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第一章:友と仲間と見守り隊員
【オンライン】5話
しおりを挟むしばらくオレとティフォは落ち込み、人数分のココアが机に置かれる頃には何とか落ち着きを取り戻せていた。
ココアをゆっくり飲み干しながら、エフケリアさんがオレ達を注視する。
「ねぇえ【双子】や【乙女】、彼女達と話してみて、貴方達はどう思ったかしら」
エフケリアさんの聞き方は、何処となく真剣な雰囲気があった。
いや、実際に真剣にオレ達の心根を聞きたいんだと、そう思う。
「どう、とは?」
「彼女達は運営が動かしているプレイヤーキャラーじゃないわ。AIつまり、このゲームの人工知能によるNPCと呼ばれるノンプレイヤーキャラクターよ」
樹一は少し驚いた顔をしていたけれど、オレには良く分からない。
そういえば、あの二人はデータを元に作られたって言ってったっけ。
『普通にこの世界に生きてる子達……ですよね?』
「そうだな、アレはもうこの世界で生きてるって感じだな」
「性格は悪かったけど、まぁ~、面白い子達だったしね。今度会ったら泣かすけど」
オレ達のやり取りを見て少し目を見開き、柔らかい笑顔を向けてくる。
「人を見る目には自信があるけど。これは、この出会いをくれた神様に感謝、かしらね」
エフケリアさんが呟く様に言った言葉の意味が分からず、小首を傾げる。
「この世界はゲームの世界。ここに暮らす人々はただのゲームのキャラで生きていない……そういう人達も居るのよ。でも、この世界の住人達は自ら考え、悩み、答えを探し、傷つく事もあれば、感動したり嬉しくて泣ける、そんな心のある人達だと私も思う」
悲しいことよねっと、最後に小さな声で言ってこの世界の空を見上げる。
「おっと、暗いのはダメね。本題はそこじゃなくって~、貴方達ぃ、私とフレンドにならない? っていうかなりましょうよ~。私ってば友達が少なくってねぇ」
先ほどとは打って変わって、体をしならせながらティフォにすり寄っていく。
低く男らしい声なのに、どこか子猫や赤子にする甘える様な声でだ。
「大丈夫、お礼に私の知っている範囲だけど、この世界の事を色々と教えてあげるから」
「え、いや、その」
「説明書に載っていない事も、お・し・え・て・あげるわぁ~」
ティフォはその場から飛び退いて、オレを盾にするよな位置に立つ。
「ど、どうするよ」
助けを求める顔でこっちを必死に見られても、特にしてやれる事はオレ達には無い。
「ん~、ボクは別に良いと思うけど? エフケリアさん面白いし」
『オレも特に…… 良い人そうだよ?』
ココアの入ったコップを持ち上げて、味わって飲む。
ほろ苦くもスッキリとした甘さが口の中に広がる、かなり美味しいココアに舌鼓。
「お前らがそう言うなら、まぁ、良いか」
「あ~ら、それじゃあさっそく交換ね★」
ウインクをすると、星のエフェクトがキランッ! という無駄に良い音を立てて飛ぶ。
ピコンと申請の表示が届くと、それを承諾する。
「ねぇ、エフケリアさん――」
「んもぅ! ケリアとかエフりんとかでいいんだってばぁ~、もう、私たちはお・と・もだち、でしょう。それでなにシュネーちゃん」
ハートを振りまき、星とハートの雨をオレ達に振らせてくる。
「あ~、えっと、その星やらハートのエフェクトが出るのってなんでなのかなって」
「あぁ、コレはこの服の効果よ。いわゆるネタ装備ってヤツね」
エフケリアさんが椅子から立ち上がって、無駄にスカートを摘まみ上げ、ヒラヒラト見せびらかすようにして全身を見せる。
片足で綺麗に回るとクルンッとまた妙な効果音が鳴る。
「私のメインはクラフターよ。いつか自分の装具やを持つのが今の所の目標かしらね。戦闘の職は一様は舞踏家って事になるのかしらねぇ。あまり戦いとか好きじゃないけど」
――や、それだけの肉体美をしていたら納得かと思われます。
服もぱっつんぱっつんで、上半身に思いっきり力を籠めたらはじけ飛ぶんじゃないでしょうか? あまり見たくはないけど、簡単に想像できてしまいます。
「あぁ、そうそう。このゲームじゃあ基本的にレベルアップではステータスの上昇はしないから、気を付けなさい。レベルが上がって増えるのは主にHP・MP・TPだから」
ボンッと説明書を取り出してみる。
HPとは体力地の事で、腕輪の緑色に光る棒ゲージのこと。
このゲージが無くなると瀕死になり、時間経過で死亡扱いになる。
死亡した場合は、オレ達が初めになっていた中央広場に出るか、マイホームの場所、または記憶の剣やクリスタルというセーブ登録の場所に復帰する。
死亡した場合、半日は能力値が全て半減する。(半日はゲーム時間内の事を差す)
MPとは精神力の事で、腕輪中央の蒼ゲージで魔法や精神力を中心とした技を使う場合など、使用時に減少する。精神力が無くなると、倦怠感の症状が出るでしょう。
TPとは気力の事で、黄色のゲージ、主に身体を駆使した技や体力の代わりに使われる。
というモノらしい。
オレにはさっぱり分からん。
「じゃあパラメーターはどうやって上げれば?」
「んふふ、それはこの世界で何をなしているかで変わるは、毎日重いモノを持っていれば筋力系統が上がるし、走り込みや反復連取をすれば素早さや体力が上がるのよ」
「なるほど……」
と、ティフォは呟き何かを考え始めてしまう。
「ねぇ、ケイアさん」
「んもぅ、まだ他人行儀……まぁ、少しずつでいいかしら。それで今度はなに?」
「ボク達にはメリットがあるけどさ、フレンドになるだけで良いの?」
「シュネーちゃんは、私が損をしていると思うのね」
「え、うん……違うの?」
まぁ、オレもシュネーと同じ様に考えていた。
ただ、友達になるだけにしては、結構に破格な条件だと思う。
「ふふ、大丈夫よ。お友達になる事は正直に言っちゃうとね、私の方がはるかにメリットが大きいのよ」
いつの間にかティフォもオレ達の話しに耳を傾けていた。
「この中で一番の価値と言ったらスノーちゃんになるんだけど。とりあえず貴方は自分の価値を自覚して知ってもらわなきゃだわね、本当に気を付けななさいよ」
――え? オレですか!?
目をパチパチさせてエフケイアさんを見る。
「このゲームって色々と面白い要素がありすぎてね、技や魔法を自分で創造できたり、理想の形だったり能力を有した武具を生み出せたりするのよ。ある地方じゃあ魔法工学なんてモノもでき始めたらしいから、そのうちロボットとかも出来るかもね」
その話しとオレとに一体どんな関係があるというのだろう。
「まだまだこの世界ったら広くって、未だに未開のダンジョンやら塔やらお宝が各地方にあって、敵だって色々と居るのね、というかまだ分からない事だらけなんだけど」
「それは燃えますね」
「楽しそうな場所がいっぱいって事だよねっ!?」
あぁ、ティフォもシュネーも目をランランと輝かせている。
オレはこう~、まったりと皆で和気藹々とのんびり楽しむ方が好きなのだがね。
確かに、冒険と聞くと心が少しだけ疼く。
でもやっぱり、のんびりのほほんと過ごしたいな~。
「まぁ、そのせいで殆どの人が今や冒険家という職でごった返してしるのが現状なんだけど、最近になって、ある可能性っていうか噂が浮上してきたのよ。ある地方の町が大きくなったら、世界が広がり新しい土地や資源、新たなモンスターに武器の類から職業までふえたって。
スノーちゃんの今の職業って一般人って書かれているけどね、多分だけどマイホームチケットっていうのを貰ってると思の、それってね一般人の間なら何度も使えて、拠点を転々と変える事が出来るって代物なのよ。
そして、一般人と職業に掛かれるけど私達クラフターや冒険者はこう呼ぶのよ。
【ファーマー】っていう愛称で、開拓者という意味を込めてね」
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