182 / 190
第8章:春、急カーブと思っていたらまさかのクランク
第17話:ダンジョンと人格
しおりを挟む
レイは地図を持ち、ニコルを腰の革袋に入れてダンジョンに入りました。魔物が出ないことはみんなが確認していますが、念のために武器と防具を着用しています。これは家族も同じです。油断して命を落とすほど馬鹿らしいことはありませんからね。
そう思って地上階の通路に入ったレイですが、少しするとニコルが急にジタバタし始めました。
「どうした?」
ペカ、ペカペカ、ペカ、ペカペカ
「それじゃ分からないから字を書いてくれ」
レイは青と赤に点滅するニコルを床に下ろすとペンを渡しました。
『一番上に来てほしいとダンジョンが言っています』
「話が通じるのか?」
『先ほどから聞こえるようになりました』
「ん? クラストンのダンジョンでは違ったのか?」
『前のダンジョンは、一度外に出たら声が聞こえなくなりました。今は入ったら聞こえました』
「そうか。それならとりあえず一番上に行くか」
ニコルが嘘を言うとは思えません。ダンジョンで生まれたニコルだからこそ何かがわかるのかもしれないと思い、レイはその言葉を信じることにしました。
そのまま地上階の通路を歩くと、見覚えのない扉があります。
「いつの間にか転移部屋ができてるな」
これまでこのダンジョンには転移部屋はありませんでした。そもそもこのダンジョンには魔物はいませんし、罠もありません。規模が規模ですので、危険がなければ転移部屋は必要なありません。
レイはそのまま歩いて地上一階に上がります。まったく音のない、ある意味では不思議な空間です。レイの足音だけが響いています。
日常的には、たとえどれだけ静かな場所でも何かしらの音が聞こえます。外を歩いている人の声、風で揺れる窓の音。音がまったくないというのは、実は不自然な環境なのです。もちろんスキルを使えばそのような空間も作れますが。
急ぎ気味に上に向かうレイの目に、安全地帯の扉が映りました。
「安全地帯もできたのか」
中を覗いたレイの目に、やはりクラストンのダンジョンと同じく、何もない広間が見えました。危険がないと分かっていても安全地帯のほうが安心できるのは当然なので、あれば嬉しい設備でしょう。
安全地帯を確認すると、レイは小走りに二階へ向かいます。それから三階、四階と順々に上がります。地図がある上に、広さはさほどでもありませんので、二時間もかからずに七階への階段が見えました。
現在は地上階の上に七階、下に七階あることが確認されています。ここまで魔物も罠もありませんが、何があるかはわかりません。大丈夫だろうとは思いつつも、万が一のことを考えながらレイは階段を上がります。そして七階の床が見えた瞬間、目の前の光景に絶句しました。
「これは限度を知らないな」
見渡す限り、通路に宝箱が並んでいました。まるで宝物庫のように。
「ダンジョンの年齢なんてわからないけど、まだ子供なのかもしれないな」
『マスターのことをパパと呼んでいます』
「パパァ?」
レイにはどうしてパパと呼ばれたのか、その理由はわかりません。ただし、この加減を知らない歓待っぷりは、子供が親に喜んでもらおうと精一杯頑張っているように思えなくもありません。そうでなければ足を入れるスペースを残して宝箱がぎっしり並んでいるというのは普通では考えられないでしょう。
今さら罠はないだろうと、レイは片っ端から宝箱を開け、中身をマジックバッグに入れていきます。それでもマジックバッグの容量には限度があります。
さすがに全部は入らないなと思ったとき、一部の宝箱がマジックバッグになっているのがわかりました。中身を取り出しても消えなかったからです。
マジックバッグ機能のある宝箱の中は、一辺三メートルほどの立方体です。マジックバッグとしては一番容量が小さいものですが、これだけ数があれば肉の塊や壺くらいはいくらでも入るでしょう。宝箱の中に詰められるだけ詰め、それをマジックバッグの中に入れていきます。
ようやく宝箱がなくなったと思ったころ、またニコルに反応がありました。
『今度は地下七階に来てほしいそうです』
「まさか……」
嫌な気がプンプンしますが、無視するわけにもいきません。レイは急いで階段を下りると、地下七階を目指しました。
◆◆◆
