31 / 190
第2章:冬、活動開始と旅立ち
第15話:戦略的撤退と日和見主義
しおりを挟む
「それじゃ、乾杯!」
「「乾杯」」
三人がそろったところで、レイはエール、向かいにいるサラとシーヴはミードで乾杯をしました。乾杯が終わると、すぐにサラがシーヴに向かって前のめりになります。
「今さらだけどさ、シーヴさんから見て、私たちって冒険者としてどう?」
「どう?」という非常に曖昧な聞き方をされ、シーヴは少し考えます。
「そうですね。冒険者としては非常に優秀なお二人だとは思いますけど、レイさんの話し方は丁寧すぎる気がしますね」
「丁寧すぎですか」
「冒険者の基準からすると、ですが」
シーヴは冒険者として、あるいは冒険者ギルドの職員として、これまで多くの男性を見てきましたが。この世界の男性は、おおむね大雑把な話し方をするものです。
もちろんこの国には王族・貴族・平民・奴隷という身分制度があります。もちろん〝切り捨て御免〟のような横暴は認められていませんが、上下関係は場合によっては極端に厳しくなります。それでも平民同士での会話では、年齢に関係なくほとんどがタメ口です。サラの話し方がわりと普通ということになります。
レイは貴族の息子なので、話し方がどうしても貴族のそれになってしまいますが、場合によってはかなり偉そうに思われることもあります。
シーヴがそう説明すると、みるみるうちにレイのテンションが下がっていきます。
「偉そう……」
「あ、いえ、やりすぎるとそう受け取られることもあるということです。サラさんと話しているくらいでちょうどいいですよ」
ショックを受けたレイを見て、慌ててシーヴがフォローをしました。
丁寧な言葉遣いが悪いわけではありませんが、丁寧すぎると慇懃無礼に思えます。王族や貴族、豪商相手でなければ、もっとくだけた話し方で大丈夫だと。
ギルド職員のシーヴと話をしているとおかしく聞こえないかもしれませんが、レイの話し方は冒険者としては珍しいくらい丁寧で、育ちがいいのが丸わかりです。それはダニールも言っていましたね。
「口調なあ……」
「はい。周りにいる人がみんなサラさんだと思えば、自然とくだけた話し方になりませんか?」
「周りがみんなサラ?」
「この世界が私だらけ。サラの惑星」
さすがにそれは嫌だなとレイは思ってしまいました。誰も彼もがノリと勢いだけで生きていそうです。
「でも口調を変えるんならさあ、みんなでラフな話し方にしない?」
「みんなでか?」
「そう。呼びかけくらい楽にしていいと思うんだけど。特に今は旅の途中だし」
ここには冒険者ギルドの上司も同僚もいません。ざっくばらんでいいのではないかとサラが提案しました。そしてシーヴに耳打ちをしました。シーヴはそれを聞いてうなずいています。
「それもそうですね。仕事が始まるまでは楽に呼び合いましょうか」
「それじゃ私はシーヴって呼ぶから。レイもそう呼んだら?」
「それでは私はお二人をレイ、サラと呼びますね。レイも私にもっと楽に話しかけてください」
「わかった」
年上の女性を呼び捨てにするのには抵抗がありますが、そこまで言われたらレイとしてもこれまでと同じような話し方はできません。
「それなら……シーヴ」
「はい、ダーリン♪」
「ゲホッ」
思わぬ一言にレイが咳き込み、サラが大笑いしました。
「あ~、おかしかった~。でもホントに言うとは思わなかったよ」
「私だってたまには冗談くらい口にしますよ」
先ほどサラが耳打ちしたのはこのことだったようですね。そのシーヴは、普段はすました顔をしていますが、今は珍しく笑っています。ギルド職員はなかなか大変ですからね。ストレス発散も必要でしょう。
「あ、そうそう。樽のお風呂を用意してるんだけど、シーヴもよかったら入る? ここはお風呂はないみたいだから」
桶に入れた水とタオルで体を拭くだけの風呂場は用意されていますが、使えるのは水だけです。お湯は別料金になっています。
「え、いいんですか?」
「もちろん。魔法の練習も兼ねて用意したやつだから」
