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第2章:冬、活動開始と旅立ち
第18話:それぞれの苦手なもの
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「何かが来ます。ヒュージキャタピラーですね」
「うげっ」
サラが顔を引きつらせます。彼女は普通のイモムシは嫌いではありませんが、体長三メートルもあるイモムシはイモムシノヨウナナニカであってイモムシではないと思っています。
「俺がやるからサラは馬車を見ておいてくれ」
「お願い」
「私も出ますね」
レイが馬車から出ると、シーヴは街道から外れたところで馬車を止めました。サラが手綱を受け取るとシーヴは御者台から飛び降りました。
ヒュージキャタピラーは巨大なイモムシです。波打つ白い体はどことなく人を不安にさせる不気味さがあります。レイはサラほどには嫌ってはいませんが、それでもペットにしたいほど可愛いわけでもありません。サラの心の平安のためにも、シーヴと並んで片っ端から頭を潰していきました。
◆◆◆
「レイは強いですね」
「そうか?」
メイス一振りでヒュージキャタピラーを倒していったレイを見て、シーヴは素直に感心しました。レイはそれに対して疑問で返しました。自分が強いという実感がないからです。
レイは自分のステータスが高いことを知っていますが、強さそのものは比較対象がないのでわかっていません。他のパーティーと一緒に戦った経験がないんですよね。普通は避けながら何度も攻撃して倒すという事実を知りません。
「でもシーヴもすごかったな」
「そうそう。動きが全然違ったね」
「そこは昔取った杵柄ってことです。現役をやめてもステータスは残りますから」
Cランクのスカウトの動きは速いんです。さらには種族が獅子人です。そもそもベースとなる脚力が違うんです。
「上級ジョブにはならないの?」
「特に必要がありませんからね」
上級ジョブになったほうが仕事が捗ることがありますが、冒険者ギルドの受付の場合、すでにある程度の実力がある人が雇われています。そこからさらに上を目指す意味はそれほどありません。だから万が一に備えて転職の機会を残しておくという職員が多いんです。
大都市で職員の入れ替わりが激しいならともかく、マリオンのような地方都市では、シーヴのように一〇代で引退してギルド職員になるというのは珍しいことです。若くて実力があって引退してもいいと考える冒険者が少ないからです。普通ならもっと続けたいと思うはずです。
「もう少し進んだあたりに川がありますので、そのあたりでお昼にしましょうか」
「そうだね。気分的にサッパリしたい」
「それなら爽やか系でいくか」
数種類の出汁がありますので、スープのベースにはその中で一番さっぱりしたものをレイは選びました。スープだけでは物足りないので、昨日狩ったブッシュマウスの肉を焼くことにします。
外での昼食も三回目となり、レイの手際もかなりよくなってきました。ささっと一匹だけ解体し、肉をスライスします。程よい弾力があるので、薄くても食べ応えがあります。
フライパンを熱し、そこにブッシュマウスの脂肪を一切れ入れます。脂肪の甘い香りが広がってくると、そこに肉を入れて軽く炒めたら軽く味付けをします。白パンに切れ込みを入れ、そこに肉を挟むと、ロールパンサンドのようなものができあがりました。
もう一種類、ソーセージを温めてキャベツのピクルスと一緒に白パンに挟み、その上に煮込んだアーカーベリーの実を乗せます。こちらはホットドッグに近いですね。
「あ~~~、癒される。心が」
サラがスープを飲みながら遠い目をしています。
「本当に苦手なんですね」
「カマキリやヘビは全然大丈夫なんだけど、アレだけはダメ。美味しいのに、美味しいのに、美味しいのに」
「そうなんですよね。でもいずれは相手をしますよね?」
「そうなんだけど……レイ、全部やってもらっちゃダメ?」
心底嫌そうな顔でサラは、レイに向かって拝みました。
「全部俺が相手をしてもいいけど、逃げ回ってばかりいたら危ないぞ。もし一〇〇匹に囲まれたらどうするんだ?」
いくら上級ジョブになってステータスが高くなったとしても、苦手な魔物に囲まれて足がすくめば命を落としかねません。上級ジョブになって頑丈になったサラでも、何トンもあるヒュージキャタピラーに次々と踏まれればアウトでしょう。
「最初は解体を見るだけでもいいから慣れてくれ。意外とグロくないから」
「表面がダメなんだって。うわ、ゾワッときた」
動物系の魔物に比べると、昆虫系は内蔵が多くありません。特にイモムシ型はエビの背わたを取るように、背中を切り開いて抜き取れば、ほとんど終わったようなものです。
「オグデンに着くまでに少しだけでも慣れたほうがいいでしょうね。私が周囲を警戒していますので、レイはサラに解体を見せてあげてください。何度か見れば慣れますよ」
サラは眉間に深いシワを寄せています。そこにシーヴは、サラが思ってもみなかった事実を突きつけます。
「それにですね、ヒュージキャタピラーの名前には『ヒュージ』が付いていますけど、この種の魔物では一番小さいですからね」
「…………マジで?」
「はい。ヒュージの次がキング、その上がカイザーです。そのサイズになると、もう建物ですよ」
ヒュージキャタピラーは、大きくても高さが一メートル、長さが三メートルほどですが、キングは高さが二メートル半、長さ七、八メートルにもなります。カイザーにいたっては、高さが六メートルを超え、長さ一五メートル以上になります。二階建てバスよりもはるかに大きいですね。
「いくらサラでも、そんなのに囲まれたら逃げられないでしょう」
「う、うん」
「というわけで、明日はヒュージキャタピラーの解体をじっくりと見てみましょう」
「ええっ⁉」
「ええっ、じゃありません。苦手なものを苦手のまま放っておくと、いざというときに困ります。今のうちですよ」
シーヴが先生のようにサラに諭しています。たしかにカイザーキャタピラーに囲まれでもしたらどうしようもありません。いくらサラでも六メートルは跳べません。
「サラ、明日の昼にでも一つ解体するから、とりあえず見るだけ見てみろ。無理して解体しろって、まだ言わないから」
「……わかった」
さすがにそこまで言われればサラもうなずかざるをえません。どうせいずれは乗り越えなければならない壁です。できれば避けたい壁でしたが。
ヒュージキャタピラーの一件が落ち着くと昼食です。
「レイ、ソーセージの上に乗っているこれは見たことがないんですけど、これは?」
シーヴがホットドッグを食べながら、上に乗っている緑色の粒を指しました。
「ああ、それはアーカーベリーの実を煮込んだやつだ。ピクルスのつもりだけど、不味かったか?」
「いえ、面白い食感だなと思いまして。あの実がこんな感じになるんですか?」
「こうなったのは予想外だったけどな。あの赤い実を料理のアクセントに使おうと思ったんだけど、煮込んだら色が抜けてそんな色になった」
「クニクニしていて面白いですね」
シーヴはアーカーベリーの実の食感を楽しんでいます。
「甘くしても面白いかもしれません」
「甘くしてか……」
ピクルスのつもりで酢と砂糖、塩、トウガラシで軽く煮込んでから粒のままのコショウを入れています。甘く煮るという発想はありませんでした。
「デザートにいいかもしれないな」
レイの頭に浮かんだのはタピオカやナタデココなど、食感に特徴があるデザートです。煮込んだアーカーベリーの実は直径が六、七ミリくらいが多いので、タピオカの代わりになるでしょうか。
この国には甘いデザートはあまりありません。白砂糖はかなり貴重です。庶民が使うならせいぜい赤砂糖ですが、それでも十分高価です。気軽に手に入れられるのは蜂蜜か楓蜜か蔦蜜。これらを使うとなると焼き菓子が中心になります。
それ以外のデザートとなると、果物が中心になります。ドライフルーツが多いですが、蜂蜜漬けもあります。漬けたあとの蜂蜜はそのまま料理に使うか、水やミードで割って飲むか、それを使ってミードを作ることもあります。
