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第6章:夏から秋、悠々自適
第2話:物件の確認と家具の注文
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「ザカリーさん、この件についてどれだけ知ってたんですか?」
馬車に乗るとレイは気になっていたことを質問しました。話がうますぎると思ったからです。
「いや、俺は何も聞いてないぞ。連れてきてくれと言われただけで。前から状況は説明しているがな」
「そうですか」
「まあ領主様に気に入られたってことでいいだろう。いい人なのは間違いない。いい人というだけでもないけどな」
「領主ならそうなんでしょうね」
その両肩に何十万人もの領民の生活がかかっているとなると、清濁併せ呑むことも必要になります。いい人がいい領主になれるとは限りません。
「ちなみにだな、一番下のご令嬢はまだ嫁いでいない。もう少しで成人のはずだ。どうだ?」
「どうだと言われても。まさか冒険者に嫁がせることはないでしょう」
レイは貴族の息子でも、跡取りではありません。普通の貴族の子女にとって、冒険者というのはなりたい職業ではないはずです。
その妻も同様に、けっして華やかな人生ではないでしょう。当たれば大きいかもしれませんが、外れれば一文無しにさえなりえるのが冒険者という職業です。
レイの場合、すでに金貨一〇〇〇枚以上を稼いでいます。そして今回は家を手に入れました。資産という点では十分すぎるでしょうが、冒険者はいつ命を落としても不思議ではありません。
「それはそうと、パンダ狩りと並行して住環境を整えますので、しばらくはギルドに行く回数を少し減らしますね」
「わかった。続けてくれるのなら問題ない」
「それと他に、パンダの肉も欲しいので、たまに自分たちで解体します」
「そちらも了解だ。うちで必要なのは毛皮だけだからな。上手に剥いでくれよ」
ギルドで下ろしてもらうと、レイたちはそのまま新居へとに向かいました。
◆◆◆
「まさかここだとはなあ」
「これは縁だよね」
ここはクラストンの町の北門と中央広場のちょうど間です。交差点の北東には白鷺亭があって、北西にレイが購入した物件があります。まさに目と鼻の先です。
渡された鍵を使って中に入ります。一階の入ったところが店舗として使われていたようです。その奥にダイニングとキッチンに使えそうなスペースがありました。
「思ったよりもきれいです」
「ラケル、これはきれいというか、何もないだけでは?」
元は商店でしたが、什器もなにもありません。ただし、ホコリはどうしても溜まりますので、掃除し甲斐がありそうだとシャロンは思いました。
「とりあえず上も見ようよ」
「そうですね。間取りはわかっていますけど、確認しておきましょう」
二階が住居部分、三階と四階が倉庫として使われていたようです。裏にはちょっとした庭もありました。
「一階で解体して、二階か三階で寝泊まりだな。上は物置で」
「ここなら問題なさそうだね」
「そうですね。知り合いも増えてきたことですし、しばらくこの町で暮らしてみてもいいのでは?」
「いざとなったらお店をするのはどうです?」
「店か。商売は向いてないんだよなあ」
いかにして利益を上げるかを考えるのが商売です。
「商売でしたらわたくしがお教えしますわ」
「ケイトが?」
「はい」
ケイトは胸を張って返事をしました。
「ケイト奥様、できもしないことをできると口になさるのはいかがなものかと」
「できますわ、勉強すれば」
シャロンはやれやれと両手を広げてからケイトに語りかけます。
「かつてパイなら焼けると言い張って、何度パイを爆発させたか、もうお忘れですか?」
「過去は忘れましたの」
「そこは忘れてもらっては困ります。全部で六回です。キッチンの掃除が大変だったんですよ、すべて時間差で爆発するので」
それを聞いたレイたちは「パイって爆発するんだ」「時間差?」と小声で話し合います。
「二階から上もそのまま使えそうだな」
ずっと放置されていたわけではありませんので、そのまま使えそうな状態です。レイは念のためにあちこちに【浄化】をかけていきます。
「ご主人さま、これはなんです?」
