拗らせ専務は溺愛したい

アタラン

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花の想いは届かない

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「この書類を見て下さい。あとこの録音記録ですかね。」

憔悴したソフィアを伴って花は、会社に訪問してきた。

HANAの取引先を訴えた件や自分に黙って息子が進めた件を説明しろと言う。

何故ロバートが逮捕され、ソフィアが混乱しているのか一体何があったのかを現場にいた息子の鷹崎に聞きにきたのだ。

「この書類を見て下さい。現場での会話は録音済みです。」

鷹崎は、準備していた資料一式を花に渡して同時に録音の一部を聞かせた。

「私は悪くないでしょう?ロバートが花の為だって言って、こんな事になるなんて思ってもいなくて・・。」

私は悪くない、悪いのはロバートで自分には責任は無いと言いながら、「花なら解ってくれるよね。」とソフィアは甘えた声で言う。

「ソフィア・・自分の過ちが解らない?」

そう静かに話す花は録音された会話を文章に起こした資料を指さした。
そこに書かれているのは、ロバートが指示しているとは言えその指示に同調するソフィアの会話が記載されている。

「私が一番貴女に失望しているのは、私には息子を愛しているから恋を応援して欲しいと言っていたのに、こんな最低な計画をとめるでもなく・・息子の交際相手を排除する為に計画を行動に移そうとしていた事よ。」

自分は、鷹崎と一緒にいる女性に演技で嫉妬させて仲違いさせてから彼に迫るつもりだっただけで、攫うとか売るとかそんな計画に加担するつもりが無かった。だから自分は、悪くないと彼女は言い切った。

「本当にそうかしら?貴女は、今までもライバルを押しのけるのに容赦が無かったわ。それはいいのよモデル同士での事だからね。でも今回は違う!ロバートの言う通りにはしなかったかも知れないけど本気で彼に脅されたらどう?自分可愛さに行動したと思うわそして自分は悪くないって言うのでしょうね。」

花の指摘に何も言えなくなるソフィアは、それでも花に食い下がる。

「花。私は努力してきたわよね。私と鷹崎が結婚したら私を娘に出来るのよ。花は娘が欲しいって言っていたじゃない!私が娘みたいって!」


確かに貧しい生活をしていたソフィアは、頑張ってはいた。それは誰もが同じ事だった・・ただ彼女が必死に生きる姿をみていたから応援してあげたくて専属モデルに採用した。

そこからも彼女は、厳しいレッスンもトレーニングも頑張っていた。

強い女性をテーマにしたかったデザイナー花にとって「素材」としての彼女はイメージを固めるのに必要でもあったから大事に育てていた。

「娘がいたらこんな感じだったのかしら。」と思ったけど・・・

彼女が有名になって仕事が増えてきて強さが我儘になってきているとは感じていたそれでも、周囲に敵が多い彼女のメンタルを守る為に頼み事は聞いてあげたし、愛される事を覚えて人を思いやる気持ちを持って欲しいと願っていた。

会社やデザイナーの仕事にも興味を持ちだしたソフィアにモデルを辞めても仕事が出来るように経営や人との付き合い方を教えてきたつもりだった。

「どこでどう間違ったのかしらね・・。」

花は、息子と連絡が取れずに状況が解らないのに取引会社から脅迫めいた電話があった為に花はパニックになった。何度も会社に電話してやっとその日の予定を聞いだしたときの会話をソフィアに聞かれていたとは思わなかった。

彼女はすぐに取材を忘れていたと言って急に帰ったけど・・まさかこんな事になっているとは思わなかった。

「貴女を信用し過ぎていたのね。解雇の撤回は無理よ。そんな事頼めるような状態では無いわ。」

ソフィアは昨夜、帰宅後に通告されたイメージモデルの解雇を撤回して欲しいと花に懇願してきた。

「自分の手を離れている会社が決めた決定事項に口は出せない。」

花はそう言ったけど、ロバートの逮捕の件やソフィアの話が要領得ない内容だった為に現場にいたという鷹崎に話を聞かないと判断もできないと思ったから今花はここにいる。

ソフィアは、何時もの様に力は無いと言いながらも、最後には花が自分を擁護して守ってくれると信じていた。

なのに守るでもなく、悪いのはロバートなのに花は、何時ものように「仕方ない子ね。」とは言ってくれない。

その花にソフィアは憤りを覚えた!

「都合が悪くなったら私は邪魔者扱い?許せないわ。騙したの?私は悪くない。私より母親と連絡もまともに取らないような息子の方がいいの?」

子供のように癇癪をおこし騒くソフィアを花は俯瞰でみていた。

以前からカメラマンのアランから「あの子との距離感は問題だ。」と指摘されていたからだ。

「アランはこの事を言っていたの?」

花はまるで独り言のように呟いた。


ソフィアはアランが苦手だった。カメラマンとしては一流でその腕は誰もが認める人でソフィア自身もそれについては信頼していたが・・他の人はソフィアが遅刻しても我儘を言っても笑って仕方ないと言って許してくれるのに彼だけは、いつも口うるさく注意してきた。

フランス語で注意してくるからほぼ意味は解らなかったけど、フランス語を少し勉強して理解できるようになってきた時に、彼がかなり厳しく注意してきている事が理解できた。

「あの煩いカメラマンが花になにを言っていたのよ!?」

こうなったのはそうよ。アランよアランが何か余計な事を言ったから。

「違うの。アランは貴女の事と私の事を思って・・。。」

花が説明しようとしたが既に興奮しているソフィアは聞く耳を持たないでいる。

花もソフィアの行動に違和感を感じてはいたのに自分の都合のいい解釈をしてしまった事を反省する。

成り行きを黙って見守っていた鷹崎が口を開いた。

「母さん。これで少しは解りましたか?貴女の思い込みや過保護が彼女をダメにしていると言うアランの言葉。僕も同感です。」

「ええ。私の責任だわね。ソフィアに行っておくわね。私と息子が疎遠になった理由はね、私達親子は少し世間とは違う関係だったのよ。彼は鷹崎家の長男なのだから、色々あったの・・離婚した時に私が鷹崎の家と息子を捨てたようなものなのよ。」


花は泣きながら語ろうとした。


そこにバン!っと乱暴に扉を開いてアランが姿を見せた!

「花!君だけの責任じゃないよ!」

その昔話を話すなら僕が一緒にいるからとアランは、花の座るソファーに駆け寄って彼女を抱きしめた。








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