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第6章:夏から秋、悠々自適
第8話:トライアル
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「鞣しと漂白です? 同じかどうかはわかりませんですが、ある程度は知ってます」
「ラケルは工房で働いたことがあるのか?」
「いえ。村ではどの家でも獣を狩って鞣してましたです。小さな子供に狩りは危険ですので、解体や鞣しをさせられます。私はまず鞣しをしてましたです」
ラケルが育ったシャンペ村は、この国でも端の方にある、犬人族が中心となっている集落です。基本が自給自足でしたので、革だろうが織物だろうが焼き物だろうが酒だろうが、自分たちで用意していました。
獣人は体格や生活スタイルが人間にかなり似ていますので、国というシステムに組み込まれて暮らすことが多いのですが、中には国に属さずに独立を保つ集落もあります。税を払わない代わりに、何があっても国からの支援は一切ありません。その代わりに半独立の領地として独自の成長を遂げることがあります。
そのような集落でも、どうしても必要なものを購入するためには誰かが他の町へ出かけなければなりません。その際の重要な交易品の一つが毛皮です。それに、聖別の儀を受けるためには教会に出かける必要がありますので、まったく他の町と接触がないわけでもありません。
「鞣しに使うのは……」
レイはラケルが口にした素材をメモします。ほとんどはこれまでに見たことのあるものでした。
「ラケルの漂白剤は……あと一つあれば作れるか」
ほとんどが手持ちの素材で作れそうです。手元にないものもあるが、森に行けば手に入ります。ただし、そこまでしてグレーターパンダに使えるかどうかはわかりません。
「レイ様はどんなことでもできるのですね。素晴らしいですわ」
「いや、魔物を解体してたら付いただけなんだけどな」
解体して内臓を切り分けていたら、いつの間にか【解体】だけでなく【調合】が付きました。内臓は薬の素材になりますので、そのようなことが起きたのです。
「ですが、わたくしにはなかなか付きませんわ」
「それもそうだな。サラは付いたか?」
「まだだよ。同じくらいやってるのにね」
「ジョブは関係ないだろうしなあ。シーヴはあったよな?」
「はい。前からあります」
同じだけ作業をしても個人個人で違いが出ます。レイのように、どちらかといえば細かい性格の場合、チマチマした作業が必要なスキルが付きやすくなります。逆にサラやケイトのように大雑把な性格なら、そのようなスキルは付きにくくなっています。
サラはもちろん適当にやっているわけではありませんが、本来は「ドカーン」「バコーン」と勢いよく敵を吹き飛ばしたり地面をえぐったり、そのようなことに燃える性格です。残念ながらそこまでのスキルも魔法もまだ身に付いていません。かろうじて【火矢】でオークの頭が吹き飛ばせるくらいです。腕力がありますので、物理で殴るほうが効果的です。
「ダーシーさんに教えてもらったものと少し違うな」
二つのレシピはほとんどが同じでしたが、一部が違っています。ダーシーのほうにはケッサギョティの根とハチョキュランジュヴァの粉末が使われ、ラケルのほうにはこの二つの代わりにカリョッヂグリュンの実の絞り汁とミソッチャの花がありました。シャンペ村はかなり山に近く、このあたりとは手に入る野草や薬草が違っているせいかもしれないとレイは考えます。
「それじゃあ、ラケルとダーシーさんので一度やってみよう。大きいのはもったいないから、ハンカチくらいのサイズでいいよな?」
「これくらい?」
「ああ、ありがとう」
サラがこれまで溜めていた、手のひらサイズからハンカチサイズの毛皮を渡します。
「しかし……こんなに荒っぽいやり方でいいのか?」
ラケルから教わった方法は、レイが思っていたよりもかなり荒っぽいやり方でした。まずは解体した魔物の毛皮から脂肪をきれいに剥ぎ取ります。次に表と裏をしっかり洗って汚れを落としておきます。それからラケルが鞣し液と呼んでいる液体と塩を、水の入った樽に入れてよく混ぜます。最後にそこに毛皮を漬け込みます。
