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第十二部:勇者とダンジョンと魔物(一)
サン=フォアの解放
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「「「勇者様、ばんざーーーーい‼」」」
「「「ばんざーーーーい‼」」」
歓声と共に俺たち応援部隊がサン=フォアの町に迎えられた。なかなかいい気分だな。俺は勇者様と言われるのが好きじゃないんだと思ってたけど、畏まられすぎて困ってただけなんだろう。こうやって盛り上げられるなら勇者様と言われるのも悪くはないな。
暴走が発生してるのにのんびりと休憩なんかして大丈夫かと思うかもしれないけど、まずは第一陣として弱めの魔獣が大量に出てくる。それがさっきのだ。それからしばらくすると第二陣の強い魔獣が現れるんだそうだ。今回は第一陣の駆除が早かったから、時間的には次までに余裕があるんじゃないかということだった。
さて、俺たち応援部隊はサン=フォアの中に入ったけど、サン=フォアに駐留していた部隊や冒険者たちは町の外の掃除をしている。つまり金になりそうな魔獣の素材集めだ。
町の北部には俺が【石の玉】で倒した魔獣がゴロゴロと転がってるから、それはほとんど傷みがないはず。コボルドの毛皮はそれなりに役に立つそうだ。
俺は美容液の素材になるゴブリンを集めてもらって買い取ることにした。元々価値のほとんどない魔物だけど、俺が欲しがったあたりから多少は値が付くようになったそうだ。だから安い値段だけど集めてもらって買い取ることにした。コボルドの方は好きにしてくれていいと伝えている。コボルドの毛皮って何に使うのか知らないけど、敷物か?
人垣の間をしばらく歩くと、大きな屋敷の前に案内された。そこにはきちんと着飾った貴族らしい男が俺たちを待っていた。おそらく四〇代。なかなか立派な体格をしている。町が町だけに、いざとなれば自分で剣を取って戦うような男に見えた。
「勇者様、この町で代官をしているポール・クジネと申します。お見知りおきを」
家名持ちか。
「勇者をしているシュウジ・コワレ・ラヴァル公爵だ。よろしく頼む」
「ではシュウジ様、とりあえず屋敷の中でお寛ぎください」
俺が名前を伝えたからか、「勇者様」じゃなくて「シュウジ様」になった。そっちの方が気楽だな。
◆◆◆
「通常ですと、最初に確認してから一〇日程度で第二陣が現れます。おそらく一週間ほど後になるかと」
俺はこの町で起きている暴走の傾向を確認している。油断をするつもりはないけど怪我くらいはしかねない。
「それなら増援は間に合わないか」
「ギリギリというところです。城壁の上から第一陣の駆除をしている間に第二陣が現れます。そこにある程度まとまった数の増援が駆けつけて、というのがいつものパターンになります」
「事情をよく知らないから聞くんだが、例えばオーリックにもっと兵を置いておくことはできないのか?」
「それができればいいのですが、このサン=フォアは山に近く、ダンジョン以外からも魔物が現れます。そのために普段から軍が冒険者と協力して駆除を行っています」
「それなら普段から兵を増やしておくことはできないのか?」
「ダンジョンがここだけでしたら可能でしょうが、他にもたくさんあります。シュウジ様はこの国の地理についてはいかがですか?」
「この大陸の国のことなら大まかに頭に入っている。細かな町の名前までは知らないが」
「それでは名前を出しますと、フレージュ王国と西のテシェル王国の間に山がありますが、ダンジョンの入り口がこちら側だけで八か所あります。東のカロシュ王国との間にある山にもこちら側に七か所あります。合計一五か所ダンジョンがあることになります」
「こちら側だけでそれということは、他に国にもあるということだな?」
「はい。それぞれ同じくらいずつあるそうですが、たまに増えることもあります。さらには中央の都市国家群は四方が山に囲まれていますので、全部で三〇を超えるダンジョンがあると言われています」
「そんなに多いと大変だな」
同時に暴走が起きたら大変なことになりそうだな。
「ところがそれ故に多くの冒険者が集まりますので、暴走が起きにくいという結果になっています」
「ああ、なるほど。逆なのか」
「はい。逆に周囲の四か国は冒険者を呼んで活動してもらわなければ人手が足りないという事態になっています。都市国家群で活動する冒険者はかなり腕が立ちますので」
それならアドニス王が兵士や冒険者を増やしたいというのは分かる。暴走が起きてから対処するよりも起きる前に対処する方が負担は少ない。暴走が起きなくても素材は集まるだろうからな。
「ではこの屋敷に離れがありますのでそちらをお使いください」
「俺は別に兵士たちと一緒でもいいのだが」
兵士たちは広場などにテントを張っている。場所が場所だからたくさん収容できるようになってるんだろう。俺はそこでもいいと思った。外へ出るのも気楽だろうし。
「戦場で並んで剣を振るのは彼らとしても本望でしょうが、閣下と一緒では気が休まらない者もいるでしょう」
「ああ、そっちか。そうだな。では遠慮なく借りるとしよう」
俺が思っている勇者よりも兵士たちが思っている勇者の方が存在が重い。テントは別だとしても、俺と長い間一緒にいれば気疲れするかもしれない。そうかもしれないな。どうせまた一緒に戦うんだから、顔を合わせるのはその時でいいか。
「だがその前に一つしておきたいことがある」
「「「ばんざーーーーい‼」」」
歓声と共に俺たち応援部隊がサン=フォアの町に迎えられた。なかなかいい気分だな。俺は勇者様と言われるのが好きじゃないんだと思ってたけど、畏まられすぎて困ってただけなんだろう。こうやって盛り上げられるなら勇者様と言われるのも悪くはないな。
暴走が発生してるのにのんびりと休憩なんかして大丈夫かと思うかもしれないけど、まずは第一陣として弱めの魔獣が大量に出てくる。それがさっきのだ。それからしばらくすると第二陣の強い魔獣が現れるんだそうだ。今回は第一陣の駆除が早かったから、時間的には次までに余裕があるんじゃないかということだった。
さて、俺たち応援部隊はサン=フォアの中に入ったけど、サン=フォアに駐留していた部隊や冒険者たちは町の外の掃除をしている。つまり金になりそうな魔獣の素材集めだ。
町の北部には俺が【石の玉】で倒した魔獣がゴロゴロと転がってるから、それはほとんど傷みがないはず。コボルドの毛皮はそれなりに役に立つそうだ。
俺は美容液の素材になるゴブリンを集めてもらって買い取ることにした。元々価値のほとんどない魔物だけど、俺が欲しがったあたりから多少は値が付くようになったそうだ。だから安い値段だけど集めてもらって買い取ることにした。コボルドの方は好きにしてくれていいと伝えている。コボルドの毛皮って何に使うのか知らないけど、敷物か?
人垣の間をしばらく歩くと、大きな屋敷の前に案内された。そこにはきちんと着飾った貴族らしい男が俺たちを待っていた。おそらく四〇代。なかなか立派な体格をしている。町が町だけに、いざとなれば自分で剣を取って戦うような男に見えた。
「勇者様、この町で代官をしているポール・クジネと申します。お見知りおきを」
家名持ちか。
「勇者をしているシュウジ・コワレ・ラヴァル公爵だ。よろしく頼む」
「ではシュウジ様、とりあえず屋敷の中でお寛ぎください」
俺が名前を伝えたからか、「勇者様」じゃなくて「シュウジ様」になった。そっちの方が気楽だな。
◆◆◆
「通常ですと、最初に確認してから一〇日程度で第二陣が現れます。おそらく一週間ほど後になるかと」
俺はこの町で起きている暴走の傾向を確認している。油断をするつもりはないけど怪我くらいはしかねない。
「それなら増援は間に合わないか」
「ギリギリというところです。城壁の上から第一陣の駆除をしている間に第二陣が現れます。そこにある程度まとまった数の増援が駆けつけて、というのがいつものパターンになります」
「事情をよく知らないから聞くんだが、例えばオーリックにもっと兵を置いておくことはできないのか?」
「それができればいいのですが、このサン=フォアは山に近く、ダンジョン以外からも魔物が現れます。そのために普段から軍が冒険者と協力して駆除を行っています」
「それなら普段から兵を増やしておくことはできないのか?」
「ダンジョンがここだけでしたら可能でしょうが、他にもたくさんあります。シュウジ様はこの国の地理についてはいかがですか?」
「この大陸の国のことなら大まかに頭に入っている。細かな町の名前までは知らないが」
「それでは名前を出しますと、フレージュ王国と西のテシェル王国の間に山がありますが、ダンジョンの入り口がこちら側だけで八か所あります。東のカロシュ王国との間にある山にもこちら側に七か所あります。合計一五か所ダンジョンがあることになります」
「こちら側だけでそれということは、他に国にもあるということだな?」
「はい。それぞれ同じくらいずつあるそうですが、たまに増えることもあります。さらには中央の都市国家群は四方が山に囲まれていますので、全部で三〇を超えるダンジョンがあると言われています」
「そんなに多いと大変だな」
同時に暴走が起きたら大変なことになりそうだな。
「ところがそれ故に多くの冒険者が集まりますので、暴走が起きにくいという結果になっています」
「ああ、なるほど。逆なのか」
「はい。逆に周囲の四か国は冒険者を呼んで活動してもらわなければ人手が足りないという事態になっています。都市国家群で活動する冒険者はかなり腕が立ちますので」
それならアドニス王が兵士や冒険者を増やしたいというのは分かる。暴走が起きてから対処するよりも起きる前に対処する方が負担は少ない。暴走が起きなくても素材は集まるだろうからな。
「ではこの屋敷に離れがありますのでそちらをお使いください」
「俺は別に兵士たちと一緒でもいいのだが」
兵士たちは広場などにテントを張っている。場所が場所だからたくさん収容できるようになってるんだろう。俺はそこでもいいと思った。外へ出るのも気楽だろうし。
「戦場で並んで剣を振るのは彼らとしても本望でしょうが、閣下と一緒では気が休まらない者もいるでしょう」
「ああ、そっちか。そうだな。では遠慮なく借りるとしよう」
俺が思っている勇者よりも兵士たちが思っている勇者の方が存在が重い。テントは別だとしても、俺と長い間一緒にいれば気疲れするかもしれない。そうかもしれないな。どうせまた一緒に戦うんだから、顔を合わせるのはその時でいいか。
「だがその前に一つしておきたいことがある」
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