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第一章:友と仲間と見守り隊員
閑話 【???】
しおりを挟む【???】
「おいっ! なにがどうなっている」
「東のフィールドはまだ誰も手を付けていないはずだろう」
「東は特殊系のイベントだからな、クリアーするのが難しいはずだぞ?」
「そんな事をいまは聞いてないっ!」
「しょうがねぇよ、誰かがクリアーしたんだろ?」
「あそこは俺達が最初に攻略するって約束だったろうがっ! どうすんだよ」
「そういわれてもね~、しかたないじゃない。クリアーされちゃったんだし」
「あ~、あれだ。多分だけど新しいファーマーの子が居たって話題になってる子じゃね?」
「なんだ、その話は?」
「それって今日の話しでしょ。一日たってないじゃん……すっごい」
「そんな初心者に出し抜かれたのか、俺達は!?」
「もうリーダーってばバンバン机を叩かないでっ! うるさいなぁ~」
「コレが落ち着いていられるかバカやろうっ」
「もう~、誰でも良いからリーダー止めてよ~」
「無理無理、吹っ飛ばされて終わるもん」
「俺もパスで」
「アタシも嫌よ」
「こっちに話を降らないでくださいね」
「だ~、このメンバー纏まりないよ。皆無だよ!」
「はぁはぁ、クソが……とりあえず、アレだ。情報を集めるぞ」
全員が「了解」と声を揃えて言うと、その場から直ぐに姿を消した。
「グランスコートはAIがイベントやクエストを個で決める面倒なフィールドだぞ、素人如きがクリアーできる訳がねぇだろ。ったく、何もんだ」
★☆★☆
「で? 何をした」
シュネーとオレは視線を遥か右へと向けて、まずは相手を見ないようにする。
ちなみに、何故かティフォに正座をさせられている。
……理不尽です。
「ボク等は、特に、何もしていません」
『というか、オレらって決めつけるのは、良くないと思います』
ちょうどオレの視界に映るシュネーの頭を、いきなり鷲掴みにした。
「こっちを見て、喋れよ」
笑顔と明るい声色で言うのは、怖いと思います。
「まぁ、ふざけるのはこの辺にして……実際、何にもしてないよ」
『そうそう、勝手に何か流れ出しただけだし』
シュネーと顔を見合わせ「ねー」と言って、ティフォを見る。
ちょっとイラっとしたようで、こめかみと目尻辺りがピクピク動いている。
「じゃあ、アレは何だ、あれはっ」
ティフォがある一画を、何度も強く指差しして言う。
そこへ視線を移すと、ケリアさんが唖然とした表情でウサギ達を見ている。
「アレってケリアさん? 特に変わった様子はないかと」
シュネーの頭で鷲掴みにされているティフォの手に力が籠る。
物凄く不機嫌な声と共に、
「いだ、いたたたっ! 割れちゃうから、壊れちゃうからっ」
シュネーは両腕を広げて鳥のようにバタつかせている。
――アレは痛いのだ。……変な事は言わないでおこう。
飛び火は困るので、ここは何とかシュネーだけを生贄に捧げなければ。
拷問をし終えたのか、シュネーはほぼ力なく、その場に頭を押さえて蹲る。
「おい、何やった?」
傍観を決め込んでいたオレが、次の標的のようです。
『えっと、そのね、本当にオレ達にもよく分からないんだよ?』
オレがそう言うと、ティフォの目から光が消えたような目で睨んでくる。
『ただ、ウサギさん達と勝負事を決めて、こう、なんて言うの……運動会みたいな感じ? 勝負してただけだし』
慌ててオレは身振り手振りで、ちょっと前にやっていた事を説明する。
「ほう、それで? なぜ、ウサギ達があんなに一生懸命に畑仕事をしている」
ケリアさんが唖然と見ていたのは、今まで邪魔していたウサギ達が自ら畑仕事に精をなしている姿だった。
どこから持ってきたのか分からないウサギの背丈に合わせたクワ、それを元気いっぱいに振るっている姿もまた可愛らしいです。
『ね、別にオレ達はただ、競っていただけだよ』
どこも可笑しくないでしょう、という感じで胸を張って答えると。ティフォは頭を押さえて蹲っているシュネーの方へと顔を向ける。
「本当か、シュネー」
シュネーはびくっと反応し、ゆっくり身体揺らしながら涙目の顔を上げる。
「えっと~、間違いはないよ」
「そうか……じゃあなにが原因――」
これでま~るく収まる。
「……ただ~、何か画策してたっぽい顔だった気がする」
この、余計な一言がなければ。
「ほう、やっぱり何かを狙ってたのか?」
『ちがっ、ただウサギ達に「知能が高い癖に畑もだが耕せない」とか「オレよりも土を柔らかくしたり、穴を掘ったりっていう扱いが下手だ」っていう事を、言っただけだよ』
正確には、その差を見せつけただけだけど。
ニンジンに関しては、誰かが作ったモノだけど、
ウサギ達の自給自足で作る野菜より遥かに凄いモノだと分かった。
なら次にやるのは、ウサギ達よりも優れている所で勝負をしようと思っただけだ。
その際に、ちょっと……ほんのちょっと、おちょくってやっただけ。
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