レイは記憶が戻る前、なぜかジャガイモからデンプンを取り出して葛餅モドキや葛湯モドキを作っていましたが、大量のジャガイモと砂糖を使いますので、実はかなりの高級品です。そう簡単には作れません。
「レイは甘いものは好きですか?」
「そこまで好きじゃないなあ。食べることは食べるけど」
疲れたときの甘いものは別として、普段はあったら食べるというレベルです。
「苦手なものはありますか?」
「レイは食べ物でも魔物でも苦手なものはないよね。好きなものもないけど」
「だな。出されたものはなんでも食べる。不味くても」
「そんなのあったっけ?」
そう聞かれると、レイは思い出しながら少し顔をしかめました。口にしなければよかったという表情です。
「サラと会う前の話だけど、あれはどこで食べたんだったか、めちゃくちゃ酸っぱい料理があった」
記憶によると、魔物肉を使っていたことは覚えています。その肉自体は問題ありません。そこに使われていたソースが原因でした。
まるで酢を濃縮したような、レモン一〇〇個分の果汁を大さじ一杯に濃縮したような、頭を突き抜ける酸っぱさだったことだけがレイの頭に残っていました。食べ切ったはずですが、酸っぱかった記憶しか残っていません。
どこで食べたかという記憶すらレイの頭からは抜けていましたが、旅慣れたシーヴには心当たりがありました。
「おそらくセヴァリー男爵領ですね。あのあたりには酸っぱい料理が多いのが特徴ですね」
「あっちか」
ギルモア男爵領からずっと西にあるセヴァリー男爵領では、ミントの葉をみじん切りにしたところに、柑橘の一種であるシトローナの果汁を加えるミントソースや、ライ麦を発酵させたザクワスなど、酸味の強いソースがよく使われます。
「緑色じゃなかったってことは、ザクワスだったのか」
「いえ、ザクワスはスープに使うことが多いですが、発酵食品なのでそこまで酸味はきつくないはずです。もしかしたらシトローナを大量に使ったのかもしれませんね」
ザクワスというのはライ麦の発酵液です。お湯の中にライ麦の粉と塩やスパイスを入れて毎日かき混ぜながら寝かせると四、五日で完成します。地球ではポーランド料理で使われますね。
セヴァリー男爵領では家庭料理によく使われる調味料です。ただし、ザクワス自体は顔をしかめるほど酸っぱくはないはずです。
シトローナは日本では佛手柑と呼ばれる柑橘に近いもので、とにかく酸っぱい柑橘です。ユズに近いユノサどころの酸っぱさではありません。
「他にもあまり見ない料理があったことは覚えてるけど、そのソースしか記憶にない。この年で口にしたらまた違うかもしれないけど」
子供と大人では味覚が違いますからね。子供時代は苦手だったのに、大人になったら好物に変わったものもあるでしょう。
「シーヴは好き嫌いは?」
「そうですね。歯応えというか、食感が面白いものが好きでしょうか。味としては苦味が強いものは苦手ですね。エールも苦味が強い銘柄は苦手で」
「私と一緒かな。レイとは逆だね」
「そうだな。俺は苦いのに強いからな」
レイは苦味の強いエールが好きで、日本でもゴーヤーやピーマン、セロリ、春菊などが好物でした。臭みにも強いので、納豆やくさやなども好きですね。
仕事でスウェーデンに行ったときには、世界一臭い食べ物として知られているシュールストレミングをご馳走してもらい感激したこともありました。
食事が終わるとまた馬車に乗り込みます。午後も馬車に揺られる旅の続きです。サラは馬車の揺れに懲りたようで、馬車の近くを歩くことが多くなりました。それでもヒュージキャタピラーが見えると馬車の中に飛んで戻っていました。
◆◆◆
「う~ん、これぞ冒険者」
月と星、そして自分たちを取り囲む四つのたき火以外に何も見えない景色を見ながら、サラが伸びをしました。これが日本のキャンプ場なら最高の環境でしょうね。ところがここは異世界です。魔物が襲ってくる可能性が十分にあります。