「それで、結局どうだったの?」
サラが微妙な顔のレイに聞きますが、レイ自身も理解しきれていません。だから、レイは事実だけを話すことにしました。
「入ったところでニコルに反応があったから話を聞いたら、ダンジョンが俺のことをパパと呼んでるらしい」
「「「パパ⁉」」」
みんなが驚きますが、レイはそのまま説明を続けます。
地上七階は宝箱が床一面ぎっしりでした。一部はマジックバッグ化した宝箱だったので、それに中身を詰め替えて持ち帰ろうとしました。
ようやく片付いたかと思ったら、今度は地下七階に来てほしいと言われたので行ってみると、やはりそちらも同じ状態でした。
「中身を確認しましたが、魔物肉が一番多くて、その次がお酒でしたね。エールにミード、それから各種ワインに各種ブランデーがありました。火酒も何種類か。他にも、その元となっているブドウ、リンゴ、ナシ、ミカン。さらには小麦、パスタ小麦、大麦、ライ麦。お塩や砂糖、卵にバター。植物油が数種類。調味料などが一通り」
壺の中身を調べていたシーヴが報告します。
「これまでダンジョンに与えたものやその材料が出たってことか?」
レイはワインをかけたことがありますが、さすがにブランデーはかけていません。ただし、ブランデーはワインから作ります。ワインならかけたことがありました。
「これだけあればレストランができそうだね」
「たしかにこの量を考えたらしばらくは食材に困らないだろうな」
中身はすべて食材でした。誰も与えた記憶のないものが出てきたのは、ダンジョンのほうで考えたのかもしれません。もしくは、誰かが勝手に与えたものかもしれません。
「しかし、そのままなら冒険者を入れられないよなあ。入ってもらってもいいけど食材しかないからなあ」
ダンジョンがあると聞けば冒険者は集まってくるでしょうが、一攫千金を狙っている冒険者からすると、食材しか見つからないダンジョンは微妙です。
「食材集めイベントはできませんの?」
「イベントにするほど面白いものは出ないからな」
品質は高いのですが、食材そのものはどこででも手に入るものです。酒飲みならブランデーが出れば嬉しいでしょうが、それよりもお金のほうが嬉しいでしょう。
「レイ兄、宝箱の中身や数を調節してくれるようにニコル経由で頼んでみたら?」
「そうだな。明日もう一度出かけてみるか。それで頼めたら頼んでみよう。ニコル、明日も頼む」
ぺか
レイはどうにかなりそうだと考えていました。レイ以外は、レイならなんとかするだろうという気がしていました。
◆◆◆
翌朝、朝食が終わると、レイはニコルを連れてダンジョンに出かけました。
「ニコル、ダンジョンの声は聞こえるか?」
『はい。パパが来たとダンジョンが喜んでいます』
「そうか。それなら……俺と家族が直接声をかけて頼んだらいっぱい用意してほしい。そうでなければどれかをランダムに、バラバラの場所に少しだけ出してほしい。そう伝えてくれ」
ぺか
ニコルは一度光るとペンを動かしました。
『いっぱい出す場所はどこがいいかと言っています』
「場所か」
いずれはこのダンジョンにも冒険者が入るでしょう。床一面の宝箱が冒険者たちに見つかるのは具合が悪いかもしれません。中身が食材だけなら問題ないでしょうが。
「もし可能なら、隠し部屋を用意して、そこを俺と家族しか入れないようにしてほしい」
『この先にマスターと家族だけが入れる場所を作るそうです』
地上階の一角に隠し部屋が作られることになりました。
「魔物を出せるかどうか聞いてくれるか?」
レイはこの際、気になることをまとめて聞いておくことにしました。
『食べた肉の分は確実に出せるそうです』
「そうか。まだ出さなくていいけど、いずれは頼むと言っておいてくれ」
『はい。魔物のことを勉強しておくそうです』
「あー、てことは食材も勉強して出してたのか」
『食べたものを分析して食材を探したそうです』
「探した……」
レイにはダンジョンがどこから食材を探して手に入れたのかわかりませんが、これ以上聞いてはいけないような気がしました。
確認が終わったレイとニコルは、宝箱を回収すると家へと戻りました。はい、ダンジョンがまたたくさん用意してくれていたんです。食材ばっかりですが、かなり上等なものも含まれていました。
◆◆◆
「それじゃあここまでの結果を発表する」