「これで丸一日経てば白くなりましたです。グレーターパンダはやったことはありませんです」
丸一日経ったら樽から出してしっかり洗って汚れを取って乾燥させます。この時点で真っ白になっているとラケルは説明しました。
魔物は野獣と違い、その革は一度硬くすると硬いまま、柔らかくすると柔らかいままという性質があります。鞣し液で柔らかくなりますので、その後はどれだけ水に浸けても硬くなることはないあたりが野獣と違っています。
「まあパンダも含めて一通りの魔物で試してみよう。向き不向きもあるだろうからな」
レイたちはホーンラビット、ブッシュマウス、スパイラルディアー、ラインベアー、タスクボアー、そしてグレーターパンダの毛皮をそれぞれ鞣して漂白することにしました。
「鞣しが成功しましたら私が仕立てます。奥様方の好みの形を教えていただけますか?」
シャロンが順番にサイズを測り、好みの形を聞いてメモをとります。もちろん鞣しが終わるのは明日以降の話ですが、女性陣は真っ白な毛皮をまとった自分たちの姿を思い浮かべていました。それを見たレイは、樽に向かって「成功しますように」と祈りを捧げたのです。
「贅沢なのは分かるけどさあ、床に敷いたらふかふかだよね」
「まあいくらでも狩れるから一枚や二枚ならいいんじゃないか?」
他にもパンダ狩りをしているパーティーはいますが、一番安定して質の高い毛皮を持ち込んでいるのがレイたちです。常に金貨一枚で冒険者ギルドに売却していますが、自分たちで使って悪いわけではありません。
「それならさあ、服をもっとオシャレにしようよ」
サラの提案は女性としては当然ですが、手に入るものには限度があります。
「デザインはどうにかできても、色がなあ……」
レイが言っているのは、色止めしても色落ちする染料のことです。もったいないと思って集めていたアーカーベリーの実などは染料に使えますが、すぐに色が抜けてしまいます。酢や塩で色止めしても同じでした。だから庶民が着る服は色が薄いのです。
「旦那様、染料もあの薬のように濃縮して徹底的に濃くしてみては?」
「濃くか……」
たしかに体力回復薬は五倍、一〇倍、二〇倍、一〇〇倍の濃度で作ったものがあります。染料も一般的な染めに使う染料の一〇〇倍使えば落ちないのではないかとシャロンは提案しました。
「色落ちするとしたらとんでもないことになると思うけど、鞣しが終わるまでに時間があるから試してみるか」
画材として使えそうな素材は集めてあります。実際に一部はインクにしてディオナに渡しています。
「それなら【調合】持ち三人でやってみるか」
シーヴとシャロンは【調合】を持っています。薬ではありませんが、このスキルがあると品質が上がるのです。三人並んですり鉢で染料の準備を始めました。
赤はアーカーベリーの実。青はルーリーリーブズの葉。黄はサニーフラワーの花。どれも薬効のない部分は染料として使われることもありますが、数回洗えばかなり色落ちします。しばらくすると、どれも生成りのようになってしまうのです。だから染め直しますが、それもまた落ちます。その繰り返しですね。
「まずはすり鉢で潰す」
レイが赤、シーヴが青、シャロンが黄とそれぞれ色を分けてすり潰します。水を加えて練るようにして、ドロリとした液体を鍋に移します。まだ不純物が入っていますので、全体的ににごり気味です。
鍋がいっぱいになると、別の鍋の中に漉し布で漉しながら移していきます。一時間ほどでそれぞれの鍋がいっぱいになりました。
「さて、煮詰めるか」
「煮詰まるの?」
「体力回復薬だってこんなものだから大丈夫だろう。焦げないように気をつければ」
うかつに強火でやってしまうと一瞬で焦げつきかねません。弱火でじっくりとです。
しばらく火にかけていると、水分が抜けて量が減り始めました。
「綺麗ですわ」
ケイトが鍋の中を覗いてうっとりとしています。
「旦那様、私は不安になると思うのですが」
「俺もそうだ」
体力回復薬を作っていたときにも感じたことですが、どうみてもペンキです。蓋を開けた瞬間に目に飛び込んでくるあのぺっとり感。どう見ても体に悪そうです。
