鈴木さんとハルカ

鈴木流(すずき ながれ)

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【第2鈴・懲りないクズ】

顔もブス。性格もブス。

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 「で、○○ちゃんと朝チュンしちゃったわけよ~(笑)」

 「へえ」

 ルームシェアをしている松井マサトはブスのくせにモテ自慢が多い。

 男は顔じゃないだろという人もいるかもしれないが、あたしは別に松井マサトの顔をブスだと言ってるわけではない。

 …いや、顔もブスだけどもさ。

 それよりも性格がブスだ。

 暇があれば他人を貶し、見下し、異性には優しい振りをして、自分が不利になると突き離す。

 他人の成果や努力を盗み、それを非難しようものなら、そいつの存在ごと消すような自分の都合のいいようにしか生きないブス。

 嘘つきで、偽善で、自己中心的で、もう中身がほんとブス。

 園田にクズだと言われたあたしの方が幾分可愛げがあるほど腐った野郎。

 女にモテるブスとは違う。

 こいつには異性としての魅力どころか、人間的魅力すら感じられない。

 だから、このモテ自慢もおそらく嘘だろう。

 本当の本当に、このブスにお持ち帰りされて朝チュンやった女がいたら、その女は本物のバカか、一年間ほどオ●禁してチ●コなら何でもいいような本物の獣みたいな女だろう。

 …今のはあくまで例え話で、女性を貶したわけではなく、それぐらい松井マサトがモテるなんて有り得ないということを伝えたかった。

 「まっつんは最近いつエッチしたの?」

 「………」

 最近、松井マサトがあたしを『ハルカちゃん』から『まっつん』と親しげに呼び始めたことは置いといて。

 そういえば東京に引っ越してきて、慣れたり一人暮らし資金を稼ぐのにいっぱいいっぱいで、そこまで性欲に気が回らなかった。

 「そういえば、いつぶりだろ」

 「めずらしい~。あのビッチが!」

 松井マサトにあたしの性的経験の話をした記憶はないのだが、園田の件のせいかこいつの中であたしはビッチ扱いなのだろう。

 まあ、松井マサトにどう思われようと微塵も興味ないから、否定も訂正もしないけど。

 「俺とする?」

 「おまえのチ●コ挿れるぐらいならきゅうり挿れたがマシ」

 「細すぎだろ。そーゆうのが好きなの?」

 「おまえのチ●コはそれ以下だって言ってんの」

 「ひどい」

 「そんなチ●コの分際で女を抱く方がひどい」

 「俺の見たことないだろ」

 そんなくだらない会話をしていると、あたしのスマホからLINEの通知音がした。

 画面を覗くとポップアップ画面に『小澤シン』の名前。

 『○月✕日に東京に行くんだけど会えない?』

 あたしは、その突然のお誘いLINEに返信するのを躊躇った。

 連絡がきたのはシン先輩が卒業してからだから、ほんと4年ぶりぐらい。

 それなのになんで会おうなんて。

 しかも、どうしてあたしが東京にいることを知っているんだ…。

 ちょっと怪しい感じもしたが、今の世は情報化社会だ。

 どこであたしの情報が漏れているかわからない。

 とにかく、会ってみよう。

 「誰?男?」

 LINEの通知に目の前の松井マサトは興味津々そう。

 「うん、男。高校のときの先輩」

 「仲良いの?」

 「いや?数年ぶりに連絡きた。会おうって」

 「会うの?」

 「会うよ」

 やたら質問攻めをしてくる松井マサトに適当に返事をしつつ、あたしはシン先輩に返事を打つ。

 「やるの?」

 「はあ?」

 妙に根掘り葉掘り聞いてくる松井マサトに限界を感じたあたしは、返事を打ち終えたスマホを叩きつけるようにテーブルに置いた。

 「そこまで聞いてどうするの?するしない関係なくデリカシーなくない?」

 「するんだ」

 「それ答えたとしてお前に関係なくね?」

 「………」

 つい感情的になったあたしも大人気なかったが、松井マサトのあまりにデリカシーの無い質問につい腹が立ってしまった。

 「……そいつといい感じになったらこの家出るの?」

 しかし、松井マサトはそれでも懲りず、おずおずとあたしに質問してくる。

 「いや…、この先輩とか関係なく、資金貯まったら出て行くよ」

 「…いても、いいけど」

 「は?」

 「もう少し、いてよ」

 なんだ、なんだ?

 なんだその捨てられた子犬のような顔は。

 どんな展開だ、これは。

 また専門学校時代のときみたいに、「好きになったかも」とか言い始めるのかこいつは。

 「なんでいていいの?」

 「……」

 「何か言いなよ」

 「まっつんがいると家賃が半分で済むし…、生活的に助かるってゆーか…」

 「それで?」

 「数ヶ月後、PS4の発売日だから、生活費を折半しないと買えない」

 前言撤回。

 やっぱりこいつは性格ブスだわ。

 あたしは何が何でもPS4の発売前にはこの家を出て行こうと思った。
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