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【第1鈴・クズだと思ったことはない】
クズ
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池内くんと別れてから1週間。
ふたつのチ●コを同時に失くしたあたしは絶賛欲求不満中。
別れてから初めあたりはクソ園田が「ハルカちゃんのことは僕が代わりに幸せにする」とか月9ドラマの延長戦をまだやっていたが、誰のせいでこんな事になったと思ってんだクソ園田、と全く相手にはしなかった。
そして、別れて1週間。
1週間前の土下座事件がクラスから他クラスにまで広がって広がって、1週間の間に園田の居場所はなくなってしまった。
転入が遅かったせいもあるが、園田には友達という友達がまだいなかった。
それなのに、この土下座事件。
それほど仲良くもないのに『友達の彼女を奪おうとした男』に誰が味方がつくだろうか。
皆が皆、園田を軽蔑した。
男友達を裏切り、クラス全員に軽蔑され、最終的にはあたしにも見離され…、園田は教室の隅でひとりでいることが多くなった。
次第にあたしにアプローチする事も辞めて、授業中に講師に何か当てられない限り、学校で園田が口を開くことはなくなった。
そして、いつしか土日以外は毎日ある授業に園田が出席する回数が減った。
無断欠席が増えた。
「自業自得じゃね?」
女子は陰で園田をせせら笑う。
「園田?え、知らね」
男子は園田に興味を示さなくなる。
こうやって学校に来なくなった園田は存在を消されていく。
嫌がらせや仲間はずれとか、そんな『イジメ』を誰かしているわけではない。
ただクラス全員が『園田ユウ』という存在を嫌悪する空気を作り出して、その重圧に園田が耐え切れなかっただけ。
そして、園田が学校に来なくなって半年が経った頃。
「ハルカちゃん…」
上期の最後、園田は学校に現れた。
と、いうより、終業式を終えて玄関を出たあたしの目の前に、だけど。
「…なんでいるの?」
「上期の最後だから成績表を取りにね」
「ああね」
「…学校辞めるんだ、僕」
「マジか」
「だから、最後にハルカちゃんに挨拶しようと思って」
「なんであたし?」
「…僕が本気で愛した人だから」
おい。待て待て。半年経っても月9ドラマはまだ継続中かよ。
「ハルカちゃんはこの半年間、どんな気持ちだった?」
「え?別に何も…」
「僕はね、胸が裂けるような気持ちだったよ」
お前の話は聞いてねえよ。
「ハルカちゃんの事が好きすぎて好きすぎて、欲しくてたまらなかった…」
誰かこの月9ドラマの主人公気取りの奴を止めてくれよ。帰りてえ。
「池内くんには悪い事をしたと思ってる。でも…仕方なかったんだ…。この気持ちを止められなかった」
こいつ、頭の中は自分が主人公の悲劇のヒーロー気分なんだろうな。
それよりお腹空いたな。お昼ごはん…マックにしようかな。
「だから…、僕が皆に嫌われたのは必然なんだ……」
何この無駄な時間。早く終わらねえかな、帰りたいな。
「でもね!ハルカちゃんだけは、…ハルカちゃんだけは、僕の事をどう思っていたのか知りたいんだ…!」
は?
