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第8話 『鴉』
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食堂の中には村中の人々が集まっていた。
3つ並んだ大きくて長いテーブルの上には村で採れた食材で作った料理が置かれていて、それらを囲むように多くの人々が座っている。
それぞれが思い思いに会話をしており、随分賑やかな場所となっていた。
「村の皆が集まってるのか…凄いな」
しばらく立ち尽くしていると、2人の姿に気づいたジークが置くの方の席から手を振った。
「おーい、2人ともこっちだッ!」
周りの声にかき消され無いようにジークは大声を張り上げた。
それに気づいたエイジは会釈で返し、彼の席の方へと歩き出した。
見慣れない2人がいることに気づいた村の人がジロジロと見てきていた。
「すいません。ちょっと通ります」
エイジはそう言い、席と席の間の通路を通り抜け進んでいく。
彼は食堂の中を一通り見渡したが、カミラの姿は見当たらなかった。普段から皆と食事をとっていないのかと彼は疑問に思い、考えるうちにジークのところに着いた。彼の隣には3人分の席が空けてある。
「来たか。さあさ、座ってくれ。今から号令をかける」
2人が席に着くと彼は皆に聞こえるように
「皆の者ッ!聞いてくれッ!」
と大きく叫んだ。
それまで賑やかだったその場は徐々に静かになった。
「もう知っている者もいるかもしれないが、今日村に客人が参ったッ ! この廃れた世界で出会えたのも何かの縁だッ!皆で精一杯もてなそうッ!」
そう彼が言うと、人々は盃を掲げ声援をあげた。
「それでは皆の者ッ!神へ感謝して存分に味わって頂いてくれッ!」
皆は号令を聞き終えると目の前の食事を食べ始め、再び話し声が行き交う賑やかな場へと戻った。
「さあ、あんた達も遠慮せず食べてくれ」
「ありがとうございます。じゃあ、いただきます」
そう言われエイジはスプーンを手に取ると、まず目の前のシチューのようなものを掬い、口へと運んだ。
すると、色とりどりのスパイスの香りと溶け出した野菜の優しい甘味が口一杯に広がり、ルーが1日中空っぽだった胃が驚かないようにじわじわと暖めてくれた。
続いて具材のヤギの肉と思われるものを口に含む。すると、ヤギ肉特有の臭みは全く無く、じっくり煮込んだのか肉は口の中で簡単にホロリとほどけた。しかし、嫌な脂のくどさなどは微塵もなくあっさりとしていて、次の一口を食べるのが待ち遠しく感じた。
「お…美味しい…」
「そうかい、ハハッ そりゃよかった」
「はい…本当に美味しいです」
あまりの美味さに思わず声がこぼれたエイジを見て、ジークは嬉しそうに笑った。
そうやって美味しそうに食べる彼が気になるのか、アイビスはじっとその様子を見つめていた。
それに気づいたジークが優しく尋ねる。
「…気になるのかい?アンドロイドのお嬢ちゃん」
見つめているのがバレたアイビスは少し恥ずかしそうに答えた。
「…はい。食事を必要としないアンドロイドの私には味覚が無く、口に含んでも栄養素などの情報でしか感じることが出来ません。したがって、"美味しい"とは何なのか分からないのです。ですが…あまりにそう仰るので少し気になって」
そう聞いたジークは少しニヤっとして言った。
「一口食べてみたらどうだい?」
「いえ…食事をするように体が作られていないので、飲み込んでも消化されずに後で廃棄してしまうことになります…せっかくの貴重な料理が勿体ありません」
「別に構わないさ。ここは食糧に困ってない。それに、たとえそこらに廃棄しても自然の生き物の糧になるし、畑に廃棄すれば肥料にもなる。俺達も…どうしても残ってしまった食事はそうしてる。自然全体で見れば決して無駄になんかならないさ」
ジークはアイビスの目を見て優しくそう言った。
「アイビス…ジークさんもそう言ってくれてる…一口だけ食べてみたらどうだ ? 」
「……分かりました。では…一口だけ」
アイビスはそう言うとスプーンを手に取りシチューを掬い、恐る恐る口に含む。
「……どうだ?」
気になって身を乗り上げて聞くジークに、シチューを飲み込んだアイビスが答える。
「……申し訳ありません。やっぱり味は分かりません…ですが…」
「ですが ?」
言葉の先が気になってジークが食いぎみに聞いた。
「ですが…皆さんとこうして食卓を囲んで食べたら…なぜかこう…胸の辺りがなんだか温かく感じます……これはなんでしょうか ?」
ジークは笑みを浮かべて答えた。
「なぁに…それも、"美味しい"の一つさ」
「…これも、"美味しい"なのですか?」
「ああ、そうさ。たとえ味のしない料理でも、皆で笑いあって食べれば美味しく感じるんだ。食べ物ってのはそういうもんなのさ」
「そうなのですか…"美味しい"とは…不思議なものですね」
"美味しい"の全容はまだまだつかめなかった。しかし、この胸の温もりはきっと大事なものなのだとアイビスは感じた。
その後しばらく何気ない会話を交わした後、エイジは先程アイビスと話していた質問のことを思い出した。
「すいません、ジークさん。すこし聞きたいことがあるんですが、いいですか ? 」
「ああ、いいとも。なんだ?」
「その…俺たち実はある者を探して旅してて…」
「ほぉ…ある者?」
「はい…その…"黒衣"を纏ったアンドロイド"に見覚えはありませんか ?」
その質問をした瞬間、さっきまで笑っていたジークの表情が途端に険しくなった。
「黒衣のアンドロイド…あんた…知ってるのか ? 奴らのことを…」
さっきより明らかにトーンが落ちたその声にエイジは少し動揺し、固唾を飲んだ。
「…奴ら ? 」
「…"鴉"じゃよ……」
エイジの向かいに座っていた老人が会話を聞いていたらしく、いきなり呟くようにそう言い、そのまま続ける。
「…奴らは決まった朝に群れをなして現れ、ワシら残りものをついばみに来るんじゃ。一体誰の差し金かは知らんがのぉ」
老人の話には比喩ばかりで掴み所がなく、エイジは"鴉"が何なのか分からない様子だった。
その様子を見てジークが詳しく話し始める。
「実は…半年ほど前からここは奴らに度々襲撃を受けてるんだ。奴らは1ヶ月に一度、決まった日の朝に徒党を組んでここを襲いに来る。真っ黒な体に…細い足…くちばしのようなマスクを着けたアンドロイドども。奴らは言葉を話さず…ただ不気味な鳴き声をあげるだけ。その見た目や習性から、村の皆はは"鴉"と呼んでる」
「…どうやら、俺達の追っている者とは違うようです。くちばしなんて無いし足も細くない、何よりやつは言葉を発していた…」
「そうかい…なら別物とみていいな…」
「…それで、その"鴉"というのは次はいつ来るんですか?」
ジークは神妙な面持ちで答える。
「…3日後の朝さ…」
「3日後?」
「ああ、正直あんた達はタイミングが悪い。それまでにはここを去った方がいい。奴らは見境なく人を襲い殺すからな」
「…ジークさん、あなた達はどうするんですか?」
「…わからない…奴らはいつも時間が経つといなくなる…今までその時間まで何とか隠れて耐えてきた…ただ……奴らは来る度に数を増していってる…前回は40体ほどだったか…次は何体まで増えるか分からない。…全員殺されるのも時間の問題だ」
「そんな…」
「というわけで、3日後の朝までにはここを出るようにな。あんた達を巻き込むわけには行かない」
どうすればいいか分からずエイジは黙ってしまった。
たとえ荒廃した世界になろうとも、何者かの悪意は蔓延っていた。それを知り、彼は何とも言えない複雑な心境となった。
ジークは腕時計を確認し、時間の経過に少し驚きながら言った。
「…おっと、もうこんな時間か。今日はもうお開きとしよう。片付けは全てやっておくから先に宿に帰っていいぞ。寝るときは寝袋が置いてあるからそれを使ってくれ。それじゃあ、また明日」
「…ありがとうございます。じゃあ…また明日…」
そう言って席を立ち、料理を作ってくれた人達に礼をした後2人は食堂を出た。
相変わらず冷たい風が体を襲うが、そんなことがどうでもよくなるほどエイジは頭の中で必死に考えていた。
優しくしてくれた村の人々に、何か自分にできることはないかと思考を巡らせながら来た道をたどり宿へと戻ってきた。
そして、白衣を脱いだあと、寝袋を出して中に入る。
しかし、頭の中は依然モヤモヤとしていてとても眠れる状況ではなかった。
宿のなかにはアイビスのために用意してくれたのか寝袋がもうひとつあったが、睡眠を必要としない彼女はそれを使わずに、寝袋に入ったエイジの横に座り込んでいる。
そのまましばらく静かな時間が続いた後、アイビスがエイジを呼ぶ声が聞こえた。
「ご主人様…起きていますか?」
「…ああ、起きてる」
「…聞いてください……恐らく、私は戦闘を前提に設計されているようです。初期装備の中に武器と思わしきものがございます。それと、戦闘を行う上で役立つソフトウェアも数種類備えてあるようです」
「…どうやら俺達は同じことを考えたみたいだな」
「はい。私はただ、こんなによくしてくれている方々への恩返しがしたいのです」
「ああ、俺もだ………戦おう。そうだ、相手はアンドロイドだ。俺の培ってきた知識を元に戦術を練れば、きっと勝てる。ただ…それにはアイビス…お前の助力が必要だ」
「はい。任せてください」
「…それに、俺の追ってる奴と鴉とやらは別物のようだが少し似ている部分がある…同じ組織の元に動いている可能性も捨てきれない。だから、倒した鴉を分解して解析すればもしかしたら奴を追う手がかりが見つかるかもしれない」
「はい。仇に迫る絶好の機会となり得るかもしれません」
「よし…決まりだ。俺たちで必ずこの村を救ってみせる。詳しい作戦については明日考えることにしよう。今日はもう寝る。おやすみ、アイビス」
「はい。お休みなさいませ、ご主人様」
村の人々のために戦うことを心に決め、彼は1日を終え夢の世界へと入っていった。
ーー鴉の襲撃まで残りあと3日
3つ並んだ大きくて長いテーブルの上には村で採れた食材で作った料理が置かれていて、それらを囲むように多くの人々が座っている。
それぞれが思い思いに会話をしており、随分賑やかな場所となっていた。
「村の皆が集まってるのか…凄いな」
しばらく立ち尽くしていると、2人の姿に気づいたジークが置くの方の席から手を振った。
「おーい、2人ともこっちだッ!」
周りの声にかき消され無いようにジークは大声を張り上げた。
それに気づいたエイジは会釈で返し、彼の席の方へと歩き出した。
見慣れない2人がいることに気づいた村の人がジロジロと見てきていた。
「すいません。ちょっと通ります」
エイジはそう言い、席と席の間の通路を通り抜け進んでいく。
彼は食堂の中を一通り見渡したが、カミラの姿は見当たらなかった。普段から皆と食事をとっていないのかと彼は疑問に思い、考えるうちにジークのところに着いた。彼の隣には3人分の席が空けてある。
「来たか。さあさ、座ってくれ。今から号令をかける」
2人が席に着くと彼は皆に聞こえるように
「皆の者ッ!聞いてくれッ!」
と大きく叫んだ。
それまで賑やかだったその場は徐々に静かになった。
「もう知っている者もいるかもしれないが、今日村に客人が参ったッ ! この廃れた世界で出会えたのも何かの縁だッ!皆で精一杯もてなそうッ!」
そう彼が言うと、人々は盃を掲げ声援をあげた。
「それでは皆の者ッ!神へ感謝して存分に味わって頂いてくれッ!」
皆は号令を聞き終えると目の前の食事を食べ始め、再び話し声が行き交う賑やかな場へと戻った。
「さあ、あんた達も遠慮せず食べてくれ」
「ありがとうございます。じゃあ、いただきます」
そう言われエイジはスプーンを手に取ると、まず目の前のシチューのようなものを掬い、口へと運んだ。
