元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
上 下
181 / 273
第十三部:勇者とダンジョンと魔物(二)

スキュラたちと【人化】(一)

しおりを挟む
「あー、大変だった」
 俺はスキュラたちを侮っていた。愛嬌があっても魔物だ。しかもダンジョンにいた魔物たちを軽々と狩るくらいの実力がある。そして体力もかなりある。ステータスの数値は二〇〇前後だ。俺の三分の二くらい。
 この世界にいる人間の中で、総合的にステータスが一番高いのはおそらく俺だろう。邪神や魔王を相手にするような、人外の強さを持つやつらは除外する。
 俺は【生命力】【体力】【精力】【魔力】の四つが三〇〇〇前後で、それ以外の【知力】や【腕力】などの個々の能力の数値は三〇〇前後。成人男性なら八〇から一〇〇で、普通に鍛えて辿り着けるのが一二〇から一五〇、騎士など専門的に鍛えればそれ以上だったはず。近衛騎士団のナタン殿なら二五〇を超えていた。だからスキュラたちは普通の兵士たちよりは強いけど、鍛えに鍛えた騎士や冒険者には敵わないというレベルになる。たしかにそう考えれば十分な強敵だ。でも一人だったけどなあ。部下もいないボスってどうなんだろうな?
 それでどうして今さらスキュラの強さを実感したかというと、ついさっきまでそのスキュラ五人を相手にしていたからだ。ベッドの上で。

 ◆◆◆

「「「マスター!」」」
 五人が声を揃えて窓から俺を呼んだ。
 彼女たちがいるのは屋敷の裏手にある彼女たちのための家。家と呼ぶよりは小屋。テーブルはあるけど椅子はない。下半身が大型犬でできているから、彼女たちはそれに生活を合わせていた。
 ベッドはあることはある。上半身はベッドに仰向けに寝て、下半身はベッドの下で固まって寝るのが今の彼女たちの寝方だ。以前は上半身を起こしたまま寝ていたそうだ。体が休まるのか心配だけどな。
「何かあったのか?」
「見てください。【人化】が使えるようになりました」
 家の中に入ると、そこには人間と同じような足を持った五人のスキュラたちがいた。足があると魔物には思えないな。
「人間ってこんな感じなんですね」
 そう言いながらデルフィーヌがスカートを捲る。当然人間の足が生えたばかりだから下着は穿いていない。大事な部分が丸見えだ。うっすらと毛があるな。そんなところまで再現されるのか。一度剃って元の姿に戻って、また人化したら毛は戻るのか?
「後ろにも穴が付いてます。こちらは排泄用ですよね?」
「堂々と他人に見せるものじゃないからな」
 お互いに確認し合っていた。一通りの知識はあるようだけど、人の姿になったばかりだから興味津々なんだろう。羞恥心はあまりなさそうだ。でもみんなの見た目に少し違和感があった。
「お前たち、少し雰囲気が変わったか?」
「はい。胸が大きくなりました」
 少し大人びた感じがしたように思えたと思ったら胸が膨らんだのか。

====================

【名前:アルベルティーヌ】
【種族:スキュラ】
【年齢:一八】

 美しい女性の上半身と六匹の犬の上半身でできた下半身を持つキメラの一種。ただしこの個体はまだ成体になりたてである。一般的なスキュラは妖艶な女性の上半身と獰猛な犬の下半身を持つが、今のところは成体になったばかりのため、若い女性とまだ幼さの残る成犬の組み合わせとなっている。
 下半身はアラスカンマラミュートで、寒さには強いが暑さには弱い。大人しそうな見た目と違ってパワフルな犬種のため、運動不足になると強いストレスを感じる。そのため普段からしっかり散歩をさせ、体力維持に努めたい。好物は肉と骨。歯ごたえがあるものを好む。

【固有スキル:人化】
 これを使用することで下半身が人間と同じになる。他種族との性行為によって妊娠と出産が可能になる。妊娠は任意のタイミングで可能。出産は妊娠からおよそ一〇か月で、妊娠中は下半身を犬に戻すことはできない。子供の種族は父親の種族かスキュラのどちらかになる。

※注記
【愛の男神シュウジの従魔】

====================

 なるほど。一八歳になると【人化】が使えるのかもしれない。
「これで成体になれたみたいです」
「これでアネットさんとやってることが私たちともできますね」
「それはそうだな……って、お前たち見てたのか?」
 アネットは露出狂の気がある。実際には俺が頑張って見られないようにしてるけど、夜のベランダでするのがお気に入りだ。他にはこのあたりの木陰でするのも野生に還った感じでいいらしい。「お前は町育ちだろう」ってツッコミを入れながら何度も突っ込んだ。
「私たちは目も鼻も耳もいいですので」
「ちょっとした変化にも気付きます」
「お二人とも立ち去る時は来た時と匂いが違いますよね」
「体温が上がってましたね。少し生臭さを感じました」
 生臭さってヤッた後のアレだろうな。
「旦那様が今さっき興奮したのか、少し匂いが変わりました」
 興奮? スカートの中を見たからか?
「それはそうと、初めて【人化】を使ったのに歩けるのか?」
「少しバランスが取りにくいですっとっとっ」
 エグランティーヌがよろめいて俺に抱きついた。
「あ、ズルい」
「私も」
「「「マスター」」」
「待て待て。一度に来るな」
 五人にくっつかれた。

 スキュラたちには普段は下半身がない。つまり俺とすることはできない。その部分がどうなっているのか一度見せてもらったら、スカートの中には黒くモヤモヤしたものがあって、そこから子犬の胴体がにゅっと生えていた。結局繋がっている部分がどうなってるのかは分からなかったけど、スカートの上から腰を触った感じではちゃんと腰骨があって、そこから下がなかった。
 そんな彼女たちは初めて【人化】を使って性行為ができるようになった。この前まで『まだ成体になる少し手前』とあったけど、一八歳で成体になったから【人化】が使えるようになったのかもしれない。そしてそれと同時に胸が膨らんだ。神秘だな。
「「「マスターのも見せてください」」」
「俺のって……ズボンとパンツを下ろすのか?」
「「「そうです」」」
 さてどうするか。現在仰向けに倒れた俺の上に五人か乗っかっている。振り払うと怪我をするかもしれない。成体になったばかりだからかもしれないけど、発想が子供に近かった。真面目で言うことをよく聞くと思ってたけど、案外そうでもなかったんだな。
「分かった。見せるからその手を離せ」
「「「逃げませんか?」」」
「逃げてどうするんだ?」
 五人が手を離すと俺はズボンのボタンに手をかけて……一つ確認することにした。
「見るだけだぞ」
「はい」
「楽しみです」
「どんな形なんですか?」
「匂いとか味とかあるんですか?」
「想像するだけでワクワクします」
 ワクワクするようなものか? それは分からないけど、とりあえず許可したからにはズボンとパンツを下ろして男のシンボルをポロンと出した。
「「「凄~~~い‼」」」
 五人が声を揃えて歓声を上げた。女子か? 女子だな。
しおりを挟む

処理中です...