マルタとダーシーは朱肉のような色の体力回復薬を見て、綺麗だの宝石のようだのと言いました。それを聞いて、この世界では色彩感覚が違うのだろうかとレイは思っていましたが、ケイトは綺麗だと言い、シャロンは不安になると言いました。結局は好みの問題かもしれないと、レイは自分の中で答えを出しました。
「レイ、どういう理屈で水分が減っているんですか?」
「あ、それは私も思った。元々水分がほとんどないよね?」
体力回復薬でも同じですが、元々水分をかなり少なくして作っています。だから、それを煮詰めても限度があるはずです。どうすればこれほど水分が減って濃縮されるのかがシーヴとサラにはわかりません。普通なら水分がゼロになって粉末になっているはずです。
「俺にもよくわからないけど、やっぱり水かな?」
「今まで使ったのは、全部レイが出した水ですね」
「ご主人さまだからすごいことができるというのではダメなのです?」
「ダメじゃないけどさ。なんていうか、納得がね」
普通なら水分がなくなって乾燥するはずですが、流動性を保っています。
「ま、いっか。レイ、試しにこれはどう?」
「それでやってみるか」
サラが用意したのは、どこにでもあるようなチュニックです。生成りなので色の変化がよくわかりそうです。
「普通なら水を入れて染料を溶かして、そこに入れる感じだけど」
レイは桶に染料という名前のドロリとした赤い物質を入れ、そこにチュニックを入れました。それから棒を使って混ぜます。
「旦那様、これは染め物ではなく和え物では?」
「染めには見えないけど料理にも見えないぞ」
ひっくり返そうとするとペッタンペッタンと、まるでセメントを練っているような音がします。染料が馴染んだあたりで二本の木の棒で作ったローラーの間を通して余分な染料を落とします。染料の絡んだチュニックを水の入った桶に入れて、余分な染料を洗い流します。
「ペカッとした感じだね」
サラが言ったとおり、綿でできたチュニックがポリエステルのような質感になりました。テカっています。
「ちょっと目立つな」
「わかりやすくていいですね」
元日本人三人にとっては見慣れた色でした。
「ものすごく目立ちそうです」
「華やかでいいですわ」
「貴族様でも滅多に着ないような色合いでは?」
同じように青と黄もそれぞれ染めます。念のために酢を使って色止めをして、明日になったら確認です。
「ラケルは工房で働いたことがあるのか?」
「いえ。村ではどの家でも獣を狩って鞣してましたです。小さな子供に狩りは危険ですので、解体や鞣しをさせられます。私はまず鞣しをしてましたです」
ラケルが育ったシャンペ村は、この国でも端の方にある、犬人族が中心となっている集落です。基本が自給自足でしたので、革だろうが織物だろうが焼き物だろうが酒だろうが、自分たちで用意していました。
獣人は体格や生活スタイルが人間にかなり似ていますので、国というシステムに組み込まれて暮らすことが多いのですが、中には国に属さずに独立を保つ集落もあります。税を払わない代わりに、何があっても国からの支援は一切ありません。その代わりに半独立の領地として独自の成長を遂げることがあります。
そのような集落でも、どうしても必要なものを購入するためには誰かが他の町へ出かけなければなりません。その際の重要な交易品の一つが毛皮です。それに、聖別の儀を受けるためには教会に出かける必要がありますので、まったく他の町と接触がないわけでもありません。
「鞣しに使うのは……」
レイはラケルが口にした素材をメモします。ほとんどはこれまでに見たことのあるものでした。
「ラケルの漂白剤は……あと一つあれば作れるか」
ほとんどが手持ちの素材で作れそうです。手元にないものもあるが、森に行けば手に入ります。ただし、そこまでしてグレーターパンダに使えるかどうかはわかりません。
「レイ様はどんなことでもできるのですね。素晴らしいですわ」
「いや、魔物を解体してたら付いただけなんだけどな」
解体して内臓を切り分けていたら、いつの間にか【解体】だけでなく【調合】が付きました。内臓は薬の素材になりますので、そのようなことが起きたのです。
「ですが、わたくしにはなかなか付きませんわ」
「それもそうだな。サラは付いたか?」
「まだだよ。同じくらいやってるのにね」
「ジョブは関係ないだろうしなあ。シーヴはあったよな?」
