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第1章:目覚めと始まりの日々
第10話:話はきちんと聞きましょう
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「では今から簡単にご説明します」
シーヴは薄い冊子を取り出すと二人の前に二冊ずつ置きました。
「サラさんは文字は読めますか?」
「大丈夫です」
「それでしたらあとで読んでおいてくださいと申し上げて話を終わらせてもいいんですけど、質問があって足を運んでいただくのは二度手間ですので」
そう前置きをすると、シーヴは一冊目を開きます。
「こちらは冒険者になるにあたっての諸注意です。お二人はすでに上級ジョブですので問題ないと思いますが」
そこには冒険者として覚えておくべき、ジョブやステータス、スキルについて書かれていました。
「まず、転職はいつでもできますが、三回新年を迎えないと条件を満たしません。そのジョブを得るだけで付くスキルや魔法もありますので、好き勝手にできないのではと考えられています」
「たしかにそうですね。一般ジョブだけで転職を繰り返しても、そこそこ得られますね」
「そういうことです。そして次は、転職すると能力値のレベルが変わるということです」
レイやサラの場合、最初からかなり高いレベルになっています。もし現段階で戦士に転職すれば、戦士としてのデフォルトのレベルに戻されます。
「上級ジョブから一般ジョブになるメリットはないんだね」
「どうしても欲しいスキルがあれば、というくらいですね」
欲しい魔法やスキルがあるなら別ですが、上級ジョブから一般ジョブに転職する意味はまったくありません。
「魔法とスキルについても簡単に説明させていただきます。この町には魔術師ギルドがありませんので」
餅は餅屋。魔法は魔法使い。ところが、マリオンには魔術師ギルドがありません。代わりに冒険者ギルドが簡単に説明を行うことになっています。
「まず、魔法とスキルは別々のものではなく、スキルの中に魔法が含まれる形になっています。それはステータス情報を見るとすべてスキル一覧に入ることからわかります。だたし、どちらも使うには魔力が必要になります。考え始めると混乱しますので、あまり深く考えないほうがいいでしょう」
ステータスカードは神から授かったもの。だからすべてが理解できなくて当然という考えが一般的です。場合によってはステータスカードの全貌を理解しようと試みる人もいますが、そう簡単には理解できないでしょう。
「次は〝魔法〟と〝魔術〟という言葉についてです。違いにこだわる人もいますが、ほぼ同じなんです」
この世界では、魔法というものは魔力を使って起こす現象そのものを表し、これらを使う技術や体系を魔術と呼びます。ところが実際には、料理と調理がほぼ同じ意味で使われる場合があるように、同じ言葉とみなされることも多いのです。魔法使いと魔術師は同じことになります。
魔法やスキルは神から与えられたものですが、人は自分たちが使いやすいように改良を繰り返しました。その結果として、非常に多くの魔法が作り出され、様々な分け方がされるようになっています。
まずは誰でも訓練によって身に付けられる一般魔法と、特定のジョブでしか身に付けられない固有魔法という分け方です。これはスキルにも当てはまり、誰にでも身に付けられる一般スキル、そして特定のジョブでしか身に付けられない固有スキルがあります。
次に人を傷つけるかそうでないかで黒魔法と白魔法という分け方があります。黒魔法は攻撃魔法がほとんどになっていますが、白魔法には回復魔法、防御魔法、支援魔法などと、使用目的で分けた複数の呼び方があります。
それ以外にも、発動したあとの効果によって、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、聖属性魔法、闇属性魔法、無属性魔法があります。この中の無属性以外をまとめて属性魔法とも呼ばれることもあります。
まったく別系統の魔法として、精霊との対話によって使うことのできる精霊魔法があります。精霊は適正がない者には姿を見ることはできません。
四大精霊として、火の精霊サラマンダー、水の精霊オンディーヌ、風の精霊シルフ、土の精霊ノームがいます。他にも海の精霊ネレイド、樹木の精霊ドライアド、山の精霊オレイアドなどが存在しています。
