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4話
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祖父が亡くなった。面会をした数時間後に眠るように息を引き取ったそうだ。病院に着いた頃には既に死後数時間が経っていた。
泣いている暇もなく葬式の日にちや準備、祖父の知り合いに亡くなったことを連絡した。葬式が終わるまでの数日間、碧人は仕事を休み蒼太のサポートをしてくれた。葬式も終わり祖父は火葬され灰になった。
アパートの一角に遺影を飾る。頑固じじいだったが、両親が亡くなってから蒼太の面倒を見てくれた。ほとんど怒ってばっかりで、褒められたことなんてそんなにないけど、祖父と暮らした数年はとしても幸せだった。
数ヶ月前、部屋で倒れているところを発見して祖父の病気が発覚した。末期だった。手術もできる状態ではなく、余命宣告を受けていた。
それでもなにか手があるかもしれないと必死に祖父の病気のことを調べた。バイトも掛け持ちして、手術はできないと宣言されているのにもかかわらず、祖父の手術代を貯めた。もしかしたら、奇跡が起きたらできるかもしれない。
しかし、そんな奇跡は起こらなかった。
祖父が亡くなり、もの凄い喪失感が蒼太を襲った。今まで祖父のために一生懸命頑張ってきた。祖父が亡くなってからなにを支えに生きていけばいいのかわかんなくなった。
蒼太は遺影をじぃと見つめる。忙しかったときは悲しみはそこまで感じられなかったが、葬式が終わりひと段落したら急に寂しさが襲ってきた。
(……大丈夫。親が亡くなったときだって、立ち直れたんだ……。大丈夫)
(……大丈夫。……大丈夫)
下を向き何度も呪文のように大丈夫と心の中で呟く。そのとき、碧人が蒼太の肩に優しく触れた。
碧人の手の温度がじんわりと肩に伝わる。この優しい手に何度助けられただろうか。視界がゆらりと揺れ、鼻の奥がつんとした。
「……蒼太。もう泣いていいんだよ」
碧人の言葉によりストッパーを外れたように涙が蒼太の頬を伝いつーっと流れる。次から次へと涙が溢れて止まらない。
そんな蒼太を碧人は抱きしめてくれた。
「……俺がいるから」
「…………」
「俺がずっと蒼太のそばにいるよ」
碧人がそばにいると約束してくれた。
自分は一人ではない。
碧人がそばにいてくれるのなら絶望から立ち直れる気がした。
蒼太は碧人の背中に手を回し、喪服をぎゅっと掴んだ。
祖父が亡くなった数日後、その手紙は突然届いた。
ポストの中に入っていた佐々木蒼太様と書かれた茶封筒。その裏をひっくり返すが宛先は書いていなかった。
蒼太はその封筒を開け、中身を取り出す。中には一枚の紙が入っていた。
『卑怯者』
不気味な手紙。卑怯者とはどういうことなのだろうか。その手紙にはそれし書いていなかった。蒼太はその手紙をただの悪戯だと思い込み気にしないことにした。
次の日もポストの中に茶封筒が入っていた。蒼太はその封筒を開けた。また1枚の手紙が入っていて、その手紙を広げる。
『鳳条碧人の前から消えろ』
紙にはそれだけ書かれていた。
なぜ、ここに碧人が住んでいることを知っているのだろう。どこかで監視されているのではないかと思い、外を見渡すがいつも通りの平和な風景。蒼太はこの謎の手紙が怖くなった。
次の日、またポストに茶封筒が入っていた。今回は少し分厚い。恐る恐る封筒の中身を見る。そこには写真が数枚入っていた。
「……えっ…」
写真には仲睦まじい蒼太と碧人が写っていた。碧人が蒼太の頭を撫でる写真や、肩を抱く写真など、どこで撮られたのか分からない写真。
そして、何より怖かったのは蒼太の顔だけカッターナイフで切り刻んだ跡があった。その写真を見て背筋が凍った。
(碧人に相談したほうがいいかな……)
蒼太は碧人に話すべきか迷った。ただでさえ祖父のことで心配をかけているため、碧人にこれ以上の心配ををかけたくない。蒼太は黙秘することに決めた。
次の日も茶封筒が届いた。蒼太は恐る恐る封筒を開く。今回は写真ではなく手紙だった。その手紙を取り出し目を向ける。
『身内の死を利用してる卑怯者』
『鳳条碧人に同情してもらえて羨ましい』
その手紙に書いてある内容があまりにも酷いものだった。唯一の家族を失い、未だ悲しみに浸っている最中だ。手紙を持つ手に力が入る。
蒼太だけならまだしも、碧人や祖父まで巻き込んだこの文章を書いた持ち主が許せない。ふつふつと怒りがわいた。