動物型や昆虫型の魔物の多くは火を恐れます。どれだけ強くても、ずっと火を当てていれば皮膚や毛皮が焦げるのは人でも魔物でも同じです。だから三つか四つほどのたき火で野営地を大きく囲い、明るくなるまでその火を絶やさなければ危険はかなり減ることになるんです。
そして、テントの近くには結界石を置きました。この時期はまだ虫は少ないですが、出ないとも限りません。
「わからなくもないけど、宿屋のほうが安心できるな」
「街道を大きく離れなければそこまで危険ではありませんよ。子供が一人旅できるほど安全ではありませんが。ほら」
野営にはそれに適した場所があります。なるべく地面に凹凸が少ないとか、大雨になったときに雨宿りができそうな木があるとか。そのような場所には他のパーティーが野営をした痕跡が残りやすいので、そこを探して使えばいいんです。
そして今回、シーヴが手を向けたあたりには、レイたちと同じようにこのあたりで野営をしようというパーティーがいました。三人から少し離れた場所に幌馬車が一台と何人かの人がいるのがレイには見えます。
こういう場合はお互いに挨拶をしておくと、万が一にも非常事態が起きた場合に警告してもらえる場合もあります。ただ、盗賊が冒険者パーティーに化けているパターンもあります。知っている顔でない限りは野営の場所は少し離しておくのがマナーですね。
ところが、今回は警戒する必要はなさそうです。シーヴの目に、顔見知りの顔が見えたからです。
「あれ? シーヴさん?」
シーヴが挨拶に向かうと、向こうから声をかけられました。
「はい。ラックさんでしたね」
「そうっす。向こうから来たみたいっすけど、お仕事で?」
「半分はそうですね。オグデンのギルドに移籍することになりましたから、その移動中です」
「じゃあ戻ったらお世話になるっす」
彼はアシュトン子爵領で活動しているラックという冒険者です。マリオンに何度も来ているので、シーヴも顔を覚えていました。
「そうそう、オグデンから南は盗賊が増えてるらしいっすよ。そのせいで魔物肉の値段がかなり上がってたっす。冒険者が護衛ばっかりで狩りに行かなくなったらしくって。俺たちもそうなんすけど」
ラックだけでなく、その場にいた全員が苦笑いをします。
「盗賊ですか」
「そうっす。ソロじゃ危ないってんで、臨時ですけど、こうやってパーティーを組んでやってるっす」
ラックは身のこなしが軽く、普段はソロで活動していますが、今回の護衛隊はそういった冒険者たちが一時的に組んだパーティーが担当していました。オグデンから南と言われていますが、盗賊はどこに出没してもおかしくないからです。
「オグデンに戻ったら、今度は南に行って魔物肉で稼ごうかって話になってるっす」
「はい、お待ちしていますね」
シーヴは一通りの情報を聞くと、自分たちの野営地へと戻りました。
「少し気になる情報がありました」
シーヴはレイたちのところに戻ると、先ほど聞いた盗賊の話を伝えました。
「盗賊か……」
「はい。どうも大規模な盗賊団があるようですね。もしかしたら複数の盗賊団が合流したのかもしれませんけど」
盗賊団と一口にいっても、両手の指で数えられそうな人数から、一〇〇人を超えるような大組織まであります。前者は身を持ち崩した冒険者パーティーがそのまま盗賊になるパターンが多いでしょう。後者の場合は単なる盗賊ではなく、権力者と癒着している可能性もあります。いずれにせよ、出会わないのが一番です。
「うげっ」
サラが顔を引きつらせます。彼女は普通のイモムシは嫌いではありませんが、体長三メートルもあるイモムシはイモムシノヨウナナニカであってイモムシではないと思っています。
「俺がやるからサラは馬車を見ておいてくれ」
「お願い」
「私も出ますね」
レイが馬車から出ると、シーヴは街道から外れたところで馬車を止めました。サラが手綱を受け取るとシーヴは御者台から飛び降りました。
ヒュージキャタピラーは巨大なイモムシです。波打つ白い体はどことなく人を不安にさせる不気味さがあります。レイはサラほどには嫌ってはいませんが、それでもペットにしたいほど可愛いわけでもありません。サラの心の平安のためにも、シーヴと並んで片っ端から頭を潰していきました。
◆◆◆
「レイは強いですね」
「そうか?」
メイス一振りでヒュージキャタピラーを倒していったレイを見て、シーヴは素直に感心しました。レイはそれに対して疑問で返しました。自分が強いという実感がないからです。
レイは自分のステータスが高いことを知っていますが、強さそのものは比較対象がないのでわかっていません。他のパーティーと一緒に戦った経験がないんですよね。普通は避けながら何度も攻撃して倒すという事実を知りません。
「でもシーヴもすごかったな」
「そうそう。動きが全然違ったね」
「そこは昔取った杵柄ってことです。現役をやめてもステータスは残りますから」
Cランクのスカウトの動きは速いんです。さらには種族が獅子人です。そもそもベースとなる脚力が違うんです。
「上級ジョブにはならないの?」
「特に必要がありませんからね」
上級ジョブになったほうが仕事が捗ることがありますが、冒険者ギルドの受付の場合、すでにある程度の実力がある人が雇われています。そこからさらに上を目指す意味はそれほどありません。だから万が一に備えて転職の機会を残しておくという職員が多いんです。
大都市で職員の入れ替わりが激しいならともかく、マリオンのような地方都市では、シーヴのように一〇代で引退してギルド職員になるというのは珍しいことです。若くて実力があって引退してもいいと考える冒険者が少ないからです。普通ならもっと続けたいと思うはずです。
「もう少し進んだあたりに川がありますので、そのあたりでお昼にしましょうか」
「そうだね。気分的にサッパリしたい」
「それなら爽やか系でいくか」
数種類の出汁がありますので、スープのベースにはその中で一番さっぱりしたものをレイは選びました。スープだけでは物足りないので、昨日狩ったブッシュマウスの肉を焼くことにします。
外での昼食も三回目となり、レイの手際もかなりよくなってきました。ささっと一匹だけ解体し、肉をスライスします。程よい弾力があるので、薄くても食べ応えがあります。
フライパンを熱し、そこにブッシュマウスの脂肪を一切れ入れます。脂肪の甘い香りが広がってくると、そこに肉を入れて軽く炒めたら軽く味付けをします。白パンに切れ込みを入れ、そこに肉を挟むと、ロールパンサンドのようなものができあがりました。
もう一種類、ソーセージを温めてキャベツのピクルスと一緒に白パンに挟み、その上に煮込んだアーカーベリーの実を乗せます。こちらはホットドッグに近いですね。
「あ~~~、癒される。心が」
サラがスープを飲みながら遠い目をしています。
「本当に苦手なんですね」
「カマキリやヘビは全然大丈夫なんだけど、アレだけはダメ。美味しいのに、美味しいのに、美味しいのに」
「そうなんですよね。でもいずれは相手をしますよね?」
「そうなんだけど……レイ、全部やってもらっちゃダメ?」
心底嫌そうな顔でサラは、レイに向かって拝みました。
「全部俺が相手をしてもいいけど、逃げ回ってばかりいたら危ないぞ。もし一〇〇匹に囲まれたらどうするんだ?」
いくら上級ジョブになってステータスが高くなったとしても、苦手な魔物に囲まれて足がすくめば命を落としかねません。上級ジョブになって頑丈になったサラでも、何トンもあるヒュージキャタピラーに次々と踏まれればアウトでしょう。
「最初は解体を見るだけでもいいから慣れてくれ。意外とグロくないから」
「表面がダメなんだって。うわ、ゾワッときた」
動物系の魔物に比べると、昆虫系は内蔵が多くありません。特にイモムシ型はエビの背わたを取るように、背中を切り開いて抜き取れば、ほとんど終わったようなものです。
「オグデンに着くまでに少しだけでも慣れたほうがいいでしょうね。私が周囲を警戒していますので、レイはサラに解体を見せてあげてください。何度か見れば慣れますよ」
サラは眉間に深いシワを寄せています。そこにシーヴは、サラが思ってもみなかった事実を突きつけます。
「それにですね、ヒュージキャタピラーの名前には『ヒュージ』が付いていますけど、この種の魔物では一番小さいですからね」
「…………マジで?」
「はい。ヒュージの次がキング、その上がカイザーです。そのサイズになると、もう建物ですよ」
ヒュージキャタピラーは、大きくても高さが一メートル、長さが三メートルほどですが、キングは高さが二メートル半、長さ七、八メートルにもなります。カイザーにいたっては、高さが六メートルを超え、長さ一五メートル以上になります。二階建てバスよりもはるかに大きいですね。
「いくらサラでも、そんなのに囲まれたら逃げられないでしょう」
「う、うん」
「というわけで、明日はヒュージキャタピラーの解体をじっくりと見てみましょう」
「ええっ⁉」
「ええっ、じゃありません。苦手なものを苦手のまま放っておくと、いざというときに困ります。今のうちですよ」
シーヴが先生のようにサラに諭しています。たしかにカイザーキャタピラーに囲まれでもしたらどうしようもありません。いくらサラでも六メートルは跳べません。
「サラ、明日の昼にでも一つ解体するから、とりあえず見るだけ見てみろ。無理して解体しろって、まだ言わないから」
「……わかった」
さすがにそこまで言われればサラもうなずかざるをえません。どうせいずれは乗り越えなければならない壁です。できれば避けたい壁でしたが。
ヒュージキャタピラーの一件が落ち着くと昼食です。
「レイ、ソーセージの上に乗っているこれは見たことがないんですけど、これは?」
シーヴがホットドッグを食べながら、上に乗っている緑色の粒を指しました。
「ああ、それはアーカーベリーの実を煮込んだやつだ。ピクルスのつもりだけど、不味かったか?」
「いえ、面白い食感だなと思いまして。あの実がこんな感じになるんですか?」
「こうなったのは予想外だったけどな。あの赤い実を料理のアクセントに使おうと思ったんだけど、煮込んだら色が抜けてそんな色になった」
「クニクニしていて面白いですね」
シーヴはアーカーベリーの実の食感を楽しんでいます。
「甘くしても面白いかもしれません」
「甘くしてか……」
ピクルスのつもりで酢と砂糖、塩、トウガラシで軽く煮込んでから粒のままのコショウを入れています。甘く煮るという発想はありませんでした。
「デザートにいいかもしれないな」
レイの頭に浮かんだのはタピオカやナタデココなど、食感に特徴があるデザートです。煮込んだアーカーベリーの実は直径が六、七ミリくらいが多いので、タピオカの代わりになるでしょうか。
この国には甘いデザートはあまりありません。白砂糖はかなり貴重です。庶民が使うならせいぜい赤砂糖ですが、それでも十分高価です。気軽に手に入れられるのは蜂蜜か楓蜜か蔦蜜。これらを使うとなると焼き菓子が中心になります。
それ以外のデザートとなると、果物が中心になります。ドライフルーツが多いですが、蜂蜜漬けもあります。漬けたあとの蜂蜜はそのまま料理に使うか、水やミードで割って飲むか、それを使ってミードを作ることもあります。
レイは記憶が戻る前、なぜかジャガイモからデンプンを取り出して葛餅モドキや葛湯モドキを作っていましたが、大量のジャガイモと砂糖を使いますので、実はかなりの高級品です。そう簡単には作れません。
「レイは甘いものは好きですか?」
「そこまで好きじゃないなあ。食べることは食べるけど」
疲れたときの甘いものは別として、普段はあったら食べるというレベルです。
「苦手なものはありますか?」
「レイは食べ物でも魔物でも苦手なものはないよね。好きなものもないけど」
「だな。出されたものはなんでも食べる。不味くても」
「そんなのあったっけ?」
そう聞かれると、レイは思い出しながら少し顔をしかめました。口にしなければよかったという表情です。
「サラと会う前の話だけど、あれはどこで食べたんだったか、めちゃくちゃ酸っぱい料理があった」
記憶によると、魔物肉を使っていたことは覚えています。その肉自体は問題ありません。そこに使われていたソースが原因でした。
まるで酢を濃縮したような、レモン一〇〇個分の果汁を大さじ一杯に濃縮したような、頭を突き抜ける酸っぱさだったことだけがレイの頭に残っていました。食べ切ったはずですが、酸っぱかった記憶しか残っていません。
どこで食べたかという記憶すらレイの頭からは抜けていましたが、旅慣れたシーヴには心当たりがありました。
「おそらくセヴァリー男爵領ですね。あのあたりには酸っぱい料理が多いのが特徴ですね」
「あっちか」
ギルモア男爵領からずっと西にあるセヴァリー男爵領では、ミントの葉をみじん切りにしたところに、柑橘の一種であるシトローナの果汁を加えるミントソースや、ライ麦を発酵させたザクワスなど、酸味の強いソースがよく使われます。
「緑色じゃなかったってことは、ザクワスだったのか」
「いえ、ザクワスはスープに使うことが多いですが、発酵食品なのでそこまで酸味はきつくないはずです。もしかしたらシトローナを大量に使ったのかもしれませんね」
ザクワスというのはライ麦の発酵液です。お湯の中にライ麦の粉と塩やスパイスを入れて毎日かき混ぜながら寝かせると四、五日で完成します。地球ではポーランド料理で使われますね。
セヴァリー男爵領では家庭料理によく使われる調味料です。ただし、ザクワス自体は顔をしかめるほど酸っぱくはないはずです。
シトローナは日本では佛手柑と呼ばれる柑橘に近いもので、とにかく酸っぱい柑橘です。ユズに近いユノサどころの酸っぱさではありません。
「他にもあまり見ない料理があったことは覚えてるけど、そのソースしか記憶にない。この年で口にしたらまた違うかもしれないけど」
子供と大人では味覚が違いますからね。子供時代は苦手だったのに、大人になったら好物に変わったものもあるでしょう。
「シーヴは好き嫌いは?」
「そうですね。歯応えというか、食感が面白いものが好きでしょうか。味としては苦味が強いものは苦手ですね。エールも苦味が強い銘柄は苦手で」
「私と一緒かな。レイとは逆だね」
「そうだな。俺は苦いのに強いからな」
レイは苦味の強いエールが好きで、日本でもゴーヤーやピーマン、セロリ、春菊などが好物でした。臭みにも強いので、納豆やくさやなども好きですね。
仕事でスウェーデンに行ったときには、世界一臭い食べ物として知られているシュールストレミングをご馳走してもらい感激したこともありました。
食事が終わるとまた馬車に乗り込みます。午後も馬車に揺られる旅の続きです。サラは馬車の揺れに懲りたようで、馬車の近くを歩くことが多くなりました。それでもヒュージキャタピラーが見えると馬車の中に飛んで戻っていました。
◆◆◆
「う~ん、これぞ冒険者」
月と星、そして自分たちを取り囲む四つのたき火以外に何も見えない景色を見ながら、サラが伸びをしました。これが日本のキャンプ場なら最高の環境でしょうね。ところがここは異世界です。魔物が襲ってくる可能性が十分にあります。
動物型や昆虫型の魔物の多くは火を恐れます。どれだけ強くても、ずっと火を当てていれば皮膚や毛皮が焦げるのは人でも魔物でも同じです。だから三つか四つほどのたき火で野営地を大きく囲い、明るくなるまでその火を絶やさなければ危険はかなり減ることになるんです。
そして、テントの近くには結界石を置きました。この時期はまだ虫は少ないですが、出ないとも限りません。
「わからなくもないけど、宿屋のほうが安心できるな」
「街道を大きく離れなければそこまで危険ではありませんよ。子供が一人旅できるほど安全ではありませんが。ほら」
野営にはそれに適した場所があります。なるべく地面に凹凸が少ないとか、大雨になったときに雨宿りができそうな木があるとか。そのような場所には他のパーティーが野営をした痕跡が残りやすいので、そこを探して使えばいいんです。
そして今回、シーヴが手を向けたあたりには、レイたちと同じようにこのあたりで野営をしようというパーティーがいました。三人から少し離れた場所に幌馬車が一台と何人かの人がいるのがレイには見えます。
