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第二章 第一部
休暇、そして訓練施設
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昨日は大変だった……とりあえず[浄化]で体をきれいにしてから気分転換に朝風呂に来ている。
[浄化]できれいになっているけど、気分的に石鹸を泡立てて頭と体を洗う。洗っていたらサランが入ってきた。サランはフリーパスになっている。そもそも[潜入]とかあるしね。
《閣下、お疲れ様です》
「サランも昨日はご苦労様」
《いやー、あのカローラ様はなかなかお強い方ですね》
「あ……ああ、まあ、ね」
サランがお疲れ様と言ったのは夜の方か……。彼女の考え方では、相手を屈服させた方が立場が上だそうだ。野生動物だからね。
あれからカローラさんを部屋に連れて行ったらやっぱり抱きつかれた。リゼッタに引き離してもらおうと思ったら、リゼッタは僕ごとカローラさんをベッドの方に引き倒した。
びっくりして何のつもりか聞いたら、「どうやらケネスを自分のものだと思っている節があるので、ここできっちりこの家での立場を覚えてもらいましょう」とリゼッタが言い出した。そのために『告白酒』を飲ませたと。あれは勝手に飲ませたらダメだって、その使い方はおかしいって、スーレ市のヨーナスさんも言ってたよね?
リゼッタの質問、もとい尋問の結果……というか告白酒の効果によって、カローラさんがみんなと仲良くやりたいのは間違いはなかった。でも以前とは違って、僕のことよりも自分の願望を優先してしまっていた。僕がプレゼントやら食事やらを贈ってしまったせいで、欲が出てきたらしい。
カローラさんと再会したリゼッタとカロリッタはそれを敏感に感じ取ってエリーやマイカに相談したそうだ。特にカロリッタは以前のカローラさんの頭の中も分かっているから変化に敏感なんだろう。その前に僕に相談してよ。
そしてカローラさんのこの変化はリゼッタ的には完全にアウト。
リゼッタとしては、僕が平和で穏やかな生活を送るのが一番で、そのためには妻たちが一致団結し、できる限り公平に扱ってもらえるように努力するのが狙いなんだとか。
いつの間にそんな話になったのか分からないけど、そういうことらしい。だからカローラさんが妻になることは問題がなくても、和を乱すことは許されないと。
この前も思ったんだけど、リゼッタはどんどん僕の恋人というか妻を増やす方向で話を進めてるんだよね。そんなに必要ないんだけど、いらないと言えない雰囲気になってるのが現状。それにあえて言うなら全然平和でも穏やかでもない……。
さらに尋問を続けると、カローラさんは年下の男性をとことん甘やしたいという願望があった。そして同時にその甘やかした相手に徹底的にいじめられたいという、本気で聞きたくなかった欲望もあった。
そしてこれはリゼッタ的にはOK。
なんでOKかと聞いたら、僕に不利益がないかららしい。不利益はないけど、利益にもならないと思うんだけど。そんなにいたぶるのが好きに見える?
そんなことを話していて、気付けばまた話がおかしな方に向かった。告白酒だ。リゼッタも飲んだそうだし、時間差で僕も飲まされていたらしい。途中でテーブルのお酒がなくなって、新しく持ってきたビンから注がれたのがそうらしい。前のとは味が違うから安心してたんだけど、告白酒っていっぱい種類があるから、ワイン風味とかエール風味とかもあるらしい。そんなの聞いてないって。
結果としては、三人で本音をぶつけ合った形だ。そしてそれからは流されるままだった。
目が覚めたらまたベッドが大変なことになっていた。それからリゼッタには二度としないようにと注意をし、自分の部屋に返した。そして真っ赤なのか真っ青なのかよく分からない状態で固まって泣いていたカローラさんをなだめてから自分の部屋に戻った。さすがにちょっとやりすぎだ。
それからお風呂に来て、今に至る。
「あー、とりあえず疲れた……数日くらいは家でゆっくりしようと思うし、何かリクエストがあれば言ってね」
《リクエストですか……》
「その顔は何か言いたいことがあるんでしょ?」
《はい。訓練所のようなものを作っていただければと思います》
「どういった施設が必要?」
《そうですね。我々の行動の基本は走ることと跳ぶことですので、それが強化できれば》
「手を使うことはないの?」
《ないわけではないのですが、そこまで腕力があるわけではありません。しかし鍛えられるものなら鍛えたいでありますね》
「じゃあ、脚力メインで、腕力の方もある程度鍛えられるような施設を用意しよう」
《ありがとうございます》
お風呂から上がってキッチンに入る。すでにエリーとマイカがいた。セラとキラはダイニングで座っている。二人とも、ちょっと早いよ。
「旦那様、昨日はすみませんでした」
「あー、まあ、リゼッタがどうしてもって言ったんでしょ? それなら仕方ないって。注意はしておいたけど」
