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第二試練
岩壁地獄
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しばらく抱き合っていた凛と修介に司会者が声をかける。
「お疲れ様でした。花野凛さん、大山修介さん。素晴らしかったです。お二人は相当な運の持ち主ですね」
今までで一番明るい口調で司会者は言う。
「まぁ、二人ともお疲れでしょうから、ぐっすり寝たいところでしょう?明日起こしますので、今日の疲れを癒してください。」
司会者が話し終える頃には、二人とも落ち着いていた。
「ベッドは?床で寝ろって言うの」
凛が尋ねると、壁がひらき、中から組み立て式の簡易ベッドが二人分出てきた。
「それをお使いください。組み立て終えたら、照明を消させて頂きます。さぁ、もう寝たいでしょうから、話はこれぐらいにしておきましょう。では、お休みなさい」
凛と修介がベッドを組み立て、一列に並べると、照明が消えた。部屋は真っ暗になり、すぐ隣にいないと互いの顔も見えないほどだ。
「絶対最後まで頑張ろうね」
凛が修介に微笑みながら言う。
「そうだな」
修介は短く返した。二人ともそれきり話さなくなったが、すぐに寝息が聞こえてきた。
「起きてください!花野凛さん、大山修介さん。朝ですよ」
司会者の明るい声で凛と修介は目を覚ます。
「ん?もう朝か...」
修介がそう言いながら、大きな欠伸をする。
「よく眠れましたか?今日も試練があるので元気いっぱい頑張りましょう」
まるで運動会の司会者のようなテンションだ。
「早速、今日の試練の発表とルール説明をしたいと思います」
一息置いて、再び話し出す。
ガンヘキ
「今日の試練は岩壁地獄!ルールを説明します。あなた方の背後に岩でできた壁があります。色とりどりの出っ張りをつけた、いわゆるボルダリング用の岩壁です」
凛と修介の背後には、十メートルほどの岩壁がそびえ立っていた。頂上には赤いボタンが間隔をあけて設置されている。
「まず、二人とも一メートルほど登ってください」
凛と修介は言われた通り、一メートルほど登った。すると、床から鋭い針が突起する。
「あなた方には岩壁の一番上にある、赤いボタンを押してもらいます。ですが、落ちたら即、死確定です。落ちないように頑張りましょう」
「今日もまた地獄の始まりか...」
修介が呟いた。
「さぁ、早速始めましょう!お好きなタイミングで登り始めてください」
「こんな地獄、さっさと終わらせてやる」
そう言うと修介は、一気に駆け上がった。そして、余裕そうな表情で赤いボタンを押す。隣に設置されている滑り台で地上に降りた。
「今回は楽勝だったぜ」
ガッツポーズをしながら言う。だが、凛はまだ二メートルほどの高さにいる。恐怖で動きがスローモーションのように遅い。足も震えている。
「死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない...」
凛は、呪文のようにずっとつぶやきながらゆっくり、ゆっくり登っている。やっとボタンが目の前に迫ったところで、足を滑らせ落ちてしまった。もう駄目かと思ったとき、途中にあった突起を凛が掴んだ。死なずには済んだが、五メートルほどまで落ちてしまった。凛はそのあと、残っている体力を全て使うように一気に駆け上がり、ボタンを押した。そして、滑り台から、滑り降りてきた。今までにないくらい号泣している。
「第二試練、終了」
号泣している凛が修介に抱きついている。部屋には、凛の泣く声が響いていた。
「お疲れ様でした。花野凛さん、大山修介さん。素晴らしかったです。お二人は相当な運の持ち主ですね」
今までで一番明るい口調で司会者は言う。
「まぁ、二人ともお疲れでしょうから、ぐっすり寝たいところでしょう?明日起こしますので、今日の疲れを癒してください。」
司会者が話し終える頃には、二人とも落ち着いていた。
「ベッドは?床で寝ろって言うの」
凛が尋ねると、壁がひらき、中から組み立て式の簡易ベッドが二人分出てきた。
「それをお使いください。組み立て終えたら、照明を消させて頂きます。さぁ、もう寝たいでしょうから、話はこれぐらいにしておきましょう。では、お休みなさい」
凛と修介がベッドを組み立て、一列に並べると、照明が消えた。部屋は真っ暗になり、すぐ隣にいないと互いの顔も見えないほどだ。
「絶対最後まで頑張ろうね」
凛が修介に微笑みながら言う。
「そうだな」
修介は短く返した。二人ともそれきり話さなくなったが、すぐに寝息が聞こえてきた。
「起きてください!花野凛さん、大山修介さん。朝ですよ」
司会者の明るい声で凛と修介は目を覚ます。
「ん?もう朝か...」
修介がそう言いながら、大きな欠伸をする。
「よく眠れましたか?今日も試練があるので元気いっぱい頑張りましょう」
まるで運動会の司会者のようなテンションだ。
「早速、今日の試練の発表とルール説明をしたいと思います」
一息置いて、再び話し出す。
ガンヘキ
「今日の試練は岩壁地獄!ルールを説明します。あなた方の背後に岩でできた壁があります。色とりどりの出っ張りをつけた、いわゆるボルダリング用の岩壁です」
凛と修介の背後には、十メートルほどの岩壁がそびえ立っていた。頂上には赤いボタンが間隔をあけて設置されている。
「まず、二人とも一メートルほど登ってください」
凛と修介は言われた通り、一メートルほど登った。すると、床から鋭い針が突起する。
「あなた方には岩壁の一番上にある、赤いボタンを押してもらいます。ですが、落ちたら即、死確定です。落ちないように頑張りましょう」
「今日もまた地獄の始まりか...」
修介が呟いた。
「さぁ、早速始めましょう!お好きなタイミングで登り始めてください」
「こんな地獄、さっさと終わらせてやる」
そう言うと修介は、一気に駆け上がった。そして、余裕そうな表情で赤いボタンを押す。隣に設置されている滑り台で地上に降りた。
「今回は楽勝だったぜ」
ガッツポーズをしながら言う。だが、凛はまだ二メートルほどの高さにいる。恐怖で動きがスローモーションのように遅い。足も震えている。
「死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない...」
凛は、呪文のようにずっとつぶやきながらゆっくり、ゆっくり登っている。やっとボタンが目の前に迫ったところで、足を滑らせ落ちてしまった。もう駄目かと思ったとき、途中にあった突起を凛が掴んだ。死なずには済んだが、五メートルほどまで落ちてしまった。凛はそのあと、残っている体力を全て使うように一気に駆け上がり、ボタンを押した。そして、滑り台から、滑り降りてきた。今までにないくらい号泣している。
「第二試練、終了」
号泣している凛が修介に抱きついている。部屋には、凛の泣く声が響いていた。
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