サラのマジックバッグはそこまで大きくありませんので、野営で使う道具や食料品、そして万が一の事態に備えて、水の入った樽が一つ入っているだけです。
レイのほうは余裕があるので、何かしら使い道はあるだろうと、大小様々な大きさの樽に水とお湯、その他にも食材などを入れています。
「二人がよければ喜んで使わせてもらいます」
「そうそう、みんなで裸の付き合い」
「いや、俺は部屋にいないからな」
さすがにシーヴが風呂に入っているのに自分がそこにいるのは問題がありそうなので、レイは風呂の用意をしたら酒場にいようと思っていました。
「いても大丈夫じゃない? ヘタレだから」
「ヘタレって言うなよ」
そうは言いますが、実際にレイはヘタレに近いですよ。そのことは自分でもわかっています。
「でもこんな美少女とずっと一緒だったのに一度も手を出さなかったでしょ?」
サラは「にしし」と笑いながらレイを茶化します。それを見たシーヴは不思議そうな顔をしました。
「あの、お二人はそういう関係ではなかったんですか?」
「う~ん、どっちかっていうと、レイの好みは私みたいな可愛い系美少女じゃなくて綺麗なお姉さんなんで」
もちろんレイはサラが嫌いではありませんが、サラは彼のタイプではありません。面と向かってそれをサラに言ったことはありませんが、長年の付き合いから、サラにはそれがわかっていました。
「シーヴなんて、もろタイプでしょ?」
「言うなよ」
「でも好みのタイプの女性を前にすると緊張して余計に丁寧になるんだよね」
「だからバラすなって!」
二人の言い合いを聞いていたシーヴは、どこか腑に落ちた顔をしました。
「レイの話し方が私とサラ相手で違うのはそういうことだったんですね」
「まあレイは年上に対しては身分に関係なく丁寧だから、半分はそうってことかな。執事のブライアンさんは、レイと話をすると背筋が伸びる思いがするって言ってたね」
「サラと話をするのに丁寧な言葉遣いをしても意味がないからな」
レイの記憶が戻って以降、屋敷の中は別として、サラはレイを相手にかなりくだけた言葉遣いをするようになりました。
一方で、レイは貴族の息子として教育を受けていますので、外に向かってあまり雑な話し方はできません。できるのはサラを相手にしたときくらいのものです。
「それならレイ、私がタイプなら、一緒に寝ませんか?」
「ブフッ!」
予想もしていなかった方向からの攻撃に、レイは思わず吹き出します。口の中のエールを飲み込んだ直後だからよかったものの、もう少し早ければ危なかったですね。正面のサラが。
「あ、それいいかも。一人部屋って楽しみ。何しようかな~」
「もう決まりか? ていうかシーヴだって冗談だろうし」
「いえ、必ずしも冗談というわけでは。ギルドで会ってからまだ一か月半ほどですけど、好ましい男性だと思っていますよ」
「……それはどうも」
レイは頬のあたりをぽりぽりと掻くしかありません。
「ただ、私はオグデンのギルドで仕事がありますので、いずれお二人とはお別れになるでしょう」
「そっか~、オグデンでお別れだよね。しばらくはオグデンにいても、いずれは王都にも行きたいしなあ」
「でしょう? ですからレイとは一夜限りの関係くらいがちょうどいいんです。実際にはあと六日もありますので、その間だけでも男女の仲を楽しみましょうか」
「生々しすぎるから、それ以上はやめてくれ」
どうやらレイは冗談を口にするシーヴに弱いようでした。
◆◆◆
「あ~~~、これはいいですね~~~」
「いいでしょ?」
サラとシーヴがそれぞれ樽風呂に入っています。普段はキリッとしたシーヴが、今だけは完全にゆるみきった表情を見せています。もちろんレイには見えません。
さすがに樽を床に直置きはできません。床の上に木の板を並べ、その上に防水シート代わりのオークの皮を敷き、水がこぼれても問題ないようにしてあります。
さらに二つの樽の周りには、目隠しのための囲いがされています。
「やっぱり火魔法と水魔法が使えるといいですね」
