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第7章:新春、急展開
第32話:代官を引き受けること
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「引き受けてくれるか⁉」
「はい。みんなも賛成してくれましたので」
レイはローランドに代官就任の依頼を受けると伝えました。
「しかし町の建設からということになると、相当時間がかかりますね」
「一部はジンマのエルフたちが協力してくれることになっている。町の建設にはここで城壁工事を行っている者たちの一部を先に向かわせている」
整地や城壁についてはエルフたちが魔法で行うことになっています。ジンマの城壁と同じように、植物を使った城壁を仮に作り、それから中に建物を用意するという手はずが整っていました。
レイは建設作業そのものには関わらなくてもいいのですが、人材集めと現場の指揮はしなければなりません。チェーン店が新店舗を作るのに、店舗の場所、そして店長と副店長だけを決め、バイトの採用から何からその二人に丸投げするのに近いでしょう。その副店長が誰かというと、
「レイさん、公私ともによろしくお願いします。ですので、その厄介者を見るような目はやめてください。これでも領主の娘なのですが」
ローランドの娘シェリルでした。
「やはり来るんですか?」
「はい。領地のことは頭に叩き込んでいます。今は代官補佐ですが、いずれは……ふふふっ……あ、もちろん第一夫人にしろなどと図々しいことは申しません。格落ちが甚だしいので、部屋の隅のホコリと同じ程度でいいので、たまに存在を気にしていただければ。ああ、邪魔だなあとか……」
そう言いながら、シェリルの声は消えるように小さくなっていきます。
「いや、そこで気落ちされても」
シェリルは貴族の令嬢としてそれなりに整った見た目ですが、レイの側にいるのは、シーヴを始めとして美女・美少女ばかりです。彼女が初めてシーヴたちを見たとき、そのまま回れ右をして帰ろうとし、レナードに止められました。
シェリルの名誉のために言うのではありませんが、彼女の見た目は『行雲流水』のメンバーと比べても、けっして劣っているわけではありません。それなのにそう考えてしまうのは、彼女が貴族の令嬢だからです。
貴族の家に生まれた者として、シェリルは幼いころから王都で他の令嬢との交流がありました。髪や顔は当然のこと、指の先まで身なりに気を配るのは当然です。ところが、レイの恋人たちはほぼ平民であり、しかも普段から魔物を相手に屋外を走り回るような冒険者です。それでこのレベルなのかとショックを受けてしまったのです。
◆◆◆
レイが代官を引き受けることに決めてからしばらくして、冒険者ギルドの会議室に関係者が集まりました。領主ローランドの代理として執事のレナード。代官補佐をすることになるシェリル。そしていくつかのギルドの代表者と担当者。一方で、レイたちは日本人組だけが来ています。
「ギルドは一から用意すると時間がかかるから、とりあえず冒険者ギルドのみってことだ。そこに他のギルドが加わるという形になるな。そうは言っても、冒険者ギルドが上ってわけじゃないぞ。とりあえず最初だけな」
「素材に関しちゃうちと重なるものが多いからね。商人ギルドは輸送で馬車馬のように働いてもらうよ」
「最初は忙しいそうだね」
冒険者ギルドのザカリー、薬剤師ギルドのヘザー、商人ギルドのマーク、三人のギルド長が並んでいました。
「仮のギルド長と冒険者ギルドの代表は私マーシャが担当を務めます」
「薬剤師ギルドは私ダーシーが代表になります」
「メレディスと申します。商人ギルドの代表をすることになりました」
新しい町に移籍する代表として、冒険者ギルドからはマーシャ、薬剤師ギルドからはダーシー、商人ギルドからはメレディスが呼ばれていました。
レイはマーシャとダーシーの二人とは面識があります。メレディスと会ったのは今日が初めてです。メレディスは大人しめの女性で、髪を下の方で二つ結びにしています。図書館や書店が似合いそうだとレイには思えました。
「職員の三人はこっちに来て大丈夫だったんですか?」
「はい。後任はいくらでも見つかりますので」
「薬剤師ギルドも同じですね。むしろギルド長から他に隠している秘薬がないか、一緒にベッドに入ってでも調べておくようにと言われていますよ」
「本人がいる前でそれが言えるようになるとは立派になったねえ、ダーシー。アンタ、男を知って変わったのかい?」
ヘザーの言葉を聞いたザカリーとシェリルがレイをじろっと見ました。
「レイ、お前いつの間に職員にまで手を出してたんだ?」
「そうです。私には手も触れないのにどういうことですか?」
「いや、冤罪だ冤罪。端切れでいいからパンダの毛皮が欲しいって言われたから、ホントに端切れだけで作ったマフラーを渡しただけだって。手を出したわけじゃない」
ザカリーとシェリルから問い詰められ、レイは両手を上げて自分の潔白を主張しました。
「これですよ、これ! この真っ白のフワフワ!」
ダーシーはマフラーを取り出すと首に巻いて頬ずりをしました。
「まあ普通の娘がそんなものを渡されたら簡単に堕ちるさね。娘と呼ぶにはとうが立ってるけどね」
「ギルド長にはわからないんですよ! 相手が見つかる可能性が〇パーセントから一パーセントになることの意味が!」
拳を握りしめながらダーシーはヘザーに向かって力説します。ヘザーには夫どころではなく子供も孫も曾孫いるからです。
「私は従妹の恩返しをと思いまして」
そう言ったのはメレディスです。商人ギルドの代表として大抜擢されました。
「従妹ですか?」
「はい。レイモンド様は去年、オスカーの町で大規模な盗賊団を退治なさったとか」
「ああ、たしかにそういうことがありましたね。退治するつもりじゃなくて、いつもどおりに森に行ったら、ゾロゾロと出てきたので倒したんですけど」
魔物を狩ろうと森に入ったらラケルが異変に気づいてレイに警告しました。そのリーダーがラケルを奴隷商に売ったバートで、その戦いはラケルにとっては復讐でもあったのです。
「盗賊の根城に捕らえられていた中に私の従姉がおりました。ハンナという名前です。かなりひどい状態だったそうですが、命だけは助かったそうです」
「命があってよかったですね。俺たちは森から出てきた盗賊を退治してからすぐに南へ向かったので、根城を落としたのは町にいた冒険者や兵士たちでしょう」
「はい、そうだと伺っております。ですが、ハンナはレイモンド様に大変感謝をしていました」
レイは盗賊の生き残りから情報を得ることができました。そのときに捕らえられた女性がいるという情報を得ています。だから、そのまま根城に向かうのではなく、町に戻って情報を伝えました。人手が必要だったからです。
「そのハンナですが、しばらくしてから助けてくれた兵士の一人と結婚したそうです」
「今後は幸せな人生を送れれればいいですね」
レイはそのハンナを知らないので、ごく常識的な反応をしました。しかし、メレディスの表情は曇ったままです。何かおかしなことを言ったのかと、レイは不安になりました。
「ハンナの話を聞いて私は思いました」
メレディスはそう言いながら椅子から立ち上がりました。
「どうして私の人生には、これまで心躍るようなイベントが一つもなかったのでしょうかッ⁉」
顔の前で両の拳を握りしめて悔しがるメレディスに、レイは唖然とした顔を向けました。
「ちょっと待て。盗賊に捕らえられたら殺されるかもしれないんだぞ?」
相手が年上にも関わらず、レイは思わず素で返しました。
「もちろんそれは分かっております。ですが、喜びも悲しみもない平坦な人生よりも、たとえ大きな被害があっても、山も谷もあるほうが素晴らしいと愚考いたします」
「いや、平坦なほうがいい」
「では、平坦な女体のほうがメリハリのある女体よりも興奮するとおっしゃるのですか⁉」
「体と比べるなって。それに女体って言い方はやめろ!」
「まあまあ、レイさんもメレディスさんも落ち着いて」
押され気味なレイに助け舟を出したのはダーシーでした。
「レイさん、冒険者ギルドと比べれば薬剤師ギルドも商人ギルドも出会いが少ないんですよ。うちのお客さんはみんな根暗ですし、いつも来てくれるレイさんの笑顔にどれだけ癒されたか。窓口にいてよかったと心底思いましたね」
メレディスをなだめながらも、さりげなく自慢するダーシー。助け船なのか焼き討ち船なのか、レイにはその時点では判断できませんでした。
横で話を聞いていたマーシャは困った顔をしていました。
「冒険者ギルドは騒がしいだけですよ」
「それでもマーシャさんには旦那さんがいるじゃないですか。二人とも私よりも若いのに」
「そうです。三人の中で一番若いのにお相手がいるなんて恵まれすぎです」
「ええ……まあ……」
マーシャは二人からのツッコミに微妙な表情になりました。そのやり取りを聞いて一番驚いたのはレイです。
「マーシャさんって結婚してたんですか? それならクラストンを出るのは問題では?」
「それとこれとは別問題です。問題ありません」
マーシャ自身に問題がないのなら、レイはそれ以上は何も言いません。ギルドの方針を受け入れるだけです。
さすがにこの三人だけでギルドを運営できるわけではないので、いずれは各ギルドから数人ずつ募集し、合計で二〇人ほどが新しい町に移籍することが決まりました。その際、一部の町で使われているやり方が採用されることになりました。それがザカリーの言ったように、ギルドをまとめる方法です。
多くの町では冒険者ギルド、薬剤師ギルド、商人ギルド、大工ギルド、革職人ギルド、醸造家ギルドなど、仕事内容ごとに独自のギルドがあります。ただし、小さな町ではすべてを用意することは難しく、たとえば冒険者ギルドだけがあって、そこが他の仕事を引き受けるということがよくあります。それが「総合ギルド」という形式です。いずれは分けるとしても、しばらくは同じ場所で様々な仕事をすることになります。
「新しい町なら派閥もありません。気が楽ですね」
「はい。面倒な柵もありませんからね」
「玉の輿が狙えるという役得がございますね」
「狙わせないからな」
レイの考えをよそに、町を建設するという大プロジェクトが動き始めます。立場が上になれば、それにともなって責任も大きくなります。人一倍責任感のあるレイなので問題はないのですが、わりとトラブル体質なことを彼の周りにいる女性たちは知っています。だからこそ、何が起きてもレイを支えようと一致団結しているわけですが、それでも予想を大きく超える事態は起きるものです。
「はい。みんなも賛成してくれましたので」
レイはローランドに代官就任の依頼を受けると伝えました。
「しかし町の建設からということになると、相当時間がかかりますね」
「一部はジンマのエルフたちが協力してくれることになっている。町の建設にはここで城壁工事を行っている者たちの一部を先に向かわせている」
整地や城壁についてはエルフたちが魔法で行うことになっています。ジンマの城壁と同じように、植物を使った城壁を仮に作り、それから中に建物を用意するという手はずが整っていました。
レイは建設作業そのものには関わらなくてもいいのですが、人材集めと現場の指揮はしなければなりません。チェーン店が新店舗を作るのに、店舗の場所、そして店長と副店長だけを決め、バイトの採用から何からその二人に丸投げするのに近いでしょう。その副店長が誰かというと、
「レイさん、公私ともによろしくお願いします。ですので、その厄介者を見るような目はやめてください。これでも領主の娘なのですが」
ローランドの娘シェリルでした。
「やはり来るんですか?」
「はい。領地のことは頭に叩き込んでいます。今は代官補佐ですが、いずれは……ふふふっ……あ、もちろん第一夫人にしろなどと図々しいことは申しません。格落ちが甚だしいので、部屋の隅のホコリと同じ程度でいいので、たまに存在を気にしていただければ。ああ、邪魔だなあとか……」
そう言いながら、シェリルの声は消えるように小さくなっていきます。
「いや、そこで気落ちされても」
シェリルは貴族の令嬢としてそれなりに整った見た目ですが、レイの側にいるのは、シーヴを始めとして美女・美少女ばかりです。彼女が初めてシーヴたちを見たとき、そのまま回れ右をして帰ろうとし、レナードに止められました。
シェリルの名誉のために言うのではありませんが、彼女の見た目は『行雲流水』のメンバーと比べても、けっして劣っているわけではありません。それなのにそう考えてしまうのは、彼女が貴族の令嬢だからです。
