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第四部:貴族になること
外出許可
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「旦那様、外出の際は馬車をお使いください。それに護衛もお付けください」
「そうは言ってもなあ」
外へ出ようと思ったら、門衛隊長のアルバンに馬車を使えと言われた。まあそれはそうかもしれない。公爵だからな。もちろん公式の行事があれば馬車で移動するのは当然だろうとは思った。でも私用でちょっと出歩くだけに馬車というのは面倒に思える。
それに俺はこの王都を歩いたことがない。どこに何があるのかも分からない。だから一度外に出てみようと思って、そして門で止められた。そこへ執事のダヴィドもやって来て今の状況だ。
「ダヴィド、俺が外に出てどのようなことがあり得る?」
「はい、まずは何者かに襲撃される可能性があります」
「そうだな。確かに襲撃はあるかもしれない。だが俺が遅れを取ると思うか?」
まずはこれがある。何があっても死なないなんてことはないと思うけど、ステータス的に俺よりも強いのがゴロゴロいるのはおかしい。一般的な世界では、俺のステータスなら余程じゃなければ後れを取ることはない。
「そう言われますと……まあたしかに……」
「な? 俺に危害が加えられる危険はあるなら当然そのための備えはする。そもそも剣を擦らせもしないぞ」
俺がそう言うと、ダヴィドは考え込んだ。執事としては仕方ないだろうけど、俺としてはあまり制限されるのもな。
「では、旦那様が暴漢に襲われても問題ないということがはっきりと分かりましたら、これ以上は申しません」
「それなら門衛たちと手合わせをしようか。今から準備をしてくれ」
門衛たちにそう言うと、俺は俺で鎧の準備をすることにした。
◆◆◆
「シュウジ様の甲冑姿、凛々しいです♪」
エミリアはもう俺が何をしても感動してくれる。いいぞ、もっと感動しろ。そしてその感動を夜まで持たせてくれ。夜の戦いでも俺の性剣が唸るのは間違いない。
「アルバン、木剣でいいか?」
「はい、それでお願いします」
隊長のアルバンに確認する。練習用の刃引きの剣を使うこともない。
「まずは一対一でいいか。アルバン、来い」
「胸をお借りします。はっ!」
ガツッッ!
アルバンの剣を正面から受ける。隊長だけあって腕力の数値などは六人の中で一番高い。だが守るのが仕事の門衛だから、攻撃はそこまで得意じゃなさそうだ。
正面から受けても問題ない。時に受け止め、払い、去なす。騎士たちと一緒に訓練をしたのも役に立ったな。
鍔迫り合いからステータスに物を言わせて押し込み、アルバンが姿勢を崩したところで足元を払う。
「参りました」
鍔迫り合いで重心が上がった時に足元を狙われれば、まずひっくり返る。これは喧嘩でも何でも同じだ。そうならないようにするためには重心を低くするしかない。
「よし、次は三人で掛かってこい」
アルバンを休ませ、ジャコブ、モイーズ、カンタの三人を相手にする。
三人が相手となればのんびりと鍔迫り合いはできない。積極的に動き、攻撃の的を絞らせない。三人に囲まれると面倒なので、できる限り一対一になれるポジションを探す。
「少し休憩したら次は全員で掛かってこい」
三人ともが剣を落とすと、一度休憩を入れ、最後は六対一で戦う。三対一でも六対一でも、実はそれほどこちらの攻め方に違いはない。向こうからすると、六人が同時に俺に斬りかかるのは難しい。無理に突っ込むと味方に剣が当たる可能性もある。時代劇を見てると、斬り合いの近くで手を出せずに剣を構えているやつがいるだろう。あんな感じだ。もちろん槍を出されたら話は別だけどな。
できる限り一対一の形に持ち込んだ俺が、六人全員を地面に転がすにはそれほど時間はかからなかった。
「こんなもんだ。ダヴィド、どうだ?」
「はい、そうやら余計な心配をしたようです。ですが無理はなさなぬようにお願いします」
「それはもちろんだ。俺は勝てない戦いはしないからな」
さすがに六対一で勝てば何も言わないだろうと思ってやってみた。成功だ。こっそり出てこっそり戻ってくるのもできなくはないけど、バレた時に何を言われるか分からない。今回は正攻法で外出許可を得ることができた。
◆◆◆
着替えてから門から出る。もちろんそのままの格好じゃない。カツラの上に帽子を被り、ちょっと金のある平民が着るような服を着ている。腰には護身用に短剣をぶら下げる。【変装】で見た目を変え、さらに【偽装】で【名前】と【職業】を変えている。【雲隠れ】という名前のスキルがあったので、これを使うと認識されにくくなるようだ。屋敷を出る時だけこれを使ってこっそりと出ることにした。
外に出たかったのにはもう一つ理由がある。それは【地図】の存在だ。勇者用の魔法の中に【地図】というのがあって、それは一度行った場所をオートマッピングで記録してくれるものだった。すでに王宮や修道院のあたりは一部が埋まっている。でも王宮と屋敷の間が埋まっていないのは、馬車での移動では記録されないからだろうと思った。それなら歩いて埋めようと。
それでこの【地図】を何に使うかだけど、画面上にはメモなどを貼り付けることもできる。表示をカスタマイズすれば、どの屋敷がどの貴族のものなのかなどもパッと分かる。自分用の王都貴族屋敷ガイドが作れるはずだ。もちろんそれ以外によく行く店ができれば追加するつもりだから、いずれは自分用の観光ガイドにもなるだろう。
「そうは言ってもなあ」
外へ出ようと思ったら、門衛隊長のアルバンに馬車を使えと言われた。まあそれはそうかもしれない。公爵だからな。もちろん公式の行事があれば馬車で移動するのは当然だろうとは思った。でも私用でちょっと出歩くだけに馬車というのは面倒に思える。
それに俺はこの王都を歩いたことがない。どこに何があるのかも分からない。だから一度外に出てみようと思って、そして門で止められた。そこへ執事のダヴィドもやって来て今の状況だ。
「ダヴィド、俺が外に出てどのようなことがあり得る?」
「はい、まずは何者かに襲撃される可能性があります」
「そうだな。確かに襲撃はあるかもしれない。だが俺が遅れを取ると思うか?」
まずはこれがある。何があっても死なないなんてことはないと思うけど、ステータス的に俺よりも強いのがゴロゴロいるのはおかしい。一般的な世界では、俺のステータスなら余程じゃなければ後れを取ることはない。
「そう言われますと……まあたしかに……」
「な? 俺に危害が加えられる危険はあるなら当然そのための備えはする。そもそも剣を擦らせもしないぞ」
俺がそう言うと、ダヴィドは考え込んだ。執事としては仕方ないだろうけど、俺としてはあまり制限されるのもな。
「では、旦那様が暴漢に襲われても問題ないということがはっきりと分かりましたら、これ以上は申しません」
「それなら門衛たちと手合わせをしようか。今から準備をしてくれ」
門衛たちにそう言うと、俺は俺で鎧の準備をすることにした。
◆◆◆
「シュウジ様の甲冑姿、凛々しいです♪」
エミリアはもう俺が何をしても感動してくれる。いいぞ、もっと感動しろ。そしてその感動を夜まで持たせてくれ。夜の戦いでも俺の性剣が唸るのは間違いない。
「アルバン、木剣でいいか?」
「はい、それでお願いします」
隊長のアルバンに確認する。練習用の刃引きの剣を使うこともない。
「まずは一対一でいいか。アルバン、来い」
「胸をお借りします。はっ!」
ガツッッ!
アルバンの剣を正面から受ける。隊長だけあって腕力の数値などは六人の中で一番高い。だが守るのが仕事の門衛だから、攻撃はそこまで得意じゃなさそうだ。
正面から受けても問題ない。時に受け止め、払い、去なす。騎士たちと一緒に訓練をしたのも役に立ったな。
鍔迫り合いからステータスに物を言わせて押し込み、アルバンが姿勢を崩したところで足元を払う。
「参りました」
鍔迫り合いで重心が上がった時に足元を狙われれば、まずひっくり返る。これは喧嘩でも何でも同じだ。そうならないようにするためには重心を低くするしかない。
「よし、次は三人で掛かってこい」
アルバンを休ませ、ジャコブ、モイーズ、カンタの三人を相手にする。
三人が相手となればのんびりと鍔迫り合いはできない。積極的に動き、攻撃の的を絞らせない。三人に囲まれると面倒なので、できる限り一対一になれるポジションを探す。
「少し休憩したら次は全員で掛かってこい」
三人ともが剣を落とすと、一度休憩を入れ、最後は六対一で戦う。三対一でも六対一でも、実はそれほどこちらの攻め方に違いはない。向こうからすると、六人が同時に俺に斬りかかるのは難しい。無理に突っ込むと味方に剣が当たる可能性もある。時代劇を見てると、斬り合いの近くで手を出せずに剣を構えているやつがいるだろう。あんな感じだ。もちろん槍を出されたら話は別だけどな。
できる限り一対一の形に持ち込んだ俺が、六人全員を地面に転がすにはそれほど時間はかからなかった。
「こんなもんだ。ダヴィド、どうだ?」
「はい、そうやら余計な心配をしたようです。ですが無理はなさなぬようにお願いします」
「それはもちろんだ。俺は勝てない戦いはしないからな」
さすがに六対一で勝てば何も言わないだろうと思ってやってみた。成功だ。こっそり出てこっそり戻ってくるのもできなくはないけど、バレた時に何を言われるか分からない。今回は正攻法で外出許可を得ることができた。
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着替えてから門から出る。もちろんそのままの格好じゃない。カツラの上に帽子を被り、ちょっと金のある平民が着るような服を着ている。腰には護身用に短剣をぶら下げる。【変装】で見た目を変え、さらに【偽装】で【名前】と【職業】を変えている。【雲隠れ】という名前のスキルがあったので、これを使うと認識されにくくなるようだ。屋敷を出る時だけこれを使ってこっそりと出ることにした。
外に出たかったのにはもう一つ理由がある。それは【地図】の存在だ。勇者用の魔法の中に【地図】というのがあって、それは一度行った場所をオートマッピングで記録してくれるものだった。すでに王宮や修道院のあたりは一部が埋まっている。でも王宮と屋敷の間が埋まっていないのは、馬車での移動では記録されないからだろうと思った。それなら歩いて埋めようと。
それでこの【地図】を何に使うかだけど、画面上にはメモなどを貼り付けることもできる。表示をカスタマイズすれば、どの屋敷がどの貴族のものなのかなどもパッと分かる。自分用の王都貴族屋敷ガイドが作れるはずだ。もちろんそれ以外によく行く店ができれば追加するつもりだから、いずれは自分用の観光ガイドにもなるだろう。
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