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第五章:領主二年目第四部
行ったり来たり
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「これだけでいいのか?」
「大丈夫よ」
試しに王都の屋敷の玄関に置いた転移ドアから覗いてみると、そこにはドラゴネットにいるはずのローサがいた。これで繋がったのか。本当に置くだけだな。
「殺到さえしなければそう簡単に閉じないはずよ。順番に一列に並んだら問題ないわ」
「それなら年末年始はこれを通って移動してもいいということにするか。向こうの使用人たちとも交流があってもいいだろう」
「人数が多い方が絶対に楽しいわよ」
祭りは賑やかな方がいい。領地の方も住民が増えた。一年少々で二〇倍近くというのはまずあり得ないな。ゴール王国からの移民があってこそだが。
彼らの家は住民総出で建てたらあっという間に完成した。しかも強力な助っ人が増えた。クラースにパウラ、カレン、ローサ、マリエッテ、マリーナ、マルリース、マルニクス。総勢八人の竜たちだ。人間がどれだけ頑張っても彼らほどは運べない。
クラースたちには山から巨大な石を切り出して運んでもらい。それを俺が土魔法で建材に使う形に加工して、フランツたちの指示の元で領民たちが一斉に家を組み上げる。屋根の部分はクラースが爪の先でチョイチョイと加工して終わりだった。さすがは元陶芸家だけあって巨体なのに手先が器用だ。ハイメンダールの名前を思い出したからかもしれないが、屋根の上に凝った形の風見鶏が乗るようになった。
とりあえず新しい町については衣食住の心配だけはないようにした。問題は仕事だが、それをどうすべきかは今後の課題だ。五〇〇〇人以上が増えて、それでその分の仕事があるかと言えばもちろんない。仕事は作らなければないものだ。領民の仕事を作るのは領主の仕事だが、ないものはない。それは年が明けてからか。
「よし、どちらも魔力をいっぱいにした。これで問題ないはずだ。王都に行きたい者は行ったらいい。これから年明けの三日まではここに設置しておく。好きに使ってくれ」
「「「ありがとうございます」」」
◆ ◆ ◆
「それで結局こうなったか」
「そうでしょうね」
エルザが笑いながら俺の愚痴に答える。俺は苦笑いを返すしかない。結局俺は王都の屋敷とドラゴネットの城を行ったり来たりしながら年末のこの忙しい時期を過ごしている。今は王都の屋敷だ。
当たり前のことだが、使用人たちが自由に王都とドラゴネットを移動すれば、俺にすぐ連絡できる。そうなれば俺が行かなくても用事の方から俺のところにやって来るわけだ。双方の使用人の交流にでも使おうと思ったら、結局は仕事を迅速に進めるための道具になってしまった。年末くらいゆっくりしたらいいのにな。俺も偉そうなことは言えないが。
そういうわけで商会の方からもまとめて報告が届き、それに目を通している。
「まあできることから一つずつだ」
「年末もお仕事なんて大変ね。もう少し力を抜いたら?」
「余計な力は入っていないぞ」
カレンは気遣ってくれるが、以前から俺は暇があれば領民たちと何かをしていた。動くのは嫌いじゃない。何もしない方が落ち着かないくらいだ。
その領民たちも今年に入って急に増えた。ハイデからやって来た最初の領民たちは各場所で新しくやって来た領民たちを取り仕切ってくれたりしている。もう俺が指示をしなくても領地の経営が上手くいくようになった。それはゴール王国からやって来た貴族の娘たちの力が大きい。
役場にはブルーノやライナー、アルマの育ての父親のカールなど、読み書き計算ができる者がいたが、そこにまとまって読み書き計算ができる者が増えたのが大きい。仕事の速度が上がった。俺としては役場から届く書類に目を通し、問題があれば確認するくらいのものだ。そういえばアルマと一緒に育ったカーヤとラーラの双子も役場で働き始めた。読み書き計算ができるならまず役場という流れができた。
「でもそろそろゆっくりとしたらどうですか?」
「それもそうだな」
これで仕事納めにするか。領主にはいつまで仕事という決まりはない。そろそろ城に戻るか。
「もう少ししたら城に戻る。先に向こうに行っていてくれ」
「分かったわ」
「それでは先に行きますね」
◆ ◆ ◆
この屋敷は新しく立て直したものだから以前の面影はない。だが前の屋敷にあったものは全て運び込んでいる。机も新しいものを用意したが、前の机には布をかけ、机の隣で作業台として使われている。こんな古い机を使う必要はないと自分でも思うが、なかなか捨てられそうにないな。
さて、あまり待たせるもの申し訳ないな。仕事はここまでにして、続きは来年だ。どうしても今年中にしなければならない仕事はないはずだ。
帰ったら年越しの祝い事は始まっているはずだ。おそらくクラースが酔って騒ぐだろう。そして次の日にパウラに怒られるまでが一連の流れだな。新しい領民たちはクラースをあまり見ていない。竜の姿で何か作業をするのは見るだろうが、酔って火を吐くというのは初めて見るだろう。どういう顔をするか見物だな。
今年はマーロー男爵領との交流も始まった。そちらの方から遊びに来る者もいるかもしれないな。おそらくシビラは来るだろう。シビラのことも真面目に考えないといけないな。それにシビラが来るならリーヌスも来るかもしれない。そうしたらあの馬車に乗せてやるか。あの馬車を走らせる場所はエクセンにはないからな。ドラゴネットは道が広くて真っ直ぐだから、大型馬車でも楽々すれ違える。それに牧場もある。
どうも考えすぎると独り言が多くなるなあ。そろそろドラゴネットに戻って、妻たちや可愛い子供たちに癒されるか。
俺は今年最後の仕事を終えた机を片付けて軽く拭くと、それからドラゴネットに戻った。
「大丈夫よ」
試しに王都の屋敷の玄関に置いた転移ドアから覗いてみると、そこにはドラゴネットにいるはずのローサがいた。これで繋がったのか。本当に置くだけだな。
「殺到さえしなければそう簡単に閉じないはずよ。順番に一列に並んだら問題ないわ」
「それなら年末年始はこれを通って移動してもいいということにするか。向こうの使用人たちとも交流があってもいいだろう」
「人数が多い方が絶対に楽しいわよ」
祭りは賑やかな方がいい。領地の方も住民が増えた。一年少々で二〇倍近くというのはまずあり得ないな。ゴール王国からの移民があってこそだが。
彼らの家は住民総出で建てたらあっという間に完成した。しかも強力な助っ人が増えた。クラースにパウラ、カレン、ローサ、マリエッテ、マリーナ、マルリース、マルニクス。総勢八人の竜たちだ。人間がどれだけ頑張っても彼らほどは運べない。
クラースたちには山から巨大な石を切り出して運んでもらい。それを俺が土魔法で建材に使う形に加工して、フランツたちの指示の元で領民たちが一斉に家を組み上げる。屋根の部分はクラースが爪の先でチョイチョイと加工して終わりだった。さすがは元陶芸家だけあって巨体なのに手先が器用だ。ハイメンダールの名前を思い出したからかもしれないが、屋根の上に凝った形の風見鶏が乗るようになった。
とりあえず新しい町については衣食住の心配だけはないようにした。問題は仕事だが、それをどうすべきかは今後の課題だ。五〇〇〇人以上が増えて、それでその分の仕事があるかと言えばもちろんない。仕事は作らなければないものだ。領民の仕事を作るのは領主の仕事だが、ないものはない。それは年が明けてからか。
「よし、どちらも魔力をいっぱいにした。これで問題ないはずだ。王都に行きたい者は行ったらいい。これから年明けの三日まではここに設置しておく。好きに使ってくれ」
「「「ありがとうございます」」」
◆ ◆ ◆
「それで結局こうなったか」
「そうでしょうね」
エルザが笑いながら俺の愚痴に答える。俺は苦笑いを返すしかない。結局俺は王都の屋敷とドラゴネットの城を行ったり来たりしながら年末のこの忙しい時期を過ごしている。今は王都の屋敷だ。
当たり前のことだが、使用人たちが自由に王都とドラゴネットを移動すれば、俺にすぐ連絡できる。そうなれば俺が行かなくても用事の方から俺のところにやって来るわけだ。双方の使用人の交流にでも使おうと思ったら、結局は仕事を迅速に進めるための道具になってしまった。年末くらいゆっくりしたらいいのにな。俺も偉そうなことは言えないが。
そういうわけで商会の方からもまとめて報告が届き、それに目を通している。
「まあできることから一つずつだ」
「年末もお仕事なんて大変ね。もう少し力を抜いたら?」
「余計な力は入っていないぞ」
カレンは気遣ってくれるが、以前から俺は暇があれば領民たちと何かをしていた。動くのは嫌いじゃない。何もしない方が落ち着かないくらいだ。
その領民たちも今年に入って急に増えた。ハイデからやって来た最初の領民たちは各場所で新しくやって来た領民たちを取り仕切ってくれたりしている。もう俺が指示をしなくても領地の経営が上手くいくようになった。それはゴール王国からやって来た貴族の娘たちの力が大きい。
役場にはブルーノやライナー、アルマの育ての父親のカールなど、読み書き計算ができる者がいたが、そこにまとまって読み書き計算ができる者が増えたのが大きい。仕事の速度が上がった。俺としては役場から届く書類に目を通し、問題があれば確認するくらいのものだ。そういえばアルマと一緒に育ったカーヤとラーラの双子も役場で働き始めた。読み書き計算ができるならまず役場という流れができた。
「でもそろそろゆっくりとしたらどうですか?」
「それもそうだな」
これで仕事納めにするか。領主にはいつまで仕事という決まりはない。そろそろ城に戻るか。
「もう少ししたら城に戻る。先に向こうに行っていてくれ」
「分かったわ」
「それでは先に行きますね」
◆ ◆ ◆
この屋敷は新しく立て直したものだから以前の面影はない。だが前の屋敷にあったものは全て運び込んでいる。机も新しいものを用意したが、前の机には布をかけ、机の隣で作業台として使われている。こんな古い机を使う必要はないと自分でも思うが、なかなか捨てられそうにないな。
さて、あまり待たせるもの申し訳ないな。仕事はここまでにして、続きは来年だ。どうしても今年中にしなければならない仕事はないはずだ。
帰ったら年越しの祝い事は始まっているはずだ。おそらくクラースが酔って騒ぐだろう。そして次の日にパウラに怒られるまでが一連の流れだな。新しい領民たちはクラースをあまり見ていない。竜の姿で何か作業をするのは見るだろうが、酔って火を吐くというのは初めて見るだろう。どういう顔をするか見物だな。
今年はマーロー男爵領との交流も始まった。そちらの方から遊びに来る者もいるかもしれないな。おそらくシビラは来るだろう。シビラのことも真面目に考えないといけないな。それにシビラが来るならリーヌスも来るかもしれない。そうしたらあの馬車に乗せてやるか。あの馬車を走らせる場所はエクセンにはないからな。ドラゴネットは道が広くて真っ直ぐだから、大型馬車でも楽々すれ違える。それに牧場もある。
どうも考えすぎると独り言が多くなるなあ。そろそろドラゴネットに戻って、妻たちや可愛い子供たちに癒されるか。
俺は今年最後の仕事を終えた机を片付けて軽く拭くと、それからドラゴネットに戻った。
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