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第十五部:勇者の活躍
海の階
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予想通りと言ったらいいのか、階段を降りるとそこは砂浜。そして砂浜の先には切り立った岩壁があった。切り立っているけど、多分上には行けないんだよな。天井があるから。そう思って試しに空に向かって石を投げたら、ある程度のところで「カツッ!」て音がした。やっぱりな。
海はあっても砂浜なら魚はなかなかいないかもって思ったけど、セレンの町に来た魔物の中にはタイもサンマもホタテもいたから、おそらくそのうち現れるはずだ。もしかしたら別の階かもしれないけど。
「マスター、向こうから魚が飛んできます」
「数およそ五〇〇〇」
「五〇〇〇⁉」
そっちを見るとたしかに向こうが霞んでいた。
「そんなに早くないな」
「ゆっくりですね」
空をフヨフヨと泳ぐように近づいてきた。半透明だな。
====================
【名前:なし】
【種族:シラス】
イワシ、アユ、ウナギなどの稚魚が魔素の影響を受け魔物化したもの。生で食すことができる数少ない魚である。だが鮮度が命のため、ショックを与えて殺さずに捕獲するのが一番である。
====================
殺さずに捕獲って……【威圧】でも使うか?
「今から【威嚇】を使うからビックリするなよ」
「はい」
「気合いを入れておきます」
飛んできたシラスたちに【威圧】を使った。人間相手なら睨めばいいけど、魚相手ではどうやったらいいか分からない。とりあえずまとまっているあたりを思いっきり睨んでみた。
「あ、落ちました。すぐに拾います」
上空から一〇センチもないシラスが雨のように降ってくる。波打ち際で俺とスキュラたちはしばらくシラスを拾い集めることにした。
とりあえず拾ったものを次々に拾って海水を入れた樽に入れてみたけど、これをどうするかだ。ストレージには入らないはずだ。生で食べてみたいので一部だけ異空間に入れて残りは下処理してストレージに入れるしかないか。こんなにギュウギュウなら死ぬのも多いだろうからなあ。
「マスター、魚ってストレージに入らないんですか?」
アルベルティーヌが聞いてきたけど、生き物は入らない。これは事実だ。
「入らないぞ。ほれ」
俺は生きたままのシラスをストレージに入れようとしたけど入らなかった。
「樽に入れたものはどうなんですか?」
「樽に入れたからってストレージにはそもそも生き物は——入った⁉」
入ったぞ。気絶したシラスを海水の入った樽に入れたら、それがそのままストレージに入った。樽に入れれば入るのか?
「マスター、私は入りませんか?」
「無理じゃないか?」
人化して樽に入ればってことだろうけど、それで入ったらビックリするな。
「試しにやってみてください」
「試しにやって何かあったらどうするんだ?」
「大丈夫です。マスターですから」
「いや、俺だからってなあ……」
でもアルベルティーヌはウキウキと俺を見ていた。やってダメなら諦めるか。
「分かった。それならこの樽に入ってくれ」
「はいっ」
何がそんなに嬉しいのか分からないけど、ニコニコしながら樽に入った。そして俺が樽を手にしてストレージに入れようとして……入らなかった。
「やっぱり無理だ」
「そうですか。でも魚は入るということですよね?」
「そうだな。樽に入れればな」
生で食べるかどうかはともかく、この場で処理する手間が省けるし傷まない。
ストレージの謎に頭を捻りつつ崖の方に進むと、波に洗われている岩に何かがくっついているのが見えた。
「あれは……卵か?」
おかしなものがないかをチェックしていたら、ウズラの卵を少し小さくして半透明にしたようなものが岩に固まって張り付いていた。
====================
【名前:なし】
【種族:マダコ】
魔素の影響を受け魔物化したマダコの卵。
====================
マダコってあのタコだよな。でもタコの卵って見たことがないな。でも卵から生まれるんだよな? 生まれてすぐに人を襲うことはないだろう。多分ちっちゃいはずだし。珍しいかもしれないから、とりあえず少しだけ持ってくか?
「マスター、コップでどうするんですか?」
「ああ、このマダコの卵を入れておこうと思ってな」
俺はマダコの卵を摘まむと海水を半分ほど入れたコップの中に五つほど落とした。孵るかどうかは分からないけど、魔物がどうやって孵るかが気になる。孵って無事に育って、そして懐いたらどうするか。どうする? 無事に孵ったら考えるか。
「魔物って飼育することはあるんですか?」
「一番一般的なのは、遠方と手紙をやり取りする鳥だな。他には牛の代わりに畑を耕したりする水牛がある。野生のものを捕まえて従魔にすることもあれば、飼育して増やすこともあるそうだ」
「「「へえ~~~~っ」」」
スキュラたちは頭は悪くないのに知識を持っている知識が少ない。でも一度教えるとスッと頭に入るようで、次からは昔から知っていたかのように話すことができる。アラクネたちはスキュラたちよりももう少し知識は多いけど、それでも十分とは言えない。今後しっかりと教えていかないとな。
海はあっても砂浜なら魚はなかなかいないかもって思ったけど、セレンの町に来た魔物の中にはタイもサンマもホタテもいたから、おそらくそのうち現れるはずだ。もしかしたら別の階かもしれないけど。
「マスター、向こうから魚が飛んできます」
「数およそ五〇〇〇」
「五〇〇〇⁉」
そっちを見るとたしかに向こうが霞んでいた。
「そんなに早くないな」
「ゆっくりですね」
空をフヨフヨと泳ぐように近づいてきた。半透明だな。
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【名前:なし】
【種族:シラス】
イワシ、アユ、ウナギなどの稚魚が魔素の影響を受け魔物化したもの。生で食すことができる数少ない魚である。だが鮮度が命のため、ショックを与えて殺さずに捕獲するのが一番である。
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殺さずに捕獲って……【威圧】でも使うか?
「今から【威嚇】を使うからビックリするなよ」
「はい」
「気合いを入れておきます」
飛んできたシラスたちに【威圧】を使った。人間相手なら睨めばいいけど、魚相手ではどうやったらいいか分からない。とりあえずまとまっているあたりを思いっきり睨んでみた。
「あ、落ちました。すぐに拾います」
上空から一〇センチもないシラスが雨のように降ってくる。波打ち際で俺とスキュラたちはしばらくシラスを拾い集めることにした。
とりあえず拾ったものを次々に拾って海水を入れた樽に入れてみたけど、これをどうするかだ。ストレージには入らないはずだ。生で食べてみたいので一部だけ異空間に入れて残りは下処理してストレージに入れるしかないか。こんなにギュウギュウなら死ぬのも多いだろうからなあ。
「マスター、魚ってストレージに入らないんですか?」
アルベルティーヌが聞いてきたけど、生き物は入らない。これは事実だ。
「入らないぞ。ほれ」
俺は生きたままのシラスをストレージに入れようとしたけど入らなかった。
「樽に入れたものはどうなんですか?」
「樽に入れたからってストレージにはそもそも生き物は——入った⁉」
入ったぞ。気絶したシラスを海水の入った樽に入れたら、それがそのままストレージに入った。樽に入れれば入るのか?
「マスター、私は入りませんか?」
「無理じゃないか?」
人化して樽に入ればってことだろうけど、それで入ったらビックリするな。
「試しにやってみてください」
「試しにやって何かあったらどうするんだ?」
「大丈夫です。マスターですから」
「いや、俺だからってなあ……」
でもアルベルティーヌはウキウキと俺を見ていた。やってダメなら諦めるか。
「分かった。それならこの樽に入ってくれ」
「はいっ」
何がそんなに嬉しいのか分からないけど、ニコニコしながら樽に入った。そして俺が樽を手にしてストレージに入れようとして……入らなかった。
「やっぱり無理だ」
「そうですか。でも魚は入るということですよね?」
「そうだな。樽に入れればな」
生で食べるかどうかはともかく、この場で処理する手間が省けるし傷まない。
ストレージの謎に頭を捻りつつ崖の方に進むと、波に洗われている岩に何かがくっついているのが見えた。
「あれは……卵か?」
おかしなものがないかをチェックしていたら、ウズラの卵を少し小さくして半透明にしたようなものが岩に固まって張り付いていた。
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【名前:なし】
【種族:マダコ】
魔素の影響を受け魔物化したマダコの卵。
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マダコってあのタコだよな。でもタコの卵って見たことがないな。でも卵から生まれるんだよな? 生まれてすぐに人を襲うことはないだろう。多分ちっちゃいはずだし。珍しいかもしれないから、とりあえず少しだけ持ってくか?
「マスター、コップでどうするんですか?」
「ああ、このマダコの卵を入れておこうと思ってな」
俺はマダコの卵を摘まむと海水を半分ほど入れたコップの中に五つほど落とした。孵るかどうかは分からないけど、魔物がどうやって孵るかが気になる。孵って無事に育って、そして懐いたらどうするか。どうする? 無事に孵ったら考えるか。
「魔物って飼育することはあるんですか?」
「一番一般的なのは、遠方と手紙をやり取りする鳥だな。他には牛の代わりに畑を耕したりする水牛がある。野生のものを捕まえて従魔にすることもあれば、飼育して増やすこともあるそうだ」
「「「へえ~~~~っ」」」
スキュラたちは頭は悪くないのに知識を持っている知識が少ない。でも一度教えるとスッと頭に入るようで、次からは昔から知っていたかのように話すことができる。アラクネたちはスキュラたちよりももう少し知識は多いけど、それでも十分とは言えない。今後しっかりと教えていかないとな。
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