「お二人とも魔法剣士という位置づけですね。ロードは上級ジョブでも上の方になります。サムライは上級ジョブの真ん中よりも少し上でしょうか。そこから転職となると、なかなか候補が出ないでしょう」
「俺はないですね」
系統外の候補ならありますが、〝白魔法が使える剣士〟の系統としてはロードが一番上になります。
「私は今のところロイヤルガードがあるね」
「ロイヤルガードは盾役の上級ジョブですね。身体強化系のスキルはありますが、魔法はありませんね。今はサムライのほうがいいと思いますよ。いずれはハタモトやミフネが出ると思います」
「私はサムライになりたかったから、このままで大丈夫」
サラは前世でも、この世界で記憶が戻る前でもサムライにこだわっていました。少し時間を戻してみましょう。
~~~
サラがレイと会ってすぐのころの話です。二人ともまだ記憶は戻っていません。
「レイ様は成人したら何をなさるおつもりですか?」
「う~ん、たぶんマリオンは離れるよ。王都に出て仕事を探すつもりだから。これくらいの頭があれば、役人として雇ってもらえるんじゃないかな」
「そうですね。ジョブ次第だと思いますが」
「そこが問題だなあ」
レイはもっと幼い頃から自分は飛び抜けて頭がいいのだろうと、周りの反応を見て思っていました。それなら王都に出れば仕事があるだろうと。その前に聖別式を受けてジョブを授からなければならなりません。その結果次第で人生が変わることもあります。まだまだ先の話ですが。
「サラにはなりたいジョブはあるの?」
レイがそう聞いたのは、自分にはなりたいと言えるジョブがなかったからです。
「東方の国にあるサムライというジョブが気になっています。ですが上級ジョブですので、いきなりは難しいと思います」
「いきなり上級ジョブはね」
ジョブには上級ジョブと一般ジョブという二つのカテゴリーがあります。才能のある人は最初から上級ジョブを得ることもありますが、通常は一般ジョブからのステップアップとして上級ジョブに転職します。
サラが口にしたサムライは黒魔法も使える前衛職なので、一般ジョブである戦士や剣士として体を鍛え、それから魔術師として知能を上げ、さらには滝に打たれるなどして精神鍛錬も行わないといけないとされています。
「でもどうしてサムライになりたいの?」
「自分でもよく分かりませんが、誰かにお仕えするというのが向いているのでしょうか。今もこのようにレイ様にお仕えするのがしっくりときています。レイ様はいかがですか?」
「う~ん、役人になるなら頭がいいほうがいいから、僧侶とか教師とか。まあ運を天に任せるしかないけどね」
なりたいジョブになれるとは限りません。特に最初のジョブは神々から与えられるものであって自分で選ぶものではないのです。
最初に与えられるジョブには、どのような環境で育ったかが大きく影響すると言われています。ところが、魔術師の夫婦に武闘家の子供が生まれることも実際にはあります。だから気にしすぎると疲れるというのが一般的な考えです。
どんなジョブを授かろうとも、必要があれば転職すればいいのです。そのままでいいと思えば転職する必要はありません。ただそれだけです。
「まだ六年ありますからね」
「その間にしっかりと鍛えないとね」
レイは五歳になるころから庭で剣を振っていました。一人で本を読むのに飽きたので体を動かそうと思ったのがきっかけですが、今では日課のようになっています。
守衛たちの交代とタイミングが合えば、木剣で練習の相手をしてもらっています。彼らも立ちっぱなし座りっぱなしでは疲れるからです。最近ではレイの技術がかなり上がり、守衛たちもうかうかすると一本取られるようになりました。
「私もご一緒してもよろしいですか?」
「もちろん。いつも守衛の誰かに相手をしてもらうから、サラの分も頼んでおこう」
「ありがとうございます」
その翌日から、サラも剣と刀と弓矢と槍の使い方を守衛の誰かから教わり始めます。その努力の結果なのかどうかはわかりませんが、サラは聖別式でサムライのジョブを得ることになるのでした。
~~~
「それから〝経験値〟についてです」
ステータスカードには経験値という項目があります。これを能力値やスキルの熟練度に足すことで能力を上げることができます。それ以外にも体力や魔力を増やすこともできます。
「真面目にやっていれば増えるようですが、これもギルドのランクと同じで、何をどうすれば得られるのか、はっきりとはわかっていません。魔物を倒したからといって増えるとは限りません」
