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第二章 第二部
領主邸の建て直し
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「お前様、代官邸はどうじゃった?」
マリアンに正面から飛びつかれてキスをされた。お返しに抱き上げてクルクル回る。新婚かな?
新婚だね。
家はマリアンだけだった。一足先に夕食の準備に戻ったらしい。
「うん、かなり傷んでいたから建て直すことにした。明日また行って建て直すつもりだけど、マリアンも手伝ってくれる?」
「もちろんじゃ。また夫婦の共同作業じゃのう」
先日の一件以来、マリアンのテンションが高い。彼女はとんでもなく長い時間を生きてきた。人里に下りることはあったけど、こうやって人と一緒に暮らすことまではしていなかったそうだから、今が楽しいのだとか。さすがに妻になりたいと言った時はびっくりしたけど。
そして今まで距離を置いていたからか、あれからスキンシップがすごい。「頑張って励むから」と言っていた通り、夜の頑張りがすごかった。「ワシは尽くす女じゃぞ」と言っていたけど、尽くすというか吸い尽くす勢いだった。
「カローラにも声をかけるつもりだけど、それでもいい?」
「もちろんじゃ」
夕食の時にみんなで近況報告。店の方は順調。クレープ屋も順調。
「カローラ、明日領主邸を建てるから、それを手伝ってほしいんだけど、仕事は大丈夫そう?」
「はい、大丈夫です。みなさん物覚えがいいですので」
「ギルドから応援が来ていますから、いずれ私たちがいなくなっても大丈夫ですよ。それはそれで寂しいですけど」
「マイカが言ったように応援が来てくれているなら、いずれあの店は公営という形にしてもいいと思う。在庫のチェックとかをするために、みんなが交代で店に入ってもいいと思うけどね」
「他にクレープ屋をしたいという人が出始めましたので、基本のレシピを教えました。その中の一人はコンロ型の魔道具を持っているそうで、それを使うと言っていましたねぇ」
「領主夫人が屋台でクレープを焼くのはギルドとしてはどうなんだろ?」
「旦那様、マノンさんの戦う力は問題ないでしょう。ですが領主夫人が人前でものを売ることについてのギルドの不安を考えるなら、屋台での販売はいずれはやめた方がいいと思います。むしろ飲食店を経営するのはいかがでしょうか?」
「いいですねぇ。おしゃれな飲食店」
「じゃあマノン、そのあたりも順番に考えていこうか」
「セラとキラは接客は慣れてきた?」
「慣れてきたと思いますが、クレープを作る方が好きです。でも接客も嫌ではないですよ?」
「私も調理の方が楽しい」
「二人は飲食店をするなら厨房に入ってもらってもいいかもね。ところで、リゼッタとカロリッタは?」
「もりへいくっていってたよ」
「じゃあ、後で甘いものを準備しておくか」
リゼッタは僕がやりやすいように先回りして準備してくれるからね。たまにやり過ぎるけど。カロリッタは付き合わされたんだろう。
大森林に置いた魔素吸引丸太から専用の異空間には魔素が貯められ続けている。現在はとんでもない量になっている。異空間だから外には影響はないけどね。
カローラが改良してくれた自動移動型の魔素吸引丸太は勝手に魔素が多いところまで転がっていくし、それぞれが距離を保つようになっているから一ヶ所に固まる心配もない。
それでも移動には時間がかかるから、ある程度奥まで移動してから置く必要がある。そのついでに危険そうな魔獣を狩って、売っても大丈夫なものは冒険者ギルドで売却するというのが最近の二人。最初の頃は店や屋台の手伝いをしていたけど、スタッフが増えたから別行動を取り始めた。だからたまに夕食に遅れることもある。
夕食後、僕はカステラを作ることにした。おそらくこの国では作られていないと思う。パウンドケーキと似ているといえば似ているかな。
使うのは卵四個、小麦粉と砂糖が一〇〇グラム、水飴と蜂蜜と植物油が大さじ二。小麦粉は強力粉がいいけど、薄力粉でもできなくはない。ただしふかふかになる。ザラメは使っていない。
小麦粉はふるいにかけておく。
卵を割ってよく混ぜる。
砂糖を入れてよく混ぜる。
水飴と蜂蜜と植物油を入れてよく混ぜる。
小麦粉を三回に分けて混ぜる。混ぜすぎないように。
型に流し入れ、一八〇度で予熱したオーブンで一〇分程度焼く。
温度を下げて三〇分程度焼く。
卵黄と卵白に分ける作り方もあるし、牛乳を入れたり、水飴の代わりにみりんを入れたりする作り方もある。それなりに高価な食材が使われているから、この国ではあまり一般的ではないだろう。一本焼くならそれなりに高くなるけど、カットすればお店で出しても大丈夫かな?
