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特別な人
特別な人 第78話
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「こらこら、何処行くんだ」
「部屋だよ!」
駆け足で部屋に向かうんだけど、手首を掴まれてそれを止められてしまう。いや、別に強く掴まれてるわけじゃないからすぐに振り払うことだってできるんだけど……。
(なんか僕、変だ……)
何故か分からないけど凄く落ち着かなくて、僕は虎君を振り返れない。
すると虎君は「まだ決まってないだろ」って言って僕を引っ張った。
さっきより強い手の力。骨ばっててごつごつした手は力強い男の人のそれで、虎君なのに虎君じゃないみたいだった。
「どこ行くの? 僕、着替えたいんだけど……」
手を引かれるがままついて歩くんだけど、部屋からは遠ざかる。
制服のままは嫌だって訴える僕。虎君はでも止まってくれない。
「虎君ってば!」
「着替えは後で持ってくるから、無理するなよ」
部屋に入るの怖いくせに。って笑う虎君は、僕を別の部屋に連れて行く。
それは虎君の部屋で、昨日に続いて今日も虎君のベッドで寝ていいってことなのかな……?
「お、お邪魔します……」
「自分の家で何言ってるんだよ」
「でもここは虎君の部屋でしょ?」
昨日はいっぱいいっぱいだったから気が回らなかったけど、此処は虎君の部屋で虎君の個人的な空間。其処に他人が入るにはまず部屋の主である虎君に了解を得ないと。
プライベートにずかずか入ってこられたらいくら幼馴染でも嫌でしょ? って僕が尋ねたら、虎君は「それは嫌だな」って頷く。
「でしょ?」
「ああ。……でも、それはあくまでも他人とかただの幼馴染相手だったら、だな」
「? どういうこと?」
含みのある言い方に、何か意図がある事は分かった。でも、どんな意図かは分からない。
首を傾げる僕。すると虎君はまだ部屋の前で足を止めてる僕の手をとると、尋ねてくる。
「俺は葵にとって『ただの幼馴染』なんだ?」
って。
それにポカンとしてしまうんだけど、言葉を理解して我に返る。
「ち、違うよ!? 虎君は大事な幼馴染だし、僕の自慢の『お兄ちゃん』だよ!!」
さっき自分が口にした言葉は一般論であって僕の気持ちじゃないからね?
そう訴えれば、虎君は楽しげに笑う。「必死すぎ」って。
「だって虎君誤解したんでしょ?」
「誤解っていうか、ちょっとショックだった」
「ほらやっぱり! あのね、僕、嫌じゃないからね? 虎君なら、勝手に僕の部屋に入ってても全然嫌じゃないからね?」
必死に伝える僕に虎君は分かったよって言ってくれる。でも虎君は、そんな僕が心配だって言ってくる。
「なんで?」
「いくら親しい間柄でも、誰も居ない部屋に勝手に入られたら怒ろうな?」
「んー……。わかった……」
警戒心は持つようにってことなんだろうけど、必要あるのかな?
(だって、虎君だよ? どう頑張っても安心しかしないよなぁ……)
警戒するよう言われても、きっと無理だ。でも虎君は僕が心配だからって引く気はなさそうだし、とりあえず口先だけの返事をしておく。
まぁそれはすぐにばれるんだけど。
「納得できない?」
ほら、やっぱり。
虎君はちょっぴり困った顔して笑ってる。
僕が返事をせずに沈黙を守ってたら、苦笑を濃くした虎君は「でもな」って言葉を続ける。
「よく言うだろ? 『男はみんな狼だ』って」
ポンって僕の頭に乗せられる手。
いつもなら嬉しくて笑顔になる虎君の手だけど、今は笑顔って言うよりも顰め面に近い気がした。
「顔」
「虎君が変なこと言うからでしょ」
「変な事じゃないだろ。葵は人を信頼しすぎだって話をしてるだけで」
「言いたいことは分かるけど、でも、たとえが悪すぎるよ。その言葉は女の子に言ってあげるべき言葉だよ」
体つきはまだまだ子どもだけど、それでも僕だって歴とした『男』なんだからね?
「部屋だよ!」
駆け足で部屋に向かうんだけど、手首を掴まれてそれを止められてしまう。いや、別に強く掴まれてるわけじゃないからすぐに振り払うことだってできるんだけど……。
(なんか僕、変だ……)
何故か分からないけど凄く落ち着かなくて、僕は虎君を振り返れない。
すると虎君は「まだ決まってないだろ」って言って僕を引っ張った。
さっきより強い手の力。骨ばっててごつごつした手は力強い男の人のそれで、虎君なのに虎君じゃないみたいだった。
「どこ行くの? 僕、着替えたいんだけど……」
手を引かれるがままついて歩くんだけど、部屋からは遠ざかる。
制服のままは嫌だって訴える僕。虎君はでも止まってくれない。
「虎君ってば!」
「着替えは後で持ってくるから、無理するなよ」
部屋に入るの怖いくせに。って笑う虎君は、僕を別の部屋に連れて行く。
それは虎君の部屋で、昨日に続いて今日も虎君のベッドで寝ていいってことなのかな……?
「お、お邪魔します……」
「自分の家で何言ってるんだよ」
「でもここは虎君の部屋でしょ?」
昨日はいっぱいいっぱいだったから気が回らなかったけど、此処は虎君の部屋で虎君の個人的な空間。其処に他人が入るにはまず部屋の主である虎君に了解を得ないと。
プライベートにずかずか入ってこられたらいくら幼馴染でも嫌でしょ? って僕が尋ねたら、虎君は「それは嫌だな」って頷く。
「でしょ?」
「ああ。……でも、それはあくまでも他人とかただの幼馴染相手だったら、だな」
「? どういうこと?」
含みのある言い方に、何か意図がある事は分かった。でも、どんな意図かは分からない。
首を傾げる僕。すると虎君はまだ部屋の前で足を止めてる僕の手をとると、尋ねてくる。
「俺は葵にとって『ただの幼馴染』なんだ?」
って。
それにポカンとしてしまうんだけど、言葉を理解して我に返る。
「ち、違うよ!? 虎君は大事な幼馴染だし、僕の自慢の『お兄ちゃん』だよ!!」
さっき自分が口にした言葉は一般論であって僕の気持ちじゃないからね?
そう訴えれば、虎君は楽しげに笑う。「必死すぎ」って。
「だって虎君誤解したんでしょ?」
「誤解っていうか、ちょっとショックだった」
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必死に伝える僕に虎君は分かったよって言ってくれる。でも虎君は、そんな僕が心配だって言ってくる。
「なんで?」
「いくら親しい間柄でも、誰も居ない部屋に勝手に入られたら怒ろうな?」
「んー……。わかった……」
警戒心は持つようにってことなんだろうけど、必要あるのかな?
(だって、虎君だよ? どう頑張っても安心しかしないよなぁ……)
警戒するよう言われても、きっと無理だ。でも虎君は僕が心配だからって引く気はなさそうだし、とりあえず口先だけの返事をしておく。
まぁそれはすぐにばれるんだけど。
「納得できない?」
ほら、やっぱり。
虎君はちょっぴり困った顔して笑ってる。
僕が返事をせずに沈黙を守ってたら、苦笑を濃くした虎君は「でもな」って言葉を続ける。
「よく言うだろ? 『男はみんな狼だ』って」
ポンって僕の頭に乗せられる手。
いつもなら嬉しくて笑顔になる虎君の手だけど、今は笑顔って言うよりも顰め面に近い気がした。
「顔」
「虎君が変なこと言うからでしょ」
「変な事じゃないだろ。葵は人を信頼しすぎだって話をしてるだけで」
「言いたいことは分かるけど、でも、たとえが悪すぎるよ。その言葉は女の子に言ってあげるべき言葉だよ」
体つきはまだまだ子どもだけど、それでも僕だって歴とした『男』なんだからね?
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