「はい。前からあります」
同じだけ作業をしても個人個人で違いが出ます。レイのように、どちらかといえば細かい性格の場合、チマチマした作業が必要なスキルが付きやすくなります。逆にサラやケイトのように大雑把な性格なら、そのようなスキルは付きにくくなっています。
サラはもちろん適当にやっているわけではありませんが、本来は「ドカーン」「バコーン」と勢いよく敵を吹き飛ばしたり地面をえぐったり、そのようなことに燃える性格です。残念ながらそこまでのスキルも魔法もまだ身に付いていません。かろうじて【火矢】でオークの頭が吹き飛ばせるくらいです。腕力がありますので、物理で殴るほうが効果的です。
「ダーシーさんに教えてもらったものと少し違うな」
二つのレシピはほとんどが同じでしたが、一部が違っています。ダーシーのほうにはケッサギョティの根とハチョキュランジュヴァの粉末が使われ、ラケルのほうにはこの二つの代わりにカリョッヂグリュンの実の絞り汁とミソッチャの花がありました。シャンペ村はかなり山に近く、このあたりとは手に入る野草や薬草が違っているせいかもしれないとレイは考えます。
「それじゃあ、ラケルとダーシーさんので一度やってみよう。大きいのはもったいないから、ハンカチくらいのサイズでいいよな?」
「これくらい?」
「ああ、ありがとう」
サラがこれまで溜めていた、手のひらサイズからハンカチサイズの毛皮を渡します。
「しかし……こんなに荒っぽいやり方でいいのか?」
ラケルから教わった方法は、レイが思っていたよりもかなり荒っぽいやり方でした。まずは解体した魔物の毛皮から脂肪をきれいに剥ぎ取ります。次に表と裏をしっかり洗って汚れを落としておきます。それからラケルが鞣し液と呼んでいる液体と塩を、水の入った樽に入れてよく混ぜます。最後にそこに毛皮を漬け込みます。
「これで丸一日経てば白くなりましたです。グレーターパンダはやったことはありませんです」
丸一日経ったら樽から出してしっかり洗って汚れを取って乾燥させます。この時点で真っ白になっているとラケルは説明しました。
魔物は野獣と違い、その革は一度硬くすると硬いまま、柔らかくすると柔らかいままという性質があります。鞣し液で柔らかくなりますので、その後はどれだけ水に浸けても硬くなることはないあたりが野獣と違っています。
「まあパンダも含めて一通りの魔物で試してみよう。向き不向きもあるだろうからな」
レイたちはホーンラビット、ブッシュマウス、スパイラルディアー、ラインベアー、タスクボアー、そしてグレーターパンダの毛皮をそれぞれ鞣して漂白することにしました。
「鞣しが成功しましたら私が仕立てます。奥様方の好みの形を教えていただけますか?」
シャロンが順番にサイズを測り、好みの形を聞いてメモをとります。もちろん鞣しが終わるのは明日以降の話ですが、女性陣は真っ白な毛皮をまとった自分たちの姿を思い浮かべていました。それを見たレイは、樽に向かって「成功しますように」と祈りを捧げたのです。
「贅沢なのは分かるけどさあ、床に敷いたらふかふかだよね」
「まあいくらでも狩れるから一枚や二枚ならいいんじゃないか?」
他にもパンダ狩りをしているパーティーはいますが、一番安定して質の高い毛皮を持ち込んでいるのがレイたちです。常に金貨一枚で冒険者ギルドに売却していますが、自分たちで使って悪いわけではありません。
「それならさあ、服をもっとオシャレにしようよ」
サラの提案は女性としては当然ですが、手に入るものには限度があります。
「デザインはどうにかできても、色がなあ……」
レイが言っているのは、色止めしても色落ちする染料のことです。もったいないと思って集めていたアーカーベリーの実などは染料に使えますが、すぐに色が抜けてしまいます。酢や塩で色止めしても同じでした。だから庶民が着る服は色が薄いのです。
「旦那様、染料もあの薬のように濃縮して徹底的に濃くしてみては?」
「濃くか……」
たしかに体力回復薬は五倍、一〇倍、二〇倍、一〇〇倍の濃度で作ったものがあります。染料も一般的な染めに使う染料の一〇〇倍使えば落ちないのではないかとシャロンは提案しました。
「色落ちするとしたらとんでもないことになると思うけど、鞣しが終わるまでに時間があるから試してみるか」
