ズィミウルギア

風月泉乃

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イベント騒ぎは大騒ぎ

【オフ】27話

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 何だろうな、知らない場所だからか妙に道が広く感じる。

 身長が、かなり……そごく縮んだせいだろうか、それとも大きなデパートみたいな場所に全然来なかったせいなのかは、よく分からない。

「色々な所があって目移りしちゃうね」
「そうね~、店の数が多いわね」
「電子機器を取り扱ってるのは、どこ?」

「葉月ちゃん、それは時間が余ったら行きましょうか。メインはまず翡翠ちゃんのお買い物だからね。皆で選んであげないけなさそうだしね」

 スッと目を細めてオ……ボクを見る母さんに、何故か知らないけど背中辺りが物すごっく冷たい空気が撫でて通った感じがした。

「十二階から十三階がレディースの売り場になっております」
『セバスさん⁉』

 ニコッと微笑むだけで、それ以外は特に何も言わずに案内を始めてしまう。
 エレベーターに乗せられて強制的に目的地へと運ばれていく。

 到着のベルが鳴りエレベーターの扉が開く。
 区切られたスペースには可愛らしい服を着たマネキンが出迎えてくれる。

 ヒラヒラしたデザインのモノから、大人っぽいワンピースを着た人形まで。
 パッと見ただけでもお店毎にジャンルが分かれて事も分かる。
 人も結構な人数が居る様だ。
 背丈が同じくらいの子もチラホラ居る。

「へぇ、色んなお店があるじゃない」
「ジャンルも分けてあって分かりやすい」
「この上も広いレディースだけど、ほぼフロア丸々が一社の洋服屋さんみたいだね」

 とりあえず見てみようという事で、上りのエスカレーターに乗って行く。
 下の階みたく仕切りが無いので、広く見える。
 服の種別という感じで分かれているようだ。

「では、着替えは私共にお任せ下さい」

 何時の間にか、メイドさん達は服屋の店員さんが着ている様な服を着ている。

『いつの間に着替えたんですか?』

 ふふっと微笑みを返されるだけである。

「じゃあお願いしますね。じゃ、皆で翡翠ちゃんに似合う服を探しましょう」

 パンと手と叩いて、それに合わせて三人が「お~」と声を合わせて店内に散らばっていく。

 試着室の近くにメイドさん達に案内されていく。

『別に自分で選ぶのに』

 愚痴を手持ちの携帯に打ち込んでいると「フフッ」と近くで誰かに笑われた。

「御免なさいね、仲の良い子達が来たなって思ってね」

 このお店で働いている正規の店員さんだろう。
 見たことない男の人が居た。
 じっと見ていたつもりはないのだが、男の人が慌てた様に手を振り。

「あら、怪しいモノじゃなのよっ! こう見えてもちゃんとしたこの店の店員だから」

 胸にネームプレートを見せてくる。
 少し警戒気味にオレの事を守ってくれるように立ってくれているメイドさん達にも、きちんと自己紹介をする様にお辞儀をする。

「見た目がゴツイのは許してね。こう見えても心は乙女なんだから」

 ネームプレートには【阿藤(あとう)仁(ひとし)】というらしい。

「貴方達の事は店長から聞いてるから安心してちょうだい」
「そうですか、お話は私共も伺っております」

 メイドさんの纏め役みたいな人が代表してお辞儀をして、挨拶を交わしている。
 チラッと見えた右腕にコードギアをしているのが見えた。

 ジッと自分のモノと見比べてみると、少し古そうというか、よく使いこまれた感じのモノに見える。年季という訳じゃないんだけど、しっかりと馴染んでいる様に見えるのだ。

「あら、アナタも持ってるの? しかも最新タイプのコードギアじゃないの!」

 目をキラキラさせていても、しっかりとオレとの視線を合わせて話してくれる。

『えっと、はい。使いこなせてはいませんけど』

「あらそうなの、色々と使って見なさいな。楽しい要素は何もゲームの中だけじゃあないのよ。ゲーム内での注文やらテイムモンスターが居るならお散歩育成なんてモノもあるのよ」

 なんか、物凄い親近感があるんだよな。この人。

『ボクにばっかり構ってて良いんですか?』

「あら良いのよ、彼女達はアナタの服を選んでいるんでしょう? だったら先ずは余計な事で声を掛けるべきじゃないわ。楽しんで選び、お友達と相談しながら自分の選んだモノが一番似合うんじゃないかって考える。そこに、私みたいなのが余計なのが入っちゃ興が削がれちゃうじゃない。こういう時はゆっくりと見守り、声を掛けられるまで待つものよ」

 右目をパチッと閉じて、自然な形でウィンクしてみせる。

『喋らないの、不思議に思わないんですか?』

「えぇ別に? 世の中色んな人が居るモノよ。私だって変り者だしね。それに知り合いにも一人居るのよ、アナタみたいな子がね。最近、お友達になった子なんだけど」

 やっぱり、合ってるのかな。

『ゲームの中で、ですか?』
「えぇ、ゲームの中でよ」
『ファーマーの?』
「そうね、可愛らしいファーマーちゃんね」

 しばらく、お互いに全身を観察するように見た後に、ほぼ同時に相手の名前を聞く。

『ケリアさん?』
「スノーちゃんかしら」


 どうやら、一致したようだ。
 抱き着くという事はせず、静かに手を出して握手する。


『初めまして? 風雪翡翠です』
「ふふ、阿藤仁。よろしくね」


 案外と近場……ではないけれど、偶然とはいえどまさか仲良くしてる人に会えるとは。




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