レイはここしばらくの調査でわかったことをダンジョンに確認しました。その結果、おおよそ想像通りなことがわかりました。
・レイの配下にあるゴーレムたちは、ダンジョン内ではダンジョンと意思疎通ができる。ただし、意思疎通ができるのはこのダンジョンだけで、クラストンでは一度ダンジョンから出たらダンジョンの声は聞こえなくなった。
・レイと家族が与えたものやその材料は、頼んだその翌日に宝箱から現れる。宝箱の数はニコル経由で変更してもらえる。
・地上階に隠し部屋が作られる予定で、特にたくさん出してほしい場合はそこを利用することになる。
・一度でも宝箱から出たものはそれ以降もどこかに出る可能性がある。ただし、確実に出してほしければ、レイたちが与えなければならない。
「これで宝箱もほどほど、中身もほどほどにできそうだ。魔物もいずれは出してもらおう」
「レイさん、宝箱の中身と魔物のことが相談できるのなら、他も相談できる可能性があるということですね?」
「できるらしい。最初からいろいろとわかってれば楽だったんだけどなあ」
「ですが……まだ冒険者を呼べる段階ではありませんので、ちょうどいいのかもしれません」
シェリルは腕組みをしながら、先ほどから情報を書き込んでいた紙を見た。
「そうだな。宿屋に酒場、商店、武器屋など、何もないからな」
領地経営に関しては、妻の中で一番経済に詳しいシェリルと相談しながら進めてきましたが、何もなければ彼女ででもどうしようもないのです。
「それならしばらくは……兵站の代わりをしてもらいましょうか。ジンマにばっかり負担をかけるわけにはいきませんし」
「そうだな。運搬まではしてくれないけど、そこはニコルたちに頼めばいいか」
ぺか
ニコルはレイの家族と認識されているので、レイの支配下のゴーレムたちはすべて隠し部屋に入れることになっています。ゴーレムたちは交代で町の見回りに出かけていて、場合によっては重量物の運搬をしています。宝箱の一つや二つは簡単に運べます。
ダンジョンについてわかったことは関係者以外には漏らさないということに決まりました。マーシャとダーシー、そしてドロシーとフィルシーもうなずきます。ただし、ダーシーが舌なめずりしたのをレイはうっかりと見てしまいました。
そう思って地上階の通路に入ったレイですが、少しするとニコルが急にジタバタし始めました。
「どうした?」
ペカ、ペカペカ、ペカ、ペカペカ
「それじゃ分からないから字を書いてくれ」
レイは青と赤に点滅するニコルを床に下ろすとペンを渡しました。
『一番上に来てほしいとダンジョンが言っています』
「話が通じるのか?」
『先ほどから聞こえるようになりました』
「ん? クラストンのダンジョンでは違ったのか?」
『前のダンジョンは、一度外に出たら声が聞こえなくなりました。今は入ったら聞こえました』
「そうか。それならとりあえず一番上に行くか」
ニコルが嘘を言うとは思えません。ダンジョンで生まれたニコルだからこそ何かがわかるのかもしれないと思い、レイはその言葉を信じることにしました。
そのまま地上階の通路を歩くと、見覚えのない扉があります。
「いつの間にか転移部屋ができてるな」
これまでこのダンジョンには転移部屋はありませんでした。そもそもこのダンジョンには魔物はいませんし、罠もありません。規模が規模ですので、危険がなければ転移部屋は必要なありません。
レイはそのまま歩いて地上一階に上がります。まったく音のない、ある意味では不思議な空間です。レイの足音だけが響いています。
日常的には、たとえどれだけ静かな場所でも何かしらの音が聞こえます。外を歩いている人の声、風で揺れる窓の音。音がまったくないというのは、実は不自然な環境なのです。もちろんスキルを使えばそのような空間も作れますが。
急ぎ気味に上に向かうレイの目に、安全地帯の扉が映りました。
「安全地帯もできたのか」
中を覗いたレイの目に、やはりクラストンのダンジョンと同じく、何もない広間が見えました。危険がないと分かっていても安全地帯のほうが安心できるのは当然なので、あれば嬉しい設備でしょう。
安全地帯を確認すると、レイは小走りに二階へ向かいます。それから三階、四階と順々に上がります。地図がある上に、広さはさほどでもありませんので、二時間もかからずに七階への階段が見えました。
