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第一章:友と仲間と見守り隊員
【オンライン】3話
しおりを挟む眩しい程の光に包まれ、体が少し浮く感じの後に足が地面に着くのが分かった。
ゆっくり目を開けると、さっきまで居た場所とは違う。
八角形の高い塔のような噴水が中央広場にある。
四方向の場所から滝の様に水を流している。
行きかう人は多く、出店みたいなモノもチラホラ見て取れる。
「凄いね~、異世界って感じがするよ」
往来の人達を見れば、甲冑やら身長と変わらない弓や大剣を持っていたり、色々な物語で出てきた魔法使いという、ローブを着た人が普通に居る。
キュッとほっぺを抓ると、それなりの痛みもちゃんとあった。
ピコン、ピコン――という音と共に腕輪が光る。
メールと表記された透明なモニターが表れ、説明書と書かれたプレゼントマークが光る。メールを開き。プレゼントマークを触る。
ボフンっ! と煙をあげて目の前に巨大な本が開いた状態で飛び出してきた。
「わわぁ!? ちょっとおどろかさないでよ!!」
ちょうど周りを飛び回っていた琥珀の真上に出てしまい、驚いた様子で本の後ろから除く形でオレを睨んでくる。
本を閉じると、また煙を出して消えてしまう。
オレがあたふたしながら何処に消えたのか探していると、モニターの《大事なモノ》と書かれた欄が点滅している事に気が付いた。
そこには、説明書と書かれた本のマークが浮かび上がっている。
タッチパネルを押す様に触ると、また煙を出して目の前に現れた。
しばらく説明書の本を出したり消したりして遊んでいると、琥珀にオデコを蹴られる。
「ちょっと~、一人で楽しんでんじゃないよ。ボクの話し聞こえてないでしょう」
蹴られたおでこを摩りながら、小さく舌を出してゴメンと顔の前に手を出して謝る。
「もう、ぼ~っとしてないでよ。さっきから変な女に話しかけられてんだから」
琥珀が指さす先には、確かに女の人が……ん? 誰かに似てるきが……。
「誰が変か、ダレが……」
黒く長いストレートヘアにモデルの様なスラっとした体形、服の隙間から見える白過ぎずも透明感のある健康そうな肌、柔軟な引き締まった体付き。
そして顔は何処となく、すっごくテンションの低い声で、しかも潤んだ瞳で言う姿はちょっと可愛い。
『えっと、人違いでしたらすいません。…………樹一?』
そう、ヤツに似ている。
「へ? うっそぉ!?」
オレが名前を言い当てたのが嬉しかったのか、涙目から大粒の雫が流れた。
「うぐぅ、お前なら分かってくれると信じていた」
「マジで、言ってる。つか、マジ泣きしてっけど」
未だに信じられないのか、オレの顔を何度も見ながら樹一の方を二度見する。
『うん、多分。本物だよ』
樹一がまだ普通の恰好をしていれば、琥珀だって気付いただろう。
…………多分? いや、きっと気付いた……と、思う。
一番の問題は服装だ。
段々になっているティアードスカート風のワンピースに、白をベースにしたローブ。
スカートはちょっと短めでブーツを履いたスラっと長い生脚だ。
完全に女物の服装だよ。
どうしたのさ、コレは。
ちなみにオレの服装は、タートルネックのセーターにエスニック風なケープにタイトスカート。
畑仕事に便利そうな膝丈まであるブーツだ。
後は、大きめのリボンで長い髪をポニーテールにしている。
髪を短くすればよかったかもしれないが……母さんの脅しがまだオレを縛ってやがる。
「とりあえず、フレンド登録をしてくれ」
樹一は涙を腕で擦りながら言う。
『あ、あぁ。……どうやるんだ?』
「多分、メニュー欄にフレンドと書かれた枠がある。そこに俺からのフレンド申請の通知が行っているだろうから、それを承諾してくれれば良い。ぐすっ」
「いったい何があったのさ? 樹一の事だからカッコ良い感じのキャラデザだと思った」
オレも琥珀の意見に同意だ。
琥珀の言葉に頷きながら、申請を承諾する。
「うぐぅ、ぐすっ…… ゲーム内では本名はあまり良くない、プレイヤーネームでちゃんと呼ばないと、マナーが悪いと言われるから、気を付ける様に」
泣きながらダメ出し注意をするなよ。
樹一らしいっちゃあらしいけど。
オレと琥珀は一瞬だけ顔を合わせて、樹一の方を向きながらため息を一つ。
「わかった、んで、ティフォナちゃんは何でその姿に恰好なわけ?」
「おいシュネー、「ス」まで言えよっ!? それじゃ女っぽい名前になっちゃうだろうが!」
「はぁ、「ナ」まで言ってんだからいいじゃん。むしろティフォちゃんで良いよ、長いから」
樹一のキャラネームは――ティフォナス。
たしか、ギリシャ語? で台風って意味だったような気がする。
樹一が色んなゲームで主人公に好んで付けていた名前だ。
昔に説明された事で、興味が無いからよく覚えてはいないけど。
「おいスノー、コイツに何とか言ってくれ。コイツの管理と躾はお前だろう」
「なに言ってんのっ!? ボクの方がお――じゃない、姉になるんだから。そういう意味の言葉はボクにじゃあなくて、スノーに言うの」
なに、いまちょっと聞き捨てならない発言が飛び出して来たんですけど。
はは、琥珀が兄――じゃなくて、お姉ちゃんだと? ははは、ないない。
『どっからどう見ても、オレの方が姉でシュネーが妹?』
「ふふん♪ なんと言おうとスノーが寝てる間に家族会議で決まったんだも~ん」
『な、なにそれっ!? オレは知らないぞ』
「そりゃ、寝てたからね。まぁ、姉の地位を手に入れる為の犠牲は払ったけど」
『母さん達を買収したのかよ』
琥珀のヤツはぴゅ~っと明後日の方向を向いて口笛を吹き、誤魔化そうとする。
『ちょっと~、ティフォからも何か言ってやってっ!?』
「いやな、それは俺が言ったセリフでお前に言った事で、というかだな、なにをさり気なく名前を略称して呼んでんだよっ。違うだろう、それをやめさせい言うに、何故にお前までいうかね、俺の話し聞いてたか? ちゃんと俺の話しをきけやオメェらっ!!」
――くそっ、琥珀のヤツがどうやって母さん達を買収したんだ。
モノで釣る事は不可能な筈だ、琥珀には金銭的なモノは無い。
だとしたら何だ、…………オレの体を使った何か? か。
だが、それは交換条件として成り立つのか? オレの体が目当てって事は考え辛いな。
ん~、じゃあなんだろう。
「おい、なに考え込んでんだよ。いつもの癖が出てんだよ。おめぇ俺の話しを全く聞いてやがらねぇだろう。全然別の事を考えてやがんな。しまいには大泣きすんぞ、コラァ」
怒るんじゃないのかよ、という突っ込みをしたいが、オレは頭を、琥珀は体を握られ。
絶妙な力加減で痛みだけをオレ達に与えてくる。
すみません、もう怒っておいででしたね。
「『ご、ごめんなさい~』」
うぅ、頭が割れるかと思った。
「わかれば宜しい」
「まったく、ティフォはすぐ怒る」
オレもコクコクと頷く。まったくだと同意する。
「おう、おめぇらな――」
「うふふ、かわゆい子達ねぇ~。でもちょっと良いかしらん♪」
ティフォが何かを言うのを遮り、野太い声の主が声を掛けてきた。
背筋が凍りそうな冷たさを感じながら、三人でゆっくり首を回し声の主を見る。
筋骨隆々の男性なのに、恰好はゴスロリメイドチックな服装をしている。
「ちょっと一緒にお茶でもしましょうよ」
「いや、俺等はあの……」
オレと琥珀はサッと樹一を盾にするように、後ろへと隠れる。
ティフォが一瞬こっちを見て「なに盾にしてんだコラ」と怒り、青筋が見えた気がしたが、まぁ、気のせいだろう。
オレは何も見ていない。
「良いから、一緒に来なさい❤」
「あ、はい」
圧に負けて、ティフォは言う事を聞いてしまう。
その瞬間、オレの手を強く握られてオレを逃がさないと言わんばかりの視線を送る。
「え、ちょっ!? スノーってばイジワル」
ほぼ反射的に琥珀……シュネーを捕まえて、胸元へ寄せる。
一人だけ逃げようなんて、そうはさせてなるものか。
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