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本編(不定期更新中)
24.デート2回目♡
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そこは広くてオシャレな最近出来た本屋さんだった。
カフェなども併設されているその建物は漫画から専門書まで幅広く揃っている。
今日は読書感想文用の本を一緒に見てもらう為、少年は男とその場所に訪れていた。
「すごっ!デカっ!これ全部本屋?」
「そうだよー。折角だしこういう所で探すと楽しいでしょ?」
今日の男の姿はいつもの先生のそれだった。こないだ送ってくれた車とはまた違う車で迎えにきた男はドライブしながらここまで連れてきてくれたのだった。
最初の内は色々な事がよぎり挙動不審の少年だったが、何事もなく平静な男の姿に徐々に落ち着きを取り戻した。
(お礼言わなきゃ…お礼言わなきゃ…)
助けて貰ったお礼を伝えたかったが中々タイミングが合わずに言い出せないまま目的地に着いてしまった。
「取り敢えず中に入ろうか」
そう言って男は手を差し出して来たが、流石に無理矢理掴まれる意外は手を繋がない。
そっと無視すると何事もなく男は腕を下ろした。その横に並ぶようにして入り口を潜る。
「わっ」
中に入るとまるで迷路のように入り組み不規則に並べられた本棚が少年を迎え入れた。色取りどりの本達は少年が一生かけても読み切れないだろ程陳列されている。中には洋書や英語で書かれた雑誌などもあり、訪れた人はゆったりと書籍との出会いを楽しんでいる。
男の足取りも殊更ゆっくりになる。
その男と並びながら歩いていたが、段々と興味が引かれる方に吸い寄せられていく。そんな少年を男は微笑みながら見守っていた。
「うわぁ、この本綺麗だなぁ…」
「ふふ、昆虫の写真集?甲虫ってこんなに色んな色のが居るんだね…。綺麗だね」
「うん」
「あ、この絵本懐かしい」
「こういうの読んでたんだ。可愛いね…」
「……保育園に置いてあっただけだよ」
「ふふ」
「あ、新刊出てる!」
「買う?」
「うーん。オタ君に借りて読んでるからな…。…この機会にコレも揃えちゃうか」
「この本、オススメだよ」
「え…。文字ばっかのやつ…」
「たまにはこういう本も読んでみると面白いよ」
「うへぇ」
「…読書感想文、これとか?」
「それもいいかも知れないけど、宇多君ならコッチの方が書きやすいんじゃないかな?」
「んじゃ、そっちにする」
一通り見終わると少年は自分のお小遣いで本を買った。男が勧めてきた物と読書感想文用の物だ。
男の方は重たそうな紙袋を軽々持っている。少年が足を止めて見ていた本をいつの間にか全て購入していたのだった。
ちょっと困惑したが少年の為ではなく、男自身が所有するらしいので何もいえなかった。
「お昼行こうか」
「…うん」
「何食べたい?ここのハンバーガーがオススメらしいけど行ってみる?」
「ハンバーガー…。ワックしか食べたことない」
「それじゃあここにしようか」
男と連れ立って併設されているそのバーガーショップに入り、壁際のカウンター席の端を陣取った。少し奥まったそこはあまり人目に付かない。
お昼の早い時間だからか人もまだ疎らだ。
お店のレジで注文し、自分で持って来るスタイルらしい。
少年の食べたい物を聞くと男は席取りを頼み、素早く注文しに向かってしまった。しばらく待っていると両手にトレイを持った男が帰ってきて隣に座った。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「うはぁっ!」
思わずテンションが上がってしまう。
目の前に置かれたソレは、こんがり焼かれたバンズにシャキシャキのレタスやトマト、肉厚のパティが挟まれている。パティからは未だジュウジュウと音が鳴り溢れ出た肉汁がパンに染み込んでいた。
味付けは自分で行うようでケチャップとマスタードも持ってきてくれた。
「す、すごぉ!ご馳走だ!」
「ふふ、熱いから気をつけて食べようね…」
「はーい!いただきます!」
少しだけ冷ましてから齧り付く。噛んだ瞬間に肉汁が口の中に広がった。
「あつ!あつ!うま!うま!」
