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それが始まりだった
ポール2
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「商隊が襲われただと!?被害は!!護衛はどうした!!」
「……全滅です。…ケインも…ゲールも…他の奴らも、かろうじて、判別がつく…感じで……」
「…なんて言う事だ!!どうして…!何が起こったんだ!」
「わかりません!!…襲われるにしても、こんな、ひでぇっ…」
父と部下の話を聞きながら、ポールはただ茫然と立ち尽くしどうする事も出来なかった。
ケイン、ポールが子供の時からいた厳しくも明るく陽気な兄のような人だった。新人のポールの失敗を笑い飛ばし、助けてくれた。
ゲール、無骨でとても強かった。彼が殺されるほどの何かが…商隊を襲ったのだ。
数十人に及ぶ熟練の商隊の全滅など信じられなかった。
今までも盗賊や魔物の被害は起こった事がある。しかしここまでの被害など聞いた事がない。
「…くっ…どうする…?…あの荷物は…王家からのご依頼だぞ…?…ウチの人員も!護衛も!最高の物を用意したのに…!!」
「………」
そこからは転がり落ちるようだった。
王家からの信頼を失い、大切な人員も失ったポールの家は商家として成立たなくなっていく。
王家からの依頼をこなせなかった分の返済も求められていた。
あんなに自信に満ち輝いていた両親もげっそりと痩せ、資金繰りに苦心した。そんな家族を支えようとポールも努力したが、年若いポールに出来ることなど限られていた。
そんな折、黒いローブの人物がポールの家を訪れた。
「…お困りの、ようですねぇ。…私がお力を貸しましょうか?」
「なんだ、お前は…?」
「貴方達を救いに導くーー…神の御使ですよ」
「!?」
ローブがスルリと下される。
そこから現れたのはこの世のものとは思えない美しい男だった。
長い金糸の髪をサラリとゆらし艶かしく微笑む。
顔だけ見れば女性とも思えたが、思いの外低い声が性別を判断させた。
芸術家が丹精込めて作り上げたかの様な美しいその相貌はしかし、半分醜く焼け爛れ、片目は白く濁っていた。
しかしその事が逆に彼の美しさを際立たせるのだった。
「さぁ、参りましょう。…ーー幸福はすぐそこに…」
「……全滅です。…ケインも…ゲールも…他の奴らも、かろうじて、判別がつく…感じで……」
「…なんて言う事だ!!どうして…!何が起こったんだ!」
「わかりません!!…襲われるにしても、こんな、ひでぇっ…」
父と部下の話を聞きながら、ポールはただ茫然と立ち尽くしどうする事も出来なかった。
ケイン、ポールが子供の時からいた厳しくも明るく陽気な兄のような人だった。新人のポールの失敗を笑い飛ばし、助けてくれた。
ゲール、無骨でとても強かった。彼が殺されるほどの何かが…商隊を襲ったのだ。
数十人に及ぶ熟練の商隊の全滅など信じられなかった。
今までも盗賊や魔物の被害は起こった事がある。しかしここまでの被害など聞いた事がない。
「…くっ…どうする…?…あの荷物は…王家からのご依頼だぞ…?…ウチの人員も!護衛も!最高の物を用意したのに…!!」
「………」
そこからは転がり落ちるようだった。
王家からの信頼を失い、大切な人員も失ったポールの家は商家として成立たなくなっていく。
王家からの依頼をこなせなかった分の返済も求められていた。
あんなに自信に満ち輝いていた両親もげっそりと痩せ、資金繰りに苦心した。そんな家族を支えようとポールも努力したが、年若いポールに出来ることなど限られていた。
そんな折、黒いローブの人物がポールの家を訪れた。
「…お困りの、ようですねぇ。…私がお力を貸しましょうか?」
「なんだ、お前は…?」
「貴方達を救いに導くーー…神の御使ですよ」
「!?」
ローブがスルリと下される。
そこから現れたのはこの世のものとは思えない美しい男だった。
長い金糸の髪をサラリとゆらし艶かしく微笑む。
顔だけ見れば女性とも思えたが、思いの外低い声が性別を判断させた。
芸術家が丹精込めて作り上げたかの様な美しいその相貌はしかし、半分醜く焼け爛れ、片目は白く濁っていた。
しかしその事が逆に彼の美しさを際立たせるのだった。
「さぁ、参りましょう。…ーー幸福はすぐそこに…」
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