鈴木さんとハルカ

【第1鈴・クズだと思ったことはない】

男って単純

　しばらくして、池内くんがアルバイトを始めて、放課後皆で集まった後に夜には池内くんひとりが友達宅から帰る日が続いた。

　いつもならあたしも一緒に池内くんと帰るところだが、不思議と帰りたいとは思わなかった。

　友達宅にはまだ園田くんがいたから。

　園田くんは家が学校から遠く、その為この友達宅に泊まって、次の日そのまま友達宅から登校することが多かった。

　この友達宅が学校から近いおかげで、7割の友達がここに連泊することが多く、あたしも園田くんのように家が遠かった為、その連泊する連中のひとりとなった。

　皆が床に雑魚寝する中、あたしは園田くんの隣で眠った。

　ある日、その連泊する連中の男友達に言われた。

　「松岡、あまり園田と親しくするのやめとけよ」

　でた。

　彼氏持ちは異性と仲良くするなっていう余計なお世話。

　ほぼ9割型の男女にこの固定概念があるのは何故だろう。

　まあ、言葉の言い回し的にあたしと園田くんがそーゆう関係っていうのを薄々感じてはいるのだろうけど、池内くんに隠れてコソコソするのは良くないとか、この言葉がそんな偽善ぶったことならば、池内くんに直接この事を話せばいいのに。

　そしたら、それを知った池内くんはあたしの前にどんな表情を浮かべながらやってくるのか楽しみで仕方ないのに。

　「友達と親しくして、いけないことでもあるの？」

　「随分と余裕こいてるけどな、松岡。男って単純だからな、好きになったらそれしか考えられないんだよ」

　「は？」

　「好きと思ったら愛すし、悪いと思ったら謝るし、悲しいと思ったら泣くんだよ」

　「…何が言いたいわけ？」

　「つまり、気持ちに我慢なんてできないってこと。だから、男って単純なのよ」

　「へえ」

　そのときは話半分でその友達の話を聞いていて、あたしに何を伝えたかったのか全然わからなかったが、その数日後、あたしはそれをようやく理解する。　

　学校の玄関先で園田くんが池内くんに土下座をすることによって。