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未来編④
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「な、何……これ?」
店に着いた俺は、それを見て愕然とした。
店の入り口にはあの貼り紙と……それから、一枚の写真が貼ってあった。
その貼り紙には……こう書かれていた。
『あなたの、間違った運命を正そう。』
そして、その横に貼られた写真には……亮と見知らぬ女の子が写っていた。
そこに写った女の子は、真っ赤な顔で彼に何かを差し出している。
これ、きっとプレゼントだよね?
亮……勿論、受け取ってないよね?
俺は震える手でそれを剥がし……ドアのノブに手をかけようとしたが……身体が後ろにふらついてしまった。
「危ない!」
そんな俺を支えてくれたのは、お客さんの一人……巽さんだった。
「す、すみません……!あの、まだお店は──」
「分かってますよ。今日は夜勤明けでして、偶々……。それよりマスター、顔色が悪いですよ?」
「あ……もう、平気ですから。」
「あの……それは、これが原因ですか?」
巽さんは、俺が手にしたあの貼り紙と写真を、じっと見ていた。
「え、えっと……これは。」
「マスター、とりあえず中に入って腰掛けましょう?そうしたら、気持ちも少しは落ち着くかと──。」
※※※
「そうですか……少し前から、こういった貼り紙が。」
「俺には、ここに書かれてるのが何の事か……そして誰がそんな事してるのか、全く心当たりがなくて……。」
「全く……?」
「えぇ。料理がマズいとか、接客態度が悪いとか……そういう事を書かれるなら、まだ対処法があるんですけど……これでは。それに、俺よりもりょ、彼の身の方が心配です。だってそうでしょう?こんな写真を撮られたって事は、誰かがこっそり、彼をつけ狙ってるって事ですから。」
「マスターは、自分より彼の身が心配だと……。余程、彼を愛してるんですね。」
「あ、愛って……。あぁ……巽さんにも気づかれちゃったな、俺の恋人が男だって。」
「俺は、そんな事は気にしませんよ。それに、マスターの笑顔は素敵だから、同性でも惹かれるというのは理解できます。」
「……そんな。巽さんって、お世辞がお上手なんですね。」
「いえ……。」
「あ、いけない!もうこんな時間だ……モーニングに間に合わなくなっちゃう。」
「俺、ここで開店まで待っててもいいですか?」
「はい、どうぞどうぞ。俺の話に付き合わせちゃって……本当に申し訳なかったです。夜勤で疲れてらっしゃるのに。」
「いいえ。俺もあなたとゆっくり話が出来て嬉しかったです。マスターは、いつも常連客に引っ張りだこだから……。」
「俺も、巽さんとお話しできて楽しかったです。巽さん、落ち着いてるから……年上のお兄さんに話を聞いて貰ってる感じで。」
「年上、か……。」
「何か?」
「いいえ、どうぞ俺にはお構いなく。ポメ吉君、おいで?俺と一緒に遊ぶかい?」
「……クゥ。」
ポメ吉は巽さんをチラリとみると……すぐに俺の方に駆けて来て、俺に抱っこをせがんだ。
ポメ吉……基本的に誰にでも愛想よく懐くのに……巽さんは、ちょっと避けるんだよなぁ。
「ごめんね。今は抱っこ無理だから、また後でな?」
ポメ吉を宥める俺を、巽さんがどんな目で見ているか……この時の俺は、何も気づかないでいた──。
店に着いた俺は、それを見て愕然とした。
店の入り口にはあの貼り紙と……それから、一枚の写真が貼ってあった。
その貼り紙には……こう書かれていた。
『あなたの、間違った運命を正そう。』
そして、その横に貼られた写真には……亮と見知らぬ女の子が写っていた。
そこに写った女の子は、真っ赤な顔で彼に何かを差し出している。
これ、きっとプレゼントだよね?
亮……勿論、受け取ってないよね?
俺は震える手でそれを剥がし……ドアのノブに手をかけようとしたが……身体が後ろにふらついてしまった。
「危ない!」
そんな俺を支えてくれたのは、お客さんの一人……巽さんだった。
「す、すみません……!あの、まだお店は──」
「分かってますよ。今日は夜勤明けでして、偶々……。それよりマスター、顔色が悪いですよ?」
「あ……もう、平気ですから。」
「あの……それは、これが原因ですか?」
巽さんは、俺が手にしたあの貼り紙と写真を、じっと見ていた。
「え、えっと……これは。」
「マスター、とりあえず中に入って腰掛けましょう?そうしたら、気持ちも少しは落ち着くかと──。」
※※※
「そうですか……少し前から、こういった貼り紙が。」
「俺には、ここに書かれてるのが何の事か……そして誰がそんな事してるのか、全く心当たりがなくて……。」
「全く……?」
「えぇ。料理がマズいとか、接客態度が悪いとか……そういう事を書かれるなら、まだ対処法があるんですけど……これでは。それに、俺よりもりょ、彼の身の方が心配です。だってそうでしょう?こんな写真を撮られたって事は、誰かがこっそり、彼をつけ狙ってるって事ですから。」
「マスターは、自分より彼の身が心配だと……。余程、彼を愛してるんですね。」
「あ、愛って……。あぁ……巽さんにも気づかれちゃったな、俺の恋人が男だって。」
「俺は、そんな事は気にしませんよ。それに、マスターの笑顔は素敵だから、同性でも惹かれるというのは理解できます。」
「……そんな。巽さんって、お世辞がお上手なんですね。」
「いえ……。」
「あ、いけない!もうこんな時間だ……モーニングに間に合わなくなっちゃう。」
「俺、ここで開店まで待っててもいいですか?」
「はい、どうぞどうぞ。俺の話に付き合わせちゃって……本当に申し訳なかったです。夜勤で疲れてらっしゃるのに。」
「いいえ。俺もあなたとゆっくり話が出来て嬉しかったです。マスターは、いつも常連客に引っ張りだこだから……。」
「俺も、巽さんとお話しできて楽しかったです。巽さん、落ち着いてるから……年上のお兄さんに話を聞いて貰ってる感じで。」
「年上、か……。」
「何か?」
「いいえ、どうぞ俺にはお構いなく。ポメ吉君、おいで?俺と一緒に遊ぶかい?」
「……クゥ。」
ポメ吉は巽さんをチラリとみると……すぐに俺の方に駆けて来て、俺に抱っこをせがんだ。
ポメ吉……基本的に誰にでも愛想よく懐くのに……巽さんは、ちょっと避けるんだよなぁ。
「ごめんね。今は抱っこ無理だから、また後でな?」
ポメ吉を宥める俺を、巽さんがどんな目で見ているか……この時の俺は、何も気づかないでいた──。
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