ズィミウルギア

風月泉乃

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イベント騒ぎは大騒ぎ

【オフ】28話

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 ゲーム内よりも筋肉ムキムキではないけれど、ガッシリした体付きだった。
 柔道かテコンドーでもやっている感じがする。
 身長も高く、長い髪は手入れがいき届いているのだろうか、すっごくサラサラで綺麗な黒髪、薄化粧で綺麗なイケメンといった感じなのだが、しっかりとお姉さん感が滲みでている。

「アナタは元が良いのに着飾ったりしないのね。勿体無い」

 えぇ、よく言われます。あそこで服を選んでいる方々と、メイド長らしき隣になっている人にね、すっごく残念そうに毎日お……、ボクを見てくるんだよ。

『あはは。動きやすい服装が好きなモノで』
「なるほどね~、やっぱりスカートとかは苦手って事よね」
『はい、そうですね』

 ゲーム内でのオレを思い出しながら、当たり障りのない感じで話しを途切れさせず、かと言って疲れる程でもない、絶妙な感じで相手をしてくれる。

 ふと、名前を書こうしたときにゲームのキャラ名で書いてしまう。
 慌てて消してしると、仁さんが肩を軽く指先で突いて来た。

「ふふ、呼び方ならケリーで良いわ。ほら見て、このネームプレートにもね、あだ名の欄にケリーって書いてあるでしょう。この店の常連客も店員もみ~んなケリーって呼ぶのよ」

 別に特別という訳じゃないようで、こういう店では仁さん、もといケリーさんと呼ぶのはお客様の事を思っての事らしい。女性客が呼びやすく親しみやすい様にと、ケリーさんみたいなお客さんを接客する時など、色々と理由があるんだそうだ。

「それにしても、ちょっとオシャレしなきゃ勿体無いわよね。それは同意……でも、あからさまに可愛らしいモノや、女の子って意識するようなスカートなんかは抵抗があるのよね」

 チラッとオレと母さん達を見回して、少し悩む様にシナを作りながら店内を見回すと、なにかポンッと手を打って笑顔を輝かせて見てくる。

「ねぇねぇ、アタシがデザインした服を着てみない? 端っこのスペースなんだけどね、アタシがデザインして作った服を置いて貰ってるのよ」

『……それは、凄いですね』

「もう、あからさまにテンション下がらないでよ。大丈夫、最近アナタ達と遊んでいる上で思いついたデザインの服なの、きっと気に入ってくれると思うわよ」

 ケリーの言っている事が良く理解できないせいで、首を傾げるくらいしか反応できない。

「実際に見せた方が良いわよね、ちょっと待ってて持ってくるから」

 綺麗なモデルの様な歩き方で、素早く見せの隅の方へと消えていく。
 一分……というか、三十秒も掛からずに戻ってきた。

「段階を踏ませるって意味では、こういう服で慣れていくと良いわよ」

 近場の机に服を広げて見せてくれる。

『スカートでは?』

「ふふ、表面上を見ればね。でもほら、コレはハーフパンツよ。外からはスカートっぽく見える様に軽くスカートみたいな折り目の着いた布地があるだけね」

 フレアスカートっぽいものから、フリルまで色々と種類を作っているようだ。

「スカートが苦手な子って実は多いのよ。でもオシャレがしたくない訳じゃないって感じの子にもコレなら履きやすいでしょう。コレの案が浮かんだのはアナタ達を見て思いついたモノなのよ、どうかしら、安くしとくわよ」

「なるほど、センスが良いですね」
「なら、あとは美容院に行って髪を整えてもらって、髪形も弄れば良い感じね」
「ちゃんと防犯グッズも持たせないと」

「ねぇ葉月、それはただ単に自分が行きたいだけじゃないの? ただ……そうね、持たせにと危険になりそうな感じはするけど」

 いつの間にやら、皆が近くに戻って来ていた。

 執事さんもメイドさんも、むしろ此処にいるお客さんや店員さん含めた全員がオレを一斉に見て、しばらく何も言わず、全員が同じタイミングで頷き立っていた。

 なんだよ、全員が同じ想像でもしたというのか? 自分だけが解らないんだけど。

「今はまだ、アナタの好きな服を着ているせいで魅力が半減してるけどね。ちゃんとした服装をしたら相当に目立つわよ。容姿も相まってね」

 ケリーにそう言われて、改めて自分の服装に視線を向けてみた。

『この格好じゃあダメ?』

「正直、部屋着ならまぁ許せるわね。油断した気抜けないし起き抜け女性の可愛さはあるんだけどね。それは彼氏とか気の許せる相手だから良いのであって、お出かけではちょっとアウトじゃないかしら、せめて近場のコンビニに行くってくらいね」

 男の時のラフな格好みたいな感じなのに、女の子になると随分と変わるもんだな。
 下着なんかは前に強制的に買わされたけど。
 未だにフリフリで可愛らしさ満点の服は押し入れの中で眠っている。

「ラクな格好ね~、モモンガカーディガンとかドルマンスリーブとかあるけど、そういうのならオシャレじゃない、アナタにも似合いそうだし」

「それなら私が持ってきましたよ」

 小鳥ちゃんが誇らしげに胸を張ってオレに差し出してくる。

『ん? なんでお……ボクに?』

 服なんて適当に欲しそうなの見つけたら、後は買うだけではないの。

「なんでって、着るため?」
「ちゃんと試着して決めないとね」

 双子ちゃんズもオレを見て、不思議そうに首を傾げている。

「安心してください、私共が付いておりますから」

 メイドさん達が急に連携してオレの逃げ道を塞いだ。

「荷物は私目に渡してくださいね」

 執事さんはもう慣れた手付きで、服を持って待機している。

「それじゃあ、もっと似合いそうなモノを探して来ましょうね。ケリーさん手伝ってくださいな。色々と参考にもなりそうですし」

「えぇ任せてちょうだい、満足いくモノを探し出してみせますわ」

『母さんっ⁉ ケリーさん⁉』

 一瞬にして仲間に裏切られた気分だよケリーさん。

「じゃあ、写真は任せて」
「自分は髪飾りでも探そうかな~、色んな髪飾りも置いてあるみたいだし」

 葉月ちゃんが携帯を取り出すかと思えば、ハンディーカメラを取り出して構えている。


『どっから出したのさソレ⁉』


「持つべきは優秀なセバえもん」


 本当に色々と出てきそうではあるけど、用意周到が過ぎませんかね執事さんや。





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