6 / 278
第一章 第一部
庭付き一戸建て世界
しおりを挟む
「リゼッタ、そろそろ野営の準備をしようか」
《野営もいいですが、ケネスは無属性の時空間魔法も使えまよね? 使えるなら異空間を作ってその中に入るということもできるはずです。いきなり森の中で野営するよりも快適で安全だと思いますよ》
「あー、使えるかな?」
《Q>時空間魔法で異空間を作って中に入れる?》
《A>可能です。理屈は魔法鞄と同じです。出入り口があってその中に別空間がある、それを思い浮かべてください。内部の異空間も魔力量と想像次第で変化します。ただし一度作った異空間の環境は一度に大きくは変更できません》
《Q>少しならできるってこと?》
《A>はい。少しずつなら可能です。DIYで週末ごとに少しずつ家のリフォームを進めるのと同じです。マスターはエルフですので、百年単位で考えればほとんど違うものに作り替えることも可能です。普通は一度消してから作り直します》
だろうね。人間ならその間に死んじゃうしね。
《A>内部の広さにもよりますが、物を持ち込むことは可能です。例えば木の苗を持ち込んで根付かせれば大木に育ちます。常春でも常夏でも万年雪でも、好きなように思い浮かべてください》
《Q>了解》
《A>個人的には、青い海と白い砂浜が続くビーチで、愛しのマスターとパラソルの下、デッキチェアに寝転んで見つめ合いながら二人でトロピカルジュースを飲む、という空間が最高ですね。もちろんジュースは一つ、ストローは二本です。ジュースがなくなって二人は見つめ合い、自然と顔が近付いていき二人は……あっ……》
何その願望ダダ漏れ。たまに人が変わったようになるよね。
ええっと……環境はとりあえず常春で、寝泊まりできる小さな家があればいいか。横や裏に倉庫代わりの小屋とか菜園とかがあってもいいかも。少し離れたところに小さな森。ハンモックを吊るしたりとかね。
家の方は一階にはまずホール、それから応接室にリビング、ダイニング、キッチン、風呂、洗面所、トイレ、洗濯部屋、そして収納部屋をいくつか。
二階には個室を複数、それと二階にも洗面所とトイレも配置。部屋数は少ないよりは多いほうがいいな。どこを自分の部屋にするか選ぶ楽しみもあるし、それなりに増やしておこう。
部屋が増えるなら万が一に備えてトイレと洗面所も増やしておこうか、一階のトイレや洗面所も一緒に増やしておこう。それならリビングやダイニング、キッチン、風呂も広げておこうか。男女別にした方がいいよね。まあこんなものかな?
どこが小さな家だ。
「異空間に家を建てようと思うけど、何か希望はある? 当然リゼッタの個室も作るけど」
《ありがとうございます。部屋をいただけるだけで十分です。家が持ち運びできるようなものですので、これ以上の贅沢もないでしょう》
「そりゃそうだね。それじゃ今から作るよ」
森、草原、家、小屋、菜園、家の内部、それらをイメージしながら魔力を込める。ぼわんと目の前に黒っぽいモヤモヤが現れた。
《Q>何これ?》
《A>その黒い部分が出入り口です。そこを通って中に入ります。出る時は入った時と同じ場所に出ます。出入り口は外からでも中からでも消すことができます。この異空間は所有者の付属物扱いですので、外へ出た状態で出入口を消せば勝手に追ってきます。出入り口を開けたままだと追ってきません》
《Q>中に人がいる状態でも移動させられる?》
《A>できます。マスターが出入り口を開いて中にリゼッタさんが入るとしましょう。出入口を閉じて別の場所へ行き、そこで出入口を開けば、そこにリゼッタさんがいます》
黒いモヤモヤから中に入って出入口を消す。消してもそこに出入口があることがなんとなく分かるので、出る時に困ることはなさそう。でも分かりやすいように今度目印でも置いとこうか。
前には白い壁の二階建ての大きな家。少し向こうには小さな森も見える。
《これがケネスがイメージした家なんですね》
「日本の家じゃなくて、日本人がイメージするアメリカの家かな。細かいところは日本風に変えてるけどね。靴で歩く回るんじゃなくて、ホールの途中で脱いで室内履きに替える形だし、裏口のところも同じだね。なんとなく家の中で靴は履きたくないかな」
《一階部分が共同のスペース、二階部分がそれぞれのスペースなんですね》
「完成してから広げるのは時間がかかるそうだから、狭いよりはと思ってね。使い道がないけど」
《どこのホテルですかと言いたいくらいですが。ですが、これだけ広ければ同行者が増えても大丈夫ですね》
「増えるかな? 別に増やすつもりはないけど」
《増やしたいと思わなくても増やさざるを得ないこともあると思いますよ。ケネスは人が良さそうですから》
「それはフラグ? まあそれはその時に考えるよ。そうそう、リゼッタも自分の部屋を選んでね」
まずは家の中を一通りチェック。水回りがどうなっているのか気になったけど、蛇口をひねれば水とお湯が出た。しかも瞬時に。温度調節もバッチリ。ここにも魔法が使われているらしい。トイレは温水洗浄便座だった。排水も魔法で処理されているらしい。どういう理屈でこの家が維持されてるのか分からないけど、考えるのは放棄した。
次は家の周りをチェック。裏に家と同じくらいの大きさの菜園があって散水用の蛇口がついていた。こちらも水とお湯がある。菜園にお湯っているかな?