祖父が亡くなってから2週間。あの手紙は毎日のようにポストの中に入っていた。書いている内容は酷いものだった。手紙はいざというときの証拠となると思い碧人にバレないように箱にしまい押し入れの奥底に入れた。
泣いている暇もなく葬式の日にちや準備、祖父の知り合いに亡くなったことを連絡した。葬式が終わるまでの数日間、碧人は仕事を休み蒼太のサポートをしてくれた。葬式も終わり祖父は火葬され灰になった。
アパートの一角に遺影を飾る。頑固じじいだったが、両親が亡くなってから蒼太の面倒を見てくれた。ほとんど怒ってばっかりで、褒められたことなんてそんなにないけど、祖父と暮らした数年はとしても幸せだった。
数ヶ月前、部屋で倒れているところを発見して祖父の病気が発覚した。末期だった。手術もできる状態ではなく、余命宣告を受けていた。
それでもなにか手があるかもしれないと必死に祖父の病気のことを調べた。バイトも掛け持ちして、手術はできないと宣言されているのにもかかわらず、祖父の手術代を貯めた。もしかしたら、奇跡が起きたらできるかもしれない。
しかし、そんな奇跡は起こらなかった。
祖父が亡くなり、もの凄い喪失感が蒼太を襲った。今まで祖父のために一生懸命頑張ってきた。祖父が亡くなってからなにを支えに生きていけばいいのかわかんなくなった。
蒼太は遺影をじぃと見つめる。忙しかったときは悲しみはそこまで感じられなかったが、葬式が終わりひと段落したら急に寂しさが襲ってきた。
(……大丈夫。親が亡くなったときだって、立ち直れたんだ……。大丈夫)
(……大丈夫。……大丈夫)
下を向き何度も呪文のように大丈夫と心の中で呟く。そのとき、碧人が蒼太の肩に優しく触れた。
碧人の手の温度がじんわりと肩に伝わる。この優しい手に何度助けられただろうか。視界がゆらりと揺れ、鼻の奥がつんとした。
「……蒼太。もう泣いていいんだよ」
碧人の言葉によりストッパーを外れたように涙が蒼太の頬を伝いつーっと流れる。次から次へと涙が溢れて止まらない。
そんな蒼太を碧人は抱きしめてくれた。
「……俺がいるから」
「…………」
「俺がずっと蒼太のそばにいるよ」
碧人がそばにいると約束してくれた。
自分は一人ではない。
碧人がそばにいてくれるのなら絶望から立ち直れる気がした。
蒼太は碧人の背中に手を回し、喪服をぎゅっと掴んだ。
祖父が亡くなった数日後、その手紙は突然届いた。
ポストの中に入っていた佐々木蒼太様と書かれた茶封筒。その裏をひっくり返すが宛先は書いていなかった。
蒼太はその封筒を開け、中身を取り出す。中には一枚の紙が入っていた。
『卑怯者』
不気味な手紙。卑怯者とはどういうことなのだろうか。その手紙にはそれし書いていなかった。蒼太はその手紙をただの悪戯だと思い込み気にしないことにした。
次の日もポストの中に茶封筒が入っていた。蒼太はその封筒を開けた。また1枚の手紙が入っていて、その手紙を広げる。
『鳳条碧人の前から消えろ』
紙にはそれだけ書かれていた。
なぜ、ここに碧人が住んでいることを知っているのだろう。どこかで監視されているのではないかと思い、外を見渡すがいつも通りの平和な風景。蒼太はこの謎の手紙が怖くなった。
次の日、またポストに茶封筒が入っていた。今回は少し分厚い。恐る恐る封筒の中身を見る。そこには写真が数枚入っていた。
「……えっ…」
写真には仲睦まじい蒼太と碧人が写っていた。碧人が蒼太の頭を撫でる写真や、肩を抱く写真など、どこで撮られたのか分からない写真。
そして、何より怖かったのは蒼太の顔だけカッターナイフで切り刻んだ跡があった。その写真を見て背筋が凍った。
(碧人に相談したほうがいいかな……)
蒼太は碧人に話すべきか迷った。ただでさえ祖父のことで心配をかけているため、碧人にこれ以上の心配ををかけたくない。蒼太は黙秘することに決めた。
次の日も茶封筒が届いた。蒼太は恐る恐る封筒を開く。今回は写真ではなく手紙だった。その手紙を取り出し目を向ける。
『身内の死を利用してる卑怯者』
『鳳条碧人に同情してもらえて羨ましい』
その手紙に書いてある内容があまりにも酷いものだった。唯一の家族を失い、未だ悲しみに浸っている最中だ。手紙を持つ手に力が入る。
蒼太だけならまだしも、碧人や祖父まで巻き込んだこの文章を書いた持ち主が許せない。ふつふつと怒りがわいた。
祖父が亡くなってから2週間。あの手紙は毎日のようにポストの中に入っていた。書いている内容は酷いものだった。手紙はいざというときの証拠となると思い碧人にバレないように箱にしまい押し入れの奥底に入れた。
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