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第十二部:勇者とダンジョンと魔物(一)
素材の分配
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「ポール殿、ダンジョンで狩った魔物を引き渡そうと思うが、どこか保管する場所はあるのか?」
俺は忘れないうちに魔物を渡しておこうと思った。一部は美味いかどうかを確認するのに貰おうと思うけど、さすがに全部は必要ない。使い切れないからな。
「それはシュウジ様が討伐したものですので、シュウジ様が受け取ってもいいと思うのですが」
「だがこいつらがダンジョンから出てきていたら兵士や冒険者が狩っていたはずじゃないか?」
「それはそうですが、そのためには怪我人や死者が多く出ます。それに暴走の防衛戦については日当が支払われますので」
なるほど。暴走でダンジョンから出た魔物を町の近くで迎撃する場合、冒険者それぞれが倒した魔物の所有権を主張することはできない。そんな暇はないからだ。だから魔物の死体は町で回収して、冒険者たちには日当を支払うことになる。日当だけではなく食事も出るから、まあそれほど条件としては悪くないんだろう。ただ一攫千金を狙う者には物足りないだろうな。そういう者は普段から個々にダンジョンに潜ることになる。
おそらくもう少ししたらダンジョンから第二陣が出てくるだろう。俺がかなり減らしたはずだから少ないと思う。それなら冒険者たちの日当を考えれば全体で赤字になるんじゃないか? そう思って聞いたらそれも否定された。
「それでしたら短期で終わりますので、支払う日数が少なくなります。収束するまでという契約ですので」
「そうか。それなら経済的には通常とあまり変わらないのかもしれないのか」
「そうですね。残りがどれだけか分かりませんが、冒険者たちは働いた分は日当を受け取れます。怪我や死亡の危険も減るでしょう。町としても契約日数が少ないのですので、人件費としては少なくてすみます」
代官がそういうのなら問題ないのだろう。でもなあ……。
「俺としては暴走真っ最中のダンジョンに潜るという貴重な体験ができた。俺からの寄付という形でいくらか受け取ってほしいんだが、どうだ?」
妥協案を出してみた。ポール殿は俺が狩った魔物は俺のものだと主張する。俺からすればそれは本来は兵士や冒険者が狩って町の収入になるはずのものだと思える。それなら寄付しかないだろう。
「分かりました。それでしたらありがたく受け取ることにします。どれくらいお持ちですか?」
「そうだな……。コボルドが二〇〇、オークが五〇〇、オーガが四〇〇、トロルが二五〇、バジリスクが五〇、コカトリスも五〇、マンティコアが三〇。それくらいは出そう」
少しは肉の味の確認もしたいからな。それにイネスに渡せば何かを作るだろう。
「……今日中に解体の作業員を集めますのでしばらくお待ちください。明日になったら出していただけますか?」
「分かった、それならそうしよう。それではまた明日……ああ、ついでにこれも渡すから好きに使ってほしい」
「え? あ、はい」
◆◆◆
シュウジ様がお帰りになりました。あの方は欲があるのかないのか私には分かりません。
この世界に勇者として召喚されて半年ほど、その間にも商会を立ち上げ、そこで扱われている主に女性向けの商品は多くの愛好者がいると聞いています。
もちろん貴族向けにそのような商品を販売することはあります。ですが庶民に向けてというのはまず考えられなかったことです。考え方が違うのでしょう。あの方から多くのことを学べるはずです。
その商会の支店もすでに二つあり、経営状態も良さそうだと報告があります。やはり勇者様の所有する商会というのは誰でも関心を寄せるものです。
女性関係はそれなりに派手だと聞いています。しかも貴族の娘だけではなく平民の娘もいるとか。節操がないのか差別をしないだけなのか微妙なところです。
そう思っているとダンジョンで狩った魔物を引き渡したいと言われました。暴走でダンジョンから出てきた魔物は町が強制的に買い取ります。ですがダンジョン内の魔物は狩った人のもの。そのように説明をしたところ、それなら寄付をしたいとい言われした。何が何でも渡したいようですね。
私は根負けして寄付を受けることにしました。その際に数を聞いたところ、一五〇〇匹ほどあると。暴走の第二陣の六、七割を狩られたようです。ご自身で確保された分もあるようですので、実際に狩ったのはもっと多いのでしょう。
物を収納しておくスキルはいくつかありますが、時間が経過するか経過しないか、容量が大きいか小さいか、生き物が入るか入らないか、様々な違いがあります。魔物が一五〇〇匹も入るような大容量のスキルはなかなかないでしょう。しかしそれよりもまず解体作業員を集めなければなりません。
魔物は生命力が強いため、普通の動物に比べると腐りにくいのです。それでもいつまでも放っておくわけにもいきませんので、冒険者を集めましょう。私がお教えしたように目を狙ったそうですから素材の傷は少ないでしょう。作業員を大量に雇っても十分な利益になるはずです。
