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第二章:領主二年目第一部
区画整理(五):提携と買収
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整理を始めた貧民街の管理の仕事をうちの商会で引き受けるとなったが、一つ問題があった。うちには影響はそれほどないが、うちが関係しているところに影響が出そうだということだ。
「今後は親父さんの店と仕事内容が被ることもあるかもしれないな」
「そうですね。それでしたら、いっそのこと提携するのはいかがでしょうか?」
「こちらも提携か……」
親父さんの店は貧民街の入り口近くにあり、うちの商会はその店から歩いて少しのところにある。今は教会の管理を親父さんの店に任せているが、うちが貧民街の掃除を含めた管理をするなら、そもそも教会の管理も自前でいいだろうということになる。
一方で、教会の管理を任せているように、貧民街の掃除なども親父さんの店に任せればいいのではないかとも思う。だがそれはそれで問題になる。
「それも一つの案だが……。色々と仕事を頼んだ俺が言うのもおかしいかもしれないが、親父さんのところに負担がかかりすぎていないか?」
「そうですね。人手の確保などでも無理を言いましたね」
「頼めば確実にやってくれるからついつい何でも頼んでしまう。向こうだって他にすべきことがあるかもしれないからなあ」
俺が渡した金を使って親父さんは人を雇って仕事をさせている。移住者探しや教会の掃除がそれに当たる。親父さんの店の店員がやっている訳ではない。そもそもそんなに大きな店じゃないから店員もそれほどいる訳じゃない。
だが、俺には親父さんの店がどのような状態かは分からない。まだ大丈夫なのか、それとも限界に近づきつつあるのか、それとも実際に限界に達しているのか。
「親父さんに直接聞いてみることにする。無理なら無理で、できるならできるで、向こう次第だな」
◆ ◆ ◆
「うちと仕事が被るなら、いっそゲルトさんの店に任せるのもありだと思ってな」
「なるほど、確かにそれもありと言えばありですな」
「言っていることが矛盾するようだが、そうするとこの店に負担がかかりすぎるんじゃないかと思う。正直なところはどうだ?」
親父さんの店で話をしている。この一帯の整理の仕事には親父さんも関わっているので、この仕事を受け持ってくれるとかなり助かる。だがこの店に負担がかかりすぎるのが気になっている。あくまで個人でやっている小さな店だからだ。
「それでしたらワシから一つ提案があるのですが」
「どんな提案だ?」
「ワシの店を買い取りませんか?」
「買い取る?」
この店を買い取るという考えはなかった。あくまで仕事を頼む場所だった。なるほどな。
「はい。この店がエルマー様の商会の一部門になれば、仕事がかち合うこともないでしょう」
「それはそうだが、いいのか?」
俺から買収を持ちかけた訳ではないが、後になって文句を言われても困るからな。
「今の王都は貴族様の屋敷の引っ越しなどでかなりの人と物と金が動いています」
「そうだな。そのせいでどこも人手が足りないようだな」
「はい。それにうちのように小規模な店では、人だろうが金だろうが物だろうが、何を動かすにしても限度があります。いっそエルマー様に買い取ってもらい、その商会の一部として潤沢な資金で活動できればかなりの事業ができると思いました。人も集めやすくなりますので」
親父さんは顔が広いから人を集めやすいが、それでもそのための人手や資金には限度がある。うちは麦を売って金を得れば、いくらでもと言えるほどではないが、それなりの収入が見込めるだろう。他には竜の鱗もある。
「潤沢かどうかは分からないが竜の鱗は使えそうだな」
「あれなら問題ないでしょうな」
「竜の鱗をあまりばら撒くのは気が引けるが、もう少し流通されてもいいとダニエルが言っていたからな」
竜の鱗はほとんど出回らないとダニエルは言っていた。ワイバーンなどの亜竜ならまだ手に入るが、クラースやパウラのような本物の竜——亜竜に対して真竜と呼ぶそうだ——の鱗は滅多に見ないと。一欠片でも手に入れば大喜びしたと言っていた。
「もし任せていただけるのならワシが売りましょう。無駄にばら撒くのではなく、魔道具職人のようにそれを必要としているところに届くように」
「それなら任せたい。まだまだ俺は王都には知り合いが少ない。鱗などの売却、その資金を使っての人集め、そして人脈造り、そのあたりを中心にやってもらいたい。もちろんこれまで引き受けていた仕事があるなら、それは続けてもらってかまわない」
「分かりました。最善を尽くします。それでしたら今後はゲルトと呼んでください」
これまで人が必要になったらその都度頼んで集めてもらっていたが、今度からはそれが楽になるだろう。
◆ ◆ ◆
商会に移動してアントンに経緯を説明する。商会の会長はあくまでアントンで、その下で仕事のために人を集めるのを親父さんにやってもらうことになる。
「分かりました。ではゲルト殿の店は人材集めの拠点にするということですね」
「そうなるな。この商会の一部として、主に人集めを中心に活動してもらう。商会が人を集める必要があるなら彼に頼めばいい」
「分かりました。ではさっそく明日にでも話に行くことにします」
「今後は親父さんの店と仕事内容が被ることもあるかもしれないな」
「そうですね。それでしたら、いっそのこと提携するのはいかがでしょうか?」
「こちらも提携か……」
親父さんの店は貧民街の入り口近くにあり、うちの商会はその店から歩いて少しのところにある。今は教会の管理を親父さんの店に任せているが、うちが貧民街の掃除を含めた管理をするなら、そもそも教会の管理も自前でいいだろうということになる。
一方で、教会の管理を任せているように、貧民街の掃除なども親父さんの店に任せればいいのではないかとも思う。だがそれはそれで問題になる。
「それも一つの案だが……。色々と仕事を頼んだ俺が言うのもおかしいかもしれないが、親父さんのところに負担がかかりすぎていないか?」
「そうですね。人手の確保などでも無理を言いましたね」
「頼めば確実にやってくれるからついつい何でも頼んでしまう。向こうだって他にすべきことがあるかもしれないからなあ」
俺が渡した金を使って親父さんは人を雇って仕事をさせている。移住者探しや教会の掃除がそれに当たる。親父さんの店の店員がやっている訳ではない。そもそもそんなに大きな店じゃないから店員もそれほどいる訳じゃない。
だが、俺には親父さんの店がどのような状態かは分からない。まだ大丈夫なのか、それとも限界に近づきつつあるのか、それとも実際に限界に達しているのか。
「親父さんに直接聞いてみることにする。無理なら無理で、できるならできるで、向こう次第だな」
◆ ◆ ◆
「うちと仕事が被るなら、いっそゲルトさんの店に任せるのもありだと思ってな」
「なるほど、確かにそれもありと言えばありですな」
「言っていることが矛盾するようだが、そうするとこの店に負担がかかりすぎるんじゃないかと思う。正直なところはどうだ?」
親父さんの店で話をしている。この一帯の整理の仕事には親父さんも関わっているので、この仕事を受け持ってくれるとかなり助かる。だがこの店に負担がかかりすぎるのが気になっている。あくまで個人でやっている小さな店だからだ。
「それでしたらワシから一つ提案があるのですが」
「どんな提案だ?」
「ワシの店を買い取りませんか?」
「買い取る?」
この店を買い取るという考えはなかった。あくまで仕事を頼む場所だった。なるほどな。
「はい。この店がエルマー様の商会の一部門になれば、仕事がかち合うこともないでしょう」
「それはそうだが、いいのか?」
俺から買収を持ちかけた訳ではないが、後になって文句を言われても困るからな。
「今の王都は貴族様の屋敷の引っ越しなどでかなりの人と物と金が動いています」
「そうだな。そのせいでどこも人手が足りないようだな」
「はい。それにうちのように小規模な店では、人だろうが金だろうが物だろうが、何を動かすにしても限度があります。いっそエルマー様に買い取ってもらい、その商会の一部として潤沢な資金で活動できればかなりの事業ができると思いました。人も集めやすくなりますので」
親父さんは顔が広いから人を集めやすいが、それでもそのための人手や資金には限度がある。うちは麦を売って金を得れば、いくらでもと言えるほどではないが、それなりの収入が見込めるだろう。他には竜の鱗もある。
「潤沢かどうかは分からないが竜の鱗は使えそうだな」
「あれなら問題ないでしょうな」
「竜の鱗をあまりばら撒くのは気が引けるが、もう少し流通されてもいいとダニエルが言っていたからな」
竜の鱗はほとんど出回らないとダニエルは言っていた。ワイバーンなどの亜竜ならまだ手に入るが、クラースやパウラのような本物の竜——亜竜に対して真竜と呼ぶそうだ——の鱗は滅多に見ないと。一欠片でも手に入れば大喜びしたと言っていた。
「もし任せていただけるのならワシが売りましょう。無駄にばら撒くのではなく、魔道具職人のようにそれを必要としているところに届くように」
「それなら任せたい。まだまだ俺は王都には知り合いが少ない。鱗などの売却、その資金を使っての人集め、そして人脈造り、そのあたりを中心にやってもらいたい。もちろんこれまで引き受けていた仕事があるなら、それは続けてもらってかまわない」
「分かりました。最善を尽くします。それでしたら今後はゲルトと呼んでください」
これまで人が必要になったらその都度頼んで集めてもらっていたが、今度からはそれが楽になるだろう。
◆ ◆ ◆
商会に移動してアントンに経緯を説明する。商会の会長はあくまでアントンで、その下で仕事のために人を集めるのを親父さんにやってもらうことになる。
「分かりました。ではゲルト殿の店は人材集めの拠点にするということですね」
「そうなるな。この商会の一部として、主に人集めを中心に活動してもらう。商会が人を集める必要があるなら彼に頼めばいい」
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