「レイも覚えられたし、シーヴも練習したら? ジョブに関係なく覚えられる魔法でしょ?」
覚えたとはいっても、レイの使える【水球】と【火球】は前に飛びません。【水球】は蛇口から出る水のように垂れ流しで、【火球】はガスバーナーのように火が噴き出すだけです。
「私にも【火球】と【水球】はあるんです。でも魔力が多くありませんから、お風呂のために魔力を使うのもどうかと」
「そっか、種族の関係もあったね」
「ええ、獅子人に限らず、獣人は全体的に魔法と相性が悪いですからね。でも野営の際に枯れ葉に火をつけるくらいはできますよ」
獣人は魔法が使えないわけではありません。でも魔力量が少なく、魔法の扱いそのものが苦手です。
山羊人族のように例外的に魔力が多い種族も存在しますが、おおむね同じレベルの人間の二割から三割程度しかありません。
その代わりに力が強く、耳も目も鼻も優れています。少ない魔力を身体強化系のスキルに使うほうがよほど効果的です。
「ところでね、レイ」
サラがニヤニヤしながらレイに話しかけます。もちろんレイには囲いの向こうにいるサラの表情は見えませんが、長年の付き合いから、サラの表情が手に取るようにわかってしまいました。嫌な雰囲気がビシビシとしていますが、返事をしないわけにはいきません。
「どうした?」
「レイはこのあとどっちの樽を使うの? 私の?」
「それとも私の入った樽ですか?」
「あー」
ここでシーヴが乗ってくるとは、レイには思ってもみませんでした。どちらの名前を口に出すほうがよりダメージが少ないかを想像して、それから結論を口にします。
「……新しいのを出す」
「うわ、日和った。シーヴ、チキンがいるよ、チキンが」
「ここは度胸を見せてほしいところですね」
「違う。マナーの問題だ。どうせ樽はいっぱいあるんだから、それぞれ一つずつ使えばいいだろ?」
もちろんサラもシーヴも冗談を言っているのはレイにもわかっています。それでも反論したくなったんですよね、思わず。
「「乾杯」」
三人がそろったところで、レイはエール、向かいにいるサラとシーヴはミードで乾杯をしました。乾杯が終わると、すぐにサラがシーヴに向かって前のめりになります。
「今さらだけどさ、シーヴさんから見て、私たちって冒険者としてどう?」
「どう?」という非常に曖昧な聞き方をされ、シーヴは少し考えます。
「そうですね。冒険者としては非常に優秀なお二人だとは思いますけど、レイさんの話し方は丁寧すぎる気がしますね」
「丁寧すぎですか」
「冒険者の基準からすると、ですが」
シーヴは冒険者として、あるいは冒険者ギルドの職員として、これまで多くの男性を見てきましたが。この世界の男性は、おおむね大雑把な話し方をするものです。
もちろんこの国には王族・貴族・平民・奴隷という身分制度があります。もちろん〝切り捨て御免〟のような横暴は認められていませんが、上下関係は場合によっては極端に厳しくなります。それでも平民同士での会話では、年齢に関係なくほとんどがタメ口です。サラの話し方がわりと普通ということになります。
レイは貴族の息子なので、話し方がどうしても貴族のそれになってしまいますが、場合によってはかなり偉そうに思われることもあります。
シーヴがそう説明すると、みるみるうちにレイのテンションが下がっていきます。
「偉そう……」
「あ、いえ、やりすぎるとそう受け取られることもあるということです。サラさんと話しているくらいでちょうどいいですよ」
ショックを受けたレイを見て、慌ててシーヴがフォローをしました。
丁寧な言葉遣いが悪いわけではありませんが、丁寧すぎると慇懃無礼に思えます。王族や貴族、豪商相手でなければ、もっとくだけた話し方で大丈夫だと。
ギルド職員のシーヴと話をしているとおかしく聞こえないかもしれませんが、レイの話し方は冒険者としては珍しいくらい丁寧で、育ちがいいのが丸わかりです。それはダニールも言っていましたね。
「口調なあ……」
