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第7章:新春、急展開
第7話:レイを怒らせるということ
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「レイ兄、おはよ」
「おはよう」
レイが目を覚ますと、マイが抱きつきました。二人はそのまま唇を重ねます。マイにとってはずっと願っていたこと、そしてレイにとってはそういうこともあるかもしれないと、ほんのわずかですが心の片隅にあったことです。
「シャロンさんは大丈夫?」
「ああやって一〇〇倍のを出したけど、実際に飲ませたのは一〇倍のものだ。そこまで強くなくて、ちょっと強めで長続きするだけだな。それに反応はちゃんとある。でもそろそろ様子を見てくるか」
「ん。私は怒ってないし嫌でもなかった。それにシャロンさんのおかげでこうやってレイ兄に抱かれた。手加減してあげて」
「俺だってシャロンが嫌いなわけじゃないからな。あいつはたまに羽目を外すだけで」
レイは着替えを済ませるとマイとキスをし、それから部屋を出ました。
◆◆◆
マイは着替えるとダイニングに入りました。そこにはレイとシャロンを除く全員が集まっていました。
「おはよ。あとはレイとシャロンかあ」
サラが声をかけた瞬間、マイの顔が引きつりました。
「ど、どしたの?」
「ん。昨日の夜、シャロンさんがレイ兄を怒らせた」
「怒らせたって?」
若干引きながら、サラはマイに話を聞くことにしました。そして、聞き終わると派手に身震いしました。首筋に鳥肌が見えています。
「レイを怒らせるなんて絶対にしたくないよ。ちなみに私はしたことがない。見たことはあるけど」
「そうですね。彼だけは絶対に怒らせてはいけないというのが社内での決まりでした」
「あ、やっぱり会社でもそうだった?」
サラとシーヴの二人は事情を聞いて、派手に鳥肌が立ちました。
「レイ様がそれほど怒りますの?」
ケイトはそう聞きましたが、事情を知らないというのは幸せだと、サラとシーヴは顔を見合わせてうなずき合いました。二人にとって、レイを怒らせることは心臓が凍りつくことと同じ意味になるからです。
「レイは言葉を荒げて怒ることはないんだよね。静かに怒る感じで」
「ええ。たいていのことは笑って済ますことのできる性格ですけど、一度怒れば、たとえ相手が上司でも、汚物でも見るような表情になりますよ。実際に上司が青ざめた顔ですぐに頭を下げたくらいですから」
かつて副課長だったミマリたち女性陣に向かって課長がセクハラ気味の冗談を言いました。それを見たレイは、それを軽くいさめました。直後に課長がその場にいた社員たちに深々と頭を下げました。それから課長は二度とセクハラ発言をしなくなりました。
「レイはタチの悪い冗談だけはホントに嫌いだからね」
「自分は何を言われても怒りませんでしたけどね」
レイだって冗談くらいは口にします。かつてサラの中二病発言に「頭の中身はコンニャクか何かか?」なとと言ったりもしました。それでも、生まれや外見、性別など、本人の努力ではどうにもならないことをネタにして笑うことには我慢できなかったのです。
その場で怒りを表すことはありません。ですが、誰かがそのような冗談を口にするのを聞くと、その人物に対する評価を心の中で最低レベルまで下げ、それ以降は必要以上には関わらない、というのがレイという男でした。つまり、しれっと縁を切るのです。
そのような性格なので、彼は社内で若手を主体にした「セクハラ・パワハラ対策推進委員会」のメンバーに、半ば強引に選ばれることになりました。当然のように四〇代以上の男性社員には煙たがられましたが、被害に遭っていた女性社員からは絶大な支持を得るようになったのです。
そのレイは二〇代後半で海外転勤になりました。課長待遇だったのはもちろん出世コースですが、実は上層部にうるさがられて飛ばされたという面もありました。味方が増えれば敵も増えるということをレイは知っていましたので、何も文句は言いませんでしたが。
なお、レイがアメリカに行っている間、車内で再びセクハラやパワハラが増えた事実はありませんでした。むしろ、レイを飛ばした人事や上層部に批判が集まり、女性陣の目が一層厳しくなったからです。
「想像できないです」
「レイ兄は静かに怒る。特に親しい相手に被害が及ぶと絶対に容赦しない。ボッキボキに心を折る、あるいは砕くくらいに。まるで燃える氷、あるいは凍った炎」