画材として使えそうな素材は集めてあります。実際に一部はインクにしてディオナに渡しています。
「それなら【調合】持ち三人でやってみるか」
シーヴとシャロンは【調合】を持っています。薬ではありませんが、このスキルがあると品質が上がるのです。三人並んですり鉢で染料の準備を始めました。
赤はアーカーベリーの実。青はルーリーリーブズの葉。黄はサニーフラワーの花。どれも薬効のない部分は染料として使われることもありますが、数回洗えばかなり色落ちします。しばらくすると、どれも生成りのようになってしまうのです。だから染め直しますが、それもまた落ちます。その繰り返しですね。
「まずはすり鉢で潰す」
レイが赤、シーヴが青、シャロンが黄とそれぞれ色を分けてすり潰します。水を加えて練るようにして、ドロリとした液体を鍋に移します。まだ不純物が入っていますので、全体的ににごり気味です。
鍋がいっぱいになると、別の鍋の中に漉し布で漉しながら移していきます。一時間ほどでそれぞれの鍋がいっぱいになりました。
「さて、煮詰めるか」
「煮詰まるの?」
「体力回復薬だってこんなものだから大丈夫だろう。焦げないように気をつければ」
うかつに強火でやってしまうと一瞬で焦げつきかねません。弱火でじっくりとです。
しばらく火にかけていると、水分が抜けて量が減り始めました。
「綺麗ですわ」
ケイトが鍋の中を覗いてうっとりとしています。
「旦那様、私は不安になると思うのですが」
「俺もそうだ」
体力回復薬を作っていたときにも感じたことですが、どうみてもペンキです。蓋を開けた瞬間に目に飛び込んでくるあのぺっとり感。どう見ても体に悪そうです。
マルタとダーシーは朱肉のような色の体力回復薬を見て、綺麗だの宝石のようだのと言いました。それを聞いて、この世界では色彩感覚が違うのだろうかとレイは思っていましたが、ケイトは綺麗だと言い、シャロンは不安になると言いました。結局は好みの問題かもしれないと、レイは自分の中で答えを出しました。
「レイ、どういう理屈で水分が減っているんですか?」
「あ、それは私も思った。元々水分がほとんどないよね?」
体力回復薬でも同じですが、元々水分をかなり少なくして作っています。だから、それを煮詰めても限度があるはずです。どうすればこれほど水分が減って濃縮されるのかがシーヴとサラにはわかりません。普通なら水分がゼロになって粉末になっているはずです。
「俺にもよくわからないけど、やっぱり水かな?」
「今まで使ったのは、全部レイが出した水ですね」
「ご主人さまだからすごいことができるというのではダメなのです?」
「ダメじゃないけどさ。なんていうか、納得がね」
普通なら水分がなくなって乾燥するはずですが、流動性を保っています。
「ま、いっか。レイ、試しにこれはどう?」
「それでやってみるか」
サラが用意したのは、どこにでもあるようなチュニックです。生成りなので色の変化がよくわかりそうです。
「普通なら水を入れて染料を溶かして、そこに入れる感じだけど」
レイは桶に染料という名前のドロリとした赤い物質を入れ、そこにチュニックを入れました。それから棒を使って混ぜます。
「旦那様、これは染め物ではなく和え物では?」
「染めには見えないけど料理にも見えないぞ」
ひっくり返そうとするとペッタンペッタンと、まるでセメントを練っているような音がします。染料が馴染んだあたりで二本の木の棒で作ったローラーの間を通して余分な染料を落とします。染料の絡んだチュニックを水の入った桶に入れて、余分な染料を洗い流します。
「ペカッとした感じだね」
サラが言ったとおり、綿でできたチュニックがポリエステルのような質感になりました。テカっています。
「ちょっと目立つな」
「わかりやすくていいですね」
元日本人三人にとっては見慣れた色でした。
「ものすごく目立ちそうです」
「華やかでいいですわ」
「貴族様でも滅多に着ないような色合いでは?」
同じように青と黄もそれぞれ染めます。念のために酢を使って色止めをして、明日になったら確認です。
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