ちなみにこれ、ゲームに出てくる経験値とは違って、それほど得られるものではありません。自分自身を向上させようと努力した結果として入るものなんですよ。
「真面目に仕事をしていれば増えるのは間違いないんですね?」
「はい、そうです」
「じゃあ問題ないね」
レイとサラは手元のステータスカードに目を落とします。
「レイモンド様もサラさんも、最初からかなり強くなっていますので、あまりレベルを上げる必要はないでしょうね」
「やっぱり強いですか?」
「ええ。私の知る限りでは、冒険者として普通に活動するのでしたら、レベルはFもあれば十分です。ドラゴンを倒すと言い出さない限りは」
「そんな無茶は言いませんから大丈夫です」
レイはそう言いますが、サラは何か思うところがあるみたいですよ。「ドラゴンに乗ったらカッコいいじゃん」とか言い出しかねませんね。
「そして、最後が〝レベル〟に関してです。これが少しややこしいので注意してください」
個人個人にレベルがあります。キャラクターレベルと呼べるものですね。この数値は必ずしも個人の強さとは直結していません。
「どれだけの期間、そのジョブで活動してきたかの目安と考えたらいいでしょう。一般ジョブの人が冒険者を続けるなら、頑張れるだけ頑張って三年で五〇と思ってください。レベルが上がっても能力値やスキルのレベルが上がることはありません」
一年目は二五くらいまで上がります、少しずつ上がりにくくなり、三年で五〇上がればかなり早いほうです。
「レベルが五〇を超えると経験値の入り具合も悪くなりますので、そのあたりで転職を考える人が多いですね」
「いつまでも同じことしてんなよって神様が言ってるのかもしれないね」
「そうかもしれませんね。とりあえず、さらに能力を上げたいのなら転職をお勧めします。お二人は上級ジョブなので、一般ジョブよりもレベルアップが遅めです。一年目は五か六あたりまでだと考えておいてください」
上級ジョブは一般ジョブで鍛えた先にありますので、レベルの上がり方はかなり遅くなります。一般ジョブの五分の一が目安とされています。
「焦らなくていいよな?」
「のんびりでいいよね」
記憶が戻る前、上級ジョブになったことで少し戸惑っていたレイですが、今ではそのようなこともなくなりました。むしろ安全マージンがしっかり確保できることに感謝しています。
シーヴは薄い冊子を取り出すと二人の前に二冊ずつ置きました。
「サラさんは文字は読めますか?」
「大丈夫です」
「それでしたらあとで読んでおいてくださいと申し上げて話を終わらせてもいいんですけど、質問があって足を運んでいただくのは二度手間ですので」
そう前置きをすると、シーヴは一冊目を開きます。
「こちらは冒険者になるにあたっての諸注意です。お二人はすでに上級ジョブですので問題ないと思いますが」
そこには冒険者として覚えておくべき、ジョブやステータス、スキルについて書かれていました。
「まず、転職はいつでもできますが、三回新年を迎えないと条件を満たしません。そのジョブを得るだけで付くスキルや魔法もありますので、好き勝手にできないのではと考えられています」
「たしかにそうですね。一般ジョブだけで転職を繰り返しても、そこそこ得られますね」
「そういうことです。そして次は、転職すると能力値のレベルが変わるということです」
レイやサラの場合、最初からかなり高いレベルになっています。もし現段階で戦士に転職すれば、戦士としてのデフォルトのレベルに戻されます。
「上級ジョブから一般ジョブになるメリットはないんだね」
「どうしても欲しいスキルがあれば、というくらいですね」
欲しい魔法やスキルがあるなら別ですが、上級ジョブから一般ジョブに転職する意味はまったくありません。
「魔法とスキルについても簡単に説明させていただきます。この町には魔術師ギルドがありませんので」
餅は餅屋。魔法は魔法使い。ところが、マリオンには魔術師ギルドがありません。代わりに冒険者ギルドが簡単に説明を行うことになっています。
「まず、魔法とスキルは別々のものではなく、スキルの中に魔法が含まれる形になっています。それはステータス情報を見るとすべてスキル一覧に入ることからわかります。だたし、どちらも使うには魔力が必要になります。考え始めると混乱しますので、あまり深く考えないほうがいいでしょう」
ステータスカードは神から授かったもの。だからすべてが理解できなくて当然という考えが一般的です。場合によってはステータスカードの全貌を理解しようと試みる人もいますが、そう簡単には理解できないでしょう。
「次は〝魔法〟と〝魔術〟という言葉についてです。違いにこだわる人もいますが、ほぼ同じなんです」
この世界では、魔法というものは魔力を使って起こす現象そのものを表し、これらを使う技術や体系を魔術と呼びます。ところが実際には、料理と調理がほぼ同じ意味で使われる場合があるように、同じ言葉とみなされることも多いのです。魔法使いと魔術師は同じことになります。
魔法やスキルは神から与えられたものですが、人は自分たちが使いやすいように改良を繰り返しました。その結果として、非常に多くの魔法が作り出され、様々な分け方がされるようになっています。
まずは誰でも訓練によって身に付けられる一般魔法と、特定のジョブでしか身に付けられない固有魔法という分け方です。これはスキルにも当てはまり、誰にでも身に付けられる一般スキル、そして特定のジョブでしか身に付けられない固有スキルがあります。
次に人を傷つけるかそうでないかで黒魔法と白魔法という分け方があります。黒魔法は攻撃魔法がほとんどになっていますが、白魔法には回復魔法、防御魔法、支援魔法などと、使用目的で分けた複数の呼び方があります。
それ以外にも、発動したあとの効果によって、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、聖属性魔法、闇属性魔法、無属性魔法があります。この中の無属性以外をまとめて属性魔法とも呼ばれることもあります。
まったく別系統の魔法として、精霊との対話によって使うことのできる精霊魔法があります。精霊は適正がない者には姿を見ることはできません。
四大精霊として、火の精霊サラマンダー、水の精霊オンディーヌ、風の精霊シルフ、土の精霊ノームがいます。他にも海の精霊ネレイド、樹木の精霊ドライアド、山の精霊オレイアドなどが存在しています。
「お二人とも魔法剣士という位置づけですね。ロードは上級ジョブでも上の方になります。サムライは上級ジョブの真ん中よりも少し上でしょうか。そこから転職となると、なかなか候補が出ないでしょう」
「俺はないですね」
系統外の候補ならありますが、〝白魔法が使える剣士〟の系統としてはロードが一番上になります。
「私は今のところロイヤルガードがあるね」
「ロイヤルガードは盾役の上級ジョブですね。身体強化系のスキルはありますが、魔法はありませんね。今はサムライのほうがいいと思いますよ。いずれはハタモトやミフネが出ると思います」
「私はサムライになりたかったから、このままで大丈夫」
サラは前世でも、この世界で記憶が戻る前でもサムライにこだわっていました。少し時間を戻してみましょう。
~~~
サラがレイと会ってすぐのころの話です。二人ともまだ記憶は戻っていません。
「レイ様は成人したら何をなさるおつもりですか?」
「う~ん、たぶんマリオンは離れるよ。王都に出て仕事を探すつもりだから。これくらいの頭があれば、役人として雇ってもらえるんじゃないかな」
「そうですね。ジョブ次第だと思いますが」
「そこが問題だなあ」
レイはもっと幼い頃から自分は飛び抜けて頭がいいのだろうと、周りの反応を見て思っていました。それなら王都に出れば仕事があるだろうと。その前に聖別式を受けてジョブを授からなければならなりません。その結果次第で人生が変わることもあります。まだまだ先の話ですが。
「サラにはなりたいジョブはあるの?」
レイがそう聞いたのは、自分にはなりたいと言えるジョブがなかったからです。
「東方の国にあるサムライというジョブが気になっています。ですが上級ジョブですので、いきなりは難しいと思います」
「いきなり上級ジョブはね」
ジョブには上級ジョブと一般ジョブという二つのカテゴリーがあります。才能のある人は最初から上級ジョブを得ることもありますが、通常は一般ジョブからのステップアップとして上級ジョブに転職します。
サラが口にしたサムライは黒魔法も使える前衛職なので、一般ジョブである戦士や剣士として体を鍛え、それから魔術師として知能を上げ、さらには滝に打たれるなどして精神鍛錬も行わないといけないとされています。
「でもどうしてサムライになりたいの?」
「自分でもよく分かりませんが、誰かにお仕えするというのが向いているのでしょうか。今もこのようにレイ様にお仕えするのがしっくりときています。レイ様はいかがですか?」