現在は地上階の上に七階、下に七階あることが確認されています。ここまで魔物も罠もありませんが、何があるかはわかりません。大丈夫だろうとは思いつつも、万が一のことを考えながらレイは階段を上がります。そして七階の床が見えた瞬間、目の前の光景に絶句しました。
「これは限度を知らないな」
見渡す限り、通路に宝箱が並んでいました。まるで宝物庫のように。
「ダンジョンの年齢なんてわからないけど、まだ子供なのかもしれないな」
『マスターのことをパパと呼んでいます』
「パパァ?」
レイにはどうしてパパと呼ばれたのか、その理由はわかりません。ただし、この加減を知らない歓待っぷりは、子供が親に喜んでもらおうと精一杯頑張っているように思えなくもありません。そうでなければ足を入れるスペースを残して宝箱がぎっしり並んでいるというのは普通では考えられないでしょう。
今さら罠はないだろうと、レイは片っ端から宝箱を開け、中身をマジックバッグに入れていきます。それでもマジックバッグの容量には限度があります。
さすがに全部は入らないなと思ったとき、一部の宝箱がマジックバッグになっているのがわかりました。中身を取り出しても消えなかったからです。
マジックバッグ機能のある宝箱の中は、一辺三メートルほどの立方体です。マジックバッグとしては一番容量が小さいものですが、これだけ数があれば肉の塊や壺くらいはいくらでも入るでしょう。宝箱の中に詰められるだけ詰め、それをマジックバッグの中に入れていきます。
ようやく宝箱がなくなったと思ったころ、またニコルに反応がありました。
『今度は地下七階に来てほしいそうです』
「まさか……」
嫌な気がプンプンしますが、無視するわけにもいきません。レイは急いで階段を下りると、地下七階を目指しました。
◆◆◆
「それで、結局どうだったの?」
サラが微妙な顔のレイに聞きますが、レイ自身も理解しきれていません。だから、レイは事実だけを話すことにしました。
「入ったところでニコルに反応があったから話を聞いたら、ダンジョンが俺のことをパパと呼んでるらしい」
「「「パパ⁉」」」
みんなが驚きますが、レイはそのまま説明を続けます。
地上七階は宝箱が床一面ぎっしりでした。一部はマジックバッグ化した宝箱だったので、それに中身を詰め替えて持ち帰ろうとしました。
ようやく片付いたかと思ったら、今度は地下七階に来てほしいと言われたので行ってみると、やはりそちらも同じ状態でした。
「中身を確認しましたが、魔物肉が一番多くて、その次がお酒でしたね。エールにミード、それから各種ワインに各種ブランデーがありました。火酒も何種類か。他にも、その元となっているブドウ、リンゴ、ナシ、ミカン。さらには小麦、パスタ小麦、大麦、ライ麦。お塩や砂糖、卵にバター。植物油が数種類。調味料などが一通り」
壺の中身を調べていたシーヴが報告します。
「これまでダンジョンに与えたものやその材料が出たってことか?」
レイはワインをかけたことがありますが、さすがにブランデーはかけていません。ただし、ブランデーはワインから作ります。ワインならかけたことがありました。
「これだけあればレストランができそうだね」
「たしかにこの量を考えたらしばらくは食材に困らないだろうな」
中身はすべて食材でした。誰も与えた記憶のないものが出てきたのは、ダンジョンのほうで考えたのかもしれません。もしくは、誰かが勝手に与えたものかもしれません。
「しかし、そのままなら冒険者を入れられないよなあ。入ってもらってもいいけど食材しかないからなあ」
ダンジョンがあると聞けば冒険者は集まってくるでしょうが、一攫千金を狙っている冒険者からすると、食材しか見つからないダンジョンは微妙です。
「食材集めイベントはできませんの?」
「イベントにするほど面白いものは出ないからな」
品質は高いのですが、食材そのものはどこででも手に入るものです。酒飲みならブランデーが出れば嬉しいでしょうが、それよりもお金のほうが嬉しいでしょう。
「レイ兄、宝箱の中身や数を調節してくれるようにニコル経由で頼んでみたら?」
「そうだな。明日もう一度出かけてみるか。それで頼めたら頼んでみよう。ニコル、明日も頼む」
ぺか