それにしても……ついでに渡されたこれは、おそらく先ほどのドラゴンの鱗でしょう。【鑑定】でもそう出ました。おそらくこれが一番価値が高いのですが、これはどうしましょうか。
俺は忘れないうちに魔物を渡しておこうと思った。一部は美味いかどうかを確認するのに貰おうと思うけど、さすがに全部は必要ない。使い切れないからな。
「それはシュウジ様が討伐したものですので、シュウジ様が受け取ってもいいと思うのですが」
「だがこいつらがダンジョンから出てきていたら兵士や冒険者が狩っていたはずじゃないか?」
「それはそうですが、そのためには怪我人や死者が多く出ます。それに暴走の防衛戦については日当が支払われますので」
なるほど。暴走でダンジョンから出た魔物を町の近くで迎撃する場合、冒険者それぞれが倒した魔物の所有権を主張することはできない。そんな暇はないからだ。だから魔物の死体は町で回収して、冒険者たちには日当を支払うことになる。日当だけではなく食事も出るから、まあそれほど条件としては悪くないんだろう。ただ一攫千金を狙う者には物足りないだろうな。そういう者は普段から個々にダンジョンに潜ることになる。
おそらくもう少ししたらダンジョンから第二陣が出てくるだろう。俺がかなり減らしたはずだから少ないと思う。それなら冒険者たちの日当を考えれば全体で赤字になるんじゃないか? そう思って聞いたらそれも否定された。
「それでしたら短期で終わりますので、支払う日数が少なくなります。収束するまでという契約ですので」
「そうか。それなら経済的には通常とあまり変わらないのかもしれないのか」
「そうですね。残りがどれだけか分かりませんが、冒険者たちは働いた分は日当を受け取れます。怪我や死亡の危険も減るでしょう。町としても契約日数が少ないのですので、人件費としては少なくてすみます」
代官がそういうのなら問題ないのだろう。でもなあ……。
「俺としては暴走真っ最中のダンジョンに潜るという貴重な体験ができた。俺からの寄付という形でいくらか受け取ってほしいんだが、どうだ?」
妥協案を出してみた。ポール殿は俺が狩った魔物は俺のものだと主張する。俺からすればそれは本来は兵士や冒険者が狩って町の収入になるはずのものだと思える。それなら寄付しかないだろう。
「分かりました。それでしたらありがたく受け取ることにします。どれくらいお持ちですか?」
「そうだな……。コボルドが二〇〇、オークが五〇〇、オーガが四〇〇、トロルが二五〇、バジリスクが五〇、コカトリスも五〇、マンティコアが三〇。それくらいは出そう」
少しは肉の味の確認もしたいからな。それにイネスに渡せば何かを作るだろう。
「……今日中に解体の作業員を集めますのでしばらくお待ちください。明日になったら出していただけますか?」
「分かった、それならそうしよう。それではまた明日……ああ、ついでにこれも渡すから好きに使ってほしい」
「え? あ、はい」
◆◆◆
シュウジ様がお帰りになりました。あの方は欲があるのかないのか私には分かりません。
この世界に勇者として召喚されて半年ほど、その間にも商会を立ち上げ、そこで扱われている主に女性向けの商品は多くの愛好者がいると聞いています。
もちろん貴族向けにそのような商品を販売することはあります。ですが庶民に向けてというのはまず考えられなかったことです。考え方が違うのでしょう。あの方から多くのことを学べるはずです。
その商会の支店もすでに二つあり、経営状態も良さそうだと報告があります。やはり勇者様の所有する商会というのは誰でも関心を寄せるものです。
女性関係はそれなりに派手だと聞いています。しかも貴族の娘だけではなく平民の娘もいるとか。節操がないのか差別をしないだけなのか微妙なところです。
そう思っているとダンジョンで狩った魔物を引き渡したいと言われました。暴走でダンジョンから出てきた魔物は町が強制的に買い取ります。ですがダンジョン内の魔物は狩った人のもの。そのように説明をしたところ、それなら寄付をしたいとい言われした。何が何でも渡したいようですね。
私は根負けして寄付を受けることにしました。その際に数を聞いたところ、一五〇〇匹ほどあると。暴走の第二陣の六、七割を狩られたようです。ご自身で確保された分もあるようですので、実際に狩ったのはもっと多いのでしょう。
物を収納しておくスキルはいくつかありますが、時間が経過するか経過しないか、容量が大きいか小さいか、生き物が入るか入らないか、様々な違いがあります。魔物が一五〇〇匹も入るような大容量のスキルはなかなかないでしょう。しかしそれよりもまず解体作業員を集めなければなりません。
魔物は生命力が強いため、普通の動物に比べると腐りにくいのです。それでもいつまでも放っておくわけにもいきませんので、冒険者を集めましょう。私がお教えしたように目を狙ったそうですから素材の傷は少ないでしょう。作業員を大量に雇っても十分な利益になるはずです。
それにしても……ついでに渡されたこれは、おそらく先ほどのドラゴンの鱗でしょう。【鑑定】でもそう出ました。おそらくこれが一番価値が高いのですが、これはどうしましょうか。
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