135 / 190
第7章:新春、急展開
第6話:妹のような存在
しおりを挟む
「あっはっはっは!」
レイの笑い声が部屋に響き渡りました。
「レイ兄が壊れた」
「……壊れたくなる。それで、どうしてこうなったんだ?」
レイは頭を抱えながら澄まし顔のシャロンに聞きました。ここはレイの部屋にあるベッドの上です。その上にはレイとシャロン、そしてマイの三人が裸で座っています。
「先日レベルが上がった時に【百本の手】というスキルが付きました。これを使えば部下を自分の一部のように使うことができます」
「マイはお前の部下じゃないだろ?」
「本人が望めば臨時使用人にできるようです」
シャロンはレイの部屋に入る前にマイに【百本の手】を使いました。それから二人で一緒に部屋に入ったところ、レイはマイの気配に気づきませんでした。部下の気配を消すというスキルだからです。
「レイ兄、嫌だった?」
マイがレイの顔を覗き込みながら心配そうに言いました。口調はいつもどおりですが、これで嫌われたらどうしようという不安が顔に表れています。
「いや、嫌じゃないから困ってるんだ」
レイはマイの頭を撫でながら、できるだけ優しい声を出しました。彼女が自分に好意を向けているのはわかっていました。実の妹ではありませんが、自分によく似ているので妹のように大切に思っていました。そう思っていたころでこの有様です。
「……抱いた責任はとる」
このような状況になるまでには前振りがありました。
◆◆◆
「レイ兄が手を出してくれない」
マイがぼそっとつぶやきました。
「レイだからね」
マイはあの手この手でレイに迫っていましたが、残念ながらレイはマイの扱いには慣れています。今も昔も血のつながりはありませんが、妹と同じ扱いです。
「レイはマイをどうするの?」
「どうするって?」
あまりにも漠然とした質問でした。
「抱くか抱かないかってこと」
「なんで抱くんだ?」
つい先日、レイはマルタに手を出しました。これで恋人は六人。さすがにこれだけいるのは王族や貴族以外にはありえません。
貴族でない者がたくさんの妻を娶ってはいけないという決まりはこの国にはありません。理屈の上では何十人も何百人いても問題ありません。
ところが、相手が複数いるなら平等に扱わなければならないという決まりがあるのです。そのためには十分な生活費と全員を相手にできる心のゆとりと体力が必要です。養えきれずに愛想を尽かされて出ていかれるというのは、男としては最大の恥になります。だから庶民なら二、三人程度がほとんどです。
「それなら貴族になったら?」
「無茶を言うなよ。どうやってだ?」
「まずは騎士からかな。ローランドさんに頼んでみたら?」
「貴族になりたいので、まずは騎士にしてくださいってか? ローランドさんだってさすがに怒るだろ」
「あー、それもそうか」
それはどうでしょうか。レイ本人には今さら貴族になるつもりはありません。ところが領主には領主で、また別の考えがあるでしょう。レイに恩を売っておけば、もっと大きなものが返ってくるだろうと思えば、騎士号くらいは与えるかもしれません。
実際にローランドはレイを気に入っています。レイが望むなら、何かしらの地位は用意するでしょう。ついでに娘も渡そうとするでしょうが。
モーガンも言ったように、貴族の家に生まれた者が冒険者になることは多くはありません。誰でも苦労はしたくはないからです。だからこそ騎士号をもらわずに冒険者になったレイは、貴族の息子としてはかなり異質です。そこが領主のローランドには面白かったわけです。
「そもそも俺は貴族になりたいわけじゃないからな」
「レイの場合は、まず目標が普通とは違うわけですからね」
「ご主人さまが普通なわけはありませんです」
ラケルの言い方は一歩間違えれば侮辱とも受け取れますが、もちろん彼女はレイを大絶賛しています。
一般的に、多くの人がなりたいと考えるのは準貴族の騎士、できれば本当の貴族です。レイの場合はそこが目標ではありません。しかも、冒険者として最短でSランクを目指すとか、そのようなことも考えていません。最初からゴールが曖昧なんです。
