28 / 56
第一章:友と仲間と見守り隊員
閑話
しおりを挟むヘッドギアを外すと、まず目に飛び込んできたのは小鳥ちゃんの笑顔だった。
「どう、楽しっかった?」
まだちょっと霞がかった視界と、少し顔が熱く夢見心地な感じだ。
二、三分くらいそんな感じでぼうっとしていた気がするが、徐々に意識と手足の感覚が戻ってくる感じがする。
==翡翠がぼっとしている間の出来事。
「どう、楽しかった?」
「……顔が近い、むやみやたらに近づかないでよ」
「ん? もしかして琥珀ちゃん?」
一瞬にして張り付いた笑顔になった。
笑顔は崩さず表情は変わらないのに声色とか雰囲気が違う、最初の一言の時みたいな柔らかさは無い。
「そう、初めまして、かな? ボク的には興味ないからよく覚えてないんだよね」
「そうだよ~、初めまして。私は秋堂小鳥。翡翠ちゃんと親友関係にある樹一兄さんの妹なの、よろしくね」
「あっそう、よろしく。別にどうでも――」
「それと、今度は私もそのゲームをやってみようと思うんだ、その時はよろしくね」
「……そう、やるんだ」
「うん、やるよ~。その時は仲良くしてね」
「その時は、仲良くするよ~」
ニコニコとお互いに笑顔のままお話しは続く。
「あ、そうそう、琥珀ちゃんに聞いてみたかったんだけど、昔の翡翠ちゃんって知ってる?」
「よくは、知らない、けど?」
「そっか、アルバム見れば分かるだろうけど、よく私とかお兄ちゃんと写っているのが多いかな、こんな感じでさ、琥珀ちゃんにも幾つかあげるね。多めにあるから」
小さな男女が仲良く腕を組んで写っている写真を渡してくる。一人はもちろん翡翠、もう一人は小鳥、お花見をしているのか、満開の桜の下で撮られた写真のようだった。
琥珀がその写真をジッと眺める。
少し体を解すように伸びをしてから部屋の一画へと向かって、写真をノートにしまう。
「ちょっと前まで翡翠ちゃんの話しで盛り上がっててね、今度は琥珀ちゃんも参加する?」
「考えておく」
琥珀はそっとベッドに戻って、チラッと小鳥を見る。
「不本意、本当に不本意だけど。後はよろしく」
「うん♪、任せてよ。今は、お互いに争っている時じゃあないしね」
「よく言うね」
「え~、だって勝負を始めるにしても有利に立ってないとね、琥珀ちゃんなんて一番に油断ならない感じじゃない? いつの間にか不利になっていました、なんて笑えないし」
「……ま、よーいドンでスタートなんてことは無いしね」
「そゆこと~、はいはい、琥珀ちゃん~、意地になってないで翡翠ちゃんに変わってね~」
翡翠が寝ている間に色々な所で話し合い、皆で決めた唯一のこと。
彼……彼女の本当のリハビリは始まったばかり。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
江戸時代改装計画
華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる