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俺が最初に好きだったんだ

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 "ʕ•̫͡•ʔʕ•̫͡•ʔ"
『チョコ!チョコ!』

「……」

 ここまで案内して来た生物が報酬をねだった。叶は暫し悩んだが、そっと数粒出して2匹にだけ与えた。
 それを見ていた何匹かが寄って来たが叶は決して与えなかった。

ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
『『『わにゃわにゃわにゃわにゃ』』』

「…お前らにはなんの恩義もない。寄るな」

 追い払うように足を振ると残念そうな様子だったが、それらは離れていった。
 チョコを与えた2匹だけは更なる報酬を得ようと叶を何処かに案内したいようだった。

 そこに輝がいる可能性がある。
 信頼し過ぎるのも危険だが、出鱈目に彷徨うのも恐ろしい。そう考えた叶は恐怖心を抑えながら慎重に足を進めた。

 花道をしばらく歩く。

 モチモチモチ…とそれらが先導した場所は壁からチョロチョロと湧水が溢れる小さな水溜まりだった。勿論そんな所に輝の姿はない。
 2匹はおもむろに口を付けるとピチャピチャと水を飲みはじめた。

"ʕ•̫͡•ʔ『『わにゃわにゃ』』ʕ•̫͡•ʔ"

 こちらに飲むように促すその姿にゾッと背筋に冷たい物が走った。

 叶の脳裏に 黄泉戸喫よもつへぐいと言う言葉が過る。
 異界の物を口すると元いた場所へ戻れなくなる…。


 コイツらは叶を帰さないつもりだ。


「こんな物…!俺は口にしないッ!」

 勢いよく首を横に振り後ずさると生き物は残念そうに『わにゃ…』と鳴くだけでそれ以上は進めてこなかった。

 やはり異生物を信用してはいけない。
 不安に駆られた叶は来た道を戻る。





 湧水の水溜まり、花道、実のなる木、蝶々の花畑…





 その先には変わらず紅色の鳥居が存在していた。





 外界への目印を認識し安堵感にホッと息をつく。
 まだ帰る事が出来そうだ。
 しかしこんな場所に長居するのは危険だろう。
 
 チョロチョロ叶の周りを歩く2匹を無視して今度は反対側へと足を進める。
 どことなく叶がそちらに行く事を困るような様子を見せる異生物に、輝はこちら側にいるのだと確信した。
 
「輝……輝っ!どこだ…!」

 やがて叶は走り出していた。一刻もはやく輝を連れてここから抜け出すために。


         ʕ•̫͡•ʔʕ•̫͡•ʔ")))
『わにゃー…うにゅ』


 やがて見えて来たのは、酷く古い神社だった。
 真新しく美しかった鳥居と比べると随分と年季が入り、オンボロに見えた。

 外観からは何も感じない。汚い建物だなとしか思えないのが逆に恐ろしく感じた。
 こんな異様な空間で普通である事こそ異質だった。

「………てる…?」

 真正面から神社を眺めるとその入り口であろう木製の引き戸は閉じていた。近づいていくと、中から何かしらの気配を感じる。

 叶はギシギシ鳴る階段を登り、更に近づいた。
 

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