「う~ん、役人になるなら頭がいいほうがいいから、僧侶とか教師とか。まあ運を天に任せるしかないけどね」
なりたいジョブになれるとは限りません。特に最初のジョブは神々から与えられるものであって自分で選ぶものではないのです。
最初に与えられるジョブには、どのような環境で育ったかが大きく影響すると言われています。ところが、魔術師の夫婦に武闘家の子供が生まれることも実際にはあります。だから気にしすぎると疲れるというのが一般的な考えです。
どんなジョブを授かろうとも、必要があれば転職すればいいのです。そのままでいいと思えば転職する必要はありません。ただそれだけです。
「まだ六年ありますからね」
「その間にしっかりと鍛えないとね」
レイは五歳になるころから庭で剣を振っていました。一人で本を読むのに飽きたので体を動かそうと思ったのがきっかけですが、今では日課のようになっています。
守衛たちの交代とタイミングが合えば、木剣で練習の相手をしてもらっています。彼らも立ちっぱなし座りっぱなしでは疲れるからです。最近ではレイの技術がかなり上がり、守衛たちもうかうかすると一本取られるようになりました。
「私もご一緒してもよろしいですか?」
「もちろん。いつも守衛の誰かに相手をしてもらうから、サラの分も頼んでおこう」
「ありがとうございます」
その翌日から、サラも剣と刀と弓矢と槍の使い方を守衛の誰かから教わり始めます。その努力の結果なのかどうかはわかりませんが、サラは聖別式でサムライのジョブを得ることになるのでした。
~~~
「それから〝経験値〟についてです」
ステータスカードには経験値という項目があります。これを能力値やスキルの熟練度に足すことで能力を上げることができます。それ以外にも体力や魔力を増やすこともできます。
「真面目にやっていれば増えるようですが、これもギルドのランクと同じで、何をどうすれば得られるのか、はっきりとはわかっていません。魔物を倒したからといって増えるとは限りません」
ちなみにこれ、ゲームに出てくる経験値とは違って、それほど得られるものではありません。自分自身を向上させようと努力した結果として入るものなんですよ。
「真面目に仕事をしていれば増えるのは間違いないんですね?」
「はい、そうです」
「じゃあ問題ないね」
レイとサラは手元のステータスカードに目を落とします。
「レイモンド様もサラさんも、最初からかなり強くなっていますので、あまりレベルを上げる必要はないでしょうね」
「やっぱり強いですか?」
「ええ。私の知る限りでは、冒険者として普通に活動するのでしたら、レベルはFもあれば十分です。ドラゴンを倒すと言い出さない限りは」
「そんな無茶は言いませんから大丈夫です」
レイはそう言いますが、サラは何か思うところがあるみたいですよ。「ドラゴンに乗ったらカッコいいじゃん」とか言い出しかねませんね。
「そして、最後が〝レベル〟に関してです。これが少しややこしいので注意してください」
個人個人にレベルがあります。キャラクターレベルと呼べるものですね。この数値は必ずしも個人の強さとは直結していません。
「どれだけの期間、そのジョブで活動してきたかの目安と考えたらいいでしょう。一般ジョブの人が冒険者を続けるなら、頑張れるだけ頑張って三年で五〇と思ってください。レベルが上がっても能力値やスキルのレベルが上がることはありません」
一年目は二五くらいまで上がります、少しずつ上がりにくくなり、三年で五〇上がればかなり早いほうです。
「レベルが五〇を超えると経験値の入り具合も悪くなりますので、そのあたりで転職を考える人が多いですね」
「いつまでも同じことしてんなよって神様が言ってるのかもしれないね」
「そうかもしれませんね。とりあえず、さらに能力を上げたいのなら転職をお勧めします。お二人は上級ジョブなので、一般ジョブよりもレベルアップが遅めです。一年目は五か六あたりまでだと考えておいてください」
上級ジョブは一般ジョブで鍛えた先にありますので、レベルの上がり方はかなり遅くなります。一般ジョブの五分の一が目安とされています。
「焦らなくていいよな?」
「のんびりでいいよね」
記憶が戻る前、上級ジョブになったことで少し戸惑っていたレイですが、今ではそのようなこともなくなりました。むしろ安全マージンがしっかり確保できることに感謝しています。
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