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本編
41 end
しおりを挟む「アルヴィン様!レド!お久しぶりですね!」
予定通り到着した馬車から膨れた腹のセレスが降りて来た。その傍らには5歳くらいの銀髪の少年がいて、仲良く手を繋いでいた。
先に降りていたポールが愛おしそうにセレスが降りるのを手助けしている。
「……息子が産まれたと知らせがあってから数ヶ月しか経っていないが、随分と、大きい…」
子供とはそんなに早く成長する物だっただろうか、それに、その腹は…と考えた所でアルヴィンは思考を止めた。
「ふふ、私達の子はよく食べますからね。成長が早いのですよ。ほら、ニベルコル、ご挨拶は?」
「はじめまして、ニベルコルと、もうします…。…かあさま、すごくおいしそうー、たべたい…」
そうアルヴィンを指差すニベルコルにレドが殺気を放った。
「おや…?俺のご主人様を美味しそうと言いましたか?躾がなっていませんね…。誰に向かってその様な無礼な口を聞いているのか自覚がないと、自らが食べられてしまいますよ?」
「コラ!ニベル。アルヴィン様は私の大事な人なのだから食べてはいけませんよ?」
「レド、失礼した…。ニベル、対峙する相手の力量を鑑みて発言しないといけないよ?」
「…ごめんなさい」
反省の色を見せるニベルコルにレドも溜飲を下げた。
「…まぁ、セレスに免じて許して差し上げます。そうだ、お腹が空いているならバアルなら食べても良いですよ。いっぱい居ますから」
『ビャッ!?』
にこやかなレドの発言に集まっていた小さいバアル達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「れ、レド様!?そんな!御無体なっ…!?」
「だって君達、見境なく増えますから…。たまには間引かないと。ちょっと減ってもすぐ増えるし良いでしょう?」
「そんな…、そんな…!ひゃっ!」
青年のバアルの手を小さな手が握った。バアルが恐る恐る下を見るとニベルコルが嬉しそうに笑った。
「おにーちゃん、あっちであそぼー」
「うっ…うっ…かしこまりました…。よいですよ…」
バアルは泣きながらニベルコルに連れられて物影に消えた。
「ふふ、うちの子が申し訳ありません。でもアルヴィン様が楽しそうで良かったわ。随分と大所帯になったのですね?」
そう言いながらセレスはお腹を愛おしそうに撫でた。
「…それは?」
「ふふ、お恥ずかしいのですが…2人目です。お陰で婚礼式は先延ばしになってしまいましたが、家族が増えるのは喜ばしい事ですからね」
「そうか…」
微笑むセレスにアルヴィンは問う。
「セレス、お前は今…。……幸せか?」
「はい!幸せですよ!」
濁った瞳で、溌剌とセレスは笑った。
「そうか。それなら、いい」
日差しに輝くその姿にアルヴィンは納得し、セレスを抱きしめた。セレスの腕が背に回るのを感じながらアルヴィンは思う。
彼女が幸せだと言うのならば、それで良いと。
「かあさまー、とうさまー」
「うっ…うっ…うっ…」
半分くらいに縮んだバアルが服を引き摺りながらニベルコルと手を繋ぎ戻ってきた。
「ニベルコル様、バアルのお味は如何でした?」
「かりかりでー、あまくってー、おいしかった!」
「あは、お気に召して頂いて良かったです。うちの子はご主人様に可愛がられて良い物ばかり食べていますからね。蜂蜜蝿です」
「とうさまー、あれかいたい」
ポールは息子を抱き上げて困り顔になった。
「アルヴィン、どうだろうか。1人譲って貰えるかな?」
「バアル、どうだ?」
アルヴィンが聞くとバアルは必死に首を横に振った。
「駄目だ」
「だそうだ。ニベルコル、諦めなさい」
「えー…」
「アルヴィンさま~っ!ありがとうございますーっ!」
泣きつくバアルの様子にみんなで笑った。
明るい日差しの下、楽しそうにそれは響いたーー
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