新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

文字の大きさ
21 / 278
第一章 第二部

独白:ある少女の夢の話

しおりを挟む
 マイカです。犬人です。最近八歳になりました。少し前から時々おかしな夢を見るようになりました。見たことのない、真っ平らな壁をした建物の中にいます。王宮の中を見ることはありますけど、もっと柱があって凸凹しています。教会や聖堂とも違うようです。

 父はラクヴィ伯爵で、王都の王宮で働いていてそれなりの地位にあるそうです。財務大臣のすぐ下だと言ってました。私はその娘として、小さな頃から読み書き計算を教わってきました。父は私のことを天才だと褒めてくれます。下の弟妹きょうだいたちには私が教えてます。

 運動はそれほど得意ではありません。もちろん犬人ですので人間よりは足が速いと思いますけど、犬人の中ではどんくさい方でしょうか。手先は器用だと思います。料理もそこそこできるようになりました。母たちは「いいお嫁さんになるわね」と言ってくれました。でもなんだかモヤモヤしました。

 父はいつも、「娘が欲しいなら、まずは力だ。俺を倒せるくらいの力があるかどうかだ。次は甲斐性だ。妻の二人や三人養えるくらいでないとな。最後は人柄だ。妻たちを平等に愛せるかどうかだ。それができるなら考えてやる」と言っていつも母たちに、「子離れしなさい」って殴られてます。ちなみに私の母は三人います。母たちの方が立場が上のようです。

 父は普段は王都にいますので、領地は兄たちが経営してます。私たちは領都ラクヴィ市で暮らしてます。代官をしている一番上の兄は父に似てるそうです。「妹が欲しいと言うならまずは力。僕を倒せるくらいの力を見せてほしい。次は甲斐性。妻の二人や三人くらいは養えるくらいの経済力が必要だね。最後は人柄。妻たちを平等に愛せる心の豊かさはなくてはならない。それができるなら妹との結婚を認めよう」と言って、やっぱり奥さんたちに、「妹離れしなさい」って殴られてます。

 夢を見始めたのがいつなのかは覚えてません。去年だったのかもっと前だったのか。ものすごく高い建物がたくさん出てきます。王宮どころか、王宮の何倍もあるような建物です。それがいっぱいです。父に言ったら笑ってました。「そんな大きな建物は作れないぞ、おとぎ話じゃないんだからな」って。

 そんな夢を、もちろん毎日ではないですけど、見る回数が増えてきた気がします。気にし始めたからそう思うようになったのかもしれませんけど。

 ある時はものすごく人が多い場所にいました。どうすればこんなに人が多いのか、どこから来たのか分かりません。戦争でもあるんでしょうか。それくらい人が集まってました。

 でもみんな鮮やかな服を着てました。戦争に行くにしては武器も防具もありませんでした。取っ手のある黒色や茶色の盾のようなものを手に下げたり肩から掛けたりしてましたけど、あれが武器か防具なんでしょうか? 背嚢を背負っている人もたくさんいます。そもそもどこなんでしょう。おとぎ話の中なんでしょうか?

 ある時は部屋の中で机を前にして座ってました。机の上に板のようなものがあって、そこに文字らしきものや数字が映ってました。文字は読めませんでしたけど、数字は分かりました。そして凸凹のある板のようなものを叩いたり、丸っこいものを掴んで動かしてました。

 ある時は家にいました。自分しかいなさそうです。保存庫の中から食材を取り出して切ったり焼いたり、オーブンのような箱に入れたりしてました。おとぎ話でも食事の作り方は同じみたいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...