「ラケル、前にマルタが酔っ払いに絡まれたことがあったのを覚えていますか? レイが怒るのはこっちに来てから初めてでした。あれでレイはマルタを気にかけているとわかりましたね。嫌がっている女の子の手首をつかんで無理やりキスをしようという男なら、親しくなくても殴り飛ばしていた可能性もありますが」
マルタにちょっかいをかけていた酔っ払い三人組がいました。レイは一人目と二人目の股間を蹴り潰しています。三人目は腰を抜かして後ずさりしたので、そのまま壁際まで追い詰めました。
「私の心はレイさんに燃やされてしまいましたぁ」
マルタは両手を頬に当ててトロンとした表情になりました。あのとき、シーヴはレイの背中しか見ていませんが、おそらくマルタに話しかけたときは穏やかな笑みを浮かべ、床を這って逃げようとした男を追い詰めたときは汚らわしいものを見るような顔をしていただろうと想像できます。
「ですが、レイ様から冷たい目で見られるとか、ちょっと興味がありますわ」
「見られたいなら止めないけどね。でも、その前にトイレに行っといたほうがいいよ。たぶん漏らすから」
「それほどですの⁉」
「同級生の女子をからかって泣かせたチャラい男子グループがいたんだけどね、股間に染みを作りながらその女子に謝ったよ」
それはレイとサラが中学生のころに実際にあったことです。水泳の授業を体調不良で見学することになったある女子を、男子の一部がからかったのが原因でした。
結果として、男子たちはその女子に泣きながら頭を下げ、その女子も男子たちを許しました。そして次の日からその男子たちはレイのことを兄貴と呼ぶようになりました。
「その男子の一人と高校が同じになったんだけど、風紀委員になってレイみたいなことをしてたよ」
結果よければすべてよし、でしょうか。
「マイもようやく仲間だね」
「お仲間ですぅ」
「ん。よろしく」
「でも、これでシフトのことで悩まずにすみますね」
他のみんなはレイと同じ部屋で寝ていましたが、マイだけはそれがありませんでした。ある意味では最もレイに近く、それでいて最も遠い場所にいるしかなかったのです。
「そうなると、レイたちは遅くなりそうだね」
「朝食は済ませてしまいましょう。二人の分は残しておけばいいでしょう」
シーヴの提案で朝食は二人以外で済ませることにしました。
◆◆◆
「だんなひゃま、もうしわけごりゃいませんれひた。おれがいれすろれ、らくにひてくらひゃい。おれがいひまふ。もうむりれふ、もうむりれふ、もうむりれふ」
レイが【沈黙】を解除すると、シャロンは壊れたロボットのように、同じような言葉をただ繰り返し続けました。その目はうつろで、もう舌が回っていません。
「シャロン。二度と言わないからよく聞いておけ。次にああいうことをしたら本気で怒るからな」
「わかいまひた、わかいまひた、わかいまひたからおれがいひまふ、おれがいひまふ」
レイは部屋に【遮音結界】をかけました。そして、横になってモゾモゾと動いているシャロンの腰をつかむと持ち上げ、尻を突き出させました。
媚薬は【解毒】で消すことができますが、体の火照りまでは消えません。レイはシャロンが白目をむくまで抱き続けました。それから【浄化】をかけてベッドをきれいにして、そして今は部屋で樽風呂に入っています。
「旦那様♡ 最高でした♡」
「懲りてないな」
「いえいえ。旦那様の凍りつくような視線と言葉に、メイドのシャロンは一度死んでしまいました。ここにいるのは生まれ変わった肉奴隷メイドのシャロンです。いつでもどこでもお使いください♡」
シャロンはそう言うと、レイに正面から抱きつきました。
「この樽風呂も久しぶりですね」
「また使うとは思わなかったな」
一階に風呂があるので、もう樽風呂は使っていません。ただし、惰性でいくつかマジックバッグに入れてあります。単にお湯として使えばいいだろうと。
「こうやって旦那様に抱かれていますと、女にしてもらったときのことを思い出します」
「転職したときか。一年も経ってないのに昔のことみたいに思えるな」
「あのときは、本当にどうなるかと思いました」
レイとシャロンは向き合いながら、ケイトとシャロンが合流したころを思い出していました。
「ところで旦那様、このような狭い場所で体を密着させているのに、どうして私と旦那様はつながっていないのですか?」
シャロンはいかにも不自然ですと言わんばかりにレイをにらみました。
「ここで始めたら、朝食がさらに遅くなるけど、それでいいのか?」
「朝食と私と、どちらが大切ですか?」
「比べるものじゃないと思うけどな。でも、そこまで言うなら覚悟はできてるんだよな? さっき目を覚ましたばかりだろ?」
