ズィミウルギア

風月泉乃

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第一章:友と仲間と見守り隊員

【オンライン】22話

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 ケリアさんにとりあえずの連絡をしてゲーム内時間で一日。

 オレのホームを面白そうに見つめるケリアさんの姿があった。
『どうしたのよ、あれ(笑)』
 というチャットが届いた。
『よく分からん。多分だが、スノーが何かをやったのは間違いない』
『えっ! オレのせい⁉』
 驚くオレを呆れた顔で見る二人。
 その他一名のボウガさんは、ジト目でオレを見ながら、
「嬢ちゃんかよ、アレの原因は。まったく見たこともないモンスターを引き込みやがって」
 と、悪態をついてくる。

『し、知らないよっ!』
「ほかにないだろう」
「ボクが寝ている間に何したのさ、ズルくない」
 シュネーが妙に引っ付いてきて地味な嫌がらせをしてくる。

『シュネー、それは後で教えるから、日記に書いておくから今はスルーして』

 「ブーブー」と口でわざわざ言いながらも、納得してくれたのか離れてくれる。

『とりあえず、そっちに行けるのかしら?』
『え~っと、ちょっと待ってください』
『はいは~い、待ってるわぁ~』

 さて、どうやって安全な道を調べるかだけど。
 数秒くらい考えて簡単に思いついたのは…… チラッとシュネーの方を見る。

「なに、まさか…… ボクに調べてこいとか言わないよね」
 あ、頬がピクピクってひくついてる。ちょっと可愛い。

『適材適所、さっ、ファイト』
「人が出ていくよりも、見つかりにくい妖精の方が良いだろう。頼んだぞ」
「俺もそろそろ帰りてぇのよ、たんだぜ」

 シュネーがオレ達から若干の距離を置く。

「や、やめて、待ってっ! お、小さい女の子に優しくすべきだと思うのっ!」
 オレ達三人に追いやられるようにして、シュネーは窓から泣く泣く締め出されていく。
 そして外からは、シュネーの悲鳴が少しばかり聞こえてきた。


「や、やぁっ! なんで此処にも蜂さんいるさっ!」

 なんて悲鳴や、
「あっ! こんなところに巣があった。ってここは屋根の上だよっ! ひっ、来ないで~」
 という悲鳴がこだまする。

 まぁ、反響するのはホームの中だけだけど。
 とりあえず、三人でシュネーに手を合わせる。


 シュネーのおかげでモンスターの気配が分かるようになった。

『とりあえず、ホームの裏側からなら入れます』
『ありがとぉ~ダッシュで行くわねん。それとシュネーちゃん、頑張ったご褒美に後で飲み物でも奢ってあげるから元気出して』

 家の隅っこで小さく泣きながら丸まって拗ねているシュネーが、少しだけ反応する。

「うん、ありがとう。ケリアんだけだよボクの味方は」
『ま、まぁまぁ。シュネーのおかげで分かった事もあるんだから』
「分かったこと?」

 まだぐずりながらも、オレの方へとふらふら飛んでくる。
 興味深そうにティフォとボウガさんが何も言わずにオレの方を見てくる。

『レーダーに映ったこの蜂さん達ね、オレが調べると中立って書いてあるんだよね』
「中立? それってホームのモンスターってこと?」
「俺の方には何も書かれてないな。分かるのはモンスターとレベルくらいだ」
「おめぇさんらの話の半分も分からん。つうか空中を見てるようだがなんかあるんか?」

 なるほど、ゲーム内のキャラにはウィンドウ画面は見えないのかな。

 ――あれ? じゃあなんでオレの書いた文字は見えるんだろうか?

『あの、この文字は見えるんですか?』
「ん? あぁ、魔法文字だろう。宙に文字が出て見える。この辺じゃあ使い手は見かけなかったがな。まぁ、使い道がねぇし、この辺りには術師も学者も居ねぇからな」

 初めて会ったときは気にしなかったけど、
 考えてみればノンプレイキャラクターの人から見たらまた別に見えるんだね。

「ある程度の奴は読めるだろうが、一定以下の学がねぇ奴らは多分だが、お前とは喋れない可能性があるから気ぃ付けるこったな」

『はい、ありがとうございます』
「おう、良いってことよ」
 そういってまたオレの頭をポンポン撫でまわす。

「んん~~、もうっ! 女の子の頭を気軽に撫でまわさないっ! 分かったオジサンっ!」
 突然に怒り出してペシッと良い音を鳴らせて、
 ボウガさんの手をどかすとオレとの間にシュネーが割って入ってきた。

「お、おう、すまねぇ」
「まったく、女の子への配慮がなってないです」

 そんなやり取りをしている間に、ティフォがケリアさんを家に迎え入れていた。

「そうねぇ、女の子の髪は優しく触らなきゃダメね」
「そういうもんなのか?」
「ティフォナスちゃん、貴方も同じよ、気をつけなさい」
「いやいや、俺はおとっ――もがっ⁉」

 片手で強引にティフォの口を塞いで、もう一方の手ですかさず何かアイテムを取り出す。

「はい、これはシュネーちゃんにあげる」
 ケリアさんが取り出したのは櫛だった。

「ありがとうケリアん」
「いいえ~、さぁ、貴方もかわゆくしてあげるから覚悟なさい。まだまだ、自覚がないようだから姿見でも見ながら、貴方の可愛さをトクトクとかたってあ・げ・る♡」
「もがっ⁉ んもぉ~~‼」
「ちょっとスノー、動かない」
『い、良いよオレは』
「ダ~メ、というかスノーが一番ダメ」


「お、おめぇさんら、現状がヤバいってわかってか?」


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