「リゼッタさんって、たまに思い詰めますよね」
「たまにそうなるんだよ。さすがにこういうことは二度としないようにと言っておいたから、次はみんなも止めてよね。でもあの告白酒はどこから出したの?」
「王都で買い物に出た時に、一式まとめて買ってきたそうですよ」
「一式ってなに?」
ミシェルが畑から野菜を持ってきた。もう少しで完成するから、ミシェルにはそのままここにいないメンバーを呼びに行ってもらう。
しばらくするとリゼッタとカロリッタとマリアン、そして最後に無表情のカローラさんもやってきた。
「私のような下等な生き物がみなさんを出し抜こうなどと愚かな考えを持ってしまったことをお許しください」
心が折れてる、折れてる。
「カローラさん、ちょっとこっちに。みんなは先に食事を始めておいて」
リビングの方に連れて行って、なだめておだてて頭を撫でて、なんとか表情が出るくらいまで回復させた。抱きしめるくらいはいいだろう。
そろそろサランたちの訓練所を作ろうかと思ってサランと一緒に家を出たら、カローラさんがおずおずと付いてきた。
「私も見てもいいですか?」
「ええ、どうぞ。面白いかどうかは分かりませんけど」
「普段見ないものばかりですから、どれでも楽しいですよ」
よかった。だいぶ戻ったらしい。
「気分は大丈夫ですか?」
「はい、もう大丈夫です。昨日は自分でも気付かなかった性癖を晒されてショックを受けてしまいましたが……これからは自分を偽らず、ありのままの私をケネスさんに見ていただけるかと思うと、むしろ気分が高揚してきます。リゼッタに腹を立てているわけではありませんから、そのことはケネスさんから伝えておいてもらえますか?」
「はい、それはいいですけど、無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます。ところで屋外でというのもなかなか気持ちよさそうですね」
「そっち方面で晒さないでくださいよ」
場所はこのあたりでいいかな。ウサギ用のシャワーも近いし、このあたりに作っていこう。
「サラン、場所はこのあたりにしようと思うんだけど、どれくらいまで増えた?」
《はっ。現在五〇〇を少し超えたところであります》
「増えたねえ」
《申し訳ありません。増やそうと思わなくても、最近では気付けば増えておりまして……》
「いや、別に注意したわけじゃないからね。増えていいから。草原はどこまでもあるし」
さすがに五〇〇匹のウサギが一度に体を動かすというのは無理だけど……何種類か用意すればなんとかなるかな? ウサギだからねえ……。
まずは回し車。ハムスター用の回し車を少し大きくする。もっともサランたちはモフモフしてるから大きく見えるけど、体自体は実はハムスターサイズ。最初は子ウサギだと思ったくらいだからね。ただ毛を巻き込むと大変だから、内部に余裕は持たせる。
ホイール部分は木を使って手触り(足触り?)を優しくし、ホイールを手動もしくは自動で回転するようにする。手動の場合は負荷を調整できるようにし、自動の場合は中で転倒したら回転が止まるようにする。横から飛び出してしまわないように、回り始めたら弱い結界が張られるようにする。出る際には[浄化]をかけてきれいにする。これくらいだろうか。さすがに[回復]をかけて延々と訓練を続けさせるのは不味いだろう。この回し車を横に三〇個並べ、縦に一〇個積む。合計三〇〇個。上り下りはハシゴで。ペットショップみたい。
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……
みんなが一斉に始めるとちょっとやかましい。それぞれ結界で音を小さくしよう。
次は手を使うものかな。
サランたちが両手両足で掴めそうな太さの棒を垂直に立て、上まで行って下りてくる。太めから細めまで、何種類か混ぜた。これを二〇〇本立てた。
少し凹凸のある垂直の壁を上がるボルダリングのようなものも作った。この壁を一〇〇枚。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……
最後に水を使ったもの。
半分に割ったパイプを斜めに立て、上から常に水を流し、そこを上に向かって上がる。溺れたりしないように配慮している。これも一〇〇本。
もう一つは同じく半分に割ったパイプを使った流れるプール。これも当然溺れたりしないように配慮している。全部で一〇〇レーン。
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ……
これで今のところは一度に全員が運動できるけど、いっぱいになったら交代で使ってもらおう。いずれ新しいのを思いついたら種類を増やしてもいいかな。
《これはどれもこれもいい訓練になるでありますね》
「こういうのが欲しいというのがあれば遠慮なく言ってね」
《ありがとうございます》
「じゃあ、カローラさん、そろそろ戻りましょうか」
「あっ、ケネスさん、このあたりを少し散歩したいのですがいいですか? それと、しばらくサランさんをお借りしてもいいですか?」
「え? ああ、いいですよ。それじゃ僕は先に戻りますね。じゃあサラン、案内をよろしくね。僕は家の方で少し休憩してるから」
《はっ、承知いたしました》
「すみません、サランさん。少しケネスさんのことを聞いてもいいですか?」
《はい、カローラ様。小官に答えられることでしたら》
「ケネスさんとサランさんは仲がいいですよね。何か秘訣があるのですか?」
《秘訣なのかどうかは分かりませんが、小官にとって、閣下は種族こそ違いますが、異性としてはおそらく理想でしょう。できる限り近くにいて、何かを得られればと思っています》
「理想……どんなイメージなんですか?」
《はい、雄として生まれたからには多くの雌を侍らせる。そして奢ることなく集団のリーダーとしてドンと構える。そのような感じです》
「そうですね。私も昨日、久しぶりに……ああ、思い出してしまいました……ちなみにサランさんはケネスさんの寝室に入れると聞きましたが、本当ですか?」
《はい、常に部屋にいるわけではありませんが、後学のために拝見することもあります》
「ちなみに……」
「カロリッタ、ちょっといい?」
「はい~なんでしょう~?」
「カローラさんって前からあんな感じだったの?」
「『あんな感じ』がどれくらいかは分かりませんが~基本的には変わっていませんよ~」
「いや、昨日いじめられたいとか聞いてしまったんだけど、それも元から?」
「あれは~マスターのせいですね~」
「え? 僕が何かした?」
「カローラ様は~元々は年下の理想の男性を~徹底的にダメにするくらいに甘やかしたい~というのか夢でした~。そこであのマスターが生まれ変わった時です~。マスターは~寝ている間に~色々されましよね~?」
「うん、そうらしいね……」
「カローラ様は~すごかったですよって~言ってましたよね~?」
「言ってたね」
「あれで完全に目覚めたんですよ~Mに~」
「僕は寝てたんだよね?」
「聞きたいですか~?」
「いや、やめとく」
「はい~。精神の安定にはそれがいいですよ~」
[浄化]できれいになっているけど、気分的に石鹸を泡立てて頭と体を洗う。洗っていたらサランが入ってきた。サランはフリーパスになっている。そもそも[潜入]とかあるしね。
《閣下、お疲れ様です》
「サランも昨日はご苦労様」
《いやー、あのカローラ様はなかなかお強い方ですね》
「あ……ああ、まあ、ね」
サランがお疲れ様と言ったのは夜の方か……。彼女の考え方では、相手を屈服させた方が立場が上だそうだ。野生動物だからね。
あれからカローラさんを部屋に連れて行ったらやっぱり抱きつかれた。リゼッタに引き離してもらおうと思ったら、リゼッタは僕ごとカローラさんをベッドの方に引き倒した。
びっくりして何のつもりか聞いたら、「どうやらケネスを自分のものだと思っている節があるので、ここできっちりこの家での立場を覚えてもらいましょう」とリゼッタが言い出した。そのために『告白酒』を飲ませたと。あれは勝手に飲ませたらダメだって、その使い方はおかしいって、スーレ市のヨーナスさんも言ってたよね?
リゼッタの質問、もとい尋問の結果……というか告白酒の効果によって、カローラさんがみんなと仲良くやりたいのは間違いはなかった。でも以前とは違って、僕のことよりも自分の願望を優先してしまっていた。僕がプレゼントやら食事やらを贈ってしまったせいで、欲が出てきたらしい。
カローラさんと再会したリゼッタとカロリッタはそれを敏感に感じ取ってエリーやマイカに相談したそうだ。特にカロリッタは以前のカローラさんの頭の中も分かっているから変化に敏感なんだろう。その前に僕に相談してよ。
そしてカローラさんのこの変化はリゼッタ的には完全にアウト。
リゼッタとしては、僕が平和で穏やかな生活を送るのが一番で、そのためには妻たちが一致団結し、できる限り公平に扱ってもらえるように努力するのが狙いなんだとか。
いつの間にそんな話になったのか分からないけど、そういうことらしい。だからカローラさんが妻になることは問題がなくても、和を乱すことは許されないと。
この前も思ったんだけど、リゼッタはどんどん僕の恋人というか妻を増やす方向で話を進めてるんだよね。そんなに必要ないんだけど、いらないと言えない雰囲気になってるのが現状。それにあえて言うなら全然平和でも穏やかでもない……。
さらに尋問を続けると、カローラさんは年下の男性をとことん甘やしたいという願望があった。そして同時にその甘やかした相手に徹底的にいじめられたいという、本気で聞きたくなかった欲望もあった。
そしてこれはリゼッタ的にはOK。
なんでOKかと聞いたら、僕に不利益がないかららしい。不利益はないけど、利益にもならないと思うんだけど。そんなにいたぶるのが好きに見える?