「もちろんです。さあ、どうぞ」
そう言いながら、シャロンは少し腰を浮かせました。しばらくすると、ちゃぷんちゃぷんと水音がたち始めました。
「おはよう」
レイが目を覚ますと、マイが抱きつきました。二人はそのまま唇を重ねます。マイにとってはずっと願っていたこと、そしてレイにとってはそういうこともあるかもしれないと、ほんのわずかですが心の片隅にあったことです。
「シャロンさんは大丈夫?」
「ああやって一〇〇倍のを出したけど、実際に飲ませたのは一〇倍のものだ。そこまで強くなくて、ちょっと強めで長続きするだけだな。それに反応はちゃんとある。でもそろそろ様子を見てくるか」
「ん。私は怒ってないし嫌でもなかった。それにシャロンさんのおかげでこうやってレイ兄に抱かれた。手加減してあげて」
「俺だってシャロンが嫌いなわけじゃないからな。あいつはたまに羽目を外すだけで」
レイは着替えを済ませるとマイとキスをし、それから部屋を出ました。
◆◆◆
マイは着替えるとダイニングに入りました。そこにはレイとシャロンを除く全員が集まっていました。
「おはよ。あとはレイとシャロンかあ」
サラが声をかけた瞬間、マイの顔が引きつりました。
「ど、どしたの?」
「ん。昨日の夜、シャロンさんがレイ兄を怒らせた」
「怒らせたって?」
若干引きながら、サラはマイに話を聞くことにしました。そして、聞き終わると派手に身震いしました。首筋に鳥肌が見えています。
「レイを怒らせるなんて絶対にしたくないよ。ちなみに私はしたことがない。見たことはあるけど」
「そうですね。彼だけは絶対に怒らせてはいけないというのが社内での決まりでした」
「あ、やっぱり会社でもそうだった?」
サラとシーヴの二人は事情を聞いて、派手に鳥肌が立ちました。
「レイ様がそれほど怒りますの?」
ケイトはそう聞きましたが、事情を知らないというのは幸せだと、サラとシーヴは顔を見合わせてうなずき合いました。二人にとって、レイを怒らせることは心臓が凍りつくことと同じ意味になるからです。
「レイは言葉を荒げて怒ることはないんだよね。静かに怒る感じで」
「ええ。たいていのことは笑って済ますことのできる性格ですけど、一度怒れば、たとえ相手が上司でも、汚物でも見るような表情になりますよ。実際に上司が青ざめた顔ですぐに頭を下げたくらいですから」
かつて副課長だったミマリたち女性陣に向かって課長がセクハラ気味の冗談を言いました。それを見たレイは、それを軽くいさめました。直後に課長がその場にいた社員たちに深々と頭を下げました。それから課長は二度とセクハラ発言をしなくなりました。
「レイはタチの悪い冗談だけはホントに嫌いだからね」
「自分は何を言われても怒りませんでしたけどね」
レイだって冗談くらいは口にします。かつてサラの中二病発言に「頭の中身はコンニャクか何かか?」なとと言ったりもしました。それでも、生まれや外見、性別など、本人の努力ではどうにもならないことをネタにして笑うことには我慢できなかったのです。
その場で怒りを表すことはありません。ですが、誰かがそのような冗談を口にするのを聞くと、その人物に対する評価を心の中で最低レベルまで下げ、それ以降は必要以上には関わらない、というのがレイという男でした。つまり、しれっと縁を切るのです。
そのような性格なので、彼は社内で若手を主体にした「セクハラ・パワハラ対策推進委員会」のメンバーに、半ば強引に選ばれることになりました。当然のように四〇代以上の男性社員には煙たがられましたが、被害に遭っていた女性社員からは絶大な支持を得るようになったのです。
そのレイは二〇代後半で海外転勤になりました。課長待遇だったのはもちろん出世コースですが、実は上層部にうるさがられて飛ばされたという面もありました。味方が増えれば敵も増えるということをレイは知っていましたので、何も文句は言いませんでしたが。
なお、レイがアメリカに行っている間、車内で再びセクハラやパワハラが増えた事実はありませんでした。むしろ、レイを飛ばした人事や上層部に批判が集まり、女性陣の目が一層厳しくなったからです。
「想像できないです」
「レイ兄は静かに怒る。特に親しい相手に被害が及ぶと絶対に容赦しない。ボッキボキに心を折る、あるいは砕くくらいに。まるで燃える氷、あるいは凍った炎」
「ラケル、前にマルタが酔っ払いに絡まれたことがあったのを覚えていますか? レイが怒るのはこっちに来てから初めてでした。あれでレイはマルタを気にかけているとわかりましたね。嫌がっている女の子の手首をつかんで無理やりキスをしようという男なら、親しくなくても殴り飛ばしていた可能性もありますが」
マルタにちょっかいをかけていた酔っ払い三人組がいました。レイは一人目と二人目の股間を蹴り潰しています。三人目は腰を抜かして後ずさりしたので、そのまま壁際まで追い詰めました。
「私の心はレイさんに燃やされてしまいましたぁ」
マルタは両手を頬に当ててトロンとした表情になりました。あのとき、シーヴはレイの背中しか見ていませんが、おそらくマルタに話しかけたときは穏やかな笑みを浮かべ、床を這って逃げようとした男を追い詰めたときは汚らわしいものを見るような顔をしていただろうと想像できます。
「ですが、レイ様から冷たい目で見られるとか、ちょっと興味がありますわ」
「見られたいなら止めないけどね。でも、その前にトイレに行っといたほうがいいよ。たぶん漏らすから」
「それほどですの⁉」
「同級生の女子をからかって泣かせたチャラい男子グループがいたんだけどね、股間に染みを作りながらその女子に謝ったよ」
それはレイとサラが中学生のころに実際にあったことです。水泳の授業を体調不良で見学することになったある女子を、男子の一部がからかったのが原因でした。
結果として、男子たちはその女子に泣きながら頭を下げ、その女子も男子たちを許しました。そして次の日からその男子たちはレイのことを兄貴と呼ぶようになりました。
「その男子の一人と高校が同じになったんだけど、風紀委員になってレイみたいなことをしてたよ」
結果よければすべてよし、でしょうか。
「マイもようやく仲間だね」
「お仲間ですぅ」
「ん。よろしく」
「でも、これでシフトのことで悩まずにすみますね」
他のみんなはレイと同じ部屋で寝ていましたが、マイだけはそれがありませんでした。ある意味では最もレイに近く、それでいて最も遠い場所にいるしかなかったのです。
「そうなると、レイたちは遅くなりそうだね」
「朝食は済ませてしまいましょう。二人の分は残しておけばいいでしょう」
シーヴの提案で朝食は二人以外で済ませることにしました。
◆◆◆
「だんなひゃま、もうしわけごりゃいませんれひた。おれがいれすろれ、らくにひてくらひゃい。おれがいひまふ。もうむりれふ、もうむりれふ、もうむりれふ」
レイが【沈黙】を解除すると、シャロンは壊れたロボットのように、同じような言葉をただ繰り返し続けました。その目はうつろで、もう舌が回っていません。
「シャロン。二度と言わないからよく聞いておけ。次にああいうことをしたら本気で怒るからな」
「わかいまひた、わかいまひた、わかいまひたからおれがいひまふ、おれがいひまふ」
レイは部屋に【遮音結界】をかけました。そして、横になってモゾモゾと動いているシャロンの腰をつかむと持ち上げ、尻を突き出させました。
媚薬は【解毒】で消すことができますが、体の火照りまでは消えません。レイはシャロンが白目をむくまで抱き続けました。それから【浄化】をかけてベッドをきれいにして、そして今は部屋で樽風呂に入っています。
「旦那様♡ 最高でした♡」
「懲りてないな」
「いえいえ。旦那様の凍りつくような視線と言葉に、メイドのシャロンは一度死んでしまいました。ここにいるのは生まれ変わった肉奴隷メイドのシャロンです。いつでもどこでもお使いください♡」
シャロンはそう言うと、レイに正面から抱きつきました。
「この樽風呂も久しぶりですね」
「また使うとは思わなかったな」
一階に風呂があるので、もう樽風呂は使っていません。ただし、惰性でいくつかマジックバッグに入れてあります。単にお湯として使えばいいだろうと。
「こうやって旦那様に抱かれていますと、女にしてもらったときのことを思い出します」
「転職したときか。一年も経ってないのに昔のことみたいに思えるな」
「あのときは、本当にどうなるかと思いました」
レイとシャロンは向き合いながら、ケイトとシャロンが合流したころを思い出していました。
「ところで旦那様、このような狭い場所で体を密着させているのに、どうして私と旦那様はつながっていないのですか?」
シャロンはいかにも不自然ですと言わんばかりにレイをにらみました。
「ここで始めたら、朝食がさらに遅くなるけど、それでいいのか?」
「朝食と私と、どちらが大切ですか?」
「比べるものじゃないと思うけどな。でも、そこまで言うなら覚悟はできてるんだよな? さっき目を覚ましたばかりだろ?」
「もちろんです。さあ、どうぞ」
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