「…ああ、本当に…かわいぃ…」
夢中で食べる少年にはうっとり囁かれたその声は聞こえなかった。
出来たて熱々のソレを冷ましながらのんびりゆっくり食べたが、美味しい物ほど無くなるのがはやく感じる。
最後の一欠片を口に入れると名残惜しくなった。
「ごちそうさまでした」
そう残念そうに呟く少年に男は指を伸ばしてきた。
「…宇多君、お口に、ついてるよぉー…?」
「………」
なんとなく今日はその指を避けなかった。
大人しく男を見上げると、かさついた親指がゆっくりと肉汁で光る少年の柔らかい唇を拭っていく。
口の周りを綺麗にすると男はその指を赤い舌で見せつけるようにベロぉと舐めた。
「ふふ、美味しい」
「………」
ペロペロと舐めて、またその指を伸ばしてくる。
今度は唾液を塗り伸ばすように唇を撫でられた。
グイ…と拭い、また舐めて触れる。
それを何度か繰り返されると少年の口は男の唾液でテラテラと光った。
「………」
「舐めて」
親指を口に押さえつけてそう命じられた。
少年は震える口をなんとか開き、チロリ…と少しだけ舐めた。
ちょっとだけしょっぱくて、ザラついたその感触は一瞬だけだったのに舌に長く残った。
帰りの車の中。
食後のイタズラでまだ頭がぼんやりとしている少年は大人しく助手席に付いている。男も満足しているのか穏やかな顔で運転している。
何も喋らないが気まずい雰囲気にはならない。どこか穏やかなその空気に少年は今なら言えると思い、口を開いた。
「こないだ…海で…。……たすけてくれて、ありがとぅ…」
ほにゃ、と微笑みながら告げられたその言葉にちょうど信号で止まっていて横目で見ていた男は突っ伏した。
「がわいっ!」
「?」
信号が変わると直ぐに正気を取り戻したのか澄ました顔で男は言う。
「ファーストキス貰えたからお礼は充分だよ」
「…人命救助は!キスのうちには入んない!」
「初めてだって所は否定しないんだね」
「…うぐぐっ」
悔しそうに呻く少年に「あはは」と笑い男は楽しそうに言う。
「じゃあ今度はちゃんとしたキスしようね」
「………」
(ちゃんとしたキス………。今度って…、いつだろう…)
男の言葉に返事が出来ず、感触を思い出すようにチロリと唇を舐めてしまったーーーー
カフェなども併設されているその建物は漫画から専門書まで幅広く揃っている。
今日は読書感想文用の本を一緒に見てもらう為、少年は男とその場所に訪れていた。
「すごっ!デカっ!これ全部本屋?」
「そうだよー。折角だしこういう所で探すと楽しいでしょ?」
今日の男の姿はいつもの先生のそれだった。こないだ送ってくれた車とはまた違う車で迎えにきた男はドライブしながらここまで連れてきてくれたのだった。
最初の内は色々な事がよぎり挙動不審の少年だったが、何事もなく平静な男の姿に徐々に落ち着きを取り戻した。
(お礼言わなきゃ…お礼言わなきゃ…)
助けて貰ったお礼を伝えたかったが中々タイミングが合わずに言い出せないまま目的地に着いてしまった。
「取り敢えず中に入ろうか」
そう言って男は手を差し出して来たが、流石に無理矢理掴まれる意外は手を繋がない。
そっと無視すると何事もなく男は腕を下ろした。その横に並ぶようにして入り口を潜る。
「わっ」
中に入るとまるで迷路のように入り組み不規則に並べられた本棚が少年を迎え入れた。色取りどりの本達は少年が一生かけても読み切れないだろ程陳列されている。中には洋書や英語で書かれた雑誌などもあり、訪れた人はゆったりと書籍との出会いを楽しんでいる。
男の足取りも殊更ゆっくりになる。
その男と並びながら歩いていたが、段々と興味が引かれる方に吸い寄せられていく。そんな少年を男は微笑みながら見守っていた。
「うわぁ、この本綺麗だなぁ…」
「ふふ、昆虫の写真集?甲虫ってこんなに色んな色のが居るんだね…。綺麗だね」
「うん」
「あ、この絵本懐かしい」
「こういうの読んでたんだ。可愛いね…」
「……保育園に置いてあっただけだよ」
「ふふ」
「あ、新刊出てる!」
「買う?」
「うーん。オタ君に借りて読んでるからな…。…この機会にコレも揃えちゃうか」
「この本、オススメだよ」
「え…。文字ばっかのやつ…」
「たまにはこういう本も読んでみると面白いよ」
「うへぇ」