「はい。周りにいる人がみんなサラさんだと思えば、自然とくだけた話し方になりませんか?」
「周りがみんなサラ?」
「この世界が私だらけ。サラの惑星」
さすがにそれは嫌だなとレイは思ってしまいました。誰も彼もがノリと勢いだけで生きていそうです。
「でも口調を変えるんならさあ、みんなでラフな話し方にしない?」
「みんなでか?」
「そう。呼びかけくらい楽にしていいと思うんだけど。特に今は旅の途中だし」
ここには冒険者ギルドの上司も同僚もいません。ざっくばらんでいいのではないかとサラが提案しました。そしてシーヴに耳打ちをしました。シーヴはそれを聞いてうなずいています。
「それもそうですね。仕事が始まるまでは楽に呼び合いましょうか」
「それじゃ私はシーヴって呼ぶから。レイもそう呼んだら?」
「それでは私はお二人をレイ、サラと呼びますね。レイも私にもっと楽に話しかけてください」
「わかった」
年上の女性を呼び捨てにするのには抵抗がありますが、そこまで言われたらレイとしてもこれまでと同じような話し方はできません。
「それなら……シーヴ」
「はい、ダーリン♪」
「ゲホッ」
思わぬ一言にレイが咳き込み、サラが大笑いしました。
「あ~、おかしかった~。でもホントに言うとは思わなかったよ」
「私だってたまには冗談くらい口にしますよ」
先ほどサラが耳打ちしたのはこのことだったようですね。そのシーヴは、普段はすました顔をしていますが、今は珍しく笑っています。ギルド職員はなかなか大変ですからね。ストレス発散も必要でしょう。
「あ、そうそう。樽のお風呂を用意してるんだけど、シーヴもよかったら入る? ここはお風呂はないみたいだから」
桶に入れた水とタオルで体を拭くだけの風呂場は用意されていますが、使えるのは水だけです。お湯は別料金になっています。
「え、いいんですか?」
「もちろん。魔法の練習も兼ねて用意したやつだから」
サラのマジックバッグはそこまで大きくありませんので、野営で使う道具や食料品、そして万が一の事態に備えて、水の入った樽が一つ入っているだけです。
レイのほうは余裕があるので、何かしら使い道はあるだろうと、大小様々な大きさの樽に水とお湯、その他にも食材などを入れています。
「二人がよければ喜んで使わせてもらいます」
「そうそう、みんなで裸の付き合い」
「いや、俺は部屋にいないからな」
さすがにシーヴが風呂に入っているのに自分がそこにいるのは問題がありそうなので、レイは風呂の用意をしたら酒場にいようと思っていました。
「いても大丈夫じゃない? ヘタレだから」
「ヘタレって言うなよ」
そうは言いますが、実際にレイはヘタレに近いですよ。そのことは自分でもわかっています。
「でもこんな美少女とずっと一緒だったのに一度も手を出さなかったでしょ?」
サラは「にしし」と笑いながらレイを茶化します。それを見たシーヴは不思議そうな顔をしました。
「あの、お二人はそういう関係ではなかったんですか?」
「う~ん、どっちかっていうと、レイの好みは私みたいな可愛い系美少女じゃなくて綺麗なお姉さんなんで」
もちろんレイはサラが嫌いではありませんが、サラは彼のタイプではありません。面と向かってそれをサラに言ったことはありませんが、長年の付き合いから、サラにはそれがわかっていました。
「シーヴなんて、もろタイプでしょ?」
「言うなよ」
「でも好みのタイプの女性を前にすると緊張して余計に丁寧になるんだよね」
「だからバラすなって!」
二人の言い合いを聞いていたシーヴは、どこか腑に落ちた顔をしました。
「レイの話し方が私とサラ相手で違うのはそういうことだったんですね」
「まあレイは年上に対しては身分に関係なく丁寧だから、半分はそうってことかな。執事のブライアンさんは、レイと話をすると背筋が伸びる思いがするって言ってたね」
「サラと話をするのに丁寧な言葉遣いをしても意味がないからな」
レイの記憶が戻って以降、屋敷の中は別として、サラはレイを相手にかなりくだけた言葉遣いをするようになりました。