貴族の家に生まれた者として、シェリルは幼いころから王都で他の令嬢との交流がありました。髪や顔は当然のこと、指の先まで身なりに気を配るのは当然です。ところが、レイの恋人たちはほぼ平民であり、しかも普段から魔物を相手に屋外を走り回るような冒険者です。それでこのレベルなのかとショックを受けてしまったのです。
◆◆◆
レイが代官を引き受けることに決めてからしばらくして、冒険者ギルドの会議室に関係者が集まりました。領主ローランドの代理として執事のレナード。代官補佐をすることになるシェリル。そしていくつかのギルドの代表者と担当者。一方で、レイたちは日本人組だけが来ています。
「ギルドは一から用意すると時間がかかるから、とりあえず冒険者ギルドのみってことだ。そこに他のギルドが加わるという形になるな。そうは言っても、冒険者ギルドが上ってわけじゃないぞ。とりあえず最初だけな」
「素材に関しちゃうちと重なるものが多いからね。商人ギルドは輸送で馬車馬のように働いてもらうよ」
「最初は忙しいそうだね」
冒険者ギルドのザカリー、薬剤師ギルドのヘザー、商人ギルドのマーク、三人のギルド長が並んでいました。
「仮のギルド長と冒険者ギルドの代表は私マーシャが担当を務めます」
「薬剤師ギルドは私ダーシーが代表になります」
「メレディスと申します。商人ギルドの代表をすることになりました」
新しい町に移籍する代表として、冒険者ギルドからはマーシャ、薬剤師ギルドからはダーシー、商人ギルドからはメレディスが呼ばれていました。
レイはマーシャとダーシーの二人とは面識があります。メレディスと会ったのは今日が初めてです。メレディスは大人しめの女性で、髪を下の方で二つ結びにしています。図書館や書店が似合いそうだとレイには思えました。
「職員の三人はこっちに来て大丈夫だったんですか?」
「はい。後任はいくらでも見つかりますので」
「薬剤師ギルドも同じですね。むしろギルド長から他に隠している秘薬がないか、一緒にベッドに入ってでも調べておくようにと言われていますよ」
「本人がいる前でそれが言えるようになるとは立派になったねえ、ダーシー。アンタ、男を知って変わったのかい?」
ヘザーの言葉を聞いたザカリーとシェリルがレイをじろっと見ました。
「レイ、お前いつの間に職員にまで手を出してたんだ?」
「そうです。私には手も触れないのにどういうことですか?」
「いや、冤罪だ冤罪。端切れでいいからパンダの毛皮が欲しいって言われたから、ホントに端切れだけで作ったマフラーを渡しただけだって。手を出したわけじゃない」
ザカリーとシェリルから問い詰められ、レイは両手を上げて自分の潔白を主張しました。
「これですよ、これ! この真っ白のフワフワ!」
ダーシーはマフラーを取り出すと首に巻いて頬ずりをしました。
「まあ普通の娘がそんなものを渡されたら簡単に堕ちるさね。娘と呼ぶにはとうが立ってるけどね」
「ギルド長にはわからないんですよ! 相手が見つかる可能性が〇パーセントから一パーセントになることの意味が!」
拳を握りしめながらダーシーはヘザーに向かって力説します。ヘザーには夫どころではなく子供も孫も曾孫いるからです。
「私は従妹の恩返しをと思いまして」
そう言ったのはメレディスです。商人ギルドの代表として大抜擢されました。
「従妹ですか?」
「はい。レイモンド様は去年、オスカーの町で大規模な盗賊団を退治なさったとか」
「ああ、たしかにそういうことがありましたね。退治するつもりじゃなくて、いつもどおりに森に行ったら、ゾロゾロと出てきたので倒したんですけど」
魔物を狩ろうと森に入ったらラケルが異変に気づいてレイに警告しました。そのリーダーがラケルを奴隷商に売ったバートで、その戦いはラケルにとっては復讐でもあったのです。
「盗賊の根城に捕らえられていた中に私の従姉がおりました。ハンナという名前です。かなりひどい状態だったそうですが、命だけは助かったそうです」
「命があってよかったですね。俺たちは森から出てきた盗賊を退治してからすぐに南へ向かったので、根城を落としたのは町にいた冒険者や兵士たちでしょう」
「はい、そうだと伺っております。ですが、ハンナはレイモンド様に大変感謝をしていました」
