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第6話 暴かれた真実ー6
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「20、19、18、17……」
そして甲板では、刻々と発射の体勢が進み、カウントアナウンスがもう間もなく打ち上げることを高らかに宣言していた。そのため、ミサイルのロケットエンジンにも点火され、瞬く間にサイロの底は炎で満たされ超高温になっていた。
それを見定めて、金光がニヤリと笑って言った。
「さあ、出るぞ」
ところがその時、にわかに接近してくるジェット音を耳にする! それもかなり超低空を飛行しているかのよう?
「見ろ!?」合わせて1人の部下が、唐突に叫んだ。その機影を捉えたのか、大空に目を向け、ある一点を指差した。
金光も、すぐさまその方角を凝視する。
すると、確かにジェット戦闘機が、物凄い速度でこちらへ向かって近づいて来ていた。
……はぁ? この機は、いったい何だ?……と奴が警戒したのも束の間、その機体の下部から、突如噴射音を響かせ、銀色の細長い円柱の物体が炎を噴き上げ飛び出した!
げっ? あれは、空対空ミサイル! まさか、警告もなしにミサイルがタンカーを目掛けて発射されただと?
「うわー! 逃げろ」これには、当然部下たちも驚き慄いたに違いない。金光を余所にして我先にと一目散に逃げ出した。
片や金光も、こんな攻撃に晒されるとは全く予想だにしない、このままではミサイルに撃破され一瞬で炎火の餌食となり跡形もなく消え失せてしまうと焦るが……弱ったことに動けない! 恐怖の余り足が震えて歩けないのだ。対して桃夏の方は、それよりもっと悲惨な状況か、鉄柵に繋がれ逃げようにも逃げられないのだから。
だが、その直後、別の異変も目の前で起こった! 甲板の後部で何かがせり上がってきたようだ。
……あれは、貨物用エレベーターか?
途端に、内部からエンジン音が吹き上がる。続いて甲高いタイヤのスリップ音を姦しく鳴り響かせると同時に、床とタイヤの摩擦で白煙をけたたましく吐き出し、ドリフト走行で飛び出してきた……えっ、赤い車だ! しかも一直線に、タンカー前部を目指して突っ走ってくる。
その光景に、「わ、わしのフェラーリィだ」と奴は呟く。期せずして、真っ赤なスポーツカーが甲板を高速で駆け抜けていたのだ!
しかしその間にも、対空ミサイルがさらに速度を上げ、その音速に伴うソニックブームの衝撃波も凄まじく、奴らの耳を劈くとともに、まるで光に照らされた鋼鉄のイカズチのごとく、あっと言う間に空間を飛び越え甲板に迫ってきていた。
まさに、最強とも言える兵器の襲来。この一撃を食らったなら、誰も助かりはしない!
そして遂に、ミサイルがタンカーに……激突する?
〔が、その瞬間、風がすり抜け何かが甲板から宙に飛び出した!〕
――巨大爆音が轟いた!?――
タンカーと衝突……むっ? 否、違うぞ! 船ではない、その真横、サイロに最も近いタンカーの側壁ぎりぎりで大爆発を起こしていた。
フェラーリィだ!? 車が甲板からダイブして、ミサイルと接触したのだ!
忽ち車は火達磨となり、同時にバラバラに砕け散った鉄屑が火炎を纏ったスパークへと変わって、頭上から弾雨のごとく降り注いだ! 加えて近距離からの爆風圧を浴びたせいで、タンカーは激しく揺さぶられ、その結果、サイロ内の弾道ミサイルも斜めに倒れてしまった。サイロの底ではまだ炎を噴射しているにも拘らず、緊急停止となり発射不能な状態だ。
さらにそれだけで済まず、桃夏が大変な事態に陥っていた。――金光の方は、どうにか助かった様子――。彼女は爆風を受け、サイロの穴の中へ吹き飛ばされていた!
ただ、繋がれた綱のお陰で底まで落下していない……と思えど、まだ安心はできない状況か?
そしてその後、まさに嫌な予感が的中する。信じられないことに、車の破片がロープを直撃し瞬く間に切断したのだ!
何と! 彼女の命綱が切れてしまった。
「ううっくー!」ただちに桃夏は、真っ逆さまに落ちる。サイロの底は火の釜だ。炎に呑まれるぞー!
ところが……うっ? 彼女は途中で忽然と止まった。どういう訳か、その手に張力を受け、己の身を宙に留めることができた。いったいどうして?……。不思議に思った彼女は、すぐさま自分の手首を垣間見る。……とそこには、思いも寄らない――ワイヤー?――先端が鈎になった細いワイヤーが絡みつき、彼女の体を上から吊り下げてくれたのだ! そのうえ、徐々に引き上げられるのを感じた。
まさしく、甲板にいる誰かによって命を助けられたということだ。
ならば、それをなし得る兵とは?……
勿論、言うまでもない。
――東! その人だ!?――彼以外に、そんな芸当ができようか。
そして案にたがわず……
――甲板上では、太陽を背にする東の勇姿が、煌々と見えていた!――
深手を負わされ、かなり体力の弱った東であったが、この時ばかりは懸命に力を絞り出した。確りと両手でワイヤーを掴み、慎重に手繰り寄せる。
それにしても、どうにか上手く難局を乗り切ったようだ。車をミサイルにぶつけ、彼自身はその前に車内から脱出して甲板の上に飛び降り、同時にサイロへ落ちる桃夏に気づいたため、ワイヤーを投げるという離れ業を成し遂げた訳だ。これで後は……彼女を円筒形の穴から救い出すだけ。
彼は、すぐにサイロの内部へ向かって声をかける。
「桃夏さん、大丈夫か?」
「ええ、私は……それより貴方こそ、平気なの? 酷く撃たれたみたいだけど」と殊更明るい声が返ってきた。これを聞いたなら、東も安心して応じれる。
「どうにか生きてるよ。心配ない」
「そう、良かったわ。でも上手く抜け出せたのね。私はあなたが倒れた後、銃で仮面男を撃とうとしたのだけれど、奴の方が速くて先に銃を奪われてしまった。結局はこの通り、自分でも情けない話よ……」
「そんなことはないさ。私だって協力者のお陰で来れたんだ」
「協力者? 警官がいるの?」
「いや、君の……。まあ、詳しい話は後にしよう、今はこの場所を抜け出すことが先決だ」と言ったところで、東は続いてワイヤーを引き寄せるのだった。
だが、この時、「うっ、うううっ、お前らー、よくもわしの計画を……」と苦々しい顔を見せて立ち尽くす、金光の姿があった! 部下は全員、塵尻に逃げたのに、奴だけが甲板に残り、東の目の前に立っていたのだ。しかも、「きさまどうやって? 海に投げ捨てろと命令したはずだぞ。何故生き延びたのか知らんが、今度こそここでくたばれ!」と興奮気味に銃を構えて、東に照準を合わせている。大変だ、今にも撃ちそうだ!?
対する東は、桃夏を引き上げるのに精一杯で、身動きが取れない状況かー! 漸くミサイルを防ぎ、彼女の命も救ったというのに……
またしても、最大の危機に見舞われたのだ。
そしてとうとう、奴の銃口から火が噴く?……
東の命運も、尽きる時が来たのだ!――
そして甲板では、刻々と発射の体勢が進み、カウントアナウンスがもう間もなく打ち上げることを高らかに宣言していた。そのため、ミサイルのロケットエンジンにも点火され、瞬く間にサイロの底は炎で満たされ超高温になっていた。
それを見定めて、金光がニヤリと笑って言った。
「さあ、出るぞ」
ところがその時、にわかに接近してくるジェット音を耳にする! それもかなり超低空を飛行しているかのよう?
「見ろ!?」合わせて1人の部下が、唐突に叫んだ。その機影を捉えたのか、大空に目を向け、ある一点を指差した。
金光も、すぐさまその方角を凝視する。
すると、確かにジェット戦闘機が、物凄い速度でこちらへ向かって近づいて来ていた。
……はぁ? この機は、いったい何だ?……と奴が警戒したのも束の間、その機体の下部から、突如噴射音を響かせ、銀色の細長い円柱の物体が炎を噴き上げ飛び出した!
げっ? あれは、空対空ミサイル! まさか、警告もなしにミサイルがタンカーを目掛けて発射されただと?
「うわー! 逃げろ」これには、当然部下たちも驚き慄いたに違いない。金光を余所にして我先にと一目散に逃げ出した。
片や金光も、こんな攻撃に晒されるとは全く予想だにしない、このままではミサイルに撃破され一瞬で炎火の餌食となり跡形もなく消え失せてしまうと焦るが……弱ったことに動けない! 恐怖の余り足が震えて歩けないのだ。対して桃夏の方は、それよりもっと悲惨な状況か、鉄柵に繋がれ逃げようにも逃げられないのだから。
だが、その直後、別の異変も目の前で起こった! 甲板の後部で何かがせり上がってきたようだ。
……あれは、貨物用エレベーターか?
途端に、内部からエンジン音が吹き上がる。続いて甲高いタイヤのスリップ音を姦しく鳴り響かせると同時に、床とタイヤの摩擦で白煙をけたたましく吐き出し、ドリフト走行で飛び出してきた……えっ、赤い車だ! しかも一直線に、タンカー前部を目指して突っ走ってくる。
その光景に、「わ、わしのフェラーリィだ」と奴は呟く。期せずして、真っ赤なスポーツカーが甲板を高速で駆け抜けていたのだ!