レイはどうにかなりそうだと考えていました。レイ以外は、レイならなんとかするだろうという気がしていました。
◆◆◆
翌朝、朝食が終わると、レイはニコルを連れてダンジョンに出かけました。
「ニコル、ダンジョンの声は聞こえるか?」
『はい。パパが来たとダンジョンが喜んでいます』
「そうか。それなら……俺と家族が直接声をかけて頼んだらいっぱい用意してほしい。そうでなければどれかをランダムに、バラバラの場所に少しだけ出してほしい。そう伝えてくれ」
ぺか
ニコルは一度光るとペンを動かしました。
『いっぱい出す場所はどこがいいかと言っています』
「場所か」
いずれはこのダンジョンにも冒険者が入るでしょう。床一面の宝箱が冒険者たちに見つかるのは具合が悪いかもしれません。中身が食材だけなら問題ないでしょうが。
「もし可能なら、隠し部屋を用意して、そこを俺と家族しか入れないようにしてほしい」
『この先にマスターと家族だけが入れる場所を作るそうです』
地上階の一角に隠し部屋が作られることになりました。
「魔物を出せるかどうか聞いてくれるか?」
レイはこの際、気になることをまとめて聞いておくことにしました。
『食べた肉の分は確実に出せるそうです』
「そうか。まだ出さなくていいけど、いずれは頼むと言っておいてくれ」
『はい。魔物のことを勉強しておくそうです』
「あー、てことは食材も勉強して出してたのか」
『食べたものを分析して食材を探したそうです』
「探した……」
レイにはダンジョンがどこから食材を探して手に入れたのかわかりませんが、これ以上聞いてはいけないような気がしました。
確認が終わったレイとニコルは、宝箱を回収すると家へと戻りました。はい、ダンジョンがまたたくさん用意してくれていたんです。食材ばっかりですが、かなり上等なものも含まれていました。
◆◆◆
「それじゃあここまでの結果を発表する」
レイはここしばらくの調査でわかったことをダンジョンに確認しました。その結果、おおよそ想像通りなことがわかりました。
・レイの配下にあるゴーレムたちは、ダンジョン内ではダンジョンと意思疎通ができる。ただし、意思疎通ができるのはこのダンジョンだけで、クラストンでは一度ダンジョンから出たらダンジョンの声は聞こえなくなった。
・レイと家族が与えたものやその材料は、頼んだその翌日に宝箱から現れる。宝箱の数はニコル経由で変更してもらえる。
・地上階に隠し部屋が作られる予定で、特にたくさん出してほしい場合はそこを利用することになる。
・一度でも宝箱から出たものはそれ以降もどこかに出る可能性がある。ただし、確実に出してほしければ、レイたちが与えなければならない。
「これで宝箱もほどほど、中身もほどほどにできそうだ。魔物もいずれは出してもらおう」
「レイさん、宝箱の中身と魔物のことが相談できるのなら、他も相談できる可能性があるということですね?」
「できるらしい。最初からいろいろとわかってれば楽だったんだけどなあ」
「ですが……まだ冒険者を呼べる段階ではありませんので、ちょうどいいのかもしれません」
シェリルは腕組みをしながら、先ほどから情報を書き込んでいた紙を見た。
「そうだな。宿屋に酒場、商店、武器屋など、何もないからな」
領地経営に関しては、妻の中で一番経済に詳しいシェリルと相談しながら進めてきましたが、何もなければ彼女ででもどうしようもないのです。
「それならしばらくは……兵站の代わりをしてもらいましょうか。ジンマにばっかり負担をかけるわけにはいきませんし」
「そうだな。運搬まではしてくれないけど、そこはニコルたちに頼めばいいか」
ぺか
ニコルはレイの家族と認識されているので、レイの支配下のゴーレムたちはすべて隠し部屋に入れることになっています。ゴーレムたちは交代で町の見回りに出かけていて、場合によっては重量物の運搬をしています。宝箱の一つや二つは簡単に運べます。
ダンジョンについてわかったことは関係者以外には漏らさないということに決まりました。マーシャとダーシー、そしてドロシーとフィルシーもうなずきます。ただし、ダーシーが舌なめずりしたのをレイはうっかりと見てしまいました。
33
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる