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第十五部:勇者の活躍
川の階
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「おっと」
橋を渡ろうとすると川からアユらしい魚が飛び出してきたから両手で掴んだ。でもアユは八〇センチはないよな?
====================
【名前:なし】
【種族:アユ】
淡水魚のアユが魔素の影響を受け魔物化したもの。大型化してはいるが香気は失われず、上品な味を保っている。アユの上部、頭に近いあたりが一番脂が乗っていて、その下あたりに内臓がある。
本来アユは内臓を楽しむ魚だが、これは魔物であるため内臓は食さない方がよい。
====================
まあアユはガブッと食べるからな。それにしても書かれている内容が食通だな。魯山人か?
とりあえずアユは頭を落としてストレージに入れる。生きたままでは残念ながらストレージには入らない。ストレージはレベルなしの勇者用スキルだから成長しない。まあどうしても生きたまま入れたいなら異空間を使えばいい。魚をそのまま放り込むのはちょっと問題があるから樽にでも入れるしかないけど。
「マスター、こっちにも——キャッ」
悲鳴が上がった方を見たらエグランティーヌが巨大なウナギに巻き付かれていた。捕まえようとして巻き付かれたようだ。でもヌメヌメしすぎてウナギも彼女を締めつけられないみたいだった。そのうちヌルッと地面に落ちた。ウナギの頭を落としてストレージに入れる。
「ヌルヌルになりました……」
「とりあえず頭から洗って着替えた方がいい。水を出してやるから」
「はい」
彼女の頭の上で小さくて弱い水の玉をいくつも出して次々に割る。シャワーと呼ぶには大粒だけど、洗い流すにはいいだろう。
「マスター、大自然の中で裸になるのもいいですね」
「分からないでもないけどここは魔物が多いぞ」
エグランティーヌが何を言いたいのかは分かるけど、ここはダンジョンだ。スキュラたちと楽しんでいて後ろからアユに尻を囓られたらシャレにならない。
エグランティーヌの着替えが終わると謎の建物に向かって進む。七〇〇メートルだからそこまで遠くはないけど、魚が飛んでくるからな。アユやウナギを始め、イワナ、ヤマメ、コイ、ナマズなどが飛び出してくる。そこまで早くないから対処は比較的楽だ——⁉
カンカンカンッ‼
気配を感じた方に盾を向けると、木でできた丸盾に三〇センチくらいの魚が刺さっていた。
====================
【名前:なし】
【種族:シラウオ】
汽水域に生息するシラウオが魔素の影響を受け魔物化したもの。くさび形をしており、頭の先が尖っている。水面から浮き上がると軽々と人体を突き抜ける速度で突進する。ただしその一撃のためにほぼ全てのエネルギーを使い果たす悲運の魚である。死ぬと体の色が半透明から白っぽくなる。
シラウオは寿司ネタとして生食されることが多いが、寄生虫が存在することを忘れてはならない。この魔物化したシラウオも同様に寄生虫が存在するため、しっかり熱を通して食すべし。加熱調理をしても風味も食味も落ちることがない。安心して加熱してから食すればよい。
====================
食すればよいって、まあ魔物を生で食べる気はしないけどな。ホントに誰が書いてるんだ?
盾に刺さったシラウオはもう体が白くなっていた。一匹を引っこ抜いて頭をよく見る。たしかに先端がかなり尖っていた。これが木の盾に刺さったのか。穴はかなり深く、三センチくらい刺さったんだろうか。よく貫通しなかったな。俺は頑丈だから刺さらないとは思うけど、革鎧や服には穴が空くだろう。
しかしこれを食材として集めるなら、鉄製の盾ならグチャグチャになるだろう。やっぱり木の盾に刺して捕獲する方がいいだろうか。
「お前たちはさっき飛んできた魚を盾で受け止められるか?」
俺はスキュラたちに聞いてみた。
「多分できます」
「刺して止めればいいんですよね?」
「マスターのアレでも受け止められる私たちです」
「魚くらいは平気で止めてみます」
「次の休憩で私たちに刺してみませんか?」
「ダンジョンではしないって言っただろう」
とりあえずスキュラたちには木の丸盾を持たせる。厚みは五センチ以上あるから大丈夫なはずだ。
それからも飛んでくる魚を手で受けたり盾で受けたりしつつ目的地に向かった。おかげで到着した時にはそれなりの量の魚が集まっていた。どの魚も普通の魚の四倍から五倍くらいはありそうだ。大きいのは一〇倍はあるな。同じ種類でも大小がかなり違う。そうやって食材を集めているうちに、下へ向かう階段が見えた。
「分かりやすいな」
「これなら少し上がれば見えますね」
階段そのものは思った以上に見つけやすかった。なぜかというと地面に階段があるだけじゃなかったからだ。階段の上に、三方向に壁があって天井もある石造りの建物が乗っかっていた。地下鉄の入り口を巨大にしたようなものだ。階段は幅が一〇メートルほどある。だからこの建物は幅も奥行きも一〇メートルはある。高さも同じくらいか。前二つと比べて明らかにこのダンジョンは広い。だから階段が目に付きやすいのは助かる。
階段を覗くと何となく潮の香りがした。この階は森と草原と川だった。この下は海かもしれない。
「おそらく下は環境が違うぞ。魔物も違うかもしれないし、油断はナシな」
「「「はいっ」」」
橋を渡ろうとすると川からアユらしい魚が飛び出してきたから両手で掴んだ。でもアユは八〇センチはないよな?
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【名前:なし】
【種族:アユ】
淡水魚のアユが魔素の影響を受け魔物化したもの。大型化してはいるが香気は失われず、上品な味を保っている。アユの上部、頭に近いあたりが一番脂が乗っていて、その下あたりに内臓がある。
本来アユは内臓を楽しむ魚だが、これは魔物であるため内臓は食さない方がよい。
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まあアユはガブッと食べるからな。それにしても書かれている内容が食通だな。魯山人か?
とりあえずアユは頭を落としてストレージに入れる。生きたままでは残念ながらストレージには入らない。ストレージはレベルなしの勇者用スキルだから成長しない。まあどうしても生きたまま入れたいなら異空間を使えばいい。魚をそのまま放り込むのはちょっと問題があるから樽にでも入れるしかないけど。
「マスター、こっちにも——キャッ」
悲鳴が上がった方を見たらエグランティーヌが巨大なウナギに巻き付かれていた。捕まえようとして巻き付かれたようだ。でもヌメヌメしすぎてウナギも彼女を締めつけられないみたいだった。そのうちヌルッと地面に落ちた。ウナギの頭を落としてストレージに入れる。
「ヌルヌルになりました……」
「とりあえず頭から洗って着替えた方がいい。水を出してやるから」
「はい」
彼女の頭の上で小さくて弱い水の玉をいくつも出して次々に割る。シャワーと呼ぶには大粒だけど、洗い流すにはいいだろう。
「マスター、大自然の中で裸になるのもいいですね」
「分からないでもないけどここは魔物が多いぞ」
エグランティーヌが何を言いたいのかは分かるけど、ここはダンジョンだ。スキュラたちと楽しんでいて後ろからアユに尻を囓られたらシャレにならない。
エグランティーヌの着替えが終わると謎の建物に向かって進む。七〇〇メートルだからそこまで遠くはないけど、魚が飛んでくるからな。アユやウナギを始め、イワナ、ヤマメ、コイ、ナマズなどが飛び出してくる。そこまで早くないから対処は比較的楽だ——⁉
カンカンカンッ‼
気配を感じた方に盾を向けると、木でできた丸盾に三〇センチくらいの魚が刺さっていた。
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【名前:なし】
【種族:シラウオ】
汽水域に生息するシラウオが魔素の影響を受け魔物化したもの。くさび形をしており、頭の先が尖っている。水面から浮き上がると軽々と人体を突き抜ける速度で突進する。ただしその一撃のためにほぼ全てのエネルギーを使い果たす悲運の魚である。死ぬと体の色が半透明から白っぽくなる。
シラウオは寿司ネタとして生食されることが多いが、寄生虫が存在することを忘れてはならない。この魔物化したシラウオも同様に寄生虫が存在するため、しっかり熱を通して食すべし。加熱調理をしても風味も食味も落ちることがない。安心して加熱してから食すればよい。
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食すればよいって、まあ魔物を生で食べる気はしないけどな。ホントに誰が書いてるんだ?
盾に刺さったシラウオはもう体が白くなっていた。一匹を引っこ抜いて頭をよく見る。たしかに先端がかなり尖っていた。これが木の盾に刺さったのか。穴はかなり深く、三センチくらい刺さったんだろうか。よく貫通しなかったな。俺は頑丈だから刺さらないとは思うけど、革鎧や服には穴が空くだろう。
しかしこれを食材として集めるなら、鉄製の盾ならグチャグチャになるだろう。やっぱり木の盾に刺して捕獲する方がいいだろうか。
「お前たちはさっき飛んできた魚を盾で受け止められるか?」
俺はスキュラたちに聞いてみた。
「多分できます」
「刺して止めればいいんですよね?」
「マスターのアレでも受け止められる私たちです」
「魚くらいは平気で止めてみます」
「次の休憩で私たちに刺してみませんか?」
「ダンジョンではしないって言っただろう」
とりあえずスキュラたちには木の丸盾を持たせる。厚みは五センチ以上あるから大丈夫なはずだ。
それからも飛んでくる魚を手で受けたり盾で受けたりしつつ目的地に向かった。おかげで到着した時にはそれなりの量の魚が集まっていた。どの魚も普通の魚の四倍から五倍くらいはありそうだ。大きいのは一〇倍はあるな。同じ種類でも大小がかなり違う。そうやって食材を集めているうちに、下へ向かう階段が見えた。
「分かりやすいな」
「これなら少し上がれば見えますね」
階段そのものは思った以上に見つけやすかった。なぜかというと地面に階段があるだけじゃなかったからだ。階段の上に、三方向に壁があって天井もある石造りの建物が乗っかっていた。地下鉄の入り口を巨大にしたようなものだ。階段は幅が一〇メートルほどある。だからこの建物は幅も奥行きも一〇メートルはある。高さも同じくらいか。前二つと比べて明らかにこのダンジョンは広い。だから階段が目に付きやすいのは助かる。
階段を覗くと何となく潮の香りがした。この階は森と草原と川だった。この下は海かもしれない。
「おそらく下は環境が違うぞ。魔物も違うかもしれないし、油断はナシな」
「「「はいっ」」」
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