ズィミウルギア

風月泉乃

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イベント騒ぎは大騒ぎ

【オフ】25話

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 ズィミウルギアから戻ってきて、最初に琥珀が主軸で目を覚ますから、何故かオレが目を覚ました時には自分の部屋じゃない事が多い。

 今日はどうやらリビングで代わったようだ。

 なんか妙にニコニコと明るい笑顔をオレに向けてくる母さんが目の前に座っているけど。

 起きたばっかで、まだ頭がぼんやりしてる。
 小さく口が開いて、すぐ欠伸が出てきてしまった。

「ふふ、おはよう翡翠ちゃん」
『……おはよ?』

 妙にご機嫌な母さんに若干引いてしまう。

 いつも居るメンバーも居るけど。

 ……なんか少し、オレと母さんから距離のある位置にいる事も物凄く気になるだけどね。

 寝ぼけ眼でじ~っと見つめていると、必死に目を合わせない様にしている。
 桜花ちゃんを葉月ちゃん、それに小鳥ちゃんも妙にソワソワした感じがあった。

「ね、コレって翡翠ちゃんよね」

 ズィミウルギアのオレが映っている画像の携帯電話が机の上に置かれた。

『どうしたの、これ?』
「それは今はどうでも良いのよ」

 いやいや、オレ的にはどうでもよくないんだけど。

「最近ね、考えたんだけど。やっぱり少しは女の子らしい格好をした方が良いと思うの」

 頬に手を当てて、愁いを帯びた瞳でこちらをチラチラとワザとらしく見てくる。

 悩んだような素振りをしていても、その瞳の中にはキラキラした好奇心と母さんの趣味という野心がごちゃ混ぜになった強い意思を感じるんだ。

『言ってるイミが、良く解らない』

 察しは付いている。

 思い当たることは多くあるけれど、それを認めたくないし気付いたなんて……そんな、飢えた野獣に自分という好物、基、生贄を差し出す様なマネは決してしまい。

「もうだいぶ慣れて来たんじゃないかしらと思うのよね。大丈夫、外に出歩く訳じゃないし、ゲームの中ではもうスカートだって着たのでしょう」

 パパっと携帯の画面を操作して、オレと樹一の初期装備を着ている姿が映し出された。

『いや、この格好の方が楽だからさ』

 ショートパンツにラフな服で、少し寒ければパーカーでも上に着る。
 昔っからオレが良く着る格好だ。

「あら、前に教えたでしょう。女の子なんだから多少なりとキチンとした格好の方が、後々には楽なのよ? 胸とかもっと大きくなると思うし」

 じっとオレの胸元を見ながら言う母さんに反応して、食事処の机に集まっている女性陣が一斉に母さんとオレの胸を見比べ、最後に自分の胸元をペタペタ触っている。

「あそこまで大きくなるのかな?」
「……遺伝が濃く出るなら、ありえる」
「ヤツも大きいのよね……別に大きさだけが全てじゃないんだから」

 なんか飛び火してますから、母さんってば気付いてください。

「それにスカートにだって慣れて置かないと、学校に行ったときに大変よ」

 中学に高校と、確かにどっちもスカートだけど。今は別にズボンでも良いって場所も多いだろう。そこまで気にすることじゃないと思うんだけどな。

「あぁ、あとペナルティもあるじゃない。なら外へお買い物に行くのも良いかもしれない」

 母さんの口から発せられた「ペナルティ」の言葉に、寝ぼけていた頭が一気に活性化する。

『ぺ、ペナルティって……なんで』

「だって、言葉遣いには気を付けようって話したじゃない。オレってゲーム内では言ってるそうじゃない。わ・た・し。でしょう」

 ニコッとした表情だけど、何とも言えない圧がオレを襲ってくる。

「いま、オレって思ってなぁい?」
『気のせいです』

 バッっと速攻で書きなぐった文字を母さんに見せる。

「あら~、ほんとう~?」

 なんどもコクコクと頷いて答える。

「でも、ゲームの中じゃあまだまだ意識が低いみたいだし、やっぱり買い物に行きましょ。少しずつ人目にも慣れていかないとね」

 最初は何処にも出かけないで着替えるだけだと言ってたのに、何時の間にやら話が全く違うモノへと変わってしまっている。

 このまま否定し続けると、更に条件が厳しくなっていく気しかしない。

『分かった、買い物には付き合うから』

「あらほんとう! 最近、ずっとゲームばっかりで樹一ちゃん達にべったりだったからね、お母さん達は寂しかったのよ~。家族の付き合いも重要でしょう」

 言われてみると、確かにここ最近はずっと樹一達とゲームばかりしていた気がする。

『悪かったよ』

「楽しんでいるみたいだし。皆も一緒に出掛けましょうね。やっぱり大勢で楽しくいかなくっちゃね」

「は、はい」
「お供します」
「予定は開けておきます」


 驚いた様子ではあったけど、すぐに返事を返す姿は何処か軍隊みたいだった。

 敬礼でもしそうな勢いがあった。





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