「ただいま戻りました」
「戻りました~」
「お帰り、二人とも。お菓子を焼いたから、先に食事を済ませてね」
「はい」
「はい~」
「それでこのカステラは何ですか? ものすごく美味しいですね」
「マスターの優しさが~お腹の奥の奥までが染みます~」
「領主の妻が道で屋台を出すというのは問題があるだろうから、いずれは店にするのもありだと思ってね。そこでお菓子を出すならカステラもどうかなと思っただけ。シンプルだけど高い素材を使うからね」
「高級感を出すお店でしょうか。それなら納得できます」
「ちょっと背伸びした感じでしょうか~」
そう。屋台のクレープは、他の屋台よりもちょっと高いけど美味しいという位置づけ。もし飲食店をするなら、他の店よりも高いけど美味しい、という位置づけにしたい。でも料理を出すと他の飲食店に影響が出るかもしれないから、出すとすれば軽食と喫茶かなと思っている。
◆ ◆ ◆
「では今から使用人寮を建てます」
三人でどうやって建てるのかが気になるのか、使用人のみんなが集まっている。
「僕が基礎と骨格を作るから、マリアンとカローラは窓や建具をお願い」
「分かった」
「分かりました」
まずは地面を均して、さらに一段上げる。基礎とは言っても魔法で固定するから厳密には基礎は必要ないので、通風のためだけかな?
その上にマジックバッグから建材を取り出していく、骨格は砂や土を魔法で石のように固めたもの。石を砕いて砂や土にできるのなら、砂や土を固めれば石にできる。これを板状に加工しておき、これを並べて接合する。異世界版プレハブ工法と言うべきかPC工法と言うべきか。
異空間の家とは違って排水を考えないといけない。温泉旅館と同じように、汚水は[浄化]と[分解]で無害にしてから地面に返す。そのまま流すと地下水に影響が出るからね。そのための配管を壁の隙間に通す。
このような無茶ができるのは、この三人が[魔力紐]や[魔力手]を使えるから。ふわふわと浮きながら、床、壁、天井、屋根、と組み立てていく。長さが余れば切ればいい。
窓を付けるところはくり抜いて、窓枠をはめ込んで固定する。三階建てにしたので、最上階だけは屋根にも窓を付け、星空を眺めることができるようにした。外壁は漆喰を塗って乾燥させる。
内部は板張りにする。うちの家とは違って靴のままは入るから、玄関のところで土を落とせるようにする。階段に手すりを付け、壁や天井には断熱の意味も持たせた漆喰を塗って乾燥させる。
個室は日本式の1LDKで、そこにお風呂とトイレを設置した。個室にお風呂やトイレを設置したのは、門衛四人の生活時間がそれぞれ違うので、個室の中の方が楽だろうと思ったからだ。窓枠の上にはカーテンレールを付けたから、カーテンは自分の好みのものを付けてもらえばいいかな。
そして玄関と廊下と個室の各所に照明を取り付ける。真っ暗にならないように、うっすらと光る照明も取り付けておく。
「お前様、屋根は終わったぞ」
「ご主人様、窓のひさしなどはあれでいいでしょうか?」
「二人ともご苦労様」
後ろを見ると、使用人のみんながポカーンとした顔で使用人寮を見ている。
「では次は本館の方を建てます。荷物を片付けますね」
「はい、玄関横の部屋に集めてあります」
昨日頼んでおいた通り、この建物にあるものはすべてこの部屋にまとめられていた。すべてマジックバッグに入れたら建物を解体する。
「それじゃあ、さっきと同じように建てるから」
「分かった」
「分かりました」
◆ ◆ ◆
執事のイェルンと門衛のレンスには奥さんがいることが分かったので、それぞれ家を用意することにした。二人とも通いで働いていたけど、奥さんが近くにいる方がいいだろう。一応奥さんに引っ越しについて聞いてもらうことにした。
フランカも通いだけど、旦那さんが衛兵をしているので、今の家で大丈夫だということだった。