レイが貴族を目指さないのは、それが大変だとわかっているからです。貴族は国王に次いで大きな商売をします。領地から利益を上げるためにどうすればいいかを考えます。レイはモーガンの仕事を手伝っていましたので、父親と執事のブライアンが何をしていたのかは知っています。ところが、彼が手伝ったのは、領民を増やす方法でした。増えた領民からどのように金を集めるかには触れていません。それが苦手だったからです。
モーガンも気づいていたように、レイは優しい性格をしています。ところが、その優しさは領主ではなく、慈善活動家や篤志家の持つ優しさです。優しいだけでは領主は務まりません。
「でもレイ、あのマイを抱いても抱かなくても変わらないなら、抱いたほうがお得では?」
「そうですわ。抱かない理由がありませんもの」
「どこからそういう発想になるのか分からないけど……シーヴもケイトもは兄や弟に手を出したい手を出されたいと思ったことはあるのか?」
「「全然」」
「それと同じだ」
そのときの話はそこで終わりました。ところがレイがいなくなってから、マイを見ていたシャロンが声をかけたのが事態が動くきっかけとなったのです。
「マイさん、少しいいですか?」
「ん。何かあった?」
「いえ、マイさんが旦那様に抱かれるきっかけを作れそうなのですが」
「⁉」
いつもは気だるそうな表情のマイが、さすがにその瞬間、くわっと目を見開きました。
「実は少し前に【百本の手】というスキルを得ました。これは自分の部下を意のままに動かすことのできるスキルで、その部下の気配を消すことができます。これを使えば旦那様はマイさんの気配には気づきません。私と一緒にベッドに入ればいいのです」
「バレないの?」
「バレません。じっと見つめられればバレる可能性はありますが、布団の中に入ってしまえば大丈夫です。そのまま身を任せてしまえばいいのです」
シャロンは真剣な表情で説明を続けます。
「奇貨居くべし。正攻法で堕とせる方ではないと私は思います」
「……ん。お願い」
◆◆◆
「マイは仕方がない。でも、俺を騙したシャロンにペナルティーなしとはいかないよなあ」
「私はもう旦那様の奴隷ではないのですが」
シャロンはいつもの調子でしれっと反論します。たしかに、彼女はもう奴隷ではありません。レイを騙したかもしれませんが、それ自体は犯罪と呼べるようなものではありません。レイは女性が抱けた。損はしていません。
「それはそうだ。もう家族の一員だ。恋人だ。その時期になれば結婚するとも言った。ただ、俺は忍耐力があると自分では思ってるけど、物事には限度がある」
レイの目からハイライトが消えていました。それを見てマイはヤバいと気づきました。レイが久しぶりにキレていると。
「マイ、シャロンを押さえつけろ」
「イエッサー!」
「えっ⁉」
すかさずマイがシャロンに組み付きます。シャロンの回避能力は誰よりも高いのですが、さすがに事後にベッドの上では逃げようがありません。あっという間にマイに組み伏されてしまいました。
レイはシャロンを後ろ手に縛り上げると、膝と足首も縛って動けないようにします。それから一本のポーションを取り出します。いつもの焼き物の薬瓶ではなく、透明なガラス瓶に入った液体は、毒々しい紫色をしています。これだけは絶対に間違えないようにガラス瓶に入れていたのです。
「あ、あの、旦那様……それは?」
「シャロンもマイも見たことがなかったかもしれないな。これは危険だから今では作っていない超濃縮タイプの媚薬だ。通常の媚薬の一〇〇倍の成分が入っている」
「……どれほどの効き目が?」
思わずシャロンはゴクリと生唾を飲み込みました。
「さすがに一〇〇倍の効き目はないけど、一〇倍の効き目が一〇倍の長さ続く感じだな」
これはレイが一度だけ作ったもので、一度だけ使ったことがあります。そして危険なものを作ってしまったと後悔しました。一緒に飲んでテストしたラケルが、途中で気絶してしまったからです。サラとシーヴが二人に解毒薬をかけてようやく止まりました。
サラやシーヴならともかく、ラケルがそうなるとはレイにも想像できませんでした。目を覚ましたラケルが「悪魔の薬です?」と顔を青ざめさせたほどです。サラとシーヴは二人を見ると、そろって顔を赤らめました。
「一〇倍……ですか?」
「ああ。頭が爆発しそうになるほど興奮するぞ。ラケルですら気絶して青ざめたからな。だから、これを飲ませたらベッドに転がして放置する。丸一日くらい」
「鬼ですか⁉⁉⁉」
「鬼だ。ꀑꄏꀂꀑꇜꀆꇉ」
「…………!」
レイはシャロンに【沈黙】をかけて声を出せないようにすると媚薬を飲ませました。そして、薬が効き始めたのを確認するとマイを連れて部屋を出ます。
マイは部屋を出るとすぐにレイに頭を下げました。
「レイ兄、ごめんなさい。シャロンさんにレイ兄に抱いてもらういい方法がないかって聞いたら任せておけと」
「いや、もう気にしなくていいから。でも聞いた相手が間違ってたな」
レイはマイを抱き寄せて頭を撫でます。マイが嫌いだったらこんなに腹を立てていないでしょう。むしろ気になっていたからこそ悩みもしました。
レイは昔から堅苦しいところがあります。どんなことにも筋を通そうとするのです。ところが、シーヴとサラの二人を恋人にしたあたりから、多少は融通が利く性格になってきました。とはいえ、妹のように大切にしていたマイに手を出す結果になったことに関しては、さすがに笑って済ますことができませんでした。シャロンはレイの逆鱗に触るどころか、引きちぎってしまったのです。
「もうちょっとだけ一緒にいたい」
「そうだな。陽が昇るまで一緒にいるか」
「ん。今度は二人でしたい。いい?」
「ああ」
「毒を食らわば皿まで」という言葉とは少し違いますが、抱いたのなら責任を取るのがレイという男です。シャロンの考えは間違っていはいません。あのままなら、レイはいつまで経ってもマイに手を出さなかったでしょう。ただし、シャロンはやりすぎたのです。
レイを怒らせないようにマイを抱かせるにはどうすればよかったのでしょうか。まず、マイをベッドに入れさせ、そこで【百本の手】を解除して、レイにマイの姿を見せればよかったのです。そうすればレイは驚いたでしょうが、マイの覚悟を知り、彼女に恥を欠かせないために彼女を抱いたでしょう。
レイは普通にしていれば礼儀正しい好青年です。ただし、妙に頭が固く、少し扱いづらい場合もあります。そんなレイの性格を理解するだけの時間がシャロンにはなかったのです。
レイの笑い声が部屋に響き渡りました。
「レイ兄が壊れた」
「……壊れたくなる。それで、どうしてこうなったんだ?」
レイは頭を抱えながら澄まし顔のシャロンに聞きました。ここはレイの部屋にあるベッドの上です。その上にはレイとシャロン、そしてマイの三人が裸で座っています。
「先日レベルが上がった時に【百本の手】というスキルが付きました。これを使えば部下を自分の一部のように使うことができます」
「マイはお前の部下じゃないだろ?」
「本人が望めば臨時使用人にできるようです」
シャロンはレイの部屋に入る前にマイに【百本の手】を使いました。それから二人で一緒に部屋に入ったところ、レイはマイの気配に気づきませんでした。部下の気配を消すというスキルだからです。
「レイ兄、嫌だった?」
マイがレイの顔を覗き込みながら心配そうに言いました。口調はいつもどおりですが、これで嫌われたらどうしようという不安が顔に表れています。
「いや、嫌じゃないから困ってるんだ」
レイはマイの頭を撫でながら、できるだけ優しい声を出しました。彼女が自分に好意を向けているのはわかっていました。実の妹ではありませんが、自分によく似ているので妹のように大切に思っていました。そう思っていたころでこの有様です。
「……抱いた責任はとる」
このような状況になるまでには前振りがありました。
◆◆◆
「レイ兄が手を出してくれない」
マイがぼそっとつぶやきました。
「レイだからね」
マイはあの手この手でレイに迫っていましたが、残念ながらレイはマイの扱いには慣れています。今も昔も血のつながりはありませんが、妹と同じ扱いです。
「レイはマイをどうするの?」
「どうするって?」
あまりにも漠然とした質問でした。
「抱くか抱かないかってこと」
「なんで抱くんだ?」
つい先日、レイはマルタに手を出しました。これで恋人は六人。さすがにこれだけいるのは王族や貴族以外にはありえません。
貴族でない者がたくさんの妻を娶ってはいけないという決まりはこの国にはありません。理屈の上では何十人も何百人いても問題ありません。
ところが、相手が複数いるなら平等に扱わなければならないという決まりがあるのです。そのためには十分な生活費と全員を相手にできる心のゆとりと体力が必要です。養えきれずに愛想を尽かされて出ていかれるというのは、男としては最大の恥になります。だから庶民なら二、三人程度がほとんどです。
「それなら貴族になったら?」
「無茶を言うなよ。どうやってだ?」
「まずは騎士からかな。ローランドさんに頼んでみたら?」
「貴族になりたいので、まずは騎士にしてくださいってか? ローランドさんだってさすがに怒るだろ」
「あー、それもそうか」
それはどうでしょうか。レイ本人には今さら貴族になるつもりはありません。ところが領主には領主で、また別の考えがあるでしょう。レイに恩を売っておけば、もっと大きなものが返ってくるだろうと思えば、騎士号くらいは与えるかもしれません。
実際にローランドはレイを気に入っています。レイが望むなら、何かしらの地位は用意するでしょう。ついでに娘も渡そうとするでしょうが。
モーガンも言ったように、貴族の家に生まれた者が冒険者になることは多くはありません。誰でも苦労はしたくはないからです。だからこそ騎士号をもらわずに冒険者になったレイは、貴族の息子としてはかなり異質です。そこが領主のローランドには面白かったわけです。
「そもそも俺は貴族になりたいわけじゃないからな」
「レイの場合は、まず目標が普通とは違うわけですからね」
「ご主人さまが普通なわけはありませんです」
ラケルの言い方は一歩間違えれば侮辱とも受け取れますが、もちろん彼女はレイを大絶賛しています。
一般的に、多くの人がなりたいと考えるのは準貴族の騎士、できれば本当の貴族です。レイの場合はそこが目標ではありません。しかも、冒険者として最短でSランクを目指すとか、そのようなことも考えていません。最初からゴールが曖昧なんです。
レイが貴族を目指さないのは、それが大変だとわかっているからです。貴族は国王に次いで大きな商売をします。領地から利益を上げるためにどうすればいいかを考えます。レイはモーガンの仕事を手伝っていましたので、父親と執事のブライアンが何をしていたのかは知っています。ところが、彼が手伝ったのは、領民を増やす方法でした。増えた領民からどのように金を集めるかには触れていません。それが苦手だったからです。
モーガンも気づいていたように、レイは優しい性格をしています。ところが、その優しさは領主ではなく、慈善活動家や篤志家の持つ優しさです。優しいだけでは領主は務まりません。
「でもレイ、あのマイを抱いても抱かなくても変わらないなら、抱いたほうがお得では?」
「そうですわ。抱かない理由がありませんもの」
「どこからそういう発想になるのか分からないけど……シーヴもケイトもは兄や弟に手を出したい手を出されたいと思ったことはあるのか?」
「「全然」」
「それと同じだ」
そのときの話はそこで終わりました。ところがレイがいなくなってから、マイを見ていたシャロンが声をかけたのが事態が動くきっかけとなったのです。
「マイさん、少しいいですか?」
「ん。何かあった?」
「いえ、マイさんが旦那様に抱かれるきっかけを作れそうなのですが」
「⁉」
いつもは気だるそうな表情のマイが、さすがにその瞬間、くわっと目を見開きました。
「実は少し前に【百本の手】というスキルを得ました。これは自分の部下を意のままに動かすことのできるスキルで、その部下の気配を消すことができます。これを使えば旦那様はマイさんの気配には気づきません。私と一緒にベッドに入ればいいのです」
「バレないの?」
「バレません。じっと見つめられればバレる可能性はありますが、布団の中に入ってしまえば大丈夫です。そのまま身を任せてしまえばいいのです」
シャロンは真剣な表情で説明を続けます。
「奇貨居くべし。正攻法で堕とせる方ではないと私は思います」
「……ん。お願い」
◆◆◆
「マイは仕方がない。でも、俺を騙したシャロンにペナルティーなしとはいかないよなあ」
「私はもう旦那様の奴隷ではないのですが」
シャロンはいつもの調子でしれっと反論します。たしかに、彼女はもう奴隷ではありません。レイを騙したかもしれませんが、それ自体は犯罪と呼べるようなものではありません。レイは女性が抱けた。損はしていません。
「それはそうだ。もう家族の一員だ。恋人だ。その時期になれば結婚するとも言った。ただ、俺は忍耐力があると自分では思ってるけど、物事には限度がある」
レイの目からハイライトが消えていました。それを見てマイはヤバいと気づきました。レイが久しぶりにキレていると。
「マイ、シャロンを押さえつけろ」
「イエッサー!」
「えっ⁉」
すかさずマイがシャロンに組み付きます。シャロンの回避能力は誰よりも高いのですが、さすがに事後にベッドの上では逃げようがありません。あっという間にマイに組み伏されてしまいました。
レイはシャロンを後ろ手に縛り上げると、膝と足首も縛って動けないようにします。それから一本のポーションを取り出します。いつもの焼き物の薬瓶ではなく、透明なガラス瓶に入った液体は、毒々しい紫色をしています。これだけは絶対に間違えないようにガラス瓶に入れていたのです。
「あ、あの、旦那様……それは?」
「シャロンもマイも見たことがなかったかもしれないな。これは危険だから今では作っていない超濃縮タイプの媚薬だ。通常の媚薬の一〇〇倍の成分が入っている」
「……どれほどの効き目が?」
思わずシャロンはゴクリと生唾を飲み込みました。
「さすがに一〇〇倍の効き目はないけど、一〇倍の効き目が一〇倍の長さ続く感じだな」
これはレイが一度だけ作ったもので、一度だけ使ったことがあります。そして危険なものを作ってしまったと後悔しました。一緒に飲んでテストしたラケルが、途中で気絶してしまったからです。サラとシーヴが二人に解毒薬をかけてようやく止まりました。
サラやシーヴならともかく、ラケルがそうなるとはレイにも想像できませんでした。目を覚ましたラケルが「悪魔の薬です?」と顔を青ざめさせたほどです。サラとシーヴは二人を見ると、そろって顔を赤らめました。
「一〇倍……ですか?」
「ああ。頭が爆発しそうになるほど興奮するぞ。ラケルですら気絶して青ざめたからな。だから、これを飲ませたらベッドに転がして放置する。丸一日くらい」
「鬼ですか⁉⁉⁉」
「鬼だ。ꀑꄏꀂꀑꇜꀆꇉ」
「…………!」
レイはシャロンに【沈黙】をかけて声を出せないようにすると媚薬を飲ませました。そして、薬が効き始めたのを確認するとマイを連れて部屋を出ます。
マイは部屋を出るとすぐにレイに頭を下げました。
「レイ兄、ごめんなさい。シャロンさんにレイ兄に抱いてもらういい方法がないかって聞いたら任せておけと」
「いや、もう気にしなくていいから。でも聞いた相手が間違ってたな」
レイはマイを抱き寄せて頭を撫でます。マイが嫌いだったらこんなに腹を立てていないでしょう。むしろ気になっていたからこそ悩みもしました。
レイは昔から堅苦しいところがあります。どんなことにも筋を通そうとするのです。ところが、シーヴとサラの二人を恋人にしたあたりから、多少は融通が利く性格になってきました。とはいえ、妹のように大切にしていたマイに手を出す結果になったことに関しては、さすがに笑って済ますことができませんでした。シャロンはレイの逆鱗に触るどころか、引きちぎってしまったのです。
「もうちょっとだけ一緒にいたい」
「そうだな。陽が昇るまで一緒にいるか」
「ん。今度は二人でしたい。いい?」
「ああ」
「毒を食らわば皿まで」という言葉とは少し違いますが、抱いたのなら責任を取るのがレイという男です。シャロンの考えは間違っていはいません。あのままなら、レイはいつまで経ってもマイに手を出さなかったでしょう。ただし、シャロンはやりすぎたのです。
レイを怒らせないようにマイを抱かせるにはどうすればよかったのでしょうか。まず、マイをベッドに入れさせ、そこで【百本の手】を解除して、レイにマイの姿を見せればよかったのです。そうすればレイは驚いたでしょうが、マイの覚悟を知り、彼女に恥を欠かせないために彼女を抱いたでしょう。
レイは普通にしていれば礼儀正しい好青年です。ただし、妙に頭が固く、少し扱いづらい場合もあります。そんなレイの性格を理解するだけの時間がシャロンにはなかったのです。
67
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる