶史の小馬鹿にしたような態度にムッとしてしまう。
きっと自分はあからさまに機嫌を損ねたと言う顔をしていたのだろう。『女王様』的な慶史の態度を葵がその名を呼んで窘めていた。
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