結果としてはイェルンとレンスは領主邸の敷地に作った家に引っ越すことになった。イェルンは子供たちは独立しているので奥さんのイレーナだけ、レンスは奥さんのヤコミナと双子の娘カリンとリーセを連れて引っ越してきた。
レンスの娘はミシェルと同じくらいだから。仲良くなってくれるといいね。
そこまで考えて、異空間の家をどうするかということになった。領主としてこの町で暮らすことを考えれば、あの家はあまり使わなくなる。でもなくしてしまうのはもったいないから別荘として使うことになった。そして畑や森は実験農場としての働きもあるから、なくすのは難しい。
「図書室は領主邸にそのまま移してほしいです」
「そうだね。衣装室もそのまま移すね」
「厨房はほぼ同じですので問題ありません」
「サランたちはどうしますか~?」
「いずれはあの異空間と領主邸を繋いで、移動しやすいようにしようか。馬たちもそれでいいと思う。基本は向こうにいてもらうけどね」
「はちはむり?」
「蜂ねえ。敷地内にちょっとした藪があるから、その木でも大丈夫なさそうなら一部に移ってもらうのもありだけど、こっちの環境に適合できるかだよね」
異空間は魔素や魔力を細かく調整できるけど、さすがに領主邸の周辺ではそれは難しいと思うんだけど。
「ご主人様、管理者なら地上世界でもある程度は調整できますよ」
「え? そうなの?」
「はい。要領は同じです」
「それなら、特定の場所の魔素を調整したりできるの?」
「はい、できます。ただし範囲は広くありませんので、大森林の魔素を減らすのは無理です。せいぜい家の敷地くらいの範囲です」
「それでも調整が可能ならありがたいね」
それぞれの村で作ってもらおうと思っている果物や砂糖の元になるサトウキビも、収穫量が増えれば手に入りやすくなるからね。もちろん無茶なことをして経済を崩壊させるようなことはしないよ。
「そろそろ商人ギルド経由でそれぞれの村に連絡をしようと思う。みんなもコロコロと環境が変わって大変だと思うけど、店と屋台の方をよろしくね」
マリアンに正面から飛びつかれてキスをされた。お返しに抱き上げてクルクル回る。新婚かな?
新婚だね。
家はマリアンだけだった。一足先に夕食の準備に戻ったらしい。
「うん、かなり傷んでいたから建て直すことにした。明日また行って建て直すつもりだけど、マリアンも手伝ってくれる?」
「もちろんじゃ。また夫婦の共同作業じゃのう」
先日の一件以来、マリアンのテンションが高い。彼女はとんでもなく長い時間を生きてきた。人里に下りることはあったけど、こうやって人と一緒に暮らすことまではしていなかったそうだから、今が楽しいのだとか。さすがに妻になりたいと言った時はびっくりしたけど。
そして今まで距離を置いていたからか、あれからスキンシップがすごい。「頑張って励むから」と言っていた通り、夜の頑張りがすごかった。「ワシは尽くす女じゃぞ」と言っていたけど、尽くすというか吸い尽くす勢いだった。
「カローラにも声をかけるつもりだけど、それでもいい?」
「もちろんじゃ」
夕食の時にみんなで近況報告。店の方は順調。クレープ屋も順調。
「カローラ、明日領主邸を建てるから、それを手伝ってほしいんだけど、仕事は大丈夫そう?」
「はい、大丈夫です。みなさん物覚えがいいですので」
「ギルドから応援が来ていますから、いずれ私たちがいなくなっても大丈夫ですよ。それはそれで寂しいですけど」
「マイカが言ったように応援が来てくれているなら、いずれあの店は公営という形にしてもいいと思う。在庫のチェックとかをするために、みんなが交代で店に入ってもいいと思うけどね」
「他にクレープ屋をしたいという人が出始めましたので、基本のレシピを教えました。その中の一人はコンロ型の魔道具を持っているそうで、それを使うと言っていましたねぇ」
「領主夫人が屋台でクレープを焼くのはギルドとしてはどうなんだろ?」
「旦那様、マノンさんの戦う力は問題ないでしょう。ですが領主夫人が人前でものを売ることについてのギルドの不安を考えるなら、屋台での販売はいずれはやめた方がいいと思います。むしろ飲食店を経営するのはいかがでしょうか?」
「いいですねぇ。おしゃれな飲食店」
「じゃあマノン、そのあたりも順番に考えていこうか」
「セラとキラは接客は慣れてきた?」
「慣れてきたと思いますが、クレープを作る方が好きです。でも接客も嫌ではないですよ?」
「私も調理の方が楽しい」
「二人は飲食店をするなら厨房に入ってもらってもいいかもね。ところで、リゼッタとカロリッタは?」
「もりへいくっていってたよ」
「じゃあ、後で甘いものを準備しておくか」
リゼッタは僕がやりやすいように先回りして準備してくれるからね。たまにやり過ぎるけど。カロリッタは付き合わされたんだろう。
大森林に置いた魔素吸引丸太から専用の異空間には魔素が貯められ続けている。現在はとんでもない量になっている。異空間だから外には影響はないけどね。
カローラが改良してくれた自動移動型の魔素吸引丸太は勝手に魔素が多いところまで転がっていくし、それぞれが距離を保つようになっているから一ヶ所に固まる心配もない。
それでも移動には時間がかかるから、ある程度奥まで移動してから置く必要がある。そのついでに危険そうな魔獣を狩って、売っても大丈夫なものは冒険者ギルドで売却するというのが最近の二人。最初の頃は店や屋台の手伝いをしていたけど、スタッフが増えたから別行動を取り始めた。だからたまに夕食に遅れることもある。
夕食後、僕はカステラを作ることにした。おそらくこの国では作られていないと思う。パウンドケーキと似ているといえば似ているかな。
使うのは卵四個、小麦粉と砂糖が一〇〇グラム、水飴と蜂蜜と植物油が大さじ二。小麦粉は強力粉がいいけど、薄力粉でもできなくはない。ただしふかふかになる。ザラメは使っていない。
小麦粉はふるいにかけておく。
卵を割ってよく混ぜる。
砂糖を入れてよく混ぜる。
水飴と蜂蜜と植物油を入れてよく混ぜる。
小麦粉を三回に分けて混ぜる。混ぜすぎないように。
型に流し入れ、一八〇度で予熱したオーブンで一〇分程度焼く。
温度を下げて三〇分程度焼く。
卵黄と卵白に分ける作り方もあるし、牛乳を入れたり、水飴の代わりにみりんを入れたりする作り方もある。それなりに高価な食材が使われているから、この国ではあまり一般的ではないだろう。一本焼くならそれなりに高くなるけど、カットすればお店で出しても大丈夫かな?
「ただいま戻りました」
「戻りました~」
「お帰り、二人とも。お菓子を焼いたから、先に食事を済ませてね」
「はい」
「はい~」
「それでこのカステラは何ですか? ものすごく美味しいですね」
「マスターの優しさが~お腹の奥の奥までが染みます~」
「領主の妻が道で屋台を出すというのは問題があるだろうから、いずれは店にするのもありだと思ってね。そこでお菓子を出すならカステラもどうかなと思っただけ。シンプルだけど高い素材を使うからね」
「高級感を出すお店でしょうか。それなら納得できます」
「ちょっと背伸びした感じでしょうか~」
そう。屋台のクレープは、他の屋台よりもちょっと高いけど美味しいという位置づけ。もし飲食店をするなら、他の店よりも高いけど美味しい、という位置づけにしたい。でも料理を出すと他の飲食店に影響が出るかもしれないから、出すとすれば軽食と喫茶かなと思っている。
◆ ◆ ◆
「では今から使用人寮を建てます」
三人でどうやって建てるのかが気になるのか、使用人のみんなが集まっている。
「僕が基礎と骨格を作るから、マリアンとカローラは窓や建具をお願い」
「分かった」
「分かりました」
まずは地面を均して、さらに一段上げる。基礎とは言っても魔法で固定するから厳密には基礎は必要ないので、通風のためだけかな?
その上にマジックバッグから建材を取り出していく、骨格は砂や土を魔法で石のように固めたもの。石を砕いて砂や土にできるのなら、砂や土を固めれば石にできる。これを板状に加工しておき、これを並べて接合する。異世界版プレハブ工法と言うべきかPC工法と言うべきか。
異空間の家とは違って排水を考えないといけない。温泉旅館と同じように、汚水は[浄化]と[分解]で無害にしてから地面に返す。そのまま流すと地下水に影響が出るからね。そのための配管を壁の隙間に通す。
このような無茶ができるのは、この三人が[魔力紐]や[魔力手]を使えるから。ふわふわと浮きながら、床、壁、天井、屋根、と組み立てていく。長さが余れば切ればいい。
窓を付けるところはくり抜いて、窓枠をはめ込んで固定する。三階建てにしたので、最上階だけは屋根にも窓を付け、星空を眺めることができるようにした。外壁は漆喰を塗って乾燥させる。
内部は板張りにする。うちの家とは違って靴のままは入るから、玄関のところで土を落とせるようにする。階段に手すりを付け、壁や天井には断熱の意味も持たせた漆喰を塗って乾燥させる。
個室は日本式の1LDKで、そこにお風呂とトイレを設置した。個室にお風呂やトイレを設置したのは、門衛四人の生活時間がそれぞれ違うので、個室の中の方が楽だろうと思ったからだ。窓枠の上にはカーテンレールを付けたから、カーテンは自分の好みのものを付けてもらえばいいかな。
そして玄関と廊下と個室の各所に照明を取り付ける。真っ暗にならないように、うっすらと光る照明も取り付けておく。
「お前様、屋根は終わったぞ」
「ご主人様、窓のひさしなどはあれでいいでしょうか?」
「二人ともご苦労様」
後ろを見ると、使用人のみんながポカーンとした顔で使用人寮を見ている。
「では次は本館の方を建てます。荷物を片付けますね」
「はい、玄関横の部屋に集めてあります」
昨日頼んでおいた通り、この建物にあるものはすべてこの部屋にまとめられていた。すべてマジックバッグに入れたら建物を解体する。
「それじゃあ、さっきと同じように建てるから」
「分かった」
「分かりました」
◆ ◆ ◆
執事のイェルンと門衛のレンスには奥さんがいることが分かったので、それぞれ家を用意することにした。二人とも通いで働いていたけど、奥さんが近くにいる方がいいだろう。一応奥さんに引っ越しについて聞いてもらうことにした。
フランカも通いだけど、旦那さんが衛兵をしているので、今の家で大丈夫だということだった。
結果としてはイェルンとレンスは領主邸の敷地に作った家に引っ越すことになった。イェルンは子供たちは独立しているので奥さんのイレーナだけ、レンスは奥さんのヤコミナと双子の娘カリンとリーセを連れて引っ越してきた。
レンスの娘はミシェルと同じくらいだから。仲良くなってくれるといいね。
そこまで考えて、異空間の家をどうするかということになった。領主としてこの町で暮らすことを考えれば、あの家はあまり使わなくなる。でもなくしてしまうのはもったいないから別荘として使うことになった。そして畑や森は実験農場としての働きもあるから、なくすのは難しい。
「図書室は領主邸にそのまま移してほしいです」
「そうだね。衣装室もそのまま移すね」
「厨房はほぼ同じですので問題ありません」
「サランたちはどうしますか~?」
「いずれはあの異空間と領主邸を繋いで、移動しやすいようにしようか。馬たちもそれでいいと思う。基本は向こうにいてもらうけどね」
「はちはむり?」
「蜂ねえ。敷地内にちょっとした藪があるから、その木でも大丈夫なさそうなら一部に移ってもらうのもありだけど、こっちの環境に適合できるかだよね」
異空間は魔素や魔力を細かく調整できるけど、さすがに領主邸の周辺ではそれは難しいと思うんだけど。
「ご主人様、管理者なら地上世界でもある程度は調整できますよ」
「え? そうなの?」
「はい。要領は同じです」
「それなら、特定の場所の魔素を調整したりできるの?」
「はい、できます。ただし範囲は広くありませんので、大森林の魔素を減らすのは無理です。せいぜい家の敷地くらいの範囲です」
「それでも調整が可能ならありがたいね」
それぞれの村で作ってもらおうと思っている果物や砂糖の元になるサトウキビも、収穫量が増えれば手に入りやすくなるからね。もちろん無茶なことをして経済を崩壊させるようなことはしないよ。
「そろそろ商人ギルド経由でそれぞれの村に連絡をしようと思う。みんなもコロコロと環境が変わって大変だと思うけど、店と屋台の方をよろしくね」
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