レイが振り返ると、ラケルは壁の突き当たりにある扉に頭を突っ込んでいました。
「これは……ダストシュートだな。そこから捨てればゴミ箱に入る」
窓にダストシュートが取り付けられたようです。庭にはゴミ箱代わりの樽が置かれています。ここから捨てれば、その樽の中に入るようになっています。
「でも家具がないな。持ってったのか、それとも売ってから離れたのか。いずれにせよ、一式購入だな」
「家具はほとんどが受注生産ですから、すぐ手に入るかどうかわかりませんよ」
シーヴが言うように、家具はほとんどが受注生産です。もちろん見本として作られているものもありますが、ニト〇やイケ〇のように、ずらっと並べることはありません。
家具というのは、大半が家で受け継ぐものです。親から子に、子から孫に。引っ越しするときには家具を丸ごと持っていきます。壊れても、直せる限りは直します。
「旦那様、急がせて中途半端なものを作られても困りますので、この際は時間をかけて上質のものを作ってもらえばよろしいのでは?」
「そうだな。金はあるし、それでいくか。それなら何が必要なのかをリストアップしてくれ」
くつろぐのはリビングを使えばいいので、レイ個人としては、手紙を書くための机と椅子、ベッド、服を入れておくクローゼット、それから本棚を兼ねた棚が一つあれば十分だと考えました。
「各部屋に机と椅子とベッド、クローゼットは必要だろう。他になにか必要か?」
レイは必要なものを書き出すことにしました。
「レイ様、鏡を買ってもよろしいですか?」
「いいと思うぞ。それぞれ部屋に置いたらいい」
マリオンは田舎でしたので、鏡を売っている店は多くはありませんでした。クラストンは面積としてはマリオンとほとんど変わりませんが、店の数が全然違います。鏡を売っている店はいくつもあるでしょう。
「机とは別に、小さなテーブルと椅子もあったほうがいいと思うよ」
「それはリビングでいいかなと思ったんだけどな」
「でも、ちょっと話をするのに、リビングに行くのも面倒なときもあるよね」
「そうか? それならテーブルセットも追加してくれ」
ちょっと相談したいときに部屋を訪れることもあるでしょう。それならテーブルと椅子くらいあってもいいのではとサラは言います。
「ベッドはそれぞれ個室用と、みんな用の特大が一つ、それと客間もあったほうがいいよね」
「いいでしょうね。客間も用意するとして、シングルサイズを一〇、それからキングサイズを二つ並べて……いえ、特注にしましょう」
「そんなデカいのがいるのか?」
「旦那様、大きなベッドが不要とでも?」
レイは疑問を口にしますが、女性陣の中ではみんなで寝られる巨大ベッドは必須のようです。
さて、とりあえず決まったのは、一人一人に部屋を割り当てて、来客の分も含めて一〇部屋ほど家具を一通り準備することです。さらに、複数人で寝られる広いベッドルームも用意することになったようですね。
「それなら家具の注文だね」
「家具屋さんの場所は聞いていますけど……みんなで行きますか?」
シーヴはレイに聞きました。
「あまり多いと意見が割れそうだなあ。俺は掃除をしてるから、五人で行ったらどうだ?」
シーヴの気遣いに、レイはうまく乗っかりました。女性の買い物は長いのが定番ですからね。しかも新居の家具選びとなれば、おそらくケイトが気合を入れて選ぶでしょう。そこにレイの意見は取り入れられるかどうかは微妙です。それならその場にいなくてもいいだろうと
「私はこの箒がありますので、旦那様と一緒に掃除でもいいかもしれません」
「では、レイとシャロンに任せましょう。とりあえず家具を注文してきます。場合によっては複数のお店に分けて注文しますね」
そう言って四人は買い物に出かけました。残ったレイとシャロンは掃除です。言ったからにはきちんとするべきことはしませんとね。
~~~
「とまあ、そういうことがあって、しばらくはそこで暮らすことになる」
「なるほどぉ。レイさんという将来有望な冒険者でぇ、そして家持ちぃ。もう囲われるしかありませんねぇ」
「囲わない囲わない」
すでにサラ、シーヴ、ラケル、ケイト、シャロンと五人の恋人がいます。これ以上相手を増やすのはさすがにマズいだろうとレイは思っています。平等に扱う自信がないからです。
デューラント王国では、理屈の上では妻が何人いても問題ありません。五人でも一〇人でも、はたまた一〇〇人でも。ただし、平等に扱うならばという前提があります。
人数に関係なく、平等に扱えなかった結果として、愛想を尽かされて逃げられるのは最も恥ずかしいことだと考えられています。だから、妻を片手の指の数を超えて持つのはそれだけ経済的にも精神的にもゆとりのある場合に限られます。つまり貴族ですね。
レイは冒険者です。自ら望んでそうなりました。たしかに稼ぎは冒険者とは思えないレベルに達していますが、それでも冒険者にすぎません。冒険者ギルドと薬剤師ギルドでは一定の信用はありますが、それでも社会的にはそこそこでしかないのです。
たとえ冒険者として成功しても、引退すれば収入は一気に減るでしょう。そうなったときにどうなるかです。
収入がゼロになっても、何十年も家族を養わなければなりません。大切なのは、現役時代にどれだけ貯えておけるかです。
基本的な生活費が安いとはいえ、成功した冒険者とその家族が、最低限ギリギリの暮らしで満足できるとは思えません。そう、現役時代に贅沢しすぎると、歳をとってから後悔することにもつながるんです。
「でもね、レイ」
「ん?」
サラがレイの腕をつつきます。
「長期で家を離れることがあれば、問題がないかどうか確認してもらう必要があるんじゃない?」
「それはどこかに……ってどこにもないか」
この世界に警備会社はありません。管理も防犯も自分で行わなければならないのです。
「たしかお金を払えば衛兵を巡回してもらえるとは聞いたけど、前を通るだけだったよなあ」
軍隊と警察と消防のように分かれているわけではありませんので、何かがあれば衛兵の詰め所に駆け込むことになります。
衛兵の中には街中を巡回している隊もあります。一定額を払えばその巡回ルートに指定の場所を入れてもらうこともできなくはないのですが、場所によっては無理なこともあります。それに、あくまで前を通るだけで、安全確認まではしてくれません。
「レイさんたちがいないときはぁ、きちんとお掃除もしますよぉ。合鍵を預かる必要はありますけどぉ」
「長期で出かける必要があれば、そのときに考えようか」
おそらくなし崩しになると思いますよ。
馬車に乗るとレイは気になっていたことを質問しました。話がうますぎると思ったからです。
「いや、俺は何も聞いてないぞ。連れてきてくれと言われただけで。前から状況は説明しているがな」
「そうですか」
「まあ領主様に気に入られたってことでいいだろう。いい人なのは間違いない。いい人というだけでもないけどな」
「領主ならそうなんでしょうね」
その両肩に何十万人もの領民の生活がかかっているとなると、清濁併せ呑むことも必要になります。いい人がいい領主になれるとは限りません。
「ちなみにだな、一番下のご令嬢はまだ嫁いでいない。もう少しで成人のはずだ。どうだ?」
「どうだと言われても。まさか冒険者に嫁がせることはないでしょう」
レイは貴族の息子でも、跡取りではありません。普通の貴族の子女にとって、冒険者というのはなりたい職業ではないはずです。
その妻も同様に、けっして華やかな人生ではないでしょう。当たれば大きいかもしれませんが、外れれば一文無しにさえなりえるのが冒険者という職業です。
レイの場合、すでに金貨一〇〇〇枚以上を稼いでいます。そして今回は家を手に入れました。資産という点では十分すぎるでしょうが、冒険者はいつ命を落としても不思議ではありません。
「それはそうと、パンダ狩りと並行して住環境を整えますので、しばらくはギルドに行く回数を少し減らしますね」
「わかった。続けてくれるのなら問題ない」
「それと他に、パンダの肉も欲しいので、たまに自分たちで解体します」
「そちらも了解だ。うちで必要なのは毛皮だけだからな。上手に剥いでくれよ」
ギルドで下ろしてもらうと、レイたちはそのまま新居へとに向かいました。
◆◆◆
「まさかここだとはなあ」
「これは縁だよね」
ここはクラストンの町の北門と中央広場のちょうど間です。交差点の北東には白鷺亭があって、北西にレイが購入した物件があります。まさに目と鼻の先です。
渡された鍵を使って中に入ります。一階の入ったところが店舗として使われていたようです。その奥にダイニングとキッチンに使えそうなスペースがありました。
「思ったよりもきれいです」
「ラケル、これはきれいというか、何もないだけでは?」
元は商店でしたが、什器もなにもありません。ただし、ホコリはどうしても溜まりますので、掃除し甲斐がありそうだとシャロンは思いました。
「とりあえず上も見ようよ」
「そうですね。間取りはわかっていますけど、確認しておきましょう」
二階が住居部分、三階と四階が倉庫として使われていたようです。裏にはちょっとした庭もありました。
「一階で解体して、二階か三階で寝泊まりだな。上は物置で」
「ここなら問題なさそうだね」
「そうですね。知り合いも増えてきたことですし、しばらくこの町で暮らしてみてもいいのでは?」
「いざとなったらお店をするのはどうです?」
「店か。商売は向いてないんだよなあ」
いかにして利益を上げるかを考えるのが商売です。
「商売でしたらわたくしがお教えしますわ」
「ケイトが?」
「はい」
ケイトは胸を張って返事をしました。
「ケイト奥様、できもしないことをできると口になさるのはいかがなものかと」
「できますわ、勉強すれば」
シャロンはやれやれと両手を広げてからケイトに語りかけます。
「かつてパイなら焼けると言い張って、何度パイを爆発させたか、もうお忘れですか?」
「過去は忘れましたの」
「そこは忘れてもらっては困ります。全部で六回です。キッチンの掃除が大変だったんですよ、すべて時間差で爆発するので」
それを聞いたレイたちは「パイって爆発するんだ」「時間差?」と小声で話し合います。
「二階から上もそのまま使えそうだな」
ずっと放置されていたわけではありませんので、そのまま使えそうな状態です。レイは念のためにあちこちに【浄化】をかけていきます。
「ご主人さま、これはなんです?」
レイが振り返ると、ラケルは壁の突き当たりにある扉に頭を突っ込んでいました。
「これは……ダストシュートだな。そこから捨てればゴミ箱に入る」
窓にダストシュートが取り付けられたようです。庭にはゴミ箱代わりの樽が置かれています。ここから捨てれば、その樽の中に入るようになっています。
「でも家具がないな。持ってったのか、それとも売ってから離れたのか。いずれにせよ、一式購入だな」
「家具はほとんどが受注生産ですから、すぐ手に入るかどうかわかりませんよ」
シーヴが言うように、家具はほとんどが受注生産です。もちろん見本として作られているものもありますが、ニト〇やイケ〇のように、ずらっと並べることはありません。
家具というのは、大半が家で受け継ぐものです。親から子に、子から孫に。引っ越しするときには家具を丸ごと持っていきます。壊れても、直せる限りは直します。
「旦那様、急がせて中途半端なものを作られても困りますので、この際は時間をかけて上質のものを作ってもらえばよろしいのでは?」
「そうだな。金はあるし、それでいくか。それなら何が必要なのかをリストアップしてくれ」
くつろぐのはリビングを使えばいいので、レイ個人としては、手紙を書くための机と椅子、ベッド、服を入れておくクローゼット、それから本棚を兼ねた棚が一つあれば十分だと考えました。
「各部屋に机と椅子とベッド、クローゼットは必要だろう。他になにか必要か?」
レイは必要なものを書き出すことにしました。
「レイ様、鏡を買ってもよろしいですか?」
「いいと思うぞ。それぞれ部屋に置いたらいい」
マリオンは田舎でしたので、鏡を売っている店は多くはありませんでした。クラストンは面積としてはマリオンとほとんど変わりませんが、店の数が全然違います。鏡を売っている店はいくつもあるでしょう。
「机とは別に、小さなテーブルと椅子もあったほうがいいと思うよ」
「それはリビングでいいかなと思ったんだけどな」
「でも、ちょっと話をするのに、リビングに行くのも面倒なときもあるよね」
「そうか? それならテーブルセットも追加してくれ」
ちょっと相談したいときに部屋を訪れることもあるでしょう。それならテーブルと椅子くらいあってもいいのではとサラは言います。
「ベッドはそれぞれ個室用と、みんな用の特大が一つ、それと客間もあったほうがいいよね」
「いいでしょうね。客間も用意するとして、シングルサイズを一〇、それからキングサイズを二つ並べて……いえ、特注にしましょう」
「そんなデカいのがいるのか?」
「旦那様、大きなベッドが不要とでも?」
レイは疑問を口にしますが、女性陣の中ではみんなで寝られる巨大ベッドは必須のようです。
さて、とりあえず決まったのは、一人一人に部屋を割り当てて、来客の分も含めて一〇部屋ほど家具を一通り準備することです。さらに、複数人で寝られる広いベッドルームも用意することになったようですね。
「それなら家具の注文だね」
「家具屋さんの場所は聞いていますけど……みんなで行きますか?」
シーヴはレイに聞きました。
「あまり多いと意見が割れそうだなあ。俺は掃除をしてるから、五人で行ったらどうだ?」
シーヴの気遣いに、レイはうまく乗っかりました。女性の買い物は長いのが定番ですからね。しかも新居の家具選びとなれば、おそらくケイトが気合を入れて選ぶでしょう。そこにレイの意見は取り入れられるかどうかは微妙です。それならその場にいなくてもいいだろうと
「私はこの箒がありますので、旦那様と一緒に掃除でもいいかもしれません」
「では、レイとシャロンに任せましょう。とりあえず家具を注文してきます。場合によっては複数のお店に分けて注文しますね」
そう言って四人は買い物に出かけました。残ったレイとシャロンは掃除です。言ったからにはきちんとするべきことはしませんとね。
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「とまあ、そういうことがあって、しばらくはそこで暮らすことになる」
「なるほどぉ。レイさんという将来有望な冒険者でぇ、そして家持ちぃ。もう囲われるしかありませんねぇ」
「囲わない囲わない」
すでにサラ、シーヴ、ラケル、ケイト、シャロンと五人の恋人がいます。これ以上相手を増やすのはさすがにマズいだろうとレイは思っています。平等に扱う自信がないからです。
デューラント王国では、理屈の上では妻が何人いても問題ありません。五人でも一〇人でも、はたまた一〇〇人でも。ただし、平等に扱うならばという前提があります。
人数に関係なく、平等に扱えなかった結果として、愛想を尽かされて逃げられるのは最も恥ずかしいことだと考えられています。だから、妻を片手の指の数を超えて持つのはそれだけ経済的にも精神的にもゆとりのある場合に限られます。つまり貴族ですね。
レイは冒険者です。自ら望んでそうなりました。たしかに稼ぎは冒険者とは思えないレベルに達していますが、それでも冒険者にすぎません。冒険者ギルドと薬剤師ギルドでは一定の信用はありますが、それでも社会的にはそこそこでしかないのです。
たとえ冒険者として成功しても、引退すれば収入は一気に減るでしょう。そうなったときにどうなるかです。
収入がゼロになっても、何十年も家族を養わなければなりません。大切なのは、現役時代にどれだけ貯えておけるかです。
基本的な生活費が安いとはいえ、成功した冒険者とその家族が、最低限ギリギリの暮らしで満足できるとは思えません。そう、現役時代に贅沢しすぎると、歳をとってから後悔することにもつながるんです。
「でもね、レイ」
「ん?」
サラがレイの腕をつつきます。
「長期で家を離れることがあれば、問題がないかどうか確認してもらう必要があるんじゃない?」
「それはどこかに……ってどこにもないか」
この世界に警備会社はありません。管理も防犯も自分で行わなければならないのです。
「たしかお金を払えば衛兵を巡回してもらえるとは聞いたけど、前を通るだけだったよなあ」
軍隊と警察と消防のように分かれているわけではありませんので、何かがあれば衛兵の詰め所に駆け込むことになります。
衛兵の中には街中を巡回している隊もあります。一定額を払えばその巡回ルートに指定の場所を入れてもらうこともできなくはないのですが、場所によっては無理なこともあります。それに、あくまで前を通るだけで、安全確認まではしてくれません。
「レイさんたちがいないときはぁ、きちんとお掃除もしますよぉ。合鍵を預かる必要はありますけどぉ」
「長期で出かける必要があれば、そのときに考えようか」
おそらくなし崩しになると思いますよ。
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