すると、色とりどりのスパイスの香りと溶け出した野菜の優しい甘味が口一杯に広がり、ルーが1日中空っぽだった胃が驚かないようにじわじわと暖めてくれた。
続いて具材のヤギの肉と思われるものを口に含む。すると、ヤギ肉特有の臭みは全く無く、じっくり煮込んだのか肉は口の中で簡単にホロリとほどけた。しかし、嫌な脂のくどさなどは微塵もなくあっさりとしていて、次の一口を食べるのが待ち遠しく感じた。
「お…美味しい…」
「そうかい、ハハッ そりゃよかった」
「はい…本当に美味しいです」
あまりの美味さに思わず声がこぼれたエイジを見て、ジークは嬉しそうに笑った。
そうやって美味しそうに食べる彼が気になるのか、アイビスはじっとその様子を見つめていた。
それに気づいたジークが優しく尋ねる。
「…気になるのかい?アンドロイドのお嬢ちゃん」
見つめているのがバレたアイビスは少し恥ずかしそうに答えた。
「…はい。食事を必要としないアンドロイドの私には味覚が無く、口に含んでも栄養素などの情報でしか感じることが出来ません。したがって、"美味しい"とは何なのか分からないのです。ですが…あまりにそう仰るので少し気になって」
そう聞いたジークは少しニヤっとして言った。
「一口食べてみたらどうだい?」
「いえ…食事をするように体が作られていないので、飲み込んでも消化されずに後で廃棄してしまうことになります…せっかくの貴重な料理が勿体ありません」
「別に構わないさ。ここは食糧に困ってない。それに、たとえそこらに廃棄しても自然の生き物の糧になるし、畑に廃棄すれば肥料にもなる。俺達も…どうしても残ってしまった食事はそうしてる。自然全体で見れば決して無駄になんかならないさ」
ジークはアイビスの目を見て優しくそう言った。
「アイビス…ジークさんもそう言ってくれてる…一口だけ食べてみたらどうだ ? 」
「……分かりました。では…一口だけ」
アイビスはそう言うとスプーンを手に取りシチューを掬い、恐る恐る口に含む。
「……どうだ?」
気になって身を乗り上げて聞くジークに、シチューを飲み込んだアイビスが答える。
「……申し訳ありません。やっぱり味は分かりません…ですが…」
「ですが ?」
言葉の先が気になってジークが食いぎみに聞いた。
「ですが…皆さんとこうして食卓を囲んで食べたら…なぜかこう…胸の辺りがなんだか温かく感じます……これはなんでしょうか ?」
ジークは笑みを浮かべて答えた。
「なぁに…それも、"美味しい"の一つさ」
「…これも、"美味しい"なのですか?」
「ああ、そうさ。たとえ味のしない料理でも、皆で笑いあって食べれば美味しく感じるんだ。食べ物ってのはそういうもんなのさ」
「そうなのですか…"美味しい"とは…不思議なものですね」
"美味しい"の全容はまだまだつかめなかった。しかし、この胸の温もりはきっと大事なものなのだとアイビスは感じた。
その後しばらく何気ない会話を交わした後、エイジは先程アイビスと話していた質問のことを思い出した。
「すいません、ジークさん。すこし聞きたいことがあるんですが、いいですか ? 」
「ああ、いいとも。なんだ?」
「その…俺たち実はある者を探して旅してて…」
「ほぉ…ある者?」
「はい…その…"黒衣"を纏ったアンドロイド"に見覚えはありませんか ?」
その質問をした瞬間、さっきまで笑っていたジークの表情が途端に険しくなった。
「黒衣のアンドロイド…あんた…知ってるのか ? 奴らのことを…」
さっきより明らかにトーンが落ちたその声にエイジは少し動揺し、固唾を飲んだ。
「…奴ら ? 」
「…"鴉"じゃよ……」
エイジの向かいに座っていた老人が会話を聞いていたらしく、いきなり呟くようにそう言い、そのまま続ける。
「…奴らは決まった朝に群れをなして現れ、ワシら残りものをついばみに来るんじゃ。一体誰の差し金かは知らんがのぉ」
老人の話には比喩ばかりで掴み所がなく、エイジは"鴉"が何なのか分からない様子だった。
その様子を見てジークが詳しく話し始める。
「実は…半年ほど前からここは奴らに度々襲撃を受けてるんだ。奴らは1ヶ月に一度、決まった日の朝に徒党を組んでここを襲いに来る。真っ黒な体に…細い足…くちばしのようなマスクを着けたアンドロイドども。奴らは言葉を話さず…ただ不気味な鳴き声をあげるだけ。その見た目や習性から、村の皆はは"鴉"と呼んでる」
「…どうやら、俺達の追っている者とは違うようです。くちばしなんて無いし足も細くない、何よりやつは言葉を発していた…」
「そうかい…なら別物とみていいな…」
「…それで、その"鴉"というのは次はいつ来るんですか?」
ジークは神妙な面持ちで答える。
「…3日後の朝さ…」
「3日後?」
「ああ、正直あんた達はタイミングが悪い。それまでにはここを去った方がいい。奴らは見境なく人を襲い殺すからな」
「…ジークさん、あなた達はどうするんですか?」
「…わからない…奴らはいつも時間が経つといなくなる…今までその時間まで何とか隠れて耐えてきた…ただ……奴らは来る度に数を増していってる…前回は40体ほどだったか…次は何体まで増えるか分からない。…全員殺されるのも時間の問題だ」
「そんな…」
「というわけで、3日後の朝までにはここを出るようにな。あんた達を巻き込むわけには行かない」
どうすればいいか分からずエイジは黙ってしまった。
たとえ荒廃した世界になろうとも、何者かの悪意は蔓延っていた。それを知り、彼は何とも言えない複雑な心境となった。
ジークは腕時計を確認し、時間の経過に少し驚きながら言った。
「…おっと、もうこんな時間か。今日はもうお開きとしよう。片付けは全てやっておくから先に宿に帰っていいぞ。寝るときは寝袋が置いてあるからそれを使ってくれ。それじゃあ、また明日」
「…ありがとうございます。じゃあ…また明日…」
そう言って席を立ち、料理を作ってくれた人達に礼をした後2人は食堂を出た。
相変わらず冷たい風が体を襲うが、そんなことがどうでもよくなるほどエイジは頭の中で必死に考えていた。
優しくしてくれた村の人々に、何か自分にできることはないかと思考を巡らせながら来た道をたどり宿へと戻ってきた。
そして、白衣を脱いだあと、寝袋を出して中に入る。
しかし、頭の中は依然モヤモヤとしていてとても眠れる状況ではなかった。
宿のなかにはアイビスのために用意してくれたのか寝袋がもうひとつあったが、睡眠を必要としない彼女はそれを使わずに、寝袋に入ったエイジの横に座り込んでいる。
そのまましばらく静かな時間が続いた後、アイビスがエイジを呼ぶ声が聞こえた。
「ご主人様…起きていますか?」
「…ああ、起きてる」
「…聞いてください……恐らく、私は戦闘を前提に設計されているようです。初期装備の中に武器と思わしきものがございます。それと、戦闘を行う上で役立つソフトウェアも数種類備えてあるようです」
「…どうやら俺達は同じことを考えたみたいだな」
「はい。私はただ、こんなによくしてくれている方々への恩返しがしたいのです」
「ああ、俺もだ………戦おう。そうだ、相手はアンドロイドだ。俺の培ってきた知識を元に戦術を練れば、きっと勝てる。ただ…それにはアイビス…お前の助力が必要だ」
「はい。任せてください」
「…それに、俺の追ってる奴と鴉とやらは別物のようだが少し似ている部分がある…同じ組織の元に動いている可能性も捨てきれない。だから、倒した鴉を分解して解析すればもしかしたら奴を追う手がかりが見つかるかもしれない」
「はい。仇に迫る絶好の機会となり得るかもしれません」
「よし…決まりだ。俺たちで必ずこの村を救ってみせる。詳しい作戦については明日考えることにしよう。今日はもう寝る。おやすみ、アイビス」
「はい。お休みなさいませ、ご主人様」
村の人々のために戦うことを心に決め、彼は1日を終え夢の世界へと入っていった。
ーー鴉の襲撃まで残りあと3日
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