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本編
5 もう一度
しおりを挟む身体中傷だらけの男。
どうしてそうなってしまったのか、何処から来たのか、誰にもわからない。
身体と比べるとその男の顔や手足は傷1つなく不自然なほど綺麗だった。
背丈は立ち上がればアルヴィンよりも頭一つ分大きいだろう。痩せ細り見る影もないが、骨格から立派な体躯だった事が窺えた。
男の清拭を終え、薬草を塗り込むとアルヴィンは一息ついた。
数日前に虫が全て転がり落ち蛹になった。虫がいなくなった男はベッドに移されてより快適な状態に整えられている。
男が目を覚ましたのはあの牢屋での邂逅の一瞬だけだった。
水分と重湯は少しづつではあるが口に含ませて食べさせていた。
そうやってつきっきりで看病しているせいでアルヴィンは男を購入してから一度もギルドの依頼をこなしていない。
セレスに「本末転倒ですね」とチクリと嫌味を言われてしまったが、そんな彼女も日に何度も様子を観に来るのだから素直ではなかった。
アルヴィンは健やかな寝息を立てる奴隷の不自然に綺麗な顔を撫でた。そして親指で起きる気配のない男の瞼をなぞる。
ひと目でアルヴィンを惹きつけたあの美しい瞳。
あの黄金の色をもう一度見たい、と思った。
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