レイは盗賊の生き残りから情報を得ることができました。そのときに捕らえられた女性がいるという情報を得ています。だから、そのまま根城に向かうのではなく、町に戻って情報を伝えました。人手が必要だったからです。
「そのハンナですが、しばらくしてから助けてくれた兵士の一人と結婚したそうです」
「今後は幸せな人生を送れれればいいですね」
レイはそのハンナを知らないので、ごく常識的な反応をしました。しかし、メレディスの表情は曇ったままです。何かおかしなことを言ったのかと、レイは不安になりました。
「ハンナの話を聞いて私は思いました」
メレディスはそう言いながら椅子から立ち上がりました。
「どうして私の人生には、これまで心躍るようなイベントが一つもなかったのでしょうかッ⁉」
顔の前で両の拳を握りしめて悔しがるメレディスに、レイは唖然とした顔を向けました。
「ちょっと待て。盗賊に捕らえられたら殺されるかもしれないんだぞ?」
相手が年上にも関わらず、レイは思わず素で返しました。
「もちろんそれは分かっております。ですが、喜びも悲しみもない平坦な人生よりも、たとえ大きな被害があっても、山も谷もあるほうが素晴らしいと愚考いたします」
「いや、平坦なほうがいい」
「では、平坦な女体のほうがメリハリのある女体よりも興奮するとおっしゃるのですか⁉」
「体と比べるなって。それに女体って言い方はやめろ!」
「まあまあ、レイさんもメレディスさんも落ち着いて」
押され気味なレイに助け舟を出したのはダーシーでした。
「レイさん、冒険者ギルドと比べれば薬剤師ギルドも商人ギルドも出会いが少ないんですよ。うちのお客さんはみんな根暗ですし、いつも来てくれるレイさんの笑顔にどれだけ癒されたか。窓口にいてよかったと心底思いましたね」
メレディスをなだめながらも、さりげなく自慢するダーシー。助け船なのか焼き討ち船なのか、レイにはその時点では判断できませんでした。
横で話を聞いていたマーシャは困った顔をしていました。
「冒険者ギルドは騒がしいだけですよ」
「それでもマーシャさんには旦那さんがいるじゃないですか。二人とも私よりも若いのに」
「そうです。三人の中で一番若いのにお相手がいるなんて恵まれすぎです」
「ええ……まあ……」
マーシャは二人からのツッコミに微妙な表情になりました。そのやり取りを聞いて一番驚いたのはレイです。
「マーシャさんって結婚してたんですか? それならクラストンを出るのは問題では?」
「それとこれとは別問題です。問題ありません」
マーシャ自身に問題がないのなら、レイはそれ以上は何も言いません。ギルドの方針を受け入れるだけです。
さすがにこの三人だけでギルドを運営できるわけではないので、いずれは各ギルドから数人ずつ募集し、合計で二〇人ほどが新しい町に移籍することが決まりました。その際、一部の町で使われているやり方が採用されることになりました。それがザカリーの言ったように、ギルドをまとめる方法です。
多くの町では冒険者ギルド、薬剤師ギルド、商人ギルド、大工ギルド、革職人ギルド、醸造家ギルドなど、仕事内容ごとに独自のギルドがあります。ただし、小さな町ではすべてを用意することは難しく、たとえば冒険者ギルドだけがあって、そこが他の仕事を引き受けるということがよくあります。それが「総合ギルド」という形式です。いずれは分けるとしても、しばらくは同じ場所で様々な仕事をすることになります。
「新しい町なら派閥もありません。気が楽ですね」
「はい。面倒な柵もありませんからね」
「玉の輿が狙えるという役得がございますね」
「狙わせないからな」
レイの考えをよそに、町を建設するという大プロジェクトが動き始めます。立場が上になれば、それにともなって責任も大きくなります。人一倍責任感のあるレイなので問題はないのですが、わりとトラブル体質なことを彼の周りにいる女性たちは知っています。だからこそ、何が起きてもレイを支えようと一致団結しているわけですが、それでも予想を大きく超える事態は起きるものです。
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