そんな感じで中と外を見て回ったら、そろそろ夕食の時間。そこでちょっとした問題が。
「リゼッタ、そろそろ人間の姿に戻らない?」
《いえ、私はどちらが本来の姿というわけではありませんので、この姿のままで結構です》
やっぱり人間の姿になるのが嫌なんだろうなあ。でもねえ。
「そろそろ夕食にしよう思うんだけど、どう?」
《はい、そろそろいい時間ですね。実は、私は料理を作るのはあまり得意ではなくて》
「まあ僕が作ってもいいけどね。料理は好きだし。とりあえずマジックバッグに入っていた食材を使おうと思うんだけど」
《はい、それで問題ありません》
「いや、リゼッタはその姿で食べるの?」
《この姿のほうが食材の消費が抑えられると思いますので、その方がいいのではないでしょうか?》
「食材なんていくらでも入ってるから問題ないと思うけどね」
《それでも無駄遣いは良くありません。贅沢は敵です》
「確かにそれだとあまり量は作らなくてもいいから、一人分を作るのと変わらないかな」
《はい》
やりますか。
「でーもなー、せーっかく二人で旅をしてるのにー、一人分だけ作るのかー。作り甲斐がない気もするけどー、リゼッタが嫌がるならーまあ仕方ないかなー(棒読み)」
《……何か妙な不自然さを感じますが、言っている内容自体は全然おかしくないのが腹立たしく感じます》
「リゼッタの顔を見てー、話をしながら食べる方がー、ぜーったいに美味しいと思うんだけどなー(棒読み)」
《……あ~もうっ、分かりました。食事の時は人の姿になります》
「リゼッタとーキッチンでー、いっしょにー料理を作りたいなー(棒読み)」
《……なんですか、さっきからその言い方は! 分かりましたっ! 人の姿で一緒に料理もしますっ!」
「よーし! さあ一緒に作ろう!」
実はカローラさんからもらったマジックバッグには彼女からの手紙が入っていた。
『リゼッタは容姿と性格に少しコンプレックスを持っています。自分を過小評価しがちで、普段から自分をかなり抑えていますが、本当はものすごく可愛らしい女の子です。ケネスさんとは相性が良さそうですので、できるだけ褒めて構って愛でて撫でてあげてください。降格したことになっていますが、建前上そうせざるを得なかったためで、実際は気分転換に休暇を与えていることになっています。ケネスさんにはご面倒をお掛けしますが、できる限り息抜きをさせてあげてください。そしてこの同行が、実は仕事ではなく休暇だということは、どこかのタイミングで伝えてあげてください』
愛でて撫でる? いいの? するよ?
『追記 このマジックバッグには諸々のお詫びの分だけではなく、このお願いの分も入っています。様子を見ながら中身は補充しますが、他に必要な物があればメモを入れてください。いくらでも追加します』
自動補充機能付き。監視付きと言えなくもない。変なものを入れたらマズそうだな。いきなりリゼッタを入れなくて良かった。
う~ん、コンプレックスねえ。
「何か思うところでもありますか?」
「いや、リゼッタの見た目って、かなり可愛いし好みだし可愛いと思うけど……どうしてそこまで嫌がってたの?」
「あの、面と向かって可愛いとか好みだとか言われると、少々恥ずかしいのですが……しかも可愛いを二回言いましたよね。しかもどうして頭を撫でるのですか? 確かに私は背が低いですが」
さっそく撫でてしまった。いい高さに頭があるんだよなあ。
リゼッタの人としての姿を一言で表すと『やや小柄な委員長』。服装がだらしないと注意されそう。大きくてキリッとした目、引き締まった表情、髪は肩くらいの長さで、地毛だろうけどダークチョコレートの色をベースに、上から横にかけてミルクチョコレートの色のメッシュが少し。改めて見ると、ものすごくリスっぽい。獣人ではないので耳や尻尾はない。
残念だとは思ってないよ。
「他人に言わせると、人としての私の見た目は性格そのままだそうです。初めて見た人はほぼ間違いなく「ああ~(納得)」って言います。何ですか「ああ~(納得)」って! それでなんとなく気恥ずかしくなりまして、できる限り人の姿は見せないように……」
「別に馬鹿にされてたわけじゃないでしよ? 真面目で頑張り屋って部分が顔に出てるだけだから、気にしなくてもいいと思うけどね。とりあえず夕食にしようか。リゼッタの好きなものを作ろう」
「……はい」
リゼッタはイメージ通りナッツ系が好きらしいので、今日の夕食はナッツと鶏肉の炒め物、ナッツとカリカリベーコンを入れたサラダ、パンとスープ。
夕食後は順番にお風呂に入ってからそれぞれの部屋へ。お風呂に入らなくても[浄化]で綺麗にできるけど、それではさすがに疲れは取れない。湯船の中で手足を伸ばして「ヹ~~~~~っ」と声を出すのも醍醐味だと思ってる。
今日はとりあえず色々あった。ええっと……死んで、生き返って、エルフになって、リスをお供に異世界に来て、異空間で寝泊まり。
うん、落ち着いて考えてみてもよく分からない。
《野営もいいですが、ケネスは無属性の時空間魔法も使えまよね? 使えるなら異空間を作ってその中に入るということもできるはずです。いきなり森の中で野営するよりも快適で安全だと思いますよ》
「あー、使えるかな?」
《Q>時空間魔法で異空間を作って中に入れる?》
《A>可能です。理屈は魔法鞄と同じです。出入り口があってその中に別空間がある、それを思い浮かべてください。内部の異空間も魔力量と想像次第で変化します。ただし一度作った異空間の環境は一度に大きくは変更できません》
《Q>少しならできるってこと?》
《A>はい。少しずつなら可能です。DIYで週末ごとに少しずつ家のリフォームを進めるのと同じです。マスターはエルフですので、百年単位で考えればほとんど違うものに作り替えることも可能です。普通は一度消してから作り直します》
だろうね。人間ならその間に死んじゃうしね。
《A>内部の広さにもよりますが、物を持ち込むことは可能です。例えば木の苗を持ち込んで根付かせれば大木に育ちます。常春でも常夏でも万年雪でも、好きなように思い浮かべてください》
《Q>了解》
《A>個人的には、青い海と白い砂浜が続くビーチで、愛しのマスターとパラソルの下、デッキチェアに寝転んで見つめ合いながら二人でトロピカルジュースを飲む、という空間が最高ですね。もちろんジュースは一つ、ストローは二本です。ジュースがなくなって二人は見つめ合い、自然と顔が近付いていき二人は……あっ……》
何その願望ダダ漏れ。たまに人が変わったようになるよね。
ええっと……環境はとりあえず常春で、寝泊まりできる小さな家があればいいか。横や裏に倉庫代わりの小屋とか菜園とかがあってもいいかも。少し離れたところに小さな森。ハンモックを吊るしたりとかね。
家の方は一階にはまずホール、それから応接室にリビング、ダイニング、キッチン、風呂、洗面所、トイレ、洗濯部屋、そして収納部屋をいくつか。
二階には個室を複数、それと二階にも洗面所とトイレも配置。部屋数は少ないよりは多いほうがいいな。どこを自分の部屋にするか選ぶ楽しみもあるし、それなりに増やしておこう。
部屋が増えるなら万が一に備えてトイレと洗面所も増やしておこうか、一階のトイレや洗面所も一緒に増やしておこう。それならリビングやダイニング、キッチン、風呂も広げておこうか。男女別にした方がいいよね。まあこんなものかな?
どこが小さな家だ。
「異空間に家を建てようと思うけど、何か希望はある? 当然リゼッタの個室も作るけど」
《ありがとうございます。部屋をいただけるだけで十分です。家が持ち運びできるようなものですので、これ以上の贅沢もないでしょう》
「そりゃそうだね。それじゃ今から作るよ」
森、草原、家、小屋、菜園、家の内部、それらをイメージしながら魔力を込める。ぼわんと目の前に黒っぽいモヤモヤが現れた。
《Q>何これ?》
《A>その黒い部分が出入り口です。そこを通って中に入ります。出る時は入った時と同じ場所に出ます。出入り口は外からでも中からでも消すことができます。この異空間は所有者の付属物扱いですので、外へ出た状態で出入口を消せば勝手に追ってきます。出入り口を開けたままだと追ってきません》
《Q>中に人がいる状態でも移動させられる?》
《A>できます。マスターが出入り口を開いて中にリゼッタさんが入るとしましょう。出入口を閉じて別の場所へ行き、そこで出入口を開けば、そこにリゼッタさんがいます》
黒いモヤモヤから中に入って出入口を消す。消してもそこに出入口があることがなんとなく分かるので、出る時に困ることはなさそう。でも分かりやすいように今度目印でも置いとこうか。
前には白い壁の二階建ての大きな家。少し向こうには小さな森も見える。
《これがケネスがイメージした家なんですね》
「日本の家じゃなくて、日本人がイメージするアメリカの家かな。細かいところは日本風に変えてるけどね。靴で歩く回るんじゃなくて、ホールの途中で脱いで室内履きに替える形だし、裏口のところも同じだね。なんとなく家の中で靴は履きたくないかな」
《一階部分が共同のスペース、二階部分がそれぞれのスペースなんですね》
「完成してから広げるのは時間がかかるそうだから、狭いよりはと思ってね。使い道がないけど」
《どこのホテルですかと言いたいくらいですが。ですが、これだけ広ければ同行者が増えても大丈夫ですね》
「増えるかな? 別に増やすつもりはないけど」
《増やしたいと思わなくても増やさざるを得ないこともあると思いますよ。ケネスは人が良さそうですから》
「それはフラグ? まあそれはその時に考えるよ。そうそう、リゼッタも自分の部屋を選んでね」
まずは家の中を一通りチェック。水回りがどうなっているのか気になったけど、蛇口をひねれば水とお湯が出た。しかも瞬時に。温度調節もバッチリ。ここにも魔法が使われているらしい。トイレは温水洗浄便座だった。排水も魔法で処理されているらしい。どういう理屈でこの家が維持されてるのか分からないけど、考えるのは放棄した。
次は家の周りをチェック。裏に家と同じくらいの大きさの菜園があって散水用の蛇口がついていた。こちらも水とお湯がある。菜園にお湯っているかな?
そんな感じで中と外を見て回ったら、そろそろ夕食の時間。そこでちょっとした問題が。
「リゼッタ、そろそろ人間の姿に戻らない?」
《いえ、私はどちらが本来の姿というわけではありませんので、この姿のままで結構です》
やっぱり人間の姿になるのが嫌なんだろうなあ。でもねえ。
「そろそろ夕食にしよう思うんだけど、どう?」
《はい、そろそろいい時間ですね。実は、私は料理を作るのはあまり得意ではなくて》
「まあ僕が作ってもいいけどね。料理は好きだし。とりあえずマジックバッグに入っていた食材を使おうと思うんだけど」
《はい、それで問題ありません》
「いや、リゼッタはその姿で食べるの?」
《この姿のほうが食材の消費が抑えられると思いますので、その方がいいのではないでしょうか?》
「食材なんていくらでも入ってるから問題ないと思うけどね」
《それでも無駄遣いは良くありません。贅沢は敵です》
「確かにそれだとあまり量は作らなくてもいいから、一人分を作るのと変わらないかな」
《はい》
やりますか。
「でーもなー、せーっかく二人で旅をしてるのにー、一人分だけ作るのかー。作り甲斐がない気もするけどー、リゼッタが嫌がるならーまあ仕方ないかなー(棒読み)」
《……何か妙な不自然さを感じますが、言っている内容自体は全然おかしくないのが腹立たしく感じます》
「リゼッタの顔を見てー、話をしながら食べる方がー、ぜーったいに美味しいと思うんだけどなー(棒読み)」
《……あ~もうっ、分かりました。食事の時は人の姿になります》
「リゼッタとーキッチンでー、いっしょにー料理を作りたいなー(棒読み)」
《……なんですか、さっきからその言い方は! 分かりましたっ! 人の姿で一緒に料理もしますっ!」
「よーし! さあ一緒に作ろう!」
実はカローラさんからもらったマジックバッグには彼女からの手紙が入っていた。
『リゼッタは容姿と性格に少しコンプレックスを持っています。自分を過小評価しがちで、普段から自分をかなり抑えていますが、本当はものすごく可愛らしい女の子です。ケネスさんとは相性が良さそうですので、できるだけ褒めて構って愛でて撫でてあげてください。降格したことになっていますが、建前上そうせざるを得なかったためで、実際は気分転換に休暇を与えていることになっています。ケネスさんにはご面倒をお掛けしますが、できる限り息抜きをさせてあげてください。そしてこの同行が、実は仕事ではなく休暇だということは、どこかのタイミングで伝えてあげてください』
愛でて撫でる? いいの? するよ?
『追記 このマジックバッグには諸々のお詫びの分だけではなく、このお願いの分も入っています。様子を見ながら中身は補充しますが、他に必要な物があればメモを入れてください。いくらでも追加します』
自動補充機能付き。監視付きと言えなくもない。変なものを入れたらマズそうだな。いきなりリゼッタを入れなくて良かった。
う~ん、コンプレックスねえ。
「何か思うところでもありますか?」
「いや、リゼッタの見た目って、かなり可愛いし好みだし可愛いと思うけど……どうしてそこまで嫌がってたの?」
「あの、面と向かって可愛いとか好みだとか言われると、少々恥ずかしいのですが……しかも可愛いを二回言いましたよね。しかもどうして頭を撫でるのですか? 確かに私は背が低いですが」
さっそく撫でてしまった。いい高さに頭があるんだよなあ。
リゼッタの人としての姿を一言で表すと『やや小柄な委員長』。服装がだらしないと注意されそう。大きくてキリッとした目、引き締まった表情、髪は肩くらいの長さで、地毛だろうけどダークチョコレートの色をベースに、上から横にかけてミルクチョコレートの色のメッシュが少し。改めて見ると、ものすごくリスっぽい。獣人ではないので耳や尻尾はない。
残念だとは思ってないよ。
「他人に言わせると、人としての私の見た目は性格そのままだそうです。初めて見た人はほぼ間違いなく「ああ~(納得)」って言います。何ですか「ああ~(納得)」って! それでなんとなく気恥ずかしくなりまして、できる限り人の姿は見せないように……」
「別に馬鹿にされてたわけじゃないでしよ? 真面目で頑張り屋って部分が顔に出てるだけだから、気にしなくてもいいと思うけどね。とりあえず夕食にしようか。リゼッタの好きなものを作ろう」
「……はい」
リゼッタはイメージ通りナッツ系が好きらしいので、今日の夕食はナッツと鶏肉の炒め物、ナッツとカリカリベーコンを入れたサラダ、パンとスープ。
夕食後は順番にお風呂に入ってからそれぞれの部屋へ。お風呂に入らなくても[浄化]で綺麗にできるけど、それではさすがに疲れは取れない。湯船の中で手足を伸ばして「ヹ~~~~~っ」と声を出すのも醍醐味だと思ってる。
今日はとりあえず色々あった。ええっと……死んで、生き返って、エルフになって、リスをお供に異世界に来て、異空間で寝泊まり。
うん、落ち着いて考えてみてもよく分からない。
11
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる