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第5話 迫り来る恐怖-3
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草木を掻き分け逃げる信二たち、元来た海岸へ急いだ!
一方、後方からは厳鬼の追っ手が迫りくる。
闇夜に忍び、荒地を踏み入る音だけが静かに聞こえていた。
そうして漸く磯に到着する一団の影。だが、打ち寄せる波が時間の経過を惑わす。その一団は、慌てて周りを捜索したものの、
「いねえな……」と銃を片手にリーダー格の男が諦め気味に言った。……信二たちを探す厳鬼の子分どもだ! 警官たちは既に水中バイクに乗り込み、遥か遠くの海へ、影も形も見えない所まで退避したみたいだ。
それが分かると、「すいやせん、こう暗いと無理ですわ。逃げられました」と子分は無線で厳鬼に伝えるしかなかった。
一方、厳鬼は、その声を聞いて「ううっ、役に立たないわねえ、まあいいわ。どうせ、明日には大騒動よ、準備はできている」とまるで余裕の返答をする。続いて奴は、子分全員へ向けて「よーし、野郎ども、迎えうつ用意をしろ! それとマスコミに連絡だ」と一喝号令をかけた。
そこには、壮絶な戦いを予感させる、仮面の顔が闇夜に浮かんで見えていた!――
……………………
さわやかな朝の風が頬を撫でる。
高級ホテルの、海辺に面した日差しが眩いテラスで、女が1人、テーブル席に腰掛けながらミルクティーを飲んでいた。フリルのついた白いワンピースに、花柄で広いツバのある帽子、いかにも保養で来た感じの女だ。足を組んで優雅に海を眺めている。ちょうど彼女の目の前には、プレジャーボートがひしめく広大なヨットハーバーと、その場を行き交う多くの船乗りたちの姿もあった。
するとその時、突然見知らぬ男が現れ、女の横に座った。待ち合わせをしていた訳でもないと思うのだが。そして結局、男は何も言わず、怪しげな封筒? だけを渡して、すぐに去って行った。そのうえ女の方も手慣れた仕草で、その封筒から紙を取り出し、徐に確認したかと思えば、後は知らぬ素振りでゆっくりと歩き出した。観光でも楽しむように!……
ここは港が近いせいもあり、外国人の多い歓楽街の中心地だった。どこの店も大勢の客が入り乱れ、誰彼なしの区別がつかない所でもある。中でも一際賑やかな店内には、何百人もの人々が飲食を楽しんでいた。……そこに先ほどの女が姿を現した。次いで柱の陰に忍んで一点を見詰め始める。それも、相手を射貫くかのごとき視線で。
女が捉えていたものとは?……
中年の顔が見える。まさしく、金光だ! やはり奴も生きていたのか?
ならば、その金光の様子を委細に窺ったところ、何やらテーブル越しに異人の男たちと話し込んでいた。異国語を使い、さながら同郷人と会話している風で、あまりにも場に馴染んでいる。はて? こんな姿を初めて目にする。いったいこの男は何者なのだ?
そうするうちに、話を終えたみたいだ。相手と握手した後、金光は子分らとともに店を出て、波止場の方へ歩みを進めた。どうやら海に出るようだ。男たちを引き連れ、ボートに乗り込む奴の背中が、桟橋から見えていた。……とその一部始終を、双眼鏡のレンズ越しにあの女が映し見ていたのだ。
彼女の握る拳に、力が入る。
そこには、怒りで震える――桃夏の姿があった!
一方、後方からは厳鬼の追っ手が迫りくる。
闇夜に忍び、荒地を踏み入る音だけが静かに聞こえていた。
そうして漸く磯に到着する一団の影。だが、打ち寄せる波が時間の経過を惑わす。その一団は、慌てて周りを捜索したものの、
「いねえな……」と銃を片手にリーダー格の男が諦め気味に言った。……信二たちを探す厳鬼の子分どもだ! 警官たちは既に水中バイクに乗り込み、遥か遠くの海へ、影も形も見えない所まで退避したみたいだ。
それが分かると、「すいやせん、こう暗いと無理ですわ。逃げられました」と子分は無線で厳鬼に伝えるしかなかった。
一方、厳鬼は、その声を聞いて「ううっ、役に立たないわねえ、まあいいわ。どうせ、明日には大騒動よ、準備はできている」とまるで余裕の返答をする。続いて奴は、子分全員へ向けて「よーし、野郎ども、迎えうつ用意をしろ! それとマスコミに連絡だ」と一喝号令をかけた。
そこには、壮絶な戦いを予感させる、仮面の顔が闇夜に浮かんで見えていた!――
……………………
さわやかな朝の風が頬を撫でる。
高級ホテルの、海辺に面した日差しが眩いテラスで、女が1人、テーブル席に腰掛けながらミルクティーを飲んでいた。フリルのついた白いワンピースに、花柄で広いツバのある帽子、いかにも保養で来た感じの女だ。足を組んで優雅に海を眺めている。ちょうど彼女の目の前には、プレジャーボートがひしめく広大なヨットハーバーと、その場を行き交う多くの船乗りたちの姿もあった。
するとその時、突然見知らぬ男が現れ、女の横に座った。待ち合わせをしていた訳でもないと思うのだが。そして結局、男は何も言わず、怪しげな封筒? だけを渡して、すぐに去って行った。そのうえ女の方も手慣れた仕草で、その封筒から紙を取り出し、徐に確認したかと思えば、後は知らぬ素振りでゆっくりと歩き出した。観光でも楽しむように!……
ここは港が近いせいもあり、外国人の多い歓楽街の中心地だった。どこの店も大勢の客が入り乱れ、誰彼なしの区別がつかない所でもある。中でも一際賑やかな店内には、何百人もの人々が飲食を楽しんでいた。……そこに先ほどの女が姿を現した。次いで柱の陰に忍んで一点を見詰め始める。それも、相手を射貫くかのごとき視線で。
女が捉えていたものとは?……
中年の顔が見える。まさしく、金光だ! やはり奴も生きていたのか?
ならば、その金光の様子を委細に窺ったところ、何やらテーブル越しに異人の男たちと話し込んでいた。異国語を使い、さながら同郷人と会話している風で、あまりにも場に馴染んでいる。はて? こんな姿を初めて目にする。いったいこの男は何者なのだ?
そうするうちに、話を終えたみたいだ。相手と握手した後、金光は子分らとともに店を出て、波止場の方へ歩みを進めた。どうやら海に出るようだ。男たちを引き連れ、ボートに乗り込む奴の背中が、桟橋から見えていた。……とその一部始終を、双眼鏡のレンズ越しにあの女が映し見ていたのだ。
彼女の握る拳に、力が入る。
そこには、怒りで震える――桃夏の姿があった!
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