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第十一部:家族がいるということ
オレリーの本音
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ピロートークでこそ聞ける本心がある。まだ午前だけどな。
「夢のようです」
俺の胸に頭を乗せたオレリーがそう呟いた。
「何がだ? 俺に抱かれたことがが?」
「心から愛せる男性に抱かれたことがです。奉公に出た時に諦めていましたので」
貴族の女性の適齢期は一〇代。二〇を過ぎれば行き遅れ。実家は貴族でも、決して安泰とまでは言えない男爵という爵位。父親はオレリーが奉公に出ることになった時に心底残念がったそうだ。でも母親はそれが最善だと。それもこの国の社会構造が分かれば理解できる。
未婚のオレリーがそのまま実家にいると立場が悪くなる。家はいずれ兄のものになる。そしてそのうちにその長男、つまりオレリーの甥が継ぐことになるだろう。そうすれば甥からすると叔母のオレリーは邪魔になる。邪魔というか金食い虫だ。だからそうなる前にドレスなどを一式用意してくれ、さらに仕事まで見つけてくれたのが親としての優しさだろう。オレリーは家を出てからも生活には困らなかった。
ベラもよく似た状況だったけど、あの場合はロジエ男爵が協力的だった。何が何でも自分は娘の味方だと。でもどの家もそういうわけじゃないだろう。
オレリーは血縁関係のある貴族の屋敷では女主人のコンパニオンをしたそうだ。それからそこを出ると侍女もした。どこもそれほど長続きしなかったのは見た目のせいだった。コンパニオンでも侍女でも、見た目が重視される。いないよりはいる方が家としては格が高くなるけど、どうせなら美人の方がいい。だからしばらくすると別の貴族の屋敷を紹介されたそうだ。そうしていくつか仕事をした場所のある女主人に無毛を笑われてしまったと。
「オレリー、お前からすると俺はそこまで愛せる男なのか?」
自分で言うのもおかしいけど、俺は雇い主としては優秀だろう。金払いは悪くない。暴力は振るわない。でもどう思われてるかはあまり聞いたことがない。
「もちろんです。旦那様はどのような女性にも平等に接しておられます。私は余所では器量が悪いと散々言われましたので」
「こんなに可愛いのにな」
「あっ、旦那様……」
抱きすくめてまたイチャイチャした。ベッドから出てシャワーを浴びるのはもう少し先になるだろう。それでもいい。
美醜の感覚がやや違うのも関係してるだろう。リュシエンヌも日本人顔だけど、もう少しだけ南国寄りだ。オレリーはほぼ日本人。醜いわけじゃないけど美女とは見なされない。そのあたりの感覚を変えさせるのは無理だ。その国の国民に染みついた感覚は何代かけても変わらないだろう。
ただそのような感覚を持つのはほとんどが貴族だ。平民なら結婚相手にそこまで求めることは少ないそうだ。でも貴族には貴族らしさが求められる。貴族の男性はこうあるべき、貴族の女性はこうあるべき、そのような考えには俺だってある程度は従うしかない。
でも人口が軽く一〇〇〇万人を超える国で、貴族とその家族を合わせて二〇〇〇人程度がどうでもいいプライドを持って張り合っているだけに思えてしまう。その被害者の一人がオレリーだった。
でもオレリーのネガティブさは筋金入りだ。毛がないのはどうしようもないけど、俺はこの女に自身を持たせたい。そのためには褒めて褒めて褒めまくる。そして抱きまくる。抱いて抱いて抱いていれば、俺が本気だということが分かるだろう。もちろん本気じゃないとは思ってないかもしれないけど、心の底から信じ切れてないようだ。まだまだ時間がかかる。
エミリアにもその傾向があったけど、彼女の場合は俗世に触れてなかったからだ。自分が美人で魅力的な腰つきをしてることに気づいてなかっただけだ。それに妄信的に俺のことを信じてるから、俺が美人だといえば自分は美人だと思い込んだ。腰つきが最高だと言えば、俺の前では積極的に腰を振るようになった。あの腰を思い浮かべるだけ勃つからな。俺も若いな。実際に若返ったけど。
「まさかあのような場所まで触っていただけるなんて……」
「お前の体に汚い部分なんてない。俺のだってそうだっただろ?」
「はい。旦那様の全てをこの舌で感じさせていただきました」
俺とオレリーはベッドに入る前にイネスの作った腸内清掃薬を使った。ミントの香りのする最初のバージョンだ。それで腸内をキレイにした後、お互いに全身を舐め合って、もちろん後ろの窄まりも指と舌で愛し合った。そしてベラとは違った意味で少々強引な方法を使った。そうでなければなかなか心を開かなさそうだったから。
俺を愛している、俺に愛されたい、そう言いながらも、それでも嫌われたらどうしようと躊躇う彼女の心を壊しにかかった。唇も、髪も、脇も、背中も、前も、後ろも、全てをこの指と舌で触り、撫で、舐め、感じ取った。
「お前の後ろですら俺の舌も指も触った。愛していない相手にそんなことをすると思うか?」
かなり表情が和らいだオレリーに聞いてみた。
「いえ、そうは思いません」
「そうだ。俺はお前を愛している。お前を離さないと言った俺を信じろ。お前は俺にとって大切な女だ」
「……はい。信じます。私は旦那様に愛されています。私も旦那様を心から愛します。私の夫になってください」
いい女だ。幸せにしてやりたい。でもまだ綻びかけた蕾だ。満開の花を咲かせるにはまだ時間がかかるだろう。その時にどのような花になるか、今から楽しみだ。
「もう少ししたら一度実家に帰って報告してこい。送り出してくれてありがとうございましたって礼を言ってその笑顔を見せてやってくれ。両親も安心するだろう」
「はい!」
「夢のようです」
俺の胸に頭を乗せたオレリーがそう呟いた。
「何がだ? 俺に抱かれたことがが?」
「心から愛せる男性に抱かれたことがです。奉公に出た時に諦めていましたので」
貴族の女性の適齢期は一〇代。二〇を過ぎれば行き遅れ。実家は貴族でも、決して安泰とまでは言えない男爵という爵位。父親はオレリーが奉公に出ることになった時に心底残念がったそうだ。でも母親はそれが最善だと。それもこの国の社会構造が分かれば理解できる。
未婚のオレリーがそのまま実家にいると立場が悪くなる。家はいずれ兄のものになる。そしてそのうちにその長男、つまりオレリーの甥が継ぐことになるだろう。そうすれば甥からすると叔母のオレリーは邪魔になる。邪魔というか金食い虫だ。だからそうなる前にドレスなどを一式用意してくれ、さらに仕事まで見つけてくれたのが親としての優しさだろう。オレリーは家を出てからも生活には困らなかった。
ベラもよく似た状況だったけど、あの場合はロジエ男爵が協力的だった。何が何でも自分は娘の味方だと。でもどの家もそういうわけじゃないだろう。
オレリーは血縁関係のある貴族の屋敷では女主人のコンパニオンをしたそうだ。それからそこを出ると侍女もした。どこもそれほど長続きしなかったのは見た目のせいだった。コンパニオンでも侍女でも、見た目が重視される。いないよりはいる方が家としては格が高くなるけど、どうせなら美人の方がいい。だからしばらくすると別の貴族の屋敷を紹介されたそうだ。そうしていくつか仕事をした場所のある女主人に無毛を笑われてしまったと。
「オレリー、お前からすると俺はそこまで愛せる男なのか?」
自分で言うのもおかしいけど、俺は雇い主としては優秀だろう。金払いは悪くない。暴力は振るわない。でもどう思われてるかはあまり聞いたことがない。
「もちろんです。旦那様はどのような女性にも平等に接しておられます。私は余所では器量が悪いと散々言われましたので」
「こんなに可愛いのにな」
「あっ、旦那様……」
抱きすくめてまたイチャイチャした。ベッドから出てシャワーを浴びるのはもう少し先になるだろう。それでもいい。
美醜の感覚がやや違うのも関係してるだろう。リュシエンヌも日本人顔だけど、もう少しだけ南国寄りだ。オレリーはほぼ日本人。醜いわけじゃないけど美女とは見なされない。そのあたりの感覚を変えさせるのは無理だ。その国の国民に染みついた感覚は何代かけても変わらないだろう。
ただそのような感覚を持つのはほとんどが貴族だ。平民なら結婚相手にそこまで求めることは少ないそうだ。でも貴族には貴族らしさが求められる。貴族の男性はこうあるべき、貴族の女性はこうあるべき、そのような考えには俺だってある程度は従うしかない。
でも人口が軽く一〇〇〇万人を超える国で、貴族とその家族を合わせて二〇〇〇人程度がどうでもいいプライドを持って張り合っているだけに思えてしまう。その被害者の一人がオレリーだった。
でもオレリーのネガティブさは筋金入りだ。毛がないのはどうしようもないけど、俺はこの女に自身を持たせたい。そのためには褒めて褒めて褒めまくる。そして抱きまくる。抱いて抱いて抱いていれば、俺が本気だということが分かるだろう。もちろん本気じゃないとは思ってないかもしれないけど、心の底から信じ切れてないようだ。まだまだ時間がかかる。
エミリアにもその傾向があったけど、彼女の場合は俗世に触れてなかったからだ。自分が美人で魅力的な腰つきをしてることに気づいてなかっただけだ。それに妄信的に俺のことを信じてるから、俺が美人だといえば自分は美人だと思い込んだ。腰つきが最高だと言えば、俺の前では積極的に腰を振るようになった。あの腰を思い浮かべるだけ勃つからな。俺も若いな。実際に若返ったけど。
「まさかあのような場所まで触っていただけるなんて……」
「お前の体に汚い部分なんてない。俺のだってそうだっただろ?」
「はい。旦那様の全てをこの舌で感じさせていただきました」
俺とオレリーはベッドに入る前にイネスの作った腸内清掃薬を使った。ミントの香りのする最初のバージョンだ。それで腸内をキレイにした後、お互いに全身を舐め合って、もちろん後ろの窄まりも指と舌で愛し合った。そしてベラとは違った意味で少々強引な方法を使った。そうでなければなかなか心を開かなさそうだったから。
俺を愛している、俺に愛されたい、そう言いながらも、それでも嫌われたらどうしようと躊躇う彼女の心を壊しにかかった。唇も、髪も、脇も、背中も、前も、後ろも、全てをこの指と舌で触り、撫で、舐め、感じ取った。
「お前の後ろですら俺の舌も指も触った。愛していない相手にそんなことをすると思うか?」
かなり表情が和らいだオレリーに聞いてみた。
「いえ、そうは思いません」
「そうだ。俺はお前を愛している。お前を離さないと言った俺を信じろ。お前は俺にとって大切な女だ」
「……はい。信じます。私は旦那様に愛されています。私も旦那様を心から愛します。私の夫になってください」
いい女だ。幸せにしてやりたい。でもまだ綻びかけた蕾だ。満開の花を咲かせるにはまだ時間がかかるだろう。その時にどのような花になるか、今から楽しみだ。
「もう少ししたら一度実家に帰って報告してこい。送り出してくれてありがとうございましたって礼を言ってその笑顔を見せてやってくれ。両親も安心するだろう」
「はい!」
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