そんなことを話していて、気付けばまた話がおかしな方に向かった。告白酒だ。リゼッタも飲んだそうだし、時間差で僕も飲まされていたらしい。途中でテーブルのお酒がなくなって、新しく持ってきたビンから注がれたのがそうらしい。前のとは味が違うから安心してたんだけど、告白酒っていっぱい種類があるから、ワイン風味とかエール風味とかもあるらしい。そんなの聞いてないって。
結果としては、三人で本音をぶつけ合った形だ。そしてそれからは流されるままだった。
目が覚めたらまたベッドが大変なことになっていた。それからリゼッタには二度としないようにと注意をし、自分の部屋に返した。そして真っ赤なのか真っ青なのかよく分からない状態で固まって泣いていたカローラさんをなだめてから自分の部屋に戻った。さすがにちょっとやりすぎだ。
それからお風呂に来て、今に至る。
「あー、とりあえず疲れた……数日くらいは家でゆっくりしようと思うし、何かリクエストがあれば言ってね」
《リクエストですか……》
「その顔は何か言いたいことがあるんでしょ?」
《はい。訓練所のようなものを作っていただければと思います》
「どういった施設が必要?」
《そうですね。我々の行動の基本は走ることと跳ぶことですので、それが強化できれば》
「手を使うことはないの?」
《ないわけではないのですが、そこまで腕力があるわけではありません。しかし鍛えられるものなら鍛えたいでありますね》
「じゃあ、脚力メインで、腕力の方もある程度鍛えられるような施設を用意しよう」
《ありがとうございます》
お風呂から上がってキッチンに入る。すでにエリーとマイカがいた。セラとキラはダイニングで座っている。二人とも、ちょっと早いよ。
「旦那様、昨日はすみませんでした」
「あー、まあ、リゼッタがどうしてもって言ったんでしょ? それなら仕方ないって。注意はしておいたけど」
「リゼッタさんって、たまに思い詰めますよね」
「たまにそうなるんだよ。さすがにこういうことは二度としないようにと言っておいたから、次はみんなも止めてよね。でもあの告白酒はどこから出したの?」
「王都で買い物に出た時に、一式まとめて買ってきたそうですよ」
「一式ってなに?」
ミシェルが畑から野菜を持ってきた。もう少しで完成するから、ミシェルにはそのままここにいないメンバーを呼びに行ってもらう。
しばらくするとリゼッタとカロリッタとマリアン、そして最後に無表情のカローラさんもやってきた。
「私のような下等な生き物がみなさんを出し抜こうなどと愚かな考えを持ってしまったことをお許しください」
心が折れてる、折れてる。
「カローラさん、ちょっとこっちに。みんなは先に食事を始めておいて」
リビングの方に連れて行って、なだめておだてて頭を撫でて、なんとか表情が出るくらいまで回復させた。抱きしめるくらいはいいだろう。
そろそろサランたちの訓練所を作ろうかと思ってサランと一緒に家を出たら、カローラさんがおずおずと付いてきた。
「私も見てもいいですか?」
「ええ、どうぞ。面白いかどうかは分かりませんけど」
「普段見ないものばかりですから、どれでも楽しいですよ」
よかった。だいぶ戻ったらしい。
「気分は大丈夫ですか?」
「はい、もう大丈夫です。昨日は自分でも気付かなかった性癖を晒されてショックを受けてしまいましたが……これからは自分を偽らず、ありのままの私をケネスさんに見ていただけるかと思うと、むしろ気分が高揚してきます。リゼッタに腹を立てているわけではありませんから、そのことはケネスさんから伝えておいてもらえますか?」
「はい、それはいいですけど、無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます。ところで屋外でというのもなかなか気持ちよさそうですね」
「そっち方面で晒さないでくださいよ」
場所はこのあたりでいいかな。ウサギ用のシャワーも近いし、このあたりに作っていこう。
「サラン、場所はこのあたりにしようと思うんだけど、どれくらいまで増えた?」
《はっ。現在五〇〇を少し超えたところであります》
「増えたねえ」
《申し訳ありません。増やそうと思わなくても、最近では気付けば増えておりまして……》
「いや、別に注意したわけじゃないからね。増えていいから。草原はどこまでもあるし」
さすがに五〇〇匹のウサギが一度に体を動かすというのは無理だけど……何種類か用意すればなんとかなるかな? ウサギだからねえ……。
まずは回し車。ハムスター用の回し車を少し大きくする。もっともサランたちはモフモフしてるから大きく見えるけど、体自体は実はハムスターサイズ。最初は子ウサギだと思ったくらいだからね。ただ毛を巻き込むと大変だから、内部に余裕は持たせる。
ホイール部分は木を使って手触り(足触り?)を優しくし、ホイールを手動もしくは自動で回転するようにする。手動の場合は負荷を調整できるようにし、自動の場合は中で転倒したら回転が止まるようにする。横から飛び出してしまわないように、回り始めたら弱い結界が張られるようにする。出る際には[浄化]をかけてきれいにする。これくらいだろうか。さすがに[回復]をかけて延々と訓練を続けさせるのは不味いだろう。この回し車を横に三〇個並べ、縦に一〇個積む。合計三〇〇個。上り下りはハシゴで。ペットショップみたい。
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……
みんなが一斉に始めるとちょっとやかましい。それぞれ結界で音を小さくしよう。
次は手を使うものかな。
サランたちが両手両足で掴めそうな太さの棒を垂直に立て、上まで行って下りてくる。太めから細めまで、何種類か混ぜた。これを二〇〇本立てた。
少し凹凸のある垂直の壁を上がるボルダリングのようなものも作った。この壁を一〇〇枚。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……
最後に水を使ったもの。
半分に割ったパイプを斜めに立て、上から常に水を流し、そこを上に向かって上がる。溺れたりしないように配慮している。これも一〇〇本。
もう一つは同じく半分に割ったパイプを使った流れるプール。これも当然溺れたりしないように配慮している。全部で一〇〇レーン。
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ……
これで今のところは一度に全員が運動できるけど、いっぱいになったら交代で使ってもらおう。いずれ新しいのを思いついたら種類を増やしてもいいかな。
《これはどれもこれもいい訓練になるでありますね》
「こういうのが欲しいというのがあれば遠慮なく言ってね」
《ありがとうございます》
「じゃあ、カローラさん、そろそろ戻りましょうか」
「あっ、ケネスさん、このあたりを少し散歩したいのですがいいですか? それと、しばらくサランさんをお借りしてもいいですか?」
「え? ああ、いいですよ。それじゃ僕は先に戻りますね。じゃあサラン、案内をよろしくね。僕は家の方で少し休憩してるから」
《はっ、承知いたしました》
「すみません、サランさん。少しケネスさんのことを聞いてもいいですか?」
《はい、カローラ様。小官に答えられることでしたら》
「ケネスさんとサランさんは仲がいいですよね。何か秘訣があるのですか?」
《秘訣なのかどうかは分かりませんが、小官にとって、閣下は種族こそ違いますが、異性としてはおそらく理想でしょう。できる限り近くにいて、何かを得られればと思っています》
「理想……どんなイメージなんですか?」
《はい、雄として生まれたからには多くの雌を侍らせる。そして奢ることなく集団のリーダーとしてドンと構える。そのような感じです》
「そうですね。私も昨日、久しぶりに……ああ、思い出してしまいました……ちなみにサランさんはケネスさんの寝室に入れると聞きましたが、本当ですか?」
《はい、常に部屋にいるわけではありませんが、後学のために拝見することもあります》
「ちなみに……」
「カロリッタ、ちょっといい?」
「はい~なんでしょう~?」
「カローラさんって前からあんな感じだったの?」
「『あんな感じ』がどれくらいかは分かりませんが~基本的には変わっていませんよ~」
「いや、昨日いじめられたいとか聞いてしまったんだけど、それも元から?」
「あれは~マスターのせいですね~」
「え? 僕が何かした?」
「カローラ様は~元々は年下の理想の男性を~徹底的にダメにするくらいに甘やかしたい~というのか夢でした~。そこであのマスターが生まれ変わった時です~。マスターは~寝ている間に~色々されましよね~?」
「うん、そうらしいね……」
「カローラ様は~すごかったですよって~言ってましたよね~?」
「言ってたね」
「あれで完全に目覚めたんですよ~Mに~」
「僕は寝てたんだよね?」
「聞きたいですか~?」
「いや、やめとく」
「はい~。精神の安定にはそれがいいですよ~」
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更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
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