しかしその間にも、対空ミサイルがさらに速度を上げ、その音速に伴うソニックブームの衝撃波も凄まじく、奴らの耳を劈くとともに、まるで光に照らされた鋼鉄のイカズチのごとく、あっと言う間に空間を飛び越え甲板に迫ってきていた。
まさに、最強とも言える兵器の襲来。この一撃を食らったなら、誰も助かりはしない!
そして遂に、ミサイルがタンカーに……激突する?
〔が、その瞬間、風がすり抜け何かが甲板から宙に飛び出した!〕
――巨大爆音が轟いた!?――
タンカーと衝突……むっ? 否、違うぞ! 船ではない、その真横、サイロに最も近いタンカーの側壁ぎりぎりで大爆発を起こしていた。
フェラーリィだ!? 車が甲板からダイブして、ミサイルと接触したのだ!
忽ち車は火達磨となり、同時にバラバラに砕け散った鉄屑が火炎を纏ったスパークへと変わって、頭上から弾雨のごとく降り注いだ! 加えて近距離からの爆風圧を浴びたせいで、タンカーは激しく揺さぶられ、その結果、サイロ内の弾道ミサイルも斜めに倒れてしまった。サイロの底ではまだ炎を噴射しているにも拘らず、緊急停止となり発射不能な状態だ。
さらにそれだけで済まず、桃夏が大変な事態に陥っていた。――金光の方は、どうにか助かった様子――。彼女は爆風を受け、サイロの穴の中へ吹き飛ばされていた!
ただ、繋がれた綱のお陰で底まで落下していない……と思えど、まだ安心はできない状況か?
そしてその後、まさに嫌な予感が的中する。信じられないことに、車の破片がロープを直撃し瞬く間に切断したのだ!
何と! 彼女の命綱が切れてしまった。
「ううっくー!」ただちに桃夏は、真っ逆さまに落ちる。サイロの底は火の釜だ。炎に呑まれるぞー!
ところが……うっ? 彼女は途中で忽然と止まった。どういう訳か、その手に張力を受け、己の身を宙に留めることができた。いったいどうして?……。不思議に思った彼女は、すぐさま自分の手首を垣間見る。……とそこには、思いも寄らない――ワイヤー?――先端が鈎になった細いワイヤーが絡みつき、彼女の体を上から吊り下げてくれたのだ! そのうえ、徐々に引き上げられるのを感じた。
まさしく、甲板にいる誰かによって命を助けられたということだ。
ならば、それをなし得る兵とは?……
勿論、言うまでもない。
――東! その人だ!?――彼以外に、そんな芸当ができようか。
そして案にたがわず……
――甲板上では、太陽を背にする東の勇姿が、煌々と見えていた!――
深手を負わされ、かなり体力の弱った東であったが、この時ばかりは懸命に力を絞り出した。確りと両手でワイヤーを掴み、慎重に手繰り寄せる。
それにしても、どうにか上手く難局を乗り切ったようだ。車をミサイルにぶつけ、彼自身はその前に車内から脱出して甲板の上に飛び降り、同時にサイロへ落ちる桃夏に気づいたため、ワイヤーを投げるという離れ業を成し遂げた訳だ。これで後は……彼女を円筒形の穴から救い出すだけ。
彼は、すぐにサイロの内部へ向かって声をかける。
「桃夏さん、大丈夫か?」
「ええ、私は……それより貴方こそ、平気なの? 酷く撃たれたみたいだけど」と殊更明るい声が返ってきた。これを聞いたなら、東も安心して応じれる。
「どうにか生きてるよ。心配ない」
「そう、良かったわ。でも上手く抜け出せたのね。私はあなたが倒れた後、銃で仮面男を撃とうとしたのだけれど、奴の方が速くて先に銃を奪われてしまった。結局はこの通り、自分でも情けない話よ……」
「そんなことはないさ。私だって協力者のお陰で来れたんだ」
「協力者? 警官がいるの?」
「いや、君の……。まあ、詳しい話は後にしよう、今はこの場所を抜け出すことが先決だ」と言ったところで、東は続いてワイヤーを引き寄せるのだった。
だが、この時、「うっ、うううっ、お前らー、よくもわしの計画を……」と苦々しい顔を見せて立ち尽くす、金光の姿があった! 部下は全員、塵尻に逃げたのに、奴だけが甲板に残り、東の目の前に立っていたのだ。しかも、「きさまどうやって? 海に投げ捨てろと命令したはずだぞ。何故生き延びたのか知らんが、今度こそここでくたばれ!」と興奮気味に銃を構えて、東に照準を合わせている。大変だ、今にも撃ちそうだ!?
対する東は、桃夏を引き上げるのに精一杯で、身動きが取れない状況かー! 漸くミサイルを防ぎ、彼女の命も救ったというのに……
またしても、最大の危機に見舞われたのだ。
そしてとうとう、奴の銃口から火が噴く?……
東の命運も、尽きる時が来たのだ!――
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