「…読書感想文、これとか?」
「それもいいかも知れないけど、宇多君ならコッチの方が書きやすいんじゃないかな?」
「んじゃ、そっちにする」
一通り見終わると少年は自分のお小遣いで本を買った。男が勧めてきた物と読書感想文用の物だ。
男の方は重たそうな紙袋を軽々持っている。少年が足を止めて見ていた本をいつの間にか全て購入していたのだった。
ちょっと困惑したが少年の為ではなく、男自身が所有するらしいので何もいえなかった。
「お昼行こうか」
「…うん」
「何食べたい?ここのハンバーガーがオススメらしいけど行ってみる?」
「ハンバーガー…。ワックしか食べたことない」
「それじゃあここにしようか」
男と連れ立って併設されているそのバーガーショップに入り、壁際のカウンター席の端を陣取った。少し奥まったそこはあまり人目に付かない。
お昼の早い時間だからか人もまだ疎らだ。
お店のレジで注文し、自分で持って来るスタイルらしい。
少年の食べたい物を聞くと男は席取りを頼み、素早く注文しに向かってしまった。しばらく待っていると両手にトレイを持った男が帰ってきて隣に座った。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「うはぁっ!」
思わずテンションが上がってしまう。
目の前に置かれたソレは、こんがり焼かれたバンズにシャキシャキのレタスやトマト、肉厚のパティが挟まれている。パティからは未だジュウジュウと音が鳴り溢れ出た肉汁がパンに染み込んでいた。
味付けは自分で行うようでケチャップとマスタードも持ってきてくれた。
「す、すごぉ!ご馳走だ!」
「ふふ、熱いから気をつけて食べようね…」
「はーい!いただきます!」
少しだけ冷ましてから齧り付く。噛んだ瞬間に肉汁が口の中に広がった。
「あつ!あつ!うま!うま!」
「…ああ、本当に…かわいぃ…」
夢中で食べる少年にはうっとり囁かれたその声は聞こえなかった。
出来たて熱々のソレを冷ましながらのんびりゆっくり食べたが、美味しい物ほど無くなるのがはやく感じる。
最後の一欠片を口に入れると名残惜しくなった。
「ごちそうさまでした」
そう残念そうに呟く少年に男は指を伸ばしてきた。
「…宇多君、お口に、ついてるよぉー…?」
「………」
なんとなく今日はその指を避けなかった。
大人しく男を見上げると、かさついた親指がゆっくりと肉汁で光る少年の柔らかい唇を拭っていく。
口の周りを綺麗にすると男はその指を赤い舌で見せつけるようにベロぉと舐めた。
「ふふ、美味しい」
「………」
ペロペロと舐めて、またその指を伸ばしてくる。
今度は唾液を塗り伸ばすように唇を撫でられた。
グイ…と拭い、また舐めて触れる。
それを何度か繰り返されると少年の口は男の唾液でテラテラと光った。
「………」
「舐めて」
親指を口に押さえつけてそう命じられた。
少年は震える口をなんとか開き、チロリ…と少しだけ舐めた。
ちょっとだけしょっぱくて、ザラついたその感触は一瞬だけだったのに舌に長く残った。
帰りの車の中。
食後のイタズラでまだ頭がぼんやりとしている少年は大人しく助手席に付いている。男も満足しているのか穏やかな顔で運転している。
何も喋らないが気まずい雰囲気にはならない。どこか穏やかなその空気に少年は今なら言えると思い、口を開いた。
「こないだ…海で…。……たすけてくれて、ありがとぅ…」
ほにゃ、と微笑みながら告げられたその言葉にちょうど信号で止まっていて横目で見ていた男は突っ伏した。
「がわいっ!」
「?」
信号が変わると直ぐに正気を取り戻したのか澄ました顔で男は言う。
「ファーストキス貰えたからお礼は充分だよ」
「…人命救助は!キスのうちには入んない!」
「初めてだって所は否定しないんだね」
「…うぐぐっ」
悔しそうに呻く少年に「あはは」と笑い男は楽しそうに言う。
「じゃあ今度はちゃんとしたキスしようね」
「………」
(ちゃんとしたキス………。今度って…、いつだろう…)
男の言葉に返事が出来ず、感触を思い出すようにチロリと唇を舐めてしまったーーーー
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