「きみだけはきっと…」
何言ってんのこいつ。
「僕と一緒にいてどう思ってた…?」
今、きっと園田の心を支えているのは『あたしとの思い出』だけなんだろうな。
あたしと過ごした思い出が、セッ●スが、他からどう思われようと、何をされようと耐えられる、その支えなんだ。
でもね、園田、
「あたしは、」
でもね、クソ園田、
「あなたのことチ●コとしか思ってないから」
「え……」
実際にはそうされていないものの、園田の想いが、好意が、あたしの足元に絡みついて縋ってくるような気持ち悪さ。
ぬるぬると、ぬるぬると。
「ハルカ…ちゃん?」
感情が歪んだのは好き。
嫉妬とか憎悪とか狂気とか殺意とか。
興味のソソられる相手にそれをぶつけられるのは、考えただけでそのままイッちゃうかもしれないほど好き。
でも、興味の無い奴からのこの泣き縋るような悲壮感。鬱陶しい。
「とりあえず、ただ前後してれば女が喜ぶとか勘違いしてるピスト●は猿でもできる。あと、手●キして、フェ●して、挿れて自分がイケば終わりとか、相手を楽しませることも知らない幼稚セッ●スはほんとない」
僕と一緒にいてどう思ってたのか知りたいなんて…。
知らぬが仏だったかもよ、園田くん。
「園田くん、あなたはあたしに好意があったのよね?好きで好きで、欲しくてたまらなかったのよね?」
「そ、そうだけど……」
「あの程度のセッ●スであたしのこと欲しいなんて冗談キツイ」
「っ…」
「ああ、セッ●スの感想じゃなくて、あたしがあなたのことをどう思ってたのか知りたいんだったね」
「…え、やめっ………」
園田の心を今まで支えてきたものが、今、崩れる。
止めようとしてももう遅いよ。
あなたはあたしの一面を見てしまった。
「どうも思ってないよ」
正気のままでは返さない。
あたしの望んでいた欲求の邪魔をしたチ●コ風情が。
許すわけがない。
「あなたは池内くんに嫉妬されたくて利用しただけの、ただのセッ●スフレンドだよ」
粉々に、跡形も無く、反吐が出そうなほど未練たらしいその心をあたしが消してあげる。
「混乱してるあなたにわかりやすく言ってあげようか?」
あなたが勝手にあたしに描いてきた、理想、幻想、面影を、粉々にする。
「あなたの存在はただのエッチするだけのチ・ン・コ、ってことだよ」
そのまま園田の心の中から消えてゆけ、『あたし』。
そして、形を変えて園田の心に残るがいい。
『トラウマ』として。
「好きとか(笑)カンチガイもここまでいくとドン引きだわ」
その瞬間、必死にあたしの足元に縋りついていた感情がゆっくり萎えていくのを感じた。
それと同時に園田の顔はゆっくりと絶望していった。
「じゃ、バイバイ。半年間だけだったけど、お疲れさま!」
と、笑顔で帰るあたしの顔をただ何も言わず、瞳孔を開ききったまま黙って見つめる園田の顔に、あたしはさらに笑みを深めた。
「…クズめ………」
あたしの背後から聞こえたその言葉は、初めて園田から感じた感情だった。
好きでも、悲しみでも、怒りでもなく、ただ心ここにあらずといった、空っぽな絶望だった。
まあ、友達の彼女を奪おうとしたクズ野郎に言われたって、微塵もあたしの心には響かないけどね。
だって、あたしは自分をクズだと思ったことはない。
ただ…欲望に正直なだけ。
それだけ。
ふたつのチ●コを同時に失くしたあたしは絶賛欲求不満中。
別れてから初めあたりはクソ園田が「ハルカちゃんのことは僕が代わりに幸せにする」とか月9ドラマの延長戦をまだやっていたが、誰のせいでこんな事になったと思ってんだクソ園田、と全く相手にはしなかった。
そして、別れて1週間。
1週間前の土下座事件がクラスから他クラスにまで広がって広がって、1週間の間に園田の居場所はなくなってしまった。
転入が遅かったせいもあるが、園田には友達という友達がまだいなかった。
それなのに、この土下座事件。
それほど仲良くもないのに『友達の彼女を奪おうとした男』に誰が味方がつくだろうか。
皆が皆、園田を軽蔑した。
男友達を裏切り、クラス全員に軽蔑され、最終的にはあたしにも見離され…、園田は教室の隅でひとりでいることが多くなった。
次第にあたしにアプローチする事も辞めて、授業中に講師に何か当てられない限り、学校で園田が口を開くことはなくなった。
そして、いつしか土日以外は毎日ある授業に園田が出席する回数が減った。
無断欠席が増えた。
「自業自得じゃね?」
女子は陰で園田をせせら笑う。
「園田?え、知らね」
男子は園田に興味を示さなくなる。
こうやって学校に来なくなった園田は存在を消されていく。
嫌がらせや仲間はずれとか、そんな『イジメ』を誰かしているわけではない。
ただクラス全員が『園田ユウ』という存在を嫌悪する空気を作り出して、その重圧に園田が耐え切れなかっただけ。
そして、園田が学校に来なくなって半年が経った頃。
「ハルカちゃん…」
上期の最後、園田は学校に現れた。
と、いうより、終業式を終えて玄関を出たあたしの目の前に、だけど。
「…なんでいるの?」
「上期の最後だから成績表を取りにね」
「ああね」
「…学校辞めるんだ、僕」
「マジか」
「だから、最後にハルカちゃんに挨拶しようと思って」
「なんであたし?」
「…僕が本気で愛した人だから」
おい。待て待て。半年経っても月9ドラマはまだ継続中かよ。
「ハルカちゃんはこの半年間、どんな気持ちだった?」
「え?別に何も…」
「僕はね、胸が裂けるような気持ちだったよ」
お前の話は聞いてねえよ。
「ハルカちゃんの事が好きすぎて好きすぎて、欲しくてたまらなかった…」
誰かこの月9ドラマの主人公気取りの奴を止めてくれよ。帰りてえ。
「池内くんには悪い事をしたと思ってる。でも…仕方なかったんだ…。この気持ちを止められなかった」
こいつ、頭の中は自分が主人公の悲劇のヒーロー気分なんだろうな。
それよりお腹空いたな。お昼ごはん…マックにしようかな。
「だから…、僕が皆に嫌われたのは必然なんだ……」
何この無駄な時間。早く終わらねえかな、帰りたいな。
「でもね!ハルカちゃんだけは、…ハルカちゃんだけは、僕の事をどう思っていたのか知りたいんだ…!」
は?
「きみだけはきっと…」
何言ってんのこいつ。
「僕と一緒にいてどう思ってた…?」
今、きっと園田の心を支えているのは『あたしとの思い出』だけなんだろうな。
あたしと過ごした思い出が、セッ●スが、他からどう思われようと、何をされようと耐えられる、その支えなんだ。
でもね、園田、
「あたしは、」
でもね、クソ園田、
「あなたのことチ●コとしか思ってないから」
「え……」
実際にはそうされていないものの、園田の想いが、好意が、あたしの足元に絡みついて縋ってくるような気持ち悪さ。
ぬるぬると、ぬるぬると。
「ハルカ…ちゃん?」
感情が歪んだのは好き。
嫉妬とか憎悪とか狂気とか殺意とか。
興味のソソられる相手にそれをぶつけられるのは、考えただけでそのままイッちゃうかもしれないほど好き。
でも、興味の無い奴からのこの泣き縋るような悲壮感。鬱陶しい。
「とりあえず、ただ前後してれば女が喜ぶとか勘違いしてるピスト●は猿でもできる。あと、手●キして、フェ●して、挿れて自分がイケば終わりとか、相手を楽しませることも知らない幼稚セッ●スはほんとない」
僕と一緒にいてどう思ってたのか知りたいなんて…。
知らぬが仏だったかもよ、園田くん。
「園田くん、あなたはあたしに好意があったのよね?好きで好きで、欲しくてたまらなかったのよね?」
「そ、そうだけど……」
「あの程度のセッ●スであたしのこと欲しいなんて冗談キツイ」
「っ…」
「ああ、セッ●スの感想じゃなくて、あたしがあなたのことをどう思ってたのか知りたいんだったね」
「…え、やめっ………」
園田の心を今まで支えてきたものが、今、崩れる。
止めようとしてももう遅いよ。
あなたはあたしの一面を見てしまった。
「どうも思ってないよ」
正気のままでは返さない。
あたしの望んでいた欲求の邪魔をしたチ●コ風情が。
許すわけがない。
「あなたは池内くんに嫉妬されたくて利用しただけの、ただのセッ●スフレンドだよ」
粉々に、跡形も無く、反吐が出そうなほど未練たらしいその心をあたしが消してあげる。
「混乱してるあなたにわかりやすく言ってあげようか?」
あなたが勝手にあたしに描いてきた、理想、幻想、面影を、粉々にする。
「あなたの存在はただのエッチするだけのチ・ン・コ、ってことだよ」
そのまま園田の心の中から消えてゆけ、『あたし』。
そして、形を変えて園田の心に残るがいい。
『トラウマ』として。
「好きとか(笑)カンチガイもここまでいくとドン引きだわ」
その瞬間、必死にあたしの足元に縋りついていた感情がゆっくり萎えていくのを感じた。
それと同時に園田の顔はゆっくりと絶望していった。
「じゃ、バイバイ。半年間だけだったけど、お疲れさま!」
と、笑顔で帰るあたしの顔をただ何も言わず、瞳孔を開ききったまま黙って見つめる園田の顔に、あたしはさらに笑みを深めた。
「…クズめ………」
あたしの背後から聞こえたその言葉は、初めて園田から感じた感情だった。
好きでも、悲しみでも、怒りでもなく、ただ心ここにあらずといった、空っぽな絶望だった。
まあ、友達の彼女を奪おうとしたクズ野郎に言われたって、微塵もあたしの心には響かないけどね。
だって、あたしは自分をクズだと思ったことはない。
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それだけ。
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