こういう場合はお互いに挨拶をしておくと、万が一にも非常事態が起きた場合に警告してもらえる場合もあります。ただ、盗賊が冒険者パーティーに化けているパターンもあります。知っている顔でない限りは野営の場所は少し離しておくのがマナーですね。
ところが、今回は警戒する必要はなさそうです。シーヴの目に、顔見知りの顔が見えたからです。
「あれ? シーヴさん?」
シーヴが挨拶に向かうと、向こうから声をかけられました。
「はい。ラックさんでしたね」
「そうっす。向こうから来たみたいっすけど、お仕事で?」
「半分はそうですね。オグデンのギルドに移籍することになりましたから、その移動中です」
「じゃあ戻ったらお世話になるっす」
彼はアシュトン子爵領で活動しているラックという冒険者です。マリオンに何度も来ているので、シーヴも顔を覚えていました。
「そうそう、オグデンから南は盗賊が増えてるらしいっすよ。そのせいで魔物肉の値段がかなり上がってたっす。冒険者が護衛ばっかりで狩りに行かなくなったらしくって。俺たちもそうなんすけど」
ラックだけでなく、その場にいた全員が苦笑いをします。
「盗賊ですか」
「そうっす。ソロじゃ危ないってんで、臨時ですけど、こうやってパーティーを組んでやってるっす」
ラックは身のこなしが軽く、普段はソロで活動していますが、今回の護衛隊はそういった冒険者たちが一時的に組んだパーティーが担当していました。オグデンから南と言われていますが、盗賊はどこに出没してもおかしくないからです。
「オグデンに戻ったら、今度は南に行って魔物肉で稼ごうかって話になってるっす」
「はい、お待ちしていますね」
シーヴは一通りの情報を聞くと、自分たちの野営地へと戻りました。
「少し気になる情報がありました」
シーヴはレイたちのところに戻ると、先ほど聞いた盗賊の話を伝えました。
「盗賊か……」
「はい。どうも大規模な盗賊団があるようですね。もしかしたら複数の盗賊団が合流したのかもしれませんけど」
盗賊団と一口にいっても、両手の指で数えられそうな人数から、一〇〇人を超えるような大組織まであります。前者は身を持ち崩した冒険者パーティーがそのまま盗賊になるパターンが多いでしょう。後者の場合は単なる盗賊ではなく、権力者と癒着している可能性もあります。いずれにせよ、出会わないのが一番です。
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sou
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蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
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これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
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転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
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不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
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〈あらすじ〉
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誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
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