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俺が最初に好きだったんだ
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叶の予想通り、その後も輝は何か困り事がある度に叶を頼るようになった。
高校、大学、社会人…。こんな駄目人間、とっとと切り捨ててしまおうと思うのに嬉しそうに彼が笑う度、まぁ今回だけ…といつも譲歩してしまうのだった。
しかし輝の生活態度は悪くなっていく一方だ。高校も中退し、稼いだ金はギャンブルに消えていく。
短期間での返済は最初だけで段々と貸した金が返ってくる事が少なくなっていった。
そんな輝を何とか踏み止まらせようと叶は尽力した。
危ない人間関係を断ち切らせ、食べ物が無いと言うのならば食事を奢り、家賃が払えないと泣きつかれると立て替えてやった。
生活に困窮する輝に仕事まで紹介したが、長くは続かず、ヘラヘラと笑って、ただひたすらにパチンコに打ち込む…。
(こんなやつ、もういいだろう?てっちゃんは死んだんだ。彼はもういない。思い出にすがったって何にもならない)
そうは思うものの、その笑顔を見る度、パチンコに勝ってご機嫌で食事を奢ってくれたり、「かなえ!ありがと!」なんて言われると何でもしてやりたいと世話を焼いてしまうのだった。
しかし、そんな関係も終わりを迎える。
しばらく連絡が途絶えた。大概、輝からの「へるぷみぃ」からやり取りが始まるので、叶から「どうした?」なんて心配するのは癪に障るので決して送らなかった。
ソワソワと日に何度も携帯を確認し、もしや生命の危機に瀕しているのではと焦りが生まれてしまうぐらいになった頃、ついに耐え切れず叶は輝に電話をかけた。
「…もしもし?」
『お、かなえじゃーん!よっす!どした?』
「どうしたじゃない。…………別に対した用事は無いけど。…………貸した金、…いつ、返してくれるのかなって……思って…」
『悪い悪い!もうちょいしたらさ、金入ってくるから!もうちょっとだけ待っててな!ごめんな?』
「いや…まぁ、返してくれるのなら別にいいけど…。………最近あんまり連絡無いけど…仕事してんのか?」
『いや、今年上彼女のペットしてんの!俺ってマジついてるよな!ニート最高よ!パチンコし放題だし!こないだなんて大勝ちしてさぁ……』
その言葉を聞いた瞬間、キーンと耳鳴りがし、何やら楽しそうに喋り続けるその声は聞こえなくなった。
何も考えることができず、楽しそうな声を断ち切るように通話を切った。
ああ、そうだ。誰でもいいんだ。
こいつは優しくしてくれるなら誰でもいいんだな。
そんな当たり前に分かりきっていた事に気が付いてしまった。依存されているようで、依存していたのは自分の方だった。居ても立っても居られなく、感情はぐちゃぐちゃで、気がついた時には家中にある酒という酒を飲み散らかしていた。それはまるで最低な父親と同じように。
そして、最低な母親と同じように、1人の人間に依存していた。
最低で最悪で、気がつきたくなくて、もはや思い出すのも忌避していた人間達との血の繋がりを、強く強く意識してしまって。
この日は叶にとって最悪な日になった。
高校、大学、社会人…。こんな駄目人間、とっとと切り捨ててしまおうと思うのに嬉しそうに彼が笑う度、まぁ今回だけ…といつも譲歩してしまうのだった。
しかし輝の生活態度は悪くなっていく一方だ。高校も中退し、稼いだ金はギャンブルに消えていく。
短期間での返済は最初だけで段々と貸した金が返ってくる事が少なくなっていった。
そんな輝を何とか踏み止まらせようと叶は尽力した。
危ない人間関係を断ち切らせ、食べ物が無いと言うのならば食事を奢り、家賃が払えないと泣きつかれると立て替えてやった。
生活に困窮する輝に仕事まで紹介したが、長くは続かず、ヘラヘラと笑って、ただひたすらにパチンコに打ち込む…。
(こんなやつ、もういいだろう?てっちゃんは死んだんだ。彼はもういない。思い出にすがったって何にもならない)
そうは思うものの、その笑顔を見る度、パチンコに勝ってご機嫌で食事を奢ってくれたり、「かなえ!ありがと!」なんて言われると何でもしてやりたいと世話を焼いてしまうのだった。
しかし、そんな関係も終わりを迎える。
しばらく連絡が途絶えた。大概、輝からの「へるぷみぃ」からやり取りが始まるので、叶から「どうした?」なんて心配するのは癪に障るので決して送らなかった。
ソワソワと日に何度も携帯を確認し、もしや生命の危機に瀕しているのではと焦りが生まれてしまうぐらいになった頃、ついに耐え切れず叶は輝に電話をかけた。
「…もしもし?」
『お、かなえじゃーん!よっす!どした?』
「どうしたじゃない。…………別に対した用事は無いけど。…………貸した金、…いつ、返してくれるのかなって……思って…」
『悪い悪い!もうちょいしたらさ、金入ってくるから!もうちょっとだけ待っててな!ごめんな?』
「いや…まぁ、返してくれるのなら別にいいけど…。………最近あんまり連絡無いけど…仕事してんのか?」
『いや、今年上彼女のペットしてんの!俺ってマジついてるよな!ニート最高よ!パチンコし放題だし!こないだなんて大勝ちしてさぁ……』
その言葉を聞いた瞬間、キーンと耳鳴りがし、何やら楽しそうに喋り続けるその声は聞こえなくなった。
何も考えることができず、楽しそうな声を断ち切るように通話を切った。
ああ、そうだ。誰でもいいんだ。
こいつは優しくしてくれるなら誰でもいいんだな。
そんな当たり前に分かりきっていた事に気が付いてしまった。依存されているようで、依存していたのは自分の方だった。居ても立っても居られなく、感情はぐちゃぐちゃで、気がついた時には家中にある酒という酒を飲み散らかしていた。それはまるで最低な父親と同じように。
そして、最低な母親と同じように、1人の人間に依存していた。
最低で最悪で、気がつきたくなくて、もはや思い出すのも忌避していた人間達との血の繋がりを、強く強く意識してしまって。
この日は叶にとって最悪な日になった。
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