一方で、レイは貴族の息子として教育を受けていますので、外に向かってあまり雑な話し方はできません。できるのはサラを相手にしたときくらいのものです。
「それならレイ、私がタイプなら、一緒に寝ませんか?」
「ブフッ!」
予想もしていなかった方向からの攻撃に、レイは思わず吹き出します。口の中のエールを飲み込んだ直後だからよかったものの、もう少し早ければ危なかったですね。正面のサラが。
「あ、それいいかも。一人部屋って楽しみ。何しようかな~」
「もう決まりか? ていうかシーヴだって冗談だろうし」
「いえ、必ずしも冗談というわけでは。ギルドで会ってからまだ一か月半ほどですけど、好ましい男性だと思っていますよ」
「……それはどうも」
レイは頬のあたりをぽりぽりと掻くしかありません。
「ただ、私はオグデンのギルドで仕事がありますので、いずれお二人とはお別れになるでしょう」
「そっか~、オグデンでお別れだよね。しばらくはオグデンにいても、いずれは王都にも行きたいしなあ」
「でしょう? ですからレイとは一夜限りの関係くらいがちょうどいいんです。実際にはあと六日もありますので、その間だけでも男女の仲を楽しみましょうか」
「生々しすぎるから、それ以上はやめてくれ」
どうやらレイは冗談を口にするシーヴに弱いようでした。
◆◆◆
「あ~~~、これはいいですね~~~」
「いいでしょ?」
サラとシーヴがそれぞれ樽風呂に入っています。普段はキリッとしたシーヴが、今だけは完全にゆるみきった表情を見せています。もちろんレイには見えません。
さすがに樽を床に直置きはできません。床の上に木の板を並べ、その上に防水シート代わりのオークの皮を敷き、水がこぼれても問題ないようにしてあります。
さらに二つの樽の周りには、目隠しのための囲いがされています。
「やっぱり火魔法と水魔法が使えるといいですね」
「レイも覚えられたし、シーヴも練習したら? ジョブに関係なく覚えられる魔法でしょ?」
覚えたとはいっても、レイの使える【水球】と【火球】は前に飛びません。【水球】は蛇口から出る水のように垂れ流しで、【火球】はガスバーナーのように火が噴き出すだけです。
「私にも【火球】と【水球】はあるんです。でも魔力が多くありませんから、お風呂のために魔力を使うのもどうかと」
「そっか、種族の関係もあったね」
「ええ、獅子人に限らず、獣人は全体的に魔法と相性が悪いですからね。でも野営の際に枯れ葉に火をつけるくらいはできますよ」
獣人は魔法が使えないわけではありません。でも魔力量が少なく、魔法の扱いそのものが苦手です。
山羊人族のように例外的に魔力が多い種族も存在しますが、おおむね同じレベルの人間の二割から三割程度しかありません。
その代わりに力が強く、耳も目も鼻も優れています。少ない魔力を身体強化系のスキルに使うほうがよほど効果的です。
「ところでね、レイ」
サラがニヤニヤしながらレイに話しかけます。もちろんレイには囲いの向こうにいるサラの表情は見えませんが、長年の付き合いから、サラの表情が手に取るようにわかってしまいました。嫌な雰囲気がビシビシとしていますが、返事をしないわけにはいきません。
「どうした?」
「レイはこのあとどっちの樽を使うの? 私の?」
「それとも私の入った樽ですか?」
「あー」
ここでシーヴが乗ってくるとは、レイには思ってもみませんでした。どちらの名前を口に出すほうがよりダメージが少ないかを想像して、それから結論を口にします。
「……新しいのを出す」
「うわ、日和った。シーヴ、チキンがいるよ、チキンが」
「ここは度胸を見せてほしいところですね」
「違う。マナーの問題だ。どうせ樽はいっぱいあるんだから、それぞれ一つずつ使えばいいだろ?」
もちろんサラもシーヴも冗談を言っているのはレイにもわかっています